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XB70やSR71についての本でよく「コンプレッションリフト」 なる概念が登場しますが、今一概要がつかめません。 「音速衝撃波が行き場を失い揚力となる」といった説明が 良くなされているのですが。 どこの部分で発生した衝撃波が どうして行き場を失い なぜその過程で揚力となるのか? といった点を教えていただきたいのです。 (ヨーグモス) |
- 物体が超音速で飛行している時、圧縮波(衝撃波)の背面は大気が圧縮され圧力が上がった状態となります。
例えば円錐状の機体が円錐の軸方向に超音速で飛行している場合、マッハ数に応じた角度の(頂点で接する)円錐状の圧縮波に包まれますよね、
(円錐に角度がマッハコーンより小さい場合、大きい場合は離脱衝撃波となる)
機体は圧縮波を通過し圧力が上がった気流に包まれている事になります。
この時円錐を水平軸で真っ二つにし上半分を無くするとします、
すると機体上面を通る気流は何の阻害も受けませんから、理想的には衝撃波も発生せず自由流の静圧を受ける事になります。
下面は圧力が上がってるわけですから、機体は上向きの力を受け揚力が発生します。これが圧縮揚力です。
実際のところ主翼も完全に超音速流に包まれている場合、その揚力は同じ原理で発生します。
(超音速時のF-104とかミサイルのフィンとか、多くの機体は後退角効果で亜音速流として扱える領域を飛行する場合が多い)
圧縮揚力を中心とした機体の場合亜音速とは揚力発生の原理が異なりますから、デザインルールも変わります。
強い衝撃波はエネルギーの散逸(結果抵抗となる)を招きますので、出来れば弱い(複数の)衝撃波で効率よく圧縮を行い、出来れば外に衝撃波を漏らしたくない、
そういう理想の極致が、機体下面にだけ圧縮波を張るウエーブライダーと呼ばれるデザインです。
グリーネマイヤ智久
- 勝手に続き。
XB-70の場合、主翼(ほぼ円錐状衝撃波の中に収まるデルタ翼)の下面にエンジン6基を束ねた大型ナセルを有し、これが積極的に斜め衝撃波を発生させて気流の減速を行います。一方で主翼上面はほぼクリーンですから、下面ほどの減速〜圧力上昇は起こらず、こうして上下面の圧力差を生じさせて揚力を生みます。
なお、「斜め衝撃波の中にあること=圧力が上昇している」ですので、減速の手段さえあれば、翼面にデフレクターなどを設ける必要はありません。
Schump
- 回答ありがとうございます。少し追加で質問させてください。
A:実際のところ主翼も完全に超音速流に包まれている場合、その揚力は同じ原理で発生します。
(超音速時のF-104とかミサイルのフィンとか“がその例です”、
“他の”多くの機体は後退角効果で亜音速流として扱える領域を飛行する場合が多い)
B:実際のところ主翼も完全に超音速流に包まれている場合、その揚力は同じ原理で発生します。
(“しかし”超音速時のF-104とかミサイルのフィンとか、“のような”多くの機体は後退角効果で亜音速流として扱える領域を飛行する場合が多い)
どちらなのでしょうか?
(ヨーグモス)
- >3
解り難くてすみません、前者です。
グリーネマイヤ智久
- では、ミサイル、SR71、F104などでは
羽の前端で開き直って衝撃波を発生させてしまう。
→羽全体を包む空気が高圧になる。
→/のように羽を傾けてれば上方で特に強く、下方では比較的低圧になる。
と言う原理で揚力(この場合下向きですが)が発生し、これはもう
ベルヌーイの範疇ではないからコンプレッションリフトだ、と言う
解釈でよいのでしょうか?
(ヨーグモス)
- 通常の翼形であれミサイルのダブルダイヤモンド翼であれ平板であれ、
通常の循環による揚力は発生します、その効率はともかくとして。
そして同様に完全な超音速域では、どの翼も(翼でなく>1で例に上げた半円錐でも)迎角を持てば圧縮揚力は発生します。
XB-70などは、その揚力を強め揚坑比を改善するよう機体構成を工夫しているという事です。
F-104を例に出したのは、その主翼が超音速前縁を持ちほとんど後退角を持たない薄翼という超音速域に焦点を置いた物で、(低速域でのフラップの利きとかも考慮されてるが)
それ以前及び(遷音速域により留意した)以降の機体の主翼に比べ極端な物だからです。
例の挙げ方としては良くなかったかもしれません。
グリーネマイヤ智久
- ここで>5に誤解が有ると思って、主翼(判りやすく平板で)の超音速域での揚力発生について書き始めたのですが、(下面での気流の偏向、結果としての圧縮と減速、圧縮波と膨張波、上面での逆の過程など)
単に「\」が出なくて「/」を使ったから話が逆になっただけみたいですね。(笑)
ただ衝撃波は出したくて出してるんじゃないんですよ、強い衝撃波はエネルギーの散逸(結果造波抵抗)となって揚坑比を悪化させます。
鋭い超音速前縁、最近のターボファンの超音速翼形、インテークの多段ランプによる圧縮などにこの点に対する工夫が見られます。
この話で面倒なのは、大後退角翼やデルタ翼の後退角効果で、音速を超えてもある程度まで気流を亜音速として取り扱える点です。
F-104の揚坑比等パラメーターが音速付近で大きく変動しているのに対し、デルタ翼機の変化がゆっくりなのに見て取れますね。
グリーネマイヤ智久