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前線での食料として米とパンはどちらが優れているんでしょうか? 調理方法なども含めた上でお願いします。 紫苑 |
- 前線と言っても野戦給食が支給される場合もあれば、何日間も携帯食糧で凌がなくてはならない場合もあります。
味、食感はともかくとして、嵩張らずすぐ口にできる携帯食糧としては、乾パンやビスケットの類が最適でしょう。ただし何日も続くと嫌になる。
アリエフ
- とりあえず、手元に資料がある軍用レーション(軍用携行糧食)の分野に絞って私見を述べます。
現在の各国の軍用レーションの大部分は、デンプン類の摂取手段としてハード・ビスケットやクラッカーを採用しています。ビスケット類は元々デンプン保存食として発達してきたものであり、軽量且つ調理不要で食べられるのが大きな利点です。反面、味・食感は米やパンに劣りますし、あまり腹持ちがしない(かと言って大量に食うのも辛い)食べ物でもあります。
ちなみに、パンを付属している軍用レーションも当然ありますが、長期保存型のため食感等は多少劣るようです。
一方、米は栄養価等の点ではパンやビスケット類よりも優れているといえますが、洗米・炊飯という煩雑な作業をしなければ食べられないのが大きな欠点です(旧日本軍でも不洗米の研究をしていたくらい)。自衛隊の戦闘糧食は、調理済の米(ご飯)を缶orレトルトでパッケージングして加熱のみで食べられるようにすることで調理作業を簡略化したわけですが、それでも他国のレーションと比較すると、米であるが故に食べられる状態にするのに時間がかかる(つまり長い加熱時間が必要)のが難点といえます。そのためか、ご飯が主体の自衛隊戦闘糧食にも、調理不要のメニューとして乾パン食(I型)およびクラッカー食(II型)が設定されています。
総合的に見ると、1で述べられている通り、軽量且つ調理不要で食べられるビスケット類に分があるといえます。が、この辺はその国(軍隊)の食文化等とも絡んでくる部分があるので一概には言えないでしょう。現に自衛隊の戦闘糧食は米主体なんですから・・・
なお、自衛隊も含めた各国の軍用レーションについては、『ミリタリー・グルメ 戦闘糧食の三ツ星をさがせ!』(大久保義信著・光人社刊)という本が出ていますので、興味がおありでしたらご一読をお勧めします。レーション一つにもその国(軍隊)の食文化や考え方等が表れていることがわかります。
ブラック・タロン
- 米を洗って、炊くという作業は、時間と手間を取るばかりではありません。
多量の燃料と清水とを必要とします。これはパンやビスケットの類を前線で製造する場合でも必要ですが、その所要量において格段の差が出てきます。
これらはどの戦場でも手に入るというわけではありません。
中国で日本軍が嫌われたのはことさらに何もしなくても、日本軍の通るところ、薪になるものは根こそぎ消耗し、井戸は独占されるという事情が大いに影響しています。(少々尾篭な話ですが、もちろん、出るものも出るという部分もあります)
また、南方のジャングルでは乾いた燃料を得ることが難しく、また炊煙が連合軍航空機に見つかりやすいという点も日本軍を悩ませています。
水は天水に頼り、薪は流木くらいしかない絶海の孤島では問題は深刻です。
結局薪も食糧とともに輸送船で送らねばならないのですが、たくさん使う分それだけ船腹を必要としますね。
まなかじ
- ただ、パン、ビスケット、乾麺、饅頭等、麦が主原料の食品は、粉を練って焼いたりすることが必要だから製パン部隊でまとめて作り、それを関係の部隊や兵士に配給する必要がありますよね。製パン部隊がやられた時、一時的にパン等の配給が途絶えるというリスクがあるわけで。
米の場合、糒(アルファ米)にすれば水で戻して食べることができるが。もちろん味は相当落ちる。
アリエフ
- 「同朋の腸管に対して米と魚はブロート(パン)と肉より優っております」
谷口ジローのマンガにあった森鴎外の言葉。このマンガ、どこまで本当なんだろう?
strafe
- >4
糒=アルファ化米の欠点は綺麗な水がいることですね。自衛隊が新戦闘糧食(今のII型)を開発する際、軽量化のためにアルファ化米を検討したが、綺麗な水がなくても食べられるという点をクリアできないため見送られたそうです。レトルトを温めるだけなら泥水でもいいわけで。もっとも、この点は浄水剤を用意すればある程度解決できそうではありますが・・・(実際、海外の軍用レーションには浄水剤が付いているものが多い)
ブラック・タロン
- 一丸にはいえないけど総合的にパンの方が
優れているという事ですね
ありがとうございました。
紫苑
- ごみレスです。『毎日グラフ別冊 日本の戦歴 8/1 1965』で飯盒の燃料として、1飯盒あたり太目(直径2cmぐらい?)のローソクを2本使って飯を炊いているの1ページ大の写真が掲載されています。「ニューギニアでは、炊事の為火をたくと(ママ)敵機が襲ってきた。兵隊は濠の中に隠れ煙の出ないローソクで飯をたいた。時間のかかる作業であった。昭和19年5月16日」と説明文が付いています。鉄かぶとから見ると海軍さんのようです。どんなご飯が炊けたのでしょうか?
roht
- 私見ですが、正面装備をそろえるだけで手いっぱいだったと思われる、明治陸軍にとっては、米だけ渡しておけば兵士が飯盒炊飯してくれる米はありがったのではないでしょうか。
外国軍隊では、専門のパン焼き部隊とか屠畜部隊が存在したように聞いていますのでこのような後方支援部隊が省けた分、正面装備の充実に予算が回せたのではないかと。
又、パンなどに比べ栄養のバランスが良く副食物が少なくても良いという話も聞いています。(麦を混ぜるまでは脚気は多かったそうですが)
ひょっとしたら、さほど豊かでなかった明治日本が対外戦争で勝利できた最大の功労者は「飯盒炊飯技術の発明者」ではなかったかとなどと妄想したりすることもあります。(飯盒こそ明治陸軍のリーサルウエポン? 笑)
ただ、各種の限界があることは上記で先輩諸兄が記載されている通りであり、対米戦争でその限界が大きく露呈したということになるのではないしょうか。
SAW
- 補足
以前に、このコーナーで「牛缶」の話題が出た時には、陸軍採用当初には、わざわざ米国に醤油を運んで缶詰を製造したと聞きました。
インフラが整備されてない時代では、われわれが想像する以上に「兵士が勝手に飯盒炊飯してくれる。」というのは補給側にとってはありがたかったのはないかと思い、上記のようなことを勝手に妄想してしまいました。
SAW