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5184 質問5181の関連質問です。鳥人間コンテストの人力機のように前兆なしにレッドゾーンに飛び込んで破壊するようなギリギリの設計の航空機はまず無いと思うのですが、突発事故がおきて、仕様要求者がミスと認め、責任をとらなければならないような、詳細な仕様書が出ることはあるのでしょうか。仕様書というのはライバルを想定した、わりと大雑把な数値や項目と思っていましたが、仕様書こそ絶対、設計は仕様数値をクリアすればよいという感じでしたので質問させていただきました。
Mizo

  1. そのために「検収」というプロセスを、各フェイズごとに実施します。
    (本当の意味の検収は納品時ですが)

    例えば実物大木型検査とか、飛行機でもやりますよね。
    そのように通常は

    ・要件定義
    ・概要設計
    ・詳細設計
    ・テスト

    それぞれの局面完了のたびに、要求者によるチェック、つまり検収を行います。その時点でこれはまずいんじゃない?ということがあれば、それはそのつど指摘して仕様に含める処理を行います(スコープが変更されるわけです)。

    つまり仕様書は絶対ですが、開発の局面において適宜、要求者と提供者の合意のもとに変更されるのです。作業が進むにつれて仕様が精密になっていく、と考えて頂ければわかりやすいかと思います。
    (一般的に、局面が序盤であればあるほど仕様は概要的でプロジェクトのリスクは高いといわれています。終盤では要求は明確でありリスクは低いと某ナレッジでは定められています)

    ポイントは、仕様に記載されていないことでかつそれが有効なものである場合は、定められたプロセスに従い仕様に含めるか否かを検討され、結果として「仕様であるか否か」に集約されるのです。

    それにより、気が利いてるとか言葉足らずという問題は解消されます。
    (ただし、行間を読めという格言が存在するのも事実です)

    仕様がどんどん変わればもちろんコストも変わります。ですから、契約が局面ごとに分割されている場合もあります。また、予想外に強度に余裕がありそれが後の発展性につながるというケースもあるでしょうが、それは怪我の功名、本来であればその余裕も仕様化されているべきものであることは言うまでもありません。
    Qwerty

  2. ちなみに。。。

    用途     敵の軽戦闘機よりも優秀な空戦性能を備え、敵の攻撃機を捕捉撃滅ができるもの
    最大速度   高度4000mで270kt(500km/h)以上
    上昇力    高度3000mまで3分30秒以内
    航続力    正規状態高度3000mを公称馬力で1.2〜1.5時間
    ・・・

    などというのは仕様書ではなく要求仕様書ですよね。
    RFP(Request For Proposal)つまり提案依頼書に相当すると私は考えます。こんな戦闘機が欲しいの、提案してよ!というものであり、コレには概要仕様のみが記載されます。

    これらを受けて、詳細な仕様書が別途作られるのです。。。(と思います)
    Qwerty

  3. >突発事故がおきて、仕様要求者がミスと認め、責任をとらなければならないような、詳細な仕様書が出ることはあるのでしょうか。

    非常に言葉尻的な回答となり申し訳ありませんが、以下の様な場合があります。
    完成品を納品する側も全て自前ではありません。従って、重要部品だろうと外に設計を依頼します。この際は、非常に細かい(うんざりする程)仕様が設定されますが、その要求性能を満たしている限り、例え重大不具合が発生したとしてもその設計者に責任が問われるのでは無く、仕様要求者の責任が問われます。(設計者は、同時に仕様要求者になるケースが非常に多いのです。)ただ、戦中や戦前の日本についてどうだったかは、私には判りません。
    makoto

  4. 先に天山が例に出ていましたが、日本海軍機の場合ですと計画要求書で強度類別が指定され、以降指定された類別の強度規定が適用されることになります。強度規定書には「何々場合」として色々な状況下で要求される強度が細かく規定されています。天山の場合は強度類別III類なので急激な特殊飛行に耐えられる強度は要求されていなかったのですが、実戦では想定を超えた横辷り機動が一部必要になり、ために規定以上の荷重が尾翼にかかって分解事故が起きたのであり、「仕様要求者がミスと認め、責任をとらなければならないような」に近い状況の実例そのものとなりました。


  5. 要するに、「その場その場で定められる仕様」などというものではなく、純然たる「規格」としての強度規定のシステムが事前に用意されているのです。

    強度規定の内容の一例として、学研『烈風と烈風改』で紹介した強度試験中の烈風強試機の写真には、「主翼D1場合」とキャプションされていますが、負荷条件「D場合」は小迎各背面引起しの場合を指し、このほか例えば突風、操舵、陸上滑走離着、水平降着、三点降着、片車輪降着、など様々な場合まで想定して、A場合からV場合に至るものが規定されているのです。


  6. 「小迎角背面引起し」でした。


  7. 少し外れますが、細かい規定や仕様に対して、項目毎に効率的な設計は事実上無理です。近代の開発プロセスも、その隙の無い完璧さ故のコストや期間の膨張により早くから見直す動きもありました。スカンクワークス誕生の理由の一つでもあり、既に触れられていますが具体的な諸元や基本構造を決定できるのは事実上設計者しかいないのが多くの現場の実態です。

    APOC

  8. 実際、当時の強度試験の成り行きでも、規定荷重を過ぎたらどこでもすぐに破壊される、というわけではなかったようです。
    大事なところ大きいところは比較的規定ギリギリに、細部というか末端は多少オーバー気味に作られていることが多かったのじゃないかと思います。


  9. ひとつの部材でさえ、担う役割はいくつもありますからね。高次の設計であるほどグレーゾーンも多く、それに対するアプローチも様々です。
    APOC

  10. 仕様がらみでは、その他として「有害な」変形なきこと、といったファジーで鬼のような項目がさりげなく追加されているケースもあります。
    APOC

  11. 皆様、たいへんわかりやすいご回答ありがとうございました。
    Mizo


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