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第二次大戦時の星型空冷エンジンのカウリングについてお尋ねします。 カウリングにカウル・フラップを採用したもの(日・米の大部分)とそうでないもの(ドイツ・ソ連・ん〜英・伊は微妙だなあ〜)が有りますが、それぞれのメリット・デメリットについて教えてください。 備後ピート |
- NACAカウル以前のタウネンドリングはカウルフラップはありませんが、NACAカウル以降で、カウルフラップを付けてない空冷星型機は特定の一部の機種だけです。これは国籍にはまったく無関係です。
タウネンドリング装備機は、時期的に大戦の少し前までに登場した機体(例えばJu52mとか96艦戦)だったので、旧式機だと言っても良いでしょう。これらの機体でも改良型等でNACAカウルにする場合もありました(例えば97艦攻は1号はタウネンドリングですが3号はカウルフラップです)
この次の世代として、NACAカウルの流れでありながら、再びカウルフラップの無いものが登場します。これは例えばFw190や雷電の試作機等に見受けられるスタイルです。これが第二次大戦当時としては最新のものだと言っても良いでしょう。
さて、これらのカウルは
覆いをつけることで機体の空力を改善するというものと、その覆いをつけることで、エンジンに当たった空気がうまくエンジンを冷やせるようにしようというのが、タウネンドリングです(主眼は空気抵抗減少です)
冷却フィンや導風板(そしてカウル)の効果と、飛行機の高速化は、ある条件でならば、冷却空気の量をあまり必要としなくなりました。逆に大出力化は、低速時では冷却空気が不足するという状況ももたらします。NACAカウルは、機体外形をより洗練する効果とともに、必要に応じてカウルフラップの開け方を工夫することで、低速大馬力時にはカウルフラップを開いて沢山の空気を流して冷やし、高速時にはカウルフラップを閉じて空力を最善の状態にすることで高速性能を両立したものです。
カウルフラップは開口度が大きいと空気抵抗になります。特に戦闘機は、急旋回や急上昇等では大馬力で低速なので、カウルフラップを大きく開きますが、このときに空力が悪いと実際の性能として不利です。
このため、カウルフラップに頼らない手段としてFw190等で強制空冷+スリット式というのが考えられました(一部ではスリットだけでファンなしなんてのもあります)安定して強力な冷却空気を確保できて、しかも空力は最高のものになるというのが狙いです。
まあ、実際にはスリットだけでは上手く調整できなくてカウルフラップと併用することになってしまう機種が多いようですが。また強制ファンは馬力食うこともあってトータルでは有利ではないという考え方もあり、また導入時期が大戦中になってしまったこともあって主流にはなれませんでした。
SUDO
- 詳細な回答、有難うございました。
備後ピート
- ソ連の場合は厳しい冬季のエンジン保温が深刻で、I-15 の頃から前面シャッターによる通気量制御を行っていた事情が関係しているかも知れません。
ささき