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水冷(液冷)エンジンについて教えていただきたいのですが、水冷エンジン搭載日本機はほとんどがエンジントラブルが問題になっているようですね。 大抵の書物は整備の不慣れや構造の複雑さを理由に挙げています。 DB601ライセンス生産品については、元のDB601は技術的に高度で複雑とのことで、整備の不慣れや構造の複雑さという話もわかるのですが、そこそこ日本国内で熟成し、設計も古く、それほど凝ったつくりになっていないと(勝手な推測ですが)思われるイスパノスイザ系やBMW系のエンジン搭載機もエンジントラブルが多かったとの話もよく見られます。 空冷エンジンと比べて水冷エンジンのどの部分にどのようなトラブルが日本では多発したのでしょうか? もしご存知の方がおられましたらご教授ください。 TAT |
- 古い=安定して大丈夫なんて事はありません。
更に言うなら、どの発動機も登場時点では最新鋭の複雑怪奇で最先端のものです。よって色々と無理をやってます。
そして液冷ですと、冷却水配管と冷却水ポンプが加わります。これは水漏れや腐食、配管に用いる素材にも特別の注意が必要になり、当然整備も難しくなります(エチレングリコール水冷却だと余計に負担がかかるし)
また液冷に限らず、列型発動機は混合気を各気筒に適正に配分するのに苦労が生じます(馬力が出ないとか、異常爆発が出るとか、点火栓が汚れるとか、まあ色々困る)
更にSOHCであるので燃焼室形状や点火栓位置等も必ずしもベストではなく、これは無理に馬力を上げた場合に悪影響を及ぼす可能性が有ります。
結局、吸気管や気化器の点検調整、更には点火タイミングの調整、そして運転時にも細心の注意をするといった努力をしないと、本来の性能は出せない訳です。
これらは教育マニュアルの完備や、対策部品の開発等で相当に改善できるんですけど、熟成する前に放り出したというのが正しいところでしょう(国内で一から開発してないので、不具合対策部品の開発も難しい)
SUDO
- 水冷エンジンの長大なクランクシャフトやカムシャフトの切削加工も大変だったのだろうとは思いますが、一般に空冷、水冷に関わらず戦前の航空エンジンはほぼ全て何かの理由で「調子が悪い」のです。信頼性が高いと評価されたのは空冷エンジンなのか、あるいは空冷エンジンの中のある限定された機種なのか、という点にも注目しなければならないでしょう。
またどちらかと言えば少数派だった水冷エンジンに対する整備教育が徹底されなかったことも前線でのトラブルを助長したであろうと思います。
DB601系に関しては、ライセンス生産を行ったのが技術的に十分な水準に無いメーカーであった事も深刻に響いているのではないかと思います。DB601系のみの低成績からではなく、同時に転換生産していた空冷エンジンの総加工時間、機械加工時間が開発元のメーカーよりも目立って劣る事や、当時の軍の評価などからそのような印象を受けます。
BUN
- 何度か書いたので、ちょっとまずいかなと思うのですが、義理の伯父が中国上空で乗っていた飛燕のエンジンがストップして、パラシュートで脱出しております。
伯父の話では、ドイツの工業技術で求められたような工作精度を当時の日本では出せず、ピストンが焼きついたのが原因だそうです。
これが頻出したものかどうかは存じておりませんが、一つの例として記させていただきます。
hush
- なるほど、ありがとうございました。
空冷エンジンもそれなりの最先端の複雑な技術を使ってるだろうに、なぜ空冷エンジンに比べて水冷エンジンばかりトラブルが多いのかなあと(空冷もトラブル多いやつもありますが)疑問に思っておりました。
いろいろなお話をうかがえて、大変参考になりました。
ありがとうございました。
TAT