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493  続いて参謀の選び方、階級、航空参謀といった参謀の種類、階級、仕事内容を教えて下さい。
素人

  1. 旧陸軍の参謀は、陸軍大学校卒業者でなければなれませんでした。平時は師團司令部・軍司令部と参謀本部にいて、一番偉いのは、参謀總長(大将級)、ついで参謀本部次長(中将級)、各部長(少将級: 作戰、情報などの部がありました)、各課長(大佐)、各班長(佐官級)、ヒラの参謀(大尉以上)となっています。平時師團は参謀長とヒラ参謀が一人くらいしかいませんでしたが、戰時編成では師團司令部に参謀長(大佐)、高級参謀(中佐級)、主任参謀(少佐級: 作戰・情報・後方の各班)、ヒラ参謀など増員となりました。軍司令部は、殖民地の駐屯軍と、戰時編成の野戰軍があり、高等司令部用の編成令に従って参謀部をもっていました。軍司令官ー参謀長ー参謀副長ー各課長ー各主任ーヒラ参謀という命令系統(時代により呼称は少し異なる)でした。例えば、関東軍参謀部作戦課作戰主任参謀辻正信少佐という具合ですね。
    海軍の参謀は、必ずしも海軍大学校卒業者でなくともなれたようですが、海軍参謀の種類は過去ログに詳しい説明があるのではないかと存じます。規模や階級は、例えば、大正9年の定員令18表では、鎮守府司令長官(大中将=大将ないし中将)の幕僚として参謀長(少将)と4名の参謀(中佐1・少佐1・大尉副官兼務1・機關中少佐1)がおり、その分掌(航海参謀とか通信参謀とか航空参謀など)は司令部で振り分けていた様子です。また33表では、聯合艦隊司令長官(大中将)の幕僚として、参謀長(少将または大佐)、参謀(中佐1・中少佐2・少佐大尉1・大尉1・機關中少佐1)があり、更に「備考」に参謀として兵科佐官1の増加、戰時事變には兵科佐官2の増加と、参謀長を中将にできるとあります。
    参謀の仕事は、歴史的には兵站線の確保と行軍計畫であったのですが、ビスマルク時代の獨逸軍における参謀部が、数個軍の大規模分進合撃作戰を立案して大成功を収めたため、それ以降、参謀部の仕事は作戰立案が主となった観があります。したがって参謀部の筆頭部署は「作戰」で、その次に「情報」「後方」がくるというふうになってしまいました。旧陸軍もこれを継承しているわけです。「作戰」は、文字通り、司令官に戦場の駆け引きを助言することですが、刻々と変化する戦況への対応を事実上主導するのは参謀長と作戰主任参謀で、司令官は参謀長の作ってきた作戰命令を承認すれば、それだけで直ちに命令が司令官名で各部隊に伝達され、戰線が動いていくことになります。ヒラの参謀は作戰圖に彼我の部隊配置を記録し、行軍日程を計算し、命令綴を調製しと、いろいろな事務に忙殺されました。「情報」は兵要地圖の作成から、諜報、捕虜の尋問まで行い、敵情報を収集・分析します。「後方」は、兵站線路終點から前線までの補給を確保しました。
    海軍の参謀は、大きな仕事では、日本海海戦・真珠湾攻撃の作戰立案が挙げられますが、ピタリと機械のように聯合艦隊を豫定戦場に動かしていき、實施部隊に戰闘を開始させ、戦果・損害情報を刻々と伝達するという仕事には、なかなか緻密な頭脳とチームワークが必要だったようですね。
    あるめ

  2.  あるめ様の詳細な記述に寄りかかって、ドイツ軍との異同を記してみたいと思います。
     ドイツ陸軍も日本陸軍と同様に、陸軍大学校に当たるKriegsakademieに中尉で入学し、良好な成績で卒業すると、大尉になった頃にGeneralstabsoffizier(参謀本部スタッフ?)となることができました。これ以後、前線と各級司令部を行ったり来たりすることになりますが、何に任じられていてもGeneralstabsoffizierであることは変わらないのです。
     Generalstabsoffizierはおそらく、参謀業務をほぼ独占していたと思われます。ロンメル元帥やシュトラハヴィッツ大将のように、Generalstabsoffizierでなくても司令官としてどんどん出世してゆく人はいるのですが、そういう人を参謀にはしないようなのです。ただし、第一次大戦で養成過程が中断したことについては、戦中の繰上げ卒業(グデーリアン)、速成コース(モーデル)、戦後の選抜試験による補充(ネーリング)など、さまざまな対策を取りました。マンシュタインは例外中の例外で、グデーリアンと同世代で繰上げ卒業をした形跡がないのに、参謀本部の(日本陸軍で言う)部長職すら務めさせています。あるいはあまりにも当然のことを、略伝の書き手たちが書き落としているのかもしれないのですが。
     参謀には基本的に指揮権がないのですが、ドイツの師団司令部にいる補給主任参謀は「師団補給指揮官」とでも訳すべき任を負っていて、憲兵・補給・衛生・野戦郵便関係の部隊に指示を出すことが認められていました。これはおそらく日本陸軍で言う「区処」であって、「指揮」というより、それぞれの専門に応じて実務者が出す指示に近いものだったのだと思います。

    マイソフ

  3. マイソフ様の、参謀には基本的に指揮権がない、で、それを書き忘れたことに気がつきました。
    参謀長以下は司令官には「こうしたら如何でしょうか」「この場合は、こうするべきです。しかし敵がこうきた場合は、云々」といろいろな可能性と選択肢を述べ、司令官が迷っていると「こうしなければ、こうなるから、早くこうしましょう」と意見具申して決断を促すなど、戦局を左右する非常に重要な役割をするのですが、隷下部隊に対する命令権はなく、いくら参謀が部隊長にいろいろ指示を出しても、部隊長がそれに従うことはありませんでした。司令官の「命令」があって初めて部隊長は兵を動かしました。命令は「第何軍作戰命令第何號」(「軍作命」などと略称)という書類の形(口頭で命令を伝達し、書類はあとづけの場合もある)で司令部に保管されます。しかし緊急の場合は、現地指導の形で、参謀が前線に派遣され、部隊の指揮に介入することもあり、この場合は、司令官がそれを委任した事を(文書などで)証明する必要がありました。大きな例では、日露戰役で児玉満州軍總参謀長が大山總司令官の委任状をとりつけ、乃木第三軍司令官の指揮権を停止して自らが指揮を執り、二百三高地を奪取したというのがあります。
    さて、ここで思い出しましたが、「日本のいちばん長い日」と云う映画で、出動命令を承認しない近衛師團長を斬殺した叛乱将校が、用意していた師團命令書に師團長の机の上にある師團長印を勝手に押し、その場で電話にて隷下部隊に「師團命令!」と宣言して、これを読み上げると、命令をうけた在京の各近衛歩兵聯隊が一斉に出動のため營庭に整列するという場面がありました。途中、この事態に気づいた上級司令部の東部軍管區司令官は、自動車で各部隊を駆回り、聯隊長が出動準備完了を報告するのに対し「馬鹿もん、それは偽命令だ!」と怒鳴りつけながら命令を取消していき、事なきを得るのでしたが、司令官・参謀・隷下部隊との関係は、このようになっていました。
    あるめ

  4. 過去ログを探してみましたが発見できませんでした。
    よろしかったら教えてくださいませんか。それと、今後も質問をしようと思っているのですが迷惑ではないでしょうか?
    素人

  5. 今年に入ってから(?)今泉淳さんが、水雷戰隊司令部の幕僚の分担職務について、この手の質問にお答えになっていたように記憶しております。過去ログは管理者さんにおいて、いま整理中なのかも。海軍、参謀、航海参謀などで根気良く探すと出てくると思います。
    ご質問は、知ってることをお伝えして、このQA欄をちょっとでも面白くしようと思っているだけなので、一向に迷惑ではありません。
    あるめ

  6. (御参考までに)開戦前の聯合艦隊司令部幕僚には、首席参謀、作戦参謀、戦務参謀、航空参謀、水雷参謀、砲術参謀、航海参謀、通信参謀、機関参謀、補給参謀がいました。

    あるめ

  7. 艦隊や戦隊にはどの種類の参謀が派遣されていたのでしょうか?
    素人

  8.  ちょうどBuchnerの「The German Infantry Handbook」に、ドイツ歩兵師団司令部の構成が載っていて、あるめ様の記述と照応するので記します。
     ドイツでも軍団以上の司令部になると参謀長の他に作戦主任参謀がいるのですが、師団では中佐の参謀長(Ia)が作戦参謀の役目を兼ねます。
     Iaの下に、大尉の情報参謀(Ic)がいます。大尉ということは、Generalstaboffizierになったばかりということです。通信傍受、捕虜の尋問なども含め敵状の判断を行うのが仕事です。
     さらに、少佐の後方参謀(Ib)がいます。上の私の書き込みで補給主任参謀と書いてあるのと同一のポジションですが日本陸軍の分類に合わせます。この3人が、Generalstabsoffizierです。師団司令部には軍医、獣医、経理その他の専門性の高い士官や将校相当官がいますが、それぞれ専門の訓練を受けキャリアを積んできた、参謀ではない人たちです。
     軍団以上になると、工兵、砲兵などのスタッフが司令部にいて、司令官に助言したり、砲兵などは特に直轄部隊と師団所属部隊の統一指揮に当たったりしますが、これらの人たちも(たまたまGeneralstabsoffizierであることはあっても)狭い意味では参謀ではありません。日本語の本ではよく、工兵総監とか砲兵総監とか偉そうに訳されています。

    マイソフ

  9. 艦隊・戰隊の参謀の種類は、時期・状況によりバリエーションがあるようです。その時々の編成表により確認するしかないです。私も海軍はよく分りませんので、どなたかご助言戴ければ幸甚です。いったい戰務参謀が何をするのか、見当がつきません。海軍制度沿革定員令付表レベルでは載っておらず、海軍諸例規あたりに標準的な役割分担と名称の付し方があるのではないかと思いますが、以前に覗いた時には、ぴったしのがありませんでした。一番手っ取り早いのは、戰闘經過や艦隊戰隊行動に関する報告・記録類に付いている司令部編成表ではないでしょうか。こういう資料は、大きな圖書館に行くと不二書房あたりの復刻版が置いてあったりするので、重宝します。もちろんご自分でも買える値段です。
    あるめ

  10. ↑4 過去ログの http://www.warbirds.nu/ansq/7/G2000300.html にありました。
    あるめ

  11. お手数をかけます。
    素人


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