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渡辺洋二著「首都防衛302空」P270に302空、遠藤幸男中尉の大尉進級の背景が記述されて ますが、この時302空首脳は海軍省次官に相談し、アドバイスをもらって決定したようになってま す。 しかし、海軍省は海軍士官の進級のみで、遠藤中尉のような特務士官の進級に関しては、鎮守府司令 長官の専管事項のはずで、この場合、302空は横鎮所管の部隊なので、横鎮司令長官が進級の決定 権を持っていたと思われるのですが、この記述の信憑性はどうなんでしょうか? 源五郎 |
- 件の本を持ってはいるのですが、遠くにおいてあって見ることができない状態
なので、記述内容に関する吟味はできません。あしからず。
さて、特務士官の進級の進級候補とその序列は海軍大臣が決定します。具体的に
は、「海軍武官進級令」の「第十三條」には「海軍大臣ハ士官又ハ特務士官ノ進級
ヲ要スルトキハ決定候補名簿ノ序列ニ從ヒ進級上奏ヲ為スヘシ」とあり、「海軍
武官任用進級取扱規則」には、抜擢名簿調製官は海軍武官任用令によって特務
士官への任用に適する者や、特務士官で進級に適する者に対して抜擢名簿を調
製し、在籍鎮守府司令長官に進達もしくは移牒、その上で鎮守府司令長官は、特
務士官任用候補者名簿及び進級候補名簿を海軍大臣に進達すると、第十二條と第
十三條あります。
一般に特務士官、准士官、下士官、兵の人事は在籍鎮守府(人事部)が所管とい
われます。たしかに、配属命課に関しては「海軍特務士官准巣官配属命課規則」に
よって在籍鎮守府司令長官が行うことになっていますが、進級に関して言えば特
務士官に関しては少なくとも海軍大臣のところを名簿が通過することになります。
これは、下士官と准士官が判任官であるのに対して、特務士官が奏任官に列せら
れていることに関係するものと小生は愚考します(だとすると、進級は内閣によ
ることになると思う)。
ちなみに、搭乗員は下士官兵であっても(ということは多分特准も)も海軍省人事局
で握っているはずです。また、遠藤幸男の在籍鎮守府がどこなのか知りませんが
(山形出身らしいので横須賀の可能性が高いですが)、搭乗員の場合は所轄の本籍と
本人の本籍は基本的に無関係なので、三〇二空が横須賀籍の部隊であっても搭乗員は
横須賀籍以外の者も配員されると認識します。また、遠藤幸男は途中で特務士官たる
大尉から士官たる大尉に特選されているはずなので、恐らくそれ以降は完全に正規の
士官と同じ扱いになったものと思われます(件の話は特務士官たる中尉のころの話で
しょうから関係無いでしょうが)。
今泉 淳
- 回答ありがとうございます。
人事(進級も含めて)については、陸軍は陸軍大臣一本、海軍では海軍大臣と鎮守府
司令長官の二本だて、と単純に考えてましたが、すこし違ってたようですね。
「海軍武官進級令」を探し出して、じっくり読んでみることにします。
また、おまけで記入してもらった搭乗員の所轄についても参考になりました。今まで
は、航空隊が所属する鎮守府に転籍するとばかり、かってに思いこんでましたが、こ
れも間違ってたようです。
源五郎