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陸海軍を問わず、大戦中の日本機のプロペラの設計が遅れていたことは指摘されることが多いですが、艦艇のスクリューはどうだったのでしょうか。他国と比べて推進効率が悪いようなことがあったのでしょうか。 富士見町 |
- アメリカ海軍では、アイオワ級戦艦で内軸と外軸の羽数を変える(4枚と5枚)などの試みが行われていますが、日本海軍では特に推進器の形状や羽数について大きな改良を試みたという事例は聞きません。ほぼ全ての艦艇がオーソドックスな3枚羽の推進器を装備しています。
日本海軍は推進器そのそものの形状よりも、駆逐艦艦尾のナックルや大和級戦艦のバルバスバウなど、船体形状の工夫によって推進効率の向上や水中抵抗の軽減を計ることに熱心だったように見受けられます。
つね
- 例えば陽炎型に限っても推進器の形状は何種類も試験されました。
他国と比較した場合のことはよくわかりません。
至高たる海原
- >1
一般論では、スクリューの羽根枚数は増えると効率が低下します。
つまりアイオワの4とか5は効率が悪いんです>枚数を増やさない場合は直径を大きくしないと馬力を吸収出来ず、大直径は吃水深さや軸レイアウトを考えると色々困るし、スクリューは水深あるほうが望ましい。
つまりスクリューそのものではなく、船体全体で調和しているわけです。アイオワの事例はスクリューの効率には目をつぶって他の要素を優先したとも言えなくも無いでしょうね。
日本艦が推進器を色々試しているのは#2で触れられているとおりで、これは他国でも同様です。また推進器そのものの性能差は判りません。
ちなみに航空機で問題になったのは、つまりは大きなピッチ変更やフェザリングのできる可変ピッチペラの開発能力であって、推進効率の違いとは若干異なると思います(まあ、そっちも劣ってるのかもしれませんが)
SUDO
- 日本でも推進器の形状を研究していたことは存じておりましたが、(ある程度の改良を試すのは、ある意味当たり前ということで・・・)枚数を変えるなどの一目でわかるような形状変更は試されなかったという意味で「大きな改良」と書かせていただきました。
アイオワ級の場合は、羽枚数を増やすことで推進器の回転数を低くおさえて高速を出すため(学研「大和型戦艦」の記事の一部より)と認識していましたので、高速化のための推進器の回転数増加による推進効率低下を考慮して枚数を増やしたのだと単純に思っていましたが、大直径化がベストだが、船体設計のデメリットを考慮し大直径化より推進効率には劣るが同じく低回転で大馬力を吸収できる多数羽が採用された・・・ということだったのですね。
つね
- 翼数を増やす主眼は振動の軽減です。<< 米国新鮮艦もこれが目的のハズ
ちなみに、楕円3翼と同4翼との推進器効率の差は「軍艦機関計画一班」によると1%強とのコト。
駄レス国務長官
- × 米国新鮮艦
○ 米国新戦艦
駄レス国務長官
- 米海軍の新戦艦が4ー5枚羽スクリューを採用した経緯に高速航行時の振動問題が
ありませんでしたか?
Navy
- >4
>枚数を変えるなどの一目でわかるような形状変更は試されなかった
翼数を変える試験も行っています。
至高たる海原
- 推進器の設計は基本となる算式が有りますが、形状決定までには試作と検証を繰り返して最適化を図るものです。
例として、初期のタービン推進一等駆逐艦の天津風型では3種の推進器を試験しています。
艦名 外径 ピッチ 軸馬力 回転数 速力 推進効率
天津風 6ft6in 6ft2in 29,892shp 794rpm 35.096kt 0.455
磯風 6ft6in 6ft2in 31,152shp 783rpm 35.577kt 0.455
時津風 6ft6in 6ft0in 33,014shp 814rpm 35.558kt 0.424
浜風 6ft4in 5ft10-1/4in 34,700shp 866rpm 35.805kt 0.415
・・・と公試結果では天津風≒磯風>時津風>浜風の順に効率良好と判定されました。
また、時津風は後年、推進器を損傷したため別物と交換したトコロ、
新造時 紀州沖 33,014shp 814rpm 35.558kt 翼厚3-3/4in
復旧時 経ヶ崎 30,906shp 775rpm 31.68kt 翼厚5in
第一回 浦賀水道 29,649shp 769rpm 31.80kt 翼厚5in
第二回 浦賀水道 28,472shp 752rpm 33.20kt 翼厚4in
・・・となり、翼厚の影響が大なるコトが判明しました。
また、二等駆逐艦の桃型も4種の推進器を試験しています。
艦名 外径 ピッチ 展開面積/円面積 軸馬力 回転数 速力 推進効率
桃 6ft6in 6ft2in 0.76 18,146shp 735rpm 32.135kt 0.454
柳 6ft6in 6ft2in 0.70 18,376shp 739rpm 31.177kt 0.430
樫 6ft6in 6ft0in 0.76 18,340shp 745rpm 31.916kt 0.443
檜 6ft6in 6ft0in 0.70 18,472shp 750rpm 31.179kt 0.415
これらより見ると、外径、ピッチ、展開面積/円面積が大きいほうが推進効率が高いようデス。
駄レス国務長官
- いろいろとお教え頂き、有り難うございました。
時津風の例ですが、推進器形状によって2ノット近く速度が違うのですね。
最近のものでは、効率を重視した者では推進効率が70%に達する例があるようですが、護衛艦などに使われているスクリューの効率はどの程度なのでしょうか。
富士見町