QQCCMMVVGGTT
4681 EA-6プラウラー等、強力なECM装置を搭載した電子戦機がありますが、もし米軍のB-52やB-2といった大型爆撃機を電子戦機に改造し、強烈な電子妨害によって味方の
戦闘機やら爆撃機やらを引き連れて侵攻する・・・といったような妄想は現実に可能なのですか?(そもそもECM装置をたくさん積めば電子妨害も強力になるものなのか?)バカバカしい質問ですが、回答よろしくお願いします.
平賀譲

  1.  同じ技術で作れば、より強力な妨害装置が大柄になるのは事実です。
     よって、大型機に、より強力な電子戦装置を積めば、より妨害は強力になります。
     ただ、それが作戦任務と合致するかというと、条件次第です。
     つまり、電波妨害は、攻撃隊を送り込む手段の一つでしかないからです。
     電波妨害をして、ある方面の敵電探を妨害したとしても、それが効果を発揮できる時間は決して長くはありません。
     相手側は電波妨害に対抗する様々な手段を用いますし(それによって最高性能は発揮できなくなったとしても)光学や赤外線等の別の探知手段だって有してます。
     よって、妨害で開いた穴は短時間で埋まってしまう事もあるのです。
     そうなると、開けられる穴の大きさと時間、そしてその時間内に済ませられる程度の攻撃隊等を考えて運用しないと、高価で高性能ながら、大して便利でもないということになります。近所のコンビニに行くだけなら軽自動車でも間に合うのに、高性能だからとベンツ買うのは勿体無いでしょ?
     また、上手く行ってると思ったら、敵が対抗手段に切り替えてしまい妨害機が見つかってしまうこともあります。こうなると図体の大きい爆撃機は逃げ難いです。この危険が常にあるので、攻撃機や戦闘機のような機体で行う方が失敗した時の安全性が高いという事になります(飛行性能的にも、攻撃隊と一緒に飛ぶなら同種の飛行性能が良いですし)
     またステルスを狙ったB-2では、妨害電波を出して「このあたりに居ます」と宣伝するのも、あまり誉められた事ではないですね。
     妨害電波は、敵の電探等を妨害する行為ですが、自分の居場所を触れ回ってるともいえる訳ですから。
    SUDO

  2.  現実に、B−52を電子戦用途に使用する計画が進行中です。
     ここ一、二年程の航空誌のニュースを漁れば見つかるかと思います。

     一応ウエブ上でも言及している記事がありますが、直リンク禁止なのでご自分で検索してみて下さい。

     で、簡単に言ってしまいますと、米空軍としてはEF−111とF−4G以降は自前のジャミング機を持たず、海軍のプラウラーを借りて運用していた訳ですが、プラウラーの退役が2010年頃から始まる事により、繋ぎとしてのジャミング専用機を導入する、と言った事のようです。
     むろん、SUDOさんが上で述べた危険性が減った訳ではありませんが、それをカバーする為のUAV装備など工夫はされているようです。
    ooi

  3. ロシア(旧ソ連)軍だけど、中型爆撃機改造のジャミング機としてTu-16の電子戦型、BadgerH、Jがあります。爆撃機のペイロードを活用してチャフの散布や妨害電波を発生させるなどして、NATO諸国等のレーダー・システムを撹乱させることが狙いだったわけです。恐らくはソ連前線空軍(FA)による航空奇襲攻撃の作戦支援が主な目的だったのでしょうけど。
    Tu-16にはELINT機もあります。Tu-22(ブラインダー)やTu-26M(バックファイア)にも電子戦型があると思いますが、下のFASのサイトで調べてみてください。
    http://www.fas.org/nuke/guide/russia/bomber/tu-16.htm
    アリエフ

  4. (補足)自己レスですが、Tu-22及びTu-22Mには電子妨害専用機型は無いようです。なお、Tu-95もELINT型はあるけど、BadgerH、Jに相当する型は無いみたいです。
    アリエフ

  5. もともと米空軍の電子作戦機は中型爆撃機改造のダグラス EB-66 でした。ベトナムで SAM の脅威に直面し、電子偵察機 RB-66 を電波妨害専門に改造して使ったとされています。

    http://www.wpafb.af.mil/museum/research/bombers/b5/b5-57.htm

    EB-66 は爆撃隊に随伴して敵レーダーの欺瞞、通信妨害、照準妨害などを行っていました。まさに「強烈な電子妨害によって味方の戦闘機やら爆撃機やらを引き連れて侵攻する」行動を行っていたわけですが、相手側が対処方法を覚えると(爆撃隊が頭上に来るまでナリをひそめていて、突然レーダーを ON にし妨害が来る前に照準、発射するなど)この方式では護衛しきれなくなりました。

    このため電子作戦機を爆撃隊と切り離して行動させる必要が生じたり、更に徹底した SAM 制圧のためワイルドウィーゼル機が生まれたわけですが、こうなると旧式なうえ鈍速鈍重な EB-66 では使い勝手が悪くなり、より高速で小回りの効く機体に切り替わっていったようです。
    ささき

  6. 丁寧な御回答、ありがとうございます.そっか〜・・・戦闘機やら何やらをいっぱい引き連れて侵攻する巨大電子戦機(B-2みたいな格好いいヤツ)はやはり妄想でしたか・・・
    平賀譲

  7. ちょっと別の観点から。

    基本的に電子戦は力技でして、端的に言えば発電能力の大きい方の勝ち、と言えるかもしれません。そういう考えに立てば、多発エンジンで、搭載余力のある機体は電子戦向きと言えるでしょう。
    しかし、これは航空機同士での比較ではそうであるという事で、これを艦船や地上施設と比較した場合には、重力に逆らって「飛ぶ」という作業に主要な力を間断なく用いなければならない航空機は決定的に不利になります。
     ところで、電磁波にはその電界強度が距離の二乗に反比例するという性質があります。これは距離が近ければ電子戦の効果がそれだけ大きくなる事を意味します。この電磁波の性質と、航空機の長所である速度を組み合わせる事で、電力的には非力である航空機でも、電力的に優位な艦船や地上施設に対して有効な電子戦を展開できる状況を作り出せる、これがワイルド・ウィーゼルの考え方です。探知されにくい低空を高速で接近して電子戦を展開、航続する攻撃隊に電子的な侵入経路を確保する、という電子戦の手法の有効性は実戦で証明されている通りです。

     それでは、電子戦で多発大型機の出番は無いのでしょうか?多発大型機に電子戦装備を搭載した電子戦機は、確かに地上施設、艦船に比べ非力であるとは言え、これが対航空機であるならば、相当に有効です。先に述べた、電磁波の性質により、動かない地上施設や相対的に動きの遅い艦船では高速で展開する航空戦闘に対して有効な電子戦を展開する事が難しくなります。自らに向けられた攻撃ならば接近するに従い電子戦の有効さは増大しますが、そうでない場合、特に航空機同士の戦闘を電子的に支援するようなケースでは、いくら出力が大きくとも、その高速追随性不足から、本当に有効な支援は限られた時間しかできなくなります。
     このようなケースでの多発大型電子戦機による電子的戦域支援は、その高速追随性により非常に高い効果が期待できます。
    elebras

  8. 質問者の発言を読みましたが、
    戦闘機に近い飛行性能を持った大型機が米軍には有るのに、質問者は意図して挙げていませんよね。
    予算の関係で潰れましたが、EF-111の後継機としてB-1を改造したEB-1が検討されていました。
    にも。

  9. >8
     満載状態で推力重量比0.25、荷重制限3.5GのB-1の何処が「戦闘機に近い飛行性能」なのか、私に判るように教えていただけますか?
    SUDO

  10. >7
    elebras様が前段で説明されているものは、ワイルドウィーズルではなく、スタンドフォワード・ジャミングもしくはエスコート・ジャミングではないでしょうか。
    私は、ワイルドウィーズルとはARMによるレーダーのハードキルを目的にするものと考えています。

    また、後半で説明されている多発大型電子戦機による電子的戦域支援とは、いわゆるスタンドオフジャミングにあたると思いますが、空対空戦闘の支援を主眼としたものなのでしょうか?
    れん太

  11. 質問者がB-52やB-2は挙げてもB-1は挙げないので、何故だろうと思った次第です。
    言葉足らずでしたが、
    「質問者が挙げてみせるB-52やB-2に較べれば未だしも」戦闘機に近い飛行性能
    と謂う意味で、書いたのです。
    それにB-1はその空力デザインに因り、遷-超音速域での機動性能
    (例えば超低空侵入での最高速度での余剰推力や横風への対処)
    は、数値上の推力重量比や荷重制限以上に優っていると思うのですが。
    にも。

  12. >11
     数値以上だからなんだと?
     数値以上に優れると思うので戦闘機並だと仰りたいのですか?
     また最高速度で余剰推力がある飛行機というのも、中々珍しいと思いますが、私は浅学故B-1が斯様な特性を有してるとは想像もしませんでした。
     何か特別な概念でも発見成されたのでしょうか?
    SUDO

  13. 超低空侵入での最高速度での余剰推力 訂正:超低空侵入に於ける制限速度付近での余剰推力
    付記:取分超低空侵入に於ける最高速度、制限速度の優位:B-1は零高度で音速を突破し、尚克相応の機動が出来る。B-52には到底不可能
    度々済みませんsudoさま
    にも。

  14. 3補足
    B-47は自前でジャミング機能を装備出来ず、生産される機体の相当部分を電子戦専用機(爆弾槽を潰して機材と操作員を載せる)にして
    先に突入させ、モスクワ上空で決死のジャミングを行っている間に爆撃隊が突入するという戦術を取っていました。
    B-52も当初同様の戦術を想定して設計されましたが、
    量産機では各機毎に専任のECM士官と機材を載せる方針に変わり、それに伴いコクピットもタンデムから並列に改められました。
    にも。

  15. 御回答、ありがとうございます.
    平賀譲

  16. すいません、付け足します.
    スパローやアムラームといったレーダー誘導式中距離対空ミサイルから身を守るにはどうすればいいのですか?アムラームはジャミングされると妨害電波を追尾して発信源に突っ込ませることもできると聴いたことがあるのですが(なんか日本語が少しヘンです、すいません).
    平賀譲

  17. >16 ここのすぐ下、質問4680に対するレス読んで自分の頭で考えたら?このサイトを貴方にとっての便利屋と考えてもらいたくないもんですね。
    相手が自分の放った妨害電波を追尾して突っ込んでくるとしたら、妨害電波の周波数変えるという方法もあるんじゃない?

    アリエフ

  18. >16.
    基本的にはチャフ(デコイ)散布、妨害電波発信、逆に自機の発振電波停止、急旋回/降下、急減速/加速、逆に低 RCS を保ち等速直線飛行を続けるなどの(矛盾する)手段を組み合わせて相手を騙します。何をどういう風に組み合わせるかは時と場合によるでしょうし、それが上手く行く保証なんて何処にもありません。最後は神様に祈りましょう。

    電子戦は騙し合いです。「こうすれば安全」などという方法はありません。探知/追尾技術も妨害技術も日進月歩に変わっており、最新技術の多くは軍事機密として守られています。

    ささき

  19. >16
    仰る様に搭載型ECM(Internal Countermeasures Set)では妨害電波追尾型ミサイルにはぜい弱性を有しており、そのために日本でもEJ(射出型ECM)が技本開発されました。

    これはF-15JのCMDであるAN/ALE-45に適合化されたもので、レーダー警戒装置からの情報を用いて最適なΔf(母機とのドップラ周波数の変位分)をセントラルコンピュータで算出して設定された後に射出され、主として相手ミサイルに対して速度欺瞞と角度欺瞞を行います。実用試験ではJ/AQM-1ターゲットドローンを用いて3回の実射試験が行われ、その内の2回はAIM-7Mの妨害に成功しています。(1回は発射母機の不具合でNG)

    未確認ですが、AMRAAM(AIM-120)に関しては発射母機のFCSレーダーから多重送信で発せられる指令送信波を察知されて、相手に早期に回避行動を取られてしまうのではないかと言う話があります。事実であれば、この点に関しては専用の指令送信装置を用いて特殊な送信方式を採用する我国のAAM-4の方が一日の長があると思います。
    AP1

  20. 御回答、ありがとうございます.
    平賀譲


Back