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初めまして。 昭和17年の初頭あたりから零戦に金星50型系のエンジン換装を始めていればその後も結構早い段階で62型への換装もそれなりにしっかりした艤装で(終戦間際の付け焼刃的なものでなく)出来たのではと思います。その場合実際の零戦54型(64型)よりもカタログ敵にも性能はよくなったと思うのですがどう思いますか。 恋愛大将 |
- 「金星換装がもう少し早ければ」とは一般的なifですし、史実の零戦にもA6M3で金星に換装する構想があり、それなりの説得力はあります。
しかし、何の為に昭和17年初頭に航続力の大幅減少と引き換えに敢えて金星換装を断行しなければならないのか、という視点は如何でしょうか。
当時の零戦は栄発動機用の高高度デバイスの実験を盛んに行っています。二段二速過給器、排気タービン実験が行われる中、そして十三試局戦の実用化が見込まれる中、零戦に金星を搭載させ得る背景とはいったい何なのでしょう。
今度はそのあたりを考えてみては如何でしょうか。
BUN
- 有難うございます。BUNさんからご回答いただけるとは光栄です。
確かに航続力の問題はありましたね。そうなると、やはり金星換装は零戦の極論かもしれませんが局地戦化というふうになってくるのでしょうか。十二試艦戦の時に金星46型が候補にあがっていたもので当時は機体が大きくなってパイロット受けが悪いとかの理由で栄を選んだというように記憶しておりますが、登場から2年近くもたてばパイロットもその辺には慣れているだろうと単純に考えての意見でした。17年の初頭ならガダルカナル攻防戦も想定外ですし、三菱からしても早いうちに自社製エンジンに換えておくことは利益になったと思ったもので…ちょっと幼稚でしたね…。
恋愛大将
- いいえ、謙遜されるようなことではありません。
17年の時点で金星50型換装案はもしかしたらあり得たことで極めて現実的な話です。零戦は発動機の換装を構想段階で見込んだ開発計画を持っていましたから、栄の次の候補として金星は最も近い位置にある発動機と言えます。
金星への換装はA6M3計画時に生まれ、M3の説明資料には何号機から発動機が換装されると記した気の早いものもあります。ただ昭和16年後半から昭和17年頃の状況としては栄の出力強化と二段過給器、排気タービンの方に注目が移ってしまい、金星への換装案は翌年夏まで現れません。16年後半から17年前半の零戦発動機換装計画は栄の改良型(1400馬力 二段過給器といった諸案)が中心なのです。
しかも速度、上昇力の向上に関しては雷電の計画がまだ十分に期待を集めている時期ですから尚更に金星への関心が薄れてゆく傾向が見えます。
BUN
- 栄に1400馬力が計画されていたとは知りませんでした。それが実現しなかったのはたはり栄自体のスペックの問題でしょうか。それとも誉の開発のほうに関心が移ってしまった為でしょうか。
恋愛大将
- ハ35(栄系)の実験成果で、後の誉が18気筒で1800馬力出しうる技術的根拠になったと記憶します。
100オクタン燃料が前提だったはずですが、実用化しても91〜92オクタン+水メタノールの使用を余儀なくされます。
金星系と比べて巡航時の燃料消費率で優れていたかもしれませんが、排気量あたりの出力が誉と変わらないので、量産に移行した後の信頼性が不安。
黒ねこ
- 誉の開発を促したとされる栄の高馬力運転実験はこれより少し前のものです。
私がお知らせしたいのは、栄の馬力向上が誉の馬力向上と同時に実験研究されており、それが零戦への搭載を前提として進められていたことです。
18年に入るとこの計画は放棄されますが、技術的に困難であったことと、ある時期にその計画が期待された事実とはまた別の話であって、この場で批評しても始まりません。
BUN
- このあたりの話の勘所は、栄の1500馬力運転実験から誉開発という一本道の発達だけでなく、栄と誉という同系統の発動機に平行して同じような性能向上策が打たれていたという点です。栄と誉はある時期、ほぼ姉妹発動機として開発が進められています。中島飛行機発動機部門の研究も両発動機をそのように捉えています。
BUN