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以前に読んだ漫画に書いてあったことなのですが。 限界を超えたらすぐに壊れるのが良い設計の航空機というのは本当なのでしょうか。 その本では限界を超えても壊れないというのは無駄に頑丈だということで機体の設計のどこかに無駄があって余計に重量が重くなってる証拠だそうです。 航空機というのは軽い方がいいので限界を超えたらすぐに壊れる限度一杯まで機体強度を省いて無駄な重量を省いた設計が良い航空機設計なのだそうです。 これってどこまで正しいのでしょうか。 大佐36 |
- 構造に無駄が無いのと、良い飛行機であることは別問題です。
良し悪し自体も極めて主観的な概念でしかありません。
さらに材料の強さも工作法も、少なからずバラつきがあります。
目的や使われ方や実績など、評価軸は沢山あるとしか言えないでしょう。
APOC
- どこまでって、完全に完璧に正しいです。
仕様上、強度と安全係数によって、余裕はちゃんと見積もられているのですから、それを超過した強度は無駄な重量なのは当たり前のことです。
仕様が実際の運用状況に見合っていなかった等で、強度不足を露呈することはあるでしょうが、それは仕様が間違ってるのですから、設計側の問題ではありません。
SUDO
- 構造物は壊れる前にも変形による不具合が現れます。
一つの設計がカバーする期間を考えても無駄が良いとは言えませんが、余裕の取り方は微妙な問題です。また、いきなり致命的な壊れ方をしないことも「良い」設計の指標のひとつでしょう。
APOC
- 飛行機に限らず、すべての機械にはある程度の「冗長性」が必要とされます。実際に「仕様どおりに使用される」事の方が少ないからです。
また、それ1機の特注飛行機ならいざ知らず、いくら無駄な重量を省くため
とはいえ重量軽減孔のようなものをやたら空けていたら、作業工程が多くな
って量産性が下がります。
要はメリット、デメリットのバランスですね。
「冗長性」の例としては、適当では無いかも知れませんが「東京駅の屋根」の例が有ります。
設計した人自身が「せいぜい2,3年も持てば良い」仮構造としてゼロ戦の
外板を流用して作られましたが、60年たった今でも健在です(藤森照信:
建築探偵シリーズ)。
備後ピート
- >4
最初から最後まで冗長ではありますが冗長性とは無関係のお話ではないでしょうか。
BUN
- 追記:「仕様どおりに使用されなかった」例として中島天山艦攻の実例が存 在します。
大戦後半、実戦で激しい米軍の対空砲火にさらされた天山のパイロッ トは、設計者の松村健一技師の予想もしなかった「横滑り回避機動」 を多用したため、度々垂直尾翼の分解事故を起こし、補強改修のやむ
無きに至っています(零戦燃ゆ)。
逆に、天山は補強改修可能なだけの「冗長性」を有していたと言える
でしょう。
備後ピート
- BUN様のご指摘はもっともだと思います。
辞書で調べたところ「冗長」は一般的ですが「冗長性」は一般的にはあまり
使われていないようです。
よって私の文章の「冗長性」の部分は「発展の余地」若しくは「改良の余
地」と訂正いたします。
備後ピート
- ですからお話そのものが冗長性とは無関係ではないか、ここに書くことではないと申しております。
軽め孔も、天山の尾翼も、冗長性とは直接関係ありません。東京駅の屋根も零戦の外板ではありません。
BUN
- >4. 実際に「仕様どおりに使用される」事の方が少ないからです。
それが 2. でSUDO氏が述べられている「安全係数」です。想定される運用上の必要強度に対し 1.8 倍などの余裕を見込んだ強度を持たせて設計します。
安全係数の値が適正なものであるか、想定が実運用に即しているか、という問題と、想定負荷×安全係数を超えたら即時に壊れる設計が良い設計かどうか、という問題を一緒くたにされていませんか?
7. >冗長性
この言葉が工学で用いられる場合は英語でいう Redundancy、いわゆる多重安全系のことを差すことが多いと思いますが。
>発展、改良の余地
それは設計の良し悪しにどのような評価基準を与えるものでしょう。10 年しか使うつもりのない飛行機が退役時にも充分以上の強度を保持していたら、それは良いことなのでしょうか。10 年後に機体寿命を迎える設計の飛行機が、その運用期間中「頑丈で余裕のある」飛行機に対し 2 割の良燃費を記録していたら、いったいどちらが「良い」設計だと言えるでしょうか?
ささき
- 甲乙決め付けるより個別によく見て味わい、吸収する方が余程楽しくないでしょうか。
それとて主観でしかありませんが、実用設計の良し悪しはそれほど簡単な物差しだけで計れるものでもないと思います。
APOC
- パイロットではないので飛行機の良し悪しはわかりませんが、
運用計画を立てる側から見た場合、限られたリソースを無駄遣いしている勿体無い設計であることは確かですね。
非行機
- ゴミレス
F1カーのエンジンはレースが終わってもう一周する前に壊れるのが理想的、という話しをよく聞きます。航空機に限らず限界まで性能を引き出すとき、限界まで軽量化を行いなさいという意味の格言みたいなものでしょうか?
ど
- >10
設計と仕様・機体の、優劣・良し悪しを混同していませんか?
SUDO
- 割り込みます。
私個人的には、ここまで読んできてようやく「良い設計の航空機」と「良い
航空機設計」を混同していたことに気付きました(だって質問自体が分かり
難いんだもん)。SUDO様、毎度毎度有難うございました。
備後ピート
- 土井武夫氏の「三式戰/五式戰の設計と開発」(丸メカニックNo.37)に以下の記述があります。参考になると思います。
「主翼の設計強度は総重量の2950kgに対して設計荷重倍数n=12である。荷重試験においてn=15まで負荷をしたが破壊まで至らなかったので試験を中止した。荷重試験の結果から一時主翼の重量を軽減することも考えたが、審査飛行で予想外の高性能を発揮したので見送りとなった。
キ-61の発展型であるキ-611型改(総重量3450kg)キ-612改(総重量3800kg)およびキ-100(五式戦闘機、総重量3500kg)においては、いずれも総重量がかなり増加しているがキ-61の主翼をそのまま使用することが出来たため生産を中断することなく、つぎつぎと急速な改善を実施することができた。急降下制限速度は850km/h(450kt)としていたが空中分解を起こしたことは一度もなかった。敵機との戰闘において音速を突破した事例もきいている。高度による位置のエネルギーを急降下によって急速に速度のエネルギーに転換できることは戦闘機の性能としては速度および上昇力と共に第1の条件である。」
淳
- 安全率の根拠は別としても実用機の設計の場合、充分に軽ければ他に目を向けるべき問題が幾らでもあります。
精緻な最適設計と、安くて早くて充分使える設計でどちらが良いかは見方次第でしょう。
APOC
- >10.
はい、自分でも極端な例示だったかなと反省しています(^^; 私としては「どっちが良い設計か考えてみてください」という意図だったのですが。
>11.
たとえば「運用 10 年間に想定していなかった程の乱気流に何度か遭遇し、「頑丈な機体」はそのたび生還したが「ぎりぎりの機体」は 2 機が不時着大破した。この損失による出費と、10 年間に 2 割の燃費削減効果と、機体運用者にとって経済的にどちらがプラスとなるか」という例題でも良かったかも知れません。
不時着が旅客乗員の全損を伴うものだったのか、その多くが生還したかによっても異なるでしょう。2 機ならまだプラスだが 5 機ならマイナスで、10 機が墜ちていれば「欠陥機」の烙印を押され 10 年持たずに引退を強いられたかも知れません。
APOC さんが何度か仰しゃられている「余裕の取り方は微妙な問題」で「実用設計の良し悪しはそれほど簡単な物差しだけで計れるものでもない」という見解には私も賛同いたします。
またあえて問題を簡略化するならば、SUDOさんの言うように「必要強度×安全率をぎりぎりの重量で満たす設計が良い設計」が基本原則であり、そこから先に微妙なプラスマイナスを与える「勘と経験」のような深い世界があるが、それは簡単には説明できないとも。
ささき
- >17 あうあう、格好悪くて未練がましい自己レスですが、例はあくまで例ですから。燃費2割も違えば飛行機2機どころのコスト差じゃないとか、毎年1機が「想定外の乱気流」で落ちるなら設計じゃなくて想定の間違いだろうとか、そもそも飛行機の事故原因は自然外因より航法・操作・整備ミスなど人的要因のほうが遥かに多いとか、実際にはこんな単純比較はできません。あくまで出題者さんや備後ピート氏が持たれているであろう「ギリギリが良いったって、ちょっとくらい重くても頑丈な方が良いんじゃないの?」という疑問に対する例題提示です。
ささき
- こちらこそ、片意地張ってすみませんでした。
APOC
- >17
失礼ながら例のケースは仕様設定のミスであり、設計とは区別して考えるべきかと存じます。
もちろん頑丈なのが悪いとは申しません。ただ、
「普通の乱気流」に耐えるよう設計された、実際には「凄い乱気流」まで耐えられる飛行機と
「凄い乱気流」にも耐えるよう設計され、実際に「凄い乱気流」まで耐える飛行機があった場合、
たとえ性能が同じでも後者のほうが運用しやすいのはご理解いただけるかと思います。
(性能を過信した結果、ヒューマンエラーが増大する可能性は否定しません)
非行機
- >17&18
いや、そうじゃなくてさ・・・。
余裕をいかほどにするかも「仕様」なんです。
そしてどういう仕様にするかは仕様策定側の領分であって、設計側の領分じゃないし、領分であってはいけないのです。
ヤワより頑丈なほうが良いというのは気分として判りますが、ではどの程度頑丈ならよいのですか? それをどういう基準で誰が決めるんですか? その結果に対して責任を負えますか?
これらは仕様策定者が、様々な観点から「この程度」と定めるもので、その適否に対して仕様策定側は責任を負うのです。
場合によっては同じ人間が仕様策定と設計を行うこともありますが、仕様と設計は別の仕事なんです。
商業航空機や軍用機でも製品バリエーションの都合等で、端折った設計をしたり余裕を多めにすることで、多種多様なバリエーションを売りにする場合があります。これは、そういう事が出来るように仕様を定めていたということで設計じゃないんです。
キ61は、結果的に重量増加に対応できましたが、本来それを望むのは陸軍であって川崎がすることではないし、もしも川崎側がメーカーからの提案として余裕のある強度を提示するとしても、それは川崎の独自仕様であって、設計ではないのです。
何処まで行っても「設計」ではないのです。
微妙な勘どころとか経験もクソもないんです。シビアで明白な優劣なんです。
SUDO
- 「限界を超えたらすぐに壊れるのが良い設計の航空機」 これは真です。
要求仕様が「設計荷重倍数n=12」なら、荷重試験においてn=12.1で破壊するのが理想です。しかし、1%以下の精度で強度設計を行うのは当時は無理でしょう。(現在でも)時間と金がかかり過ぎるから目指すべきでもないでしょう。それが現実の設計だと思います。荷重試験でn=11.9となれば失格なのですから。
「F1カーのエンジンはレースが終わってもう一周する前に壊れるのが理想的」これも真ですが、これを目指してレースの一周前に壊れたらもともこもありません。
複雑な構造体の強度や耐久性は個々の部材の強度が複雑に絡み合うので、全体としての設計強度は確率的な幅を持った数値になるでしょう。試験をして始めて(その試験体の)正確な数値がでます。強度設計は、機体の重量設計のように1g(ppm?)単位で管理できるようなものではありません。
アンダースペックは失格です。製品は程度の差こそあれ(数値的な意味で)オーバースペックにならざるを得ません。過剰分をどの程度まで受け入れるかはお客様の判断です。判断材料として再設計させた場合にかかる時間と金も大きなファクターになるでしょう。
キ61の主翼は僥倖に恵まれたと思います。この僥倖は優秀な設計者がいたからこそでしょう。
淳
- いきなり桁が根元で折れる場合や、全体がきれいに撓んで緩やかに破壊が進行する構造もあります。
共に同じ強度規定をぎりぎりクリアしていたとしても、評価は同じにはならないでしょうね。
APOC
- >23
私は両者を別に評価する根拠が理解できません。壊れなければ良いのですから、どういう壊れ方であるかは関係ないのです。
よって評価は全く同じです。規定の強度をクリアしているので合格、それ以上でもそれ以下でもないです。
SUDO
- 同じ外形を前提とすれば一般に前者は応力が平均化されていない、がさつな設計です。この両者は重さを揃えることも出来ます。
数値データを見る限り同じレベルと捉える事もできますが、いわゆる設計の優劣が明確に分かれる全然別物でもあります。
仕様外のメリットには意義なしという事でしたら、確かに意味はないでしょうね。
APOC
- どうもAPOCさんの示す「設計の優劣」とSUDOさんの示す「設計の優劣」にずいぶん差異があるようですね。。。
これはプロジェクトの視点では明確なことです。
(ちなみにプロジェクトマネジメント記述は軍事産業のお陰で発展した一面もあります)
プロジェクトの視点において、すべての成果物の評価は要求仕様を超えたか否かで判断されます。
要求仕様を超えた範囲での性能は「どうでもいいのです」。穏やかに壊れようが瞬時に粉砕しようが。
想定外の動作(定義できないリスク)に対応するためにはコンテンジェンシー、つまり安全係数を使用します。そして安全係数を超えた負荷が掛かった際は、前出のようにどうぶっ壊れようが関係ありません。
まだ安全係数を超える荷重がしょっちゅう掛かるようであれば、それは設計ではなく仕様定義のミスです。
つまりは「よい設計」は「無駄のない設計」であり、よい設計の対義語は「無駄な設計」であり「がさつな設計」ではないのです。
マニアがみる「設計の優劣」としては、「全体がきれいに撓んで緩やかに破壊が進行する構造」を好むでしょうが、発注者からすれば興味のないところです。なぜなら、要求仕様外なのですから。
・全体がきれいに撓むような設計のほうが丁寧な設計であり、それは軽量なはずである
・無断のないよい設計をしていれば、破壊時も全体がきれいに撓むように破壊されるはずである
ということをご指摘されているのであれば、それは意見としてはわかりますが恐らくこの場での結論にはそぐわないのではと思います。
Qwerty
- 単に「良い」設計といっても色々な見方があって、ひとつの数字だけで判断できるものでもないという回答が間違いであると言われれば、それ以上提示できるものは無いです。質問者さんと皆さんには失礼を重ねて申し訳ありませんでした。
APOC
- 生活品というローテク分野ですが、設計者として回答いたします。
良い設計とは、ずばり「要求性能を満たし、最小のコストと手間で出来る仕様である。」そのように理解しております。ただ、問題なのは、何処まで要求性能に盛り込まれているか?ではないでしょうか。要求性能あるいは性能標準と言われる数値は、真に求める性能を数値化した一部でしかありません。にも拘わらず、言葉足らずな要求に対し、「そのような用途であれば、このような性能が必要であろう。」ともりこまれた部分は、親切設計と言えるものでしょう。つまり、要求性能を出す側から見て、言葉足らずを補ってくれる設計は、「良い設計」きっちり要求性能を出しているのに余計な事をするのは、「無駄な設計」というところではないでしょうか。
makoto
- ※ 26.は数字ひとつで全ては判断できないという事例以外の意味はありません。
APOC
- 切腹ものですね。※ 25.でした。Qwertyさん、平にご容赦ください。
APOC
- そろそろ脱線しつつありますので、設計者兼プロジェクトマネージャQwertyはこれで脱出します。
To makoto氏
言葉足らずと想定されるものを見つけた場合は、要求者に対し確認し、それが要求仕様に含まれるのであれば要求仕様に含めます(プロジェクトスコープに含める)。スコープ定義が変更になればスケジュールもコストも変更になります。
要求仕様に含まれていない言葉足らずは、スコープ外とみなし手をつけてはいけません。顧客から預かった大切なリソース(お金とかね)を勝手に要求外の作業に費やしたと判断できます。
言葉足らずなのか、意図して落としたのか知っているのは要求者のみです。
かならずそれは協議の上スコープに含めるべきものです。したがってそれは仕様となるのです。
To APOC氏
お気になさらず。。。
Qwerty