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574  ある戦記で、赤道近くの緯度の低いところでは磁石(磁気)を使った磁石(コンパス)は、正確に機能しない(ほとんど役に立たない)と、読んだのですが本当でしょうか。
 もしそうだとすれば、密林の中などで少人数で行動をする時は、どのような方法で正確な方向を知ったのでしょうか。また、昼間の海上推測航法などでは、どうしたのでしょうか。よろしくお願い致します。
roht

  1. う〜ん。ミリタリのことはよく分からないのですが、磁石に関する常識の範囲でお答えします。

     北磁極・南磁極は北極・南極と10度程度ずれています。したがって、磁針の指す極と真の極のズレ(磁気偏角値)は、原理的には磁極に近づくほど増大します。例えば、東京ではおよそ6〜7度、北海道では9度ほど、沖縄で5度程度、磁針の北は西にずれます。同じ経度なら赤道に近づくほど磁気偏角値によるズレはすくなくなります。日本から東南アジア、インド、オーストラリアにかけては比較的偏角が少なく、0度から東西10度程度です。
     磁気偏角値の処理は地図を読む基本です。陸海軍で地図・海図の読み方を教育する場合にこの問題が教えられていないとは考えられません。磁気偏角値は多くの場合、地図に記載されています(たとえば国土地理院発行の五万分の1地形図など)。戦前の海図や軍用地図を見たことはありませんが、作戦地域での磁気偏角値が考慮されなていないとは、一寸考えにくいですね。

     一つの可能性としては、磁針の伏角の問題が考えられます。北磁極付近ではコンパスのN極の針は真下を指そうとし、南磁極付近では真上を指そうとします。伏角によって磁針が下を指そうとして板面とこすれ方位がうまく表示できなくなることを防ぐため、通常のコンパスでは使用する緯度にあわせて磁針におもりをつけます(液上に磁針を浮かべる湿式コンパスの場合は不要)。日本など北半球中緯度用に補正された磁針を、補正が不要な赤道付近や逆の補正が必要な南半球で使用すると磁針がひっかかってうまく表示できなくなるという可能性があります。ただしこれもよく知られたことですし、補正が不要な湿式コンパスや緯度に応じて調整できるコンパスもあります。安物の磁石でも、赤道近くなら、針のおもりを取る(あるいはN極にカウンターウエイトをつける)という荒療治をすれば使用可能となります。

     このほか、磁気異常帯で磁石が使えない場合もあるでしょうが、これは地質の問題で緯度とは関係ありません。磁石の特性について無知な人間が安物の内地用磁石を何も考えずに赤道直下に持ち込んだ場合以外は、特別の問題は生じないのではないでしょうか。
    カンタニャック

  2. 追加訂正
    http://www.tokyocompass.co.jp/
    の「コンパス豆知識」に世界の偏角図がありました。

    > 同じ経度なら赤道に近づくほど磁気偏角値によるズレはすくなくなります。
    一般的な傾向はそうでも、常にそういい切れるほど簡単ではないようです。
    カンタニャック

  3. 2.で紹介された世界の偏角図ですが、海上における偏角の分布は、大航海時代には各国、商業都市、船主等の最高機密事項(偏角の分からないところは危なくて航海できないから、自分たちだけ知っていれば制海権や航路の独占使用権を取ったも同然)とされ、鹵獲した船から偏角図を奪う(あるいは奪われる前に破棄する)というのは当時の海軍や海賊の常識でもあったそうです。
    Schump

  4. カンタニャックさま、Schumpさま、有難うございました。

     質問のねたは、『山本五十六最期』光人NF文庫にあります。「墜落場所まで、600mを羅針盤、磁石を使用してめざすも、同じ位置に戻ってしまい3回も、どうどう廻りをしていた。普通なら二時間で到着出来るはずであった。もし予定どうりにいけば大将救えたかもしれない。(要約)」とあり、伏角と偏角の一応の説明も有るのですが私にはどうしても理解出来ませんでした。間違った方向に進むのなら分からん事も無いのですが、なぜおなじ所を3回もどうどうめぐりすのか?
     
     せっかくご教授頂きましたが、やっぱり、老頭児の私の脳味噌では理解不能のようです(笑)。 有難うございました。
     


    roht

  5. 昔読んだ坂井三郎氏の回想でしたか・・・零戦で中国大陸を飛んでいると、いつも
    コンパスが狂うところがある。休暇のとき地図に記されたその地へ赴くとそこは
    巨大な鉄鉱山であったと。印象が強烈で今でも信じています。

    でもソロモンの鉄底海峡を通ると船のコンパスが狂うというのは信じてない。
    strafe


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