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2931のために資料を見ていて思ったのですが、日露戦争のころのマストはむしろ「帆柱」という格好をしていますね。たとえばニコライ1世など、充分帆が張れそうな立派な帆桁(というのですか?帆船にはあまり詳しくないもので)がついています。こういうのは帆走にも対応していたのでしょうか? (前身が個人所有のヨットだったという某巡洋艦はひとまずおくとして) 08/15 |
- ええ、あれは帆桁です。
帆装は縮小される傾向にありましたが、ニコライのように少し古い世代ですと、まだいざという時の為等で備えている事例がまだあったのです。
SUDO
- 戦艦オスラービアの絵です。
http://armoured.newmail.ru/pic08_e.html
帆桁のところに帆走用と思われるロープが描いてあります。
しかし、日本の場合は初代金剛が日清戦争後、初代扶桑は日清戦争前に帆走を廃止していますが、露西亜艦が帆走設備を残していたのは何か特別な理由があったのでしょうか。
富士見町
- 欧米海軍では、通商破壊や外地警備が用途や任務として存在すること(外地での石炭補給の可否にも不安があるだろうし、平時でも外地で購入するのは確実性や予算負担が大きいでしょう)
また従来からの流れとしての保守的な保険装備といった側面。
以上から、早々に捨て去るのも、また勇気の要る事だったのでは無いでしょうか。
また新造艦に備えなくとも、在来艦から敢えて筈名避ければいけない理由も特に無かったのでしょう。
日本の場合は歴史が浅い上に、本土近海での作戦がメインですから帆装を廃止する事への障害は少なく、また廃止する事で武装等の強化をより行いやすい(ごついマストや帆桁は重心を上昇させますから)といった事なんかが考えつきます(何しろ日本艦は重武装ですし)
SUDO
- 欧米海軍で、実質完全汽走になってからも帆装を残した艦があるのは、おおよそSUDOさんの書かれたとおりの理由です。
さらに付け加えるなら、艦隊にまだ汽帆装艦が多く残っている場合、帆装をまったく持たない艦では日常に帆の取り扱いが訓練できないため、乗組員が他の艦へ移ったときに困ります。そのために残された帆装は形だけに近く、1万トン以上もある艦の推進にはほとんど役立ちません。それゆえ、非常に矛盾した装備に見えるのです。
信号で使いもしないヤードが残っているのも、登檣礼のためと言われています。いずれも完全汽走艦が増えると意味がなくなり、重量軽減のために消えていきますが、実際の撤去は定期修理時などに上からの指示で行われますので、無用なものが残っている時期もあります。
志郎
- >4
1や2の書き込みを見て、「1万トンの甲鉄艦が帆走で動くのか?」と不思議に思ったので、納得しました。要するに、訓練用の装備ということですか。
ベアベア
- >5
動きます。訓練用であっても、帆を展帳すれば動きます。オスラビアの絵では、横帆だけしか張れないようですし、クラウン(最上部の帆)もフライング(帆桁のない横帆)にするしかなさそうですが、それでも追い風なら必ず動きます。横風ではリーウェイが大きそうですし、ステイスルも張れないようですから、前に進めるかは判りませんが、動くことは動きます。
elebras
- >5、6
動きます。別に帆を張らんでも、風が吹けば船は動きますんで、帆を張ればいくらかなりとも余計に動きます。機力推進に対して意味のあるような装備ではないだけです。そうなる以前には、そこそこ多くの帆が張れて、燃料節約とかの意味があったりしますから、決め付けるべきではありません。つけてみたけど思うように動かないから外した、という艦もあります。
もうひとつ、中心から前後方向へ離れた位置に帆柱があると、風を利用して推進せずに艦の向きを変える(維持する)ことができます。帆船の時代には実際にこういう使い方をしましたが、汽走艦が普段取り付けていない帆を持ち出してまで、これを行ったかは知りません。
志郎
- 話を戻してしまいますが、インペラトール・ニコライ一世の同型艦インペラトール・アレクサンドル二世では帆の面積1560uの帆装がなされていました(元々の計画では2265uだったものの、重量軽減のために縮小)。ただ、竣工間もない1892年にはトップマストがより長いものに変更され、実際に用いられる事はなかったようです。ニコライ一世でも帆装が計画されていましたが、こちらも建造中にトップマストが同様に変更された結果、帆装は実質的に役に立たなくなってしまったとのことです。
(以上、Stephen McLaughlin, "Russian & Soviet Battleships"より)
摂津
- >7
> もうひとつ、中心から前後方向へ離れた位置に帆柱があると、風を利用して推進せずに艦の向きを変える(維持する)ことができます。帆船の時代には実際にこういう使い方をしましたが、汽走艦が普段取り付けていない帆を持ち出してまで、これを行ったかは知りません。
横帆だけですと難しいと思います。小さな漁船などでは、船尾にスパンカーと呼ばれる帆を持っていて(現在でも)、舵が壊れた時などこれで操船して港に帰るような事もしますが(実際にやった事があります。)、これは縦帆でして、横帆の場合、これをしようとすると、逆帆(マストの方に向かって膨らむ。)にならざるを得ません。これは走っていなくても同じです。
帆船の場合、船尾縦帆を持っていて(無い場合もありますが・・。これもスパンカーですね。)その開きで船首維持ができますが、主帆(横帆)の開きを変えて、というのは皆無ではないと思いますが、あまりしないのではないでしょうか?私にはヒーブ・ツー以外にそういう主帆の使い方がイメージできないのですが・・・・
elebras
- >elebrasさま
>帆で向きを変える
もちろん、汽走艦では非常にイレギュラーな運用ですから、効率も何もないでしょう。可能だというだけです。狭い湾内で曳船の援助が受けられずに出港する場合などをイメージしての話です。
帆船での縦横帆それぞれの使い方は、おっしゃるとおりだと思います。それで「帆柱があれば」と書いたのですが、言葉足らずで申し訳ありません。
志郎
- >10
いえ、謝られるような事じゃありませんので、かえって恐縮です。
横帆の帆桁はその支点の構造上、船体と平行になるまでは動かせなかった(できる船もありますが・・・)と思いますので、9のような回答になりました。
もちろん、非常時には別で先に挙げたヒーブ・ツー(荒天避航などと訳される場合もありますが、帆船のブレーキと思って頂ければ・・・)などでは、マスト毎、あるいは帆毎の開きを逆にして使いますから、逆帆がまったくダメというわけではありません。
ただ、逆帆にせよ、順帆にせよ、風が入った時点で前後どちらかへの推進力も発生しますから、重い汽走船とはいえ、えらく扱いにくい事になりそうな気がします。もっとも訓練以外で帆を張ろうなんて状況ではそんな事も言ってられないのでしょうけれど・・・・。
余談ですが、ヨットのように横流れを抑えるキールを持たない船の場合、汽走では船首付近を中心にして船の向きが変わりますが、帆走では逆に船尾中心の方が向きが変わりやすくなります。ですから、想定されている状況なら、フォア・マストの帆を使う方がやりやすそうですね。
elebras
- 訂正です。
ヒーブ・ツーは荒天避航ではなくて「ちちゅう」と呼ぶのが正しいです。お詫びして訂正します。
elebras
- 余談ですが、現代にいたって(といっても1990年後半)対潜哨戒のためにノイズを減らす目的で帆走可能な船の企画が数例あがっています。
ある程度の規模の帆があれば、3000トンクラスで3ノット程度は期待できるようです。(あくまで参考ですが)
小隊長
- 軍事関連ではないのですが、帆走関連として。
一昔前に省エネ対策として帆走の併用が議論され、実際帆走可能な貨物船が作成されていましたが、その後あまり積極的に採用されたと言うような話は聞きません。現状はどうなのでしょうか。
http://www.jsanet.or.jp/d5-14lowerright.html
富士見町
- >現状はどうなのでしょうか。
海技研では引き続き研究がされています。
http://www.nmri.go.jp/sed/members/murohara00_j.htm
98年に作られた新ぷろぱん丸の航海支援システム(AISの強化版)と同じ理由だと思います。「欲しいがウチの会社じゃ買えない(改修費用が捻出できない)」。あとは帆の向きを常時適切に変えないと省エネ効果が得られませんが、風を探すために向きを変えて走るわけにはいかないので、それぐらいなら太平洋側のように黒潮に乗ったほうがよほど省エネになります。とどめに帆が船首方向の視界を遮るので漁り火などの発見が遅れるため、乗員(甲板部)に不評です。
RNR