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4673 イスラエルの戦闘機パイロットの話に、MiG17は被弾してもなかなか着火しないがMiG21は一発で火を噴くという話がありました。
この違いはなぜ生じるのですか?
MiG17用燃料はケロシンで、MiG21用燃料はワイドカットになっているぐらいしか思いつかないのです。
また、米軍ではジェット燃料をJP-4からJP-8に切り替えましたが、これは被弾時のワイドカット燃料の火災の危険性からでしょうか。
元小学生

  1. . ― ソ連版ワンショットライターMiG-21 ―

    . イスラエルの諜報機関モサドの手柄話として、あちこちの書籍で紹介されていますが、第三次中東戦争(所謂六日戦争)の前の60年代半ば、モサドはイラク空軍のパイロットを包摂し、搭乗機のMiG-21ごと亡命させて機体を手に入れています。

    . その機体を分析したイスラエル軍は、あることに気づきます。MiG-21は、支援設備の不充分な前線の基地からも容易に出撃できるように、通常の燃料―レシプロ用の航空ガソリンよりは引火性の低い燃料―とは別に軽質油、つまりガソリン系の燃料を離陸時用に搭載しており、これによって大掛かりなエアタービンスターターに依らずとも、エンジンの始動ができるようになっています。

    . しかしこれは、離陸後のMiG-21の軽質油タンクには、離陸時に消費して生じた空隙にガソリンの気化ガスと空気との混合気が充満していて、被弾すれば容易に爆発することを意味します。いわば、ソ連版の「ワンショットライター」ともいうべき弱点をMiG-21は抱えていたのでした。

    . イスラエル空軍は、パイロットたちにMiG-21の軽質油タンクの場所を教え、空戦時、搭載機銃での射撃ではここを狙えと徹底的に指導します。これが、六日戦争以降の対MiG-21戦での大戦果につながったとされています。

    . 以上は、私の立ち読みモードで得た情報です。故に書名は出せません、悪しからずご諒承ください。MiG-21の軽質油タンクの場所は、世傑の機内配置図で見たことがあります。該当号をお探しください。

    . ― 引火・爆発しやすいJP-4 ―

    . 70年代に発売された航空ジャーナルのA-7コルセアの特集で読んだのですが、ナフサ系のJP-4は、レシプロ用のガソリンよりも揮発性が低く、故に燃料タンクの空隙に爆発しやすい混合比の混合気を生成しやすく、ガソリンよりもかえって危険であるとありました。

    . この対策として、米空軍仕様のA-7Dでは、翼内タンクにヘチマたわし状のウレタンフォームを充填し、爆発しやすい混合比のガスがたまらないようにし、米海軍では艦載機の燃料にケロシン=灯油系のJP-5を使用している、とありました。米空軍のJP-8への切り替えは、より抜本的な火災・爆発対策と思われます。
    NG151/20

  2. ありがとうございます。世傑を見てみます。
    元小学生

  3. >1.単純にMIG17はドライウィングで主翼内に燃料タンクが無いと言う点が
    大きな違いなのではないのでしょうか?
    にわとり

  4. >3.MIG17はドライウィングで主翼内に燃料タンクが無い

    . その話は知りませんでした。ありがとうございます。

    >1.の補足

    . 翼内タンクへの防爆フォームの充填は、その後F/A-18でも行われています。燃料容量の減少を案じる方もいると思いますが、A-7の場合、それ以前の型で1500ガロンの搭載量がD型で1425ガロン、つまり5%の減少ですんだそうです。防漏式ではないので被弾すると漏れますが、単純で容量減が少ない割りに爆発抑制効果は高い、とのことです。
    NG151/20

  5. 追加の質問ですが
    過去ログには
    http://www.warbirds.jp/ansq/1/A2000665.html
    現代のジェット戦闘機に防弾はないそうです。
    ジェット燃料はガソリンに比べ火が着きにくいとのことですが、ワイドカット燃料はガソリン並みに火が着き易いのではないかと思うのです。
    ですから現代の戦闘機の燃料タンクを防漏タンクにしたり、タンクに自動消火装置を付けたりしないものなのでしょうか?
    エリア88でもタンクに被弾するも消火装置が作動し助かるというシーンがありましたし。

    元小学生

  6. >5
     その回答を書いた者ですが、ケロシン系にしか該当しないんですわ^^;。
     ワイドカットガソリン系の燃料だと、やはり防漏タンクにして被弾時の着火を防ぐことが多くなります(件の回答後に読んだF-4の本だとブラダーは防漏構成との記述が)。
     米空軍が防火上の不利をしのんでJP-4を使用していたのは、アラスカからの防空戦闘等を考慮した寒冷地始動性の良さを重視したからだといいます。
     なお、ケロシン系の燃料でも、フォーム充填のほか、タンク空虚部への不活性ガスの充填(輸送機のようにタンクが巨大だと不完全ガス発生用燃焼機を備えることも)や、タンクそのものを燃料消費につれてつぶれるようにすることで空気を入れないといった手法で火災・爆発を防止しています。
     むろん、燃料以外の可燃物(内装とか電線の被服とか)もありますから、機上に消火装置を積むのは常道です。
    Schump

  7. . .― 最小限の防漏はしています ―

    . 確かに、5で紹介の過去ログで挙げられている理由によって、第二次大戦当時のようにすべての燃料タンクを防漏にすることはされていません。防弾=防漏タンクは、「重量がかさんで、容量が減少し、取り付けが難しい」(1.で紹介した航空ジャーナルより)反面、ミサイルなどの直撃には無力で、せいぜい23ミリクラスまでの対空砲火にしか効果がなく、引き合わないからです。

    . しかし、ベトナム戦争などの戦訓によって、少なくとも米軍は限定された範囲でありますが、燃料タンクの防漏を行っています。その概念としては、「たとえ被弾しても、戦闘地域から離脱し、味方の救難活動の支援が受けられる地域まで、具体的には低空を300海里(約550km)飛行できる燃料を確保する」とされています。

    . 前掲書によると、A-7D以降の場合、胴体のサンプ(集合)タンク(燃料は、すべて一旦ここに集めてからエンジンに送られる)とその後ろの胴体タンクの下三分の一の部分にだけ、ゴムなどによる防漏処理が行われています。他は無防御で漏れるにまかせる、翼内タンクは前掲の防爆フォームによって、墜落に繋がる爆発だけは防ぐ、に止めています。

    . 米軍は、その後も上記のコンセプトで設計をしている(少なくとも、F-15とF/A-18は、航空ジャーナルで確認している)と聞きました。自動消化装置については、搭載しているかどうかはわかりません。A-10の重防御は有名ですが、あくまで例外的な機体です。そして、それでも湾岸戦争で落とされたので、米軍はそれ以降、対空砲火の届かない中高度以上からの精密誘導兵器の投下一辺倒になったわけです。

    >ワイドカット燃料はガソリン並みに火が着き易いのではないかと思うのです。

    . 航空実用事典<http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p217.html#06-01>によると、ワイドカット燃料は軽揮発油、つまりガソリンと重揮発油、つまりナフサ、と灯油の混合物とのことなので、少なくともガソリンそのものよりは、引火性は低いはずです。その代わり、前掲のようになまじ揮発性が低い故に、爆発しやすい混合比のガスができやすい、とのことなのです。
    NG151/20

  8. . Schump様に先を越されました。

    . やっぱり消火装置は積んでるんですね。あと、防火・防爆対策としては、漏れた燃料が電線にかからないように、タンクの周辺には電線を這わせないとか、漏れた燃料やその気化ガスが機内にたまらないように配置を工夫するなど、様々なノウハウが要るそうです。そしてそれらに関しては、常に実戦に曝されてきた米軍の独壇場(つまり欧州性は撃たれ脆い)とも聞きました。

    NG151/20


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