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何時も勉強させていただき、有り難う御座います。今回は、米海軍のF4Uについて質問します。F4Uは、逆ガル翼のため、離着艦時に飛行が不安定となり、その解決に時間がかかって主力戦闘機の座をF6Fに奪われたと聞きます。では、この特性は、堀越技師が九六艦戦で試み効果のあった「捻り下げ」で改善できるものなのでしょうか。 二一斎 |
- 質問中にある九六式艦戦の試作である九試艦戦において、ガルウィングが試されていますが、F4Uでも問題となったバルーニングが(F4Uの場合これだけとはいえませんが)発生しています。よって効果はないと言って良いと思います。詳しい理由は後の人に頼みます。
ちはや
- 逆ガルの九試単戦1号機というのは捻り下げもなく、フラップもない機体なんですよ。また、2号機で行われたバルーニング対策にも、捻り下げは盛り込まれていません。
捻り下げは空戦中引起し時のオートローテーション対策として、九六戦生産機の途中から導入されたものなんです。
片
- >F4Uは、逆ガル翼のため、離着艦時に飛行が不安定となり、その解決に時間がかかって主力戦闘機の座をF6Fに奪われた
着艦時の飛行不安定だけではないようです
折れ曲がっている所から気流が剥離して、片翼だけ失速し...ってやつでは?
でしたら捻り下げは関係ないです
セミララ
- F4U の問題は着艦状態(脚出し、フラップ下げ、高迎角)で機首を引き起こし過ぎると殆ど何の予兆もなく突如左翼だけが失速してひっくり返る現象でした。大直径のプロペラ後流が左翼側において「吹き上げる」形となるため、左翼の迎角が右より大きくなって先に失速することが原因でした。
「不意自転」という症状は似ていますが、翼端部の失速ではなく主翼中ほどで起きている現象なので、翼端失速対策である捻り下げはあまり効果がないのではないかと思います。F4U における対策としては右翼中ほどの前縁(機銃口のすぐ外側、屈曲部外縁)にスポイラー(というかボーテックス・ジェネレーターと言うべきかも知れない)を付加し、左右の翼がほぼ同時に失速するよう調整されています。
F4U-1 にはこれ以外にも「離陸時の方向安定性が悪い」「前方視界が悪い」「サスペンションが固くて着艦時に跳ねる」などの問題があり、座席の持ち上げ・バブルキャノピー装着・尾輪柱延長・タイヤ空気圧/オレオ油圧の調整、サスペンション・ストローク延長など数々の対策を施し、1943 年後半ようやく「母艦運用に耐える機体」と認定されています。
しかしこの改良型が前線に到着するより早く F4U-1 をベースとした夜戦型 F4U-2 が開発され、これを装備した海兵隊の夜戦隊 VFN-101 が空母エンタープライズとインディペンデンスで作戦に従事することになりました。キャノピーも主脚も改良されていない機体で夜間/薄暮の母艦運用に参加したにも関わらず、1944 年 1 月から 7 月までの間に 5 機の戦果を挙げ、事故による損失は皆無と伝えられています(Flight Journal 誌 2004/10 Barrett Tillman 氏による記事)。
ささき
- ささきさんが紹介されたパワーオン時の非対称失速の改善策、丁度写真の取り置きがありましたので画像掲示板に上げてみました。ご参考まで。
みなと
- >4
ささき様
当初におけるF4Uの失速特性の悪さは有名ですが、強いプロペラ後流にその理由を求めた場合、同程度の出力でより大直径のプロペラを持つタイフーンにも同様の問題が生じそうなのですが、それは私が知る限り聞いた事がありません。しかしタイフーンも強い螺旋状後流に晒され、理論上こちらは右翼が先に失速する特性になるのは事実だと思います。
これらの事からそれがF4Uに顕著なのは、主翼屈曲部上縁で翼胴干渉と同様のメカニズムで乱流が発生しており、タイフーンの主翼よりも迎角に対して音を上げやすくなった、という事でよろしいでしょうか。
DDかず
- >6. 正直に申しまして、よくわかりません。コルセアの場合はたまたまペラ後流と逆ガルの組み合わせが非対称な挙動を招いていたようですが、では「大直径ペラで」「逆ガル翼の」機体が全て類似の挙動を示すかといえば、そう簡単に一般化できる問題ではないと思います。
ささき
- >7
確かに、様々な空力的要素が複雑に絡んでの結果なので「F4Uの場合はそうなった」としか言えないのかもしれません。
ありがとうございました。
DDかず
- 皆様、回答有り難う御座います。私は「捻り下げ」が効果があるのではないかとの希望的観測を抱いていたため、ちょっと残念ですが(^^;)、勉強になりました。重ね重ね有り難う御座います。
二一斎
- >6 左右翼根のプロペラ後流下における迎角差は、
例えば正面から見て、プロペラ軸を貫通する形の中翼の機体で最大になります。−◎−
F4Uもこの点、胴体に対する主翼の刺さり方がプロペラ軸を貫通しているので影響が大きかったと見ることができ、v◎v
タイフーンではペラ軸貫通から逃げた刺さり方なので左右の迎角差がF4Uほど厳しくなかったと考えられます。
また主翼の屈曲部がF4Uではプロペラ後流圏内なのに対し、タイフーンでは圏外。なおかつ折れ角も浅いです。
中折れ部分での空気の流れは翼断面の最大厚位置までは左右から押し合うように流れ込みますが、
最大厚位置を過ぎると今度は左右へ逃げるように流れ、空気の奪い合いになります。
これは折れ角が大きいほど顕著で、これらが複合的に働いて大きな差が出たのだと推測できます。
>4 ボーテックスジェネレーターは気流剥離を抑えるためのものですので、付くとすれば右翼ではなく左翼の屈曲部です。
右翼に付いている以上は、剥離を促進するスポイラーと見るべきで、屈曲部より外側に付いているのは、
左翼屈曲部の失速、揚力減と釣り合いを取るのに、より小さいスポイラーで済ませるためだと考えられます。(形状抵抗低減)
ガス欠飛行連隊