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軍用機は無理な機動をとったときに、 燃料やオイルがGで偏って問題が起こるというようなことはあるのでしょうか? 特にGをかけたときに重心が移動してしまうのではないかと思うのですが これは取り立てて問題にするほどのことではないのでしょうか? トシン |
- 端的に言えば、「あります」よって以下のような防止策があります。
・燃料タンクを細分化する
・タンク内に穴開き隔壁を設けて液体の急激な移動を押さえ込む
・燃料パイプの吸入口をタンク底部の凹みの中等Gで液体が寄ってきやすいところに置く
(Gで液面がパイプから外れて燃料供給が止まり墜落、という事故例あり)
Schump
- 燃料の供給について。
例えばS−2(ピッツ)の場合は、胴体燃料タンク(主タンク)の中に長いフレキシブルのホースが横たわりその先に錘がついています。これによりどんな飛行姿勢(背面含む)でも吸引ホースが重力方向に垂れ下がり燃料を吸い込むシステムになっています。また万一空気を吸っても主タンクと燃料ポンプの間に小容量のリザーバータンクがありますので、短時間のバックアップが出来るようになっています。
点火栓
- 機動によって燃料が移動して起こる重心移動よりは、燃料消費に従って減少する重量によって起こる重心移動の方が問題になります。満タン時に空戦機動制限を生じさせたマスタングの胴体内燃料タンクの例がありますが、たいがいの飛行機の燃料タンクは重心位置に近づけてあるので、燃料消費が進んでも、トリムで修正できる範囲の重心移動ですむようになっています。
ピッツのようなフレキシブルチューブでも問題が無いわけではありません。
チューブが絡まって結び目やキンクが生じると燃料は止まってしまいますし、途中で引っかかって空気を吸い込むこともあります。私自身は経験がありませんが、知人がR/C飛行機でそのようなトラブルにあっています。(エンストですんでいます)
ネコ丸
- 飛燕の燃料配管の一部は渦巻き状になってました。
これも恐らくは姿勢変化があっても燃圧が大きく変動しないようにとの工夫なんでしょう。
SUDO
- 機首の動きによって燃料流量や圧力が不均等になり、結果的にエンジンが止まったり動きが悪くなったりする問題はありました。対策に関しては他の皆さんが紹介して頂いている通りですので、実例を少し。
BF109は初期型から対策を講じていましたがスピットファイアやハリケーンは初期の頃のものは対策が講じられておらず、急降下で逃げ切ることが出来なかった為にBF109の方が空戦で有利だったところもあったと解説している資料を何処かで見たような気がします。
ちなみに、零戦は一一型から対策が講じられていました。
こぼれ話で申し訳ありませんがとある空戦シミュレーターで零戦二一型を急降下させるとエンジンが止まるのはおかしいと言うことで論戦になりました。
調べたところ、シミュレーター製作メーカー側は「アメリカがアリューシャンで鹵獲した零戦を実験したときに詳細に記録されたレポートによれば急降下でエンジンが停止すると言う資料を残しており、この資料を参考にした」と言うことでしたが実際は他の零戦パイロットにそう言った供述は無くたまたまアリューシャンで鹵獲された零戦がそうだっただけのようです。
その結果一一型から対策されていたことが判明し、この問題は修正されたのですがアメリカ側パイロットは空戦の際零戦のパイロットが急降下で逃げないのは急降下性能が悪いからではなく、急降下でエンジンが止まるからだと信じ込んでいたようです。
ソビエトではI-16,I-153ぐらいまで対策がされていませんでしたがLagg-3,Mig-3,Yak-9,La-5,IL-2といった機体は初期型から対策が施されています。
イギリスやドイツは先の通りですが、アメリカはかなり早い段階で対策がされていたのか、P-39,P-40の初期型、海軍ではF-2Aバッファローの時代から対策がされておりそれより前のことになると判りません。
コンボラ
- >5.急降下で逃げ切ることが出来なかった
『燃料噴射式エンジンのメッサーシュミットは、操縦桿を前に倒して急降下に移れるけれども、キャブレターを使うエンジンのスピットファイアはハーフロールを行ってからでないと急降下に移れない』、という理由でしたね。
キャブレターにフロートチャンバーを装備する関係で、プラスGがかかっていないと空燃比が狂ってエンストするからだったと思います。
ネコ丸
- >満タン時に空戦機動制限を生じさせたマスタングの胴体内燃料タンクの例
三式戦も胴体タンクを増設した場合、同じ状態になったと『液冷戦闘機 飛燕』に書かれてましたね。
5.6.急降下で逃げ切ることが出来なかった
同じ記述を丸メカニックで読んだ記憶があります。
一撃離脱