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ここの常連の方々は1度は見たことがあると思いますが、「空軍大戦略・バトル オブ ブリテン」という映画の中での戦闘シーンについての質問です。 この映画の中でノルウェーから発進したドイツ爆撃隊がスピットファイヤーに攻撃されるシーンがあります。ハインケルは直ちに扇状に散開、編隊をといて逃げます。この映画を初めて見た頃は、爆撃編隊は、どこの国でも基本的には敵機の迎撃には編隊でお互いをカバーしあうと思っていたので「なんでかなー」と感じつつ「映画だから」と自分を納得させていました。 しかしDVDのスペシャルバージョンを買って知ったのですが、映画の製作現場にはダウディングやガーランドから末端の兵士に至るまで英独双方の戦闘参加者が多数招かれ、彼らの意見を聞きながら作られたそうです。 そこで質問は、このような回避方法は普通に行われていたのでしょうか?それとも特定の状況あるいは、特定の機種の場合のみ用いられたのでしょうか? 米爆撃機と違い貧相な防御しかないドイツ爆撃機は、護衛がいない時はがっちり編隊を固めてノロノロ直線飛行すればかえって良いマトにされるからでしょうか。 トロッター |
- これは8月15日の空戦で、ノルウェーから出たHe111部隊はKG26です。
KG26は元来ドイツ空軍唯一と言ってよい対艦攻撃専門部隊で、もともと大編隊を緊密に組んでの水平爆撃ではなく、シュタッフェル単位で出撃しては雷撃や爆撃で艦船を攻撃する任務を主としており、また訓練もそれに沿ったものでしたし、また開戦以来の戦闘経験も多くはそれに沿っています。
更に、このときはとことん攻撃部隊はついていません。
He115装備のKuFlGr506が前方を陽動部隊として飛んで敵戦闘機を分散させる作戦だったのですが、KG26は何を取り違ったのかHe115の軌跡を追って飛ぶという航法ミスをやらかし、英軍迎撃部隊は戦力を集中してこれを捕捉します。
また、護衛のBf110D-1/R1、いわゆるダッケルバウフですが、胴体下の固定増槽に気化ガソリンが充満してしまうという一式陸攻どころではないワンショットライターで、この日は最初の一撃で隊長機が派手な空中爆発を起こして吹っ飛びました。
これで護衛部隊は恐慌をきたし、護衛そっちのけでラフベリー円陣を組んで自らを守るのに必死です。
KG26爆撃隊は予想外に多数の敵戦闘機と、護衛部隊のパニックを見て自らも恐怖に駆られ、慣れ親しんだシュタッフェル単位での回避機動、すなわち爆弾を捨てて分散し低空に逃れるという手段に出ます。
それでも、出撃70機のうち、この段階で逃走を図ったのは3分の1以内であったとされますが、目標へ向かって進撃を続けた機もまとわりつく戦闘機によって照準を狂わされ、目標地域に命中した爆弾は皆無、また貴重なKG26をこの種の任務で消耗させてしまうのはもったいなさすぎるということで、以降再び英本土空襲にKG26が動員されることはありません。
つまり、この回避はKG26だからやった、というかやってしまったことでしょうし、また海峡地域にある他のドイツ爆撃隊ではほとんど見られないことです。
普段の訓練内容、また実戦での経験内容が他の爆撃隊と違い、極限状況に追い込まれてすがるべき経験や蓄積が「分散して降下」という選択になったものと思われます。
まなかじ
- >1
「西部戦線のJu88」でKG77/3が9月18日の空戦で編隊を崩された後に散り散りとなり、各個撃破された例が紹介されていますが、これを含めて海峡のHe111やJu88の部隊でも、英軍の戦闘機隊に編隊を崩された結果、各機が分散して各個撃破された例は少なくないですよ。
大塚好古
- >1.まなかじ様 いつもありがとうございます。そういった裏事情があったのですね。 映画ではその辺の事情が全く描かれていないだけに、事実にこだわった映画にしては、わずか数秒の散開シーンとはいえ、すっきりしないものがありました。わずか数秒のシーンにそこまで忠実に描いたのなら、裏事情も少し描き込んで欲しかったですね。せっかくのこだわりシーンも、まなかじ様級の知識を持たない者は見過ごしてしまいますから。
>2.ありがとうございます。大先生にこんな事を書くのは気が引けるのですが、おそらく私の質問を勘違いされているように思われるのですが・・
「編隊を崩された‘結果’各機が分散して各個撃破」ではなく「‘回避方法’として編隊を散開」はあったのですか?です。
トロッター