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386 ここに質問していいかどうか分りませんが書きます。日本海軍において作戦中に死因が明らかでない死者が出た場合、法律的にはどう処理するのでしょうか?現在の日本では医者が見て死亡診断書を作成して(必要な場合は監察医が調べた後に)、役所に提出して埋葬の許可を得るようになっているようですが。
海上であれば水葬となると思うのですが、それを規定する法律や慣例はあるのでしょうか?
すなめり

  1.  法律的な「死体」の処理なのか、あるいは戸籍抹消という「死亡届け」の処理なのか判然としませんが、死亡届に関してはこのサイトに纏められています。

    http://www.sekise.co.jp/sougi/institut/199310.html

     死体が無い場合ですが、あとこの条文が参考になろうかと思いますんで、追加。

    国家公務員災害補償法第19条
    「船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗つていた職員若しくは船舶に乗つていてその船舶の航行中に行方不明となつた職員の生死が3箇月間わからない場合又はこれらの職員の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償及び葬祭補償の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた日又は職員が行方不明となつた日に、当該職員は、死亡したものと推定する。航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその航空機に乗つていた職員若しくは航空機に乗つていてその航空機の航行中に行方不明となつた職員の生死が3箇月間わからない場合又はこれらの職員の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合にも、同様とする。」

    しかしこれらの法律はいづれも戦後に制定されたものですので、戦時、あるいはそれ以前での法的処理とはまた異なるかもしれませんが、考察する手がかりにはなるでしょう。
    ごるぴゐ

  2. 補記というよりチャチャその一。

     医師が死亡を「診て」いないと死亡「診断」書は書けません。既に死体となっているものを医師が見た場合、これは「検案」といい「死体検案書」を書く事になっています(例外あり)死体がない場合は、もちろんこれらは書きようがありませんので「死亡届」のみとなります。
     上記サイトを読めば理解されるかもしれませんが、戸籍抹消に本当に必要なのは「死亡届」であって、止むをえない場合に限りますが死亡診断書(死体検案書)は必要ありません。

    追加というよりチャチャその二。

     死因ですが、大きく分けて「内因死」(病死あるいは自然死)「外因死」(外傷など)の二つに大別されます。

     おそらく「海に投げ出され、あるいは打ち上げられた死体」「爆発などで一部が亡失した死体」といったことを想定されて質問されているのだと思いますが、考えてみれば「銃撃あるいは爆発、火災による外因」「落下物等による打撲」「ロープなどによる絞扼」「高所からの転落」「溺死」「冷水等による凍死」「沈没閉塞による窒息」以外の外因を想定できるでしょうか。
     死体がある程度残っていれば、このうちのどれかぐらいは推定できます。

    「作戦中に死因が明らかでない死者が出た場合」と問われていますが、死因が明らかでないというのは、内因子(病死など)でも外因死(外傷など)でもないことをいいます。そしてこのような死因と見られる死体を異状死体といいます。かような死体が出る事は、考えてみれば稀有だと思うんですが…

    なお「異状死体のうち、とくに犯罪と関連性やその疑いがある」これを変死体といいますが、この場合は行政(または司法)解剖にかけられます.

    ごるぴゐ

  3. あのーごるびゐさん、僕の知りたいのは、日本海軍さらに戦時下で直接戦闘行為により死亡したのではないと思われる死人が出た場合どのような処理(法律を含めて)がされるのかということなのですよ。
    僕の質問の仕方が悪かったのかもしれませんね。なんでそんなことに興味を持ったかというと、海軍は戦闘集団で戦死した場合を想定した法整備はあっても、突発的に例えば脳出血のような場合で船内で死者が出たら、結構適当に処理されてしまうのではないかなと思ったからです。例えばこの突然の脳出血のように、内因死でも既往歴が無いような場合は、さらに船舶などの解剖が出来ないような場合は原因の特定は困難ではないですか?今現在のことうんぬんではなく、出来ましたら往時の事を、何方か教えてください。
    すなめり

  4. 当時の海軍において訓練中や作業中の事故で死亡したときは殉職です。戦死とは異なった扱いになります。出撃命令による通常の出撃、哨戒飛行でも爆弾を積んで出たときなど、未帰還でも戦死ですので特進があります。
    vought

  5. 明治の初めに出た通達では、海軍では軍人軍属死亡原因が詳らかでないときには、軍醫が死体の局部解剖をしますから、陸軍省でもよろしくご承知下さい、と云うのがあります。(明治十二年五月十三日太政官より陸軍省へ達)
    「別紙海軍省伺、軍人軍属死亡其の原因つまびらかならざる時、死体の局部解剖の義、朱書の通り指令そうろうじょう、このむね心得、あい達しそうろう事。
    (別紙)
    海軍省上請。 当省軍人軍属諸艦船及び各營その他に於いて醫師の診断を経ずして死亡するものこれあり。しこうして其の死亡の原因詳らかならず。これを詳らかにせざれば退隠令あるいは裁判上處分あいなりがたく、醫官に於いて其の死体の局部を剖觀する時は、これを詳らかにし得ると認むる者は、自今当省醫官をして解剖致したくそうろうじょう、御許可あいなりたく、この段上請そうろうなり。
    伺いのおもむき聞届そうろう事。」
    軍人恩給の資格・等級認定のためにも死因は明らかにしておく必要があったらしく、この後、海軍では然るべき規程整備が行われたと思われます。しかし私は海軍は専門ではないので、これ以上のお答ができません。海軍の制規を御参照なさると、きっと該当する条文が出てくると思います。
    あるめ

  6. うーん。日本海軍も不審死について一定の配慮をしていたようですね。殆どが若く元気な人たちだったとは言え、多数の人間が集まると年間何人かの割合で不審死亡者がでたことは予想されます。お答えくださった方々、ありがとうございました。
    すなめり

  7. うぅ、調べているうちに遅れをとってしまいましたね…

    (3)のご疑問ですが、これは全くその通りです。
    しかしこれは、むしろ法医学自体が普遍的に抱えている問題です。

    外因子の場合は、前述したように比較的わかるものですが、このような内因子によると推定される「不慮の急死」となると、検屍だけでは究明困難です。短期間に絶命する疾患はいくつかありますが、本人が持病を隠していたり、身体の異常を訴えていながら診察を受けていなかったりなどして、死に至るまでの因果関係がわからないことが多いのが、主な理由です。このような場合、本当に究明するには解剖しかないわけです。

    とりあえず一般に対してのところからアプローチしてみようと、戦後(現在)と戦前の医事法制を比較してみました。

    まず死亡診断書(死体検案書)の作成については現在のそれと大差ありません(旧医師法第五条など)解剖は明治時代に、官許が必要である事(旧刑法四二五条)司法解剖について(太政官布告二二)がありますが、「死体解剖保存法」のような体系化した法律はありませんでした。あと現在と異なるのは、監察医制度がなかったことくらいでしょうか。

    以上のことから、戦前、確固とした制度はなかったようですが、慣例としては現在のものとそう変わり無いように推測していました。ですから(5)のように積極的な究明を行うための上請があったとは、半ば意外でさえありました。でも残り半ばは、事故などの疑いを究明する必要がある意志を汲み取るならば、これは当然かもしれませんね。

    さて…となると、ご質問の回答は「海軍諸例則」などに記載されている可能性がありますね。しかし申し訳ありませんが、私、同書は閲覧できないので、どなたか宜しくお願いいたします。

    ごるぴゐ

  8. 旧海軍における医務関係の規程としては、「海軍軍醫科士官醫務取扱規程」が
    あります。

    例の昭和十六年度版の「海軍諸例則」の「第二十類 醫務 衞生」「第一款」の
    「海軍軍醫科士官醫務取扱規程」(昭和十六年十二月十八日 達第三百九十二號
    改正 昭和十七年第二九號、十八年第二二三號、二〇年第二三號)の内容はちょっ
    と読みにくいのですが、「第一章 總則」」「第二章 鎭守府軍醫長」「第三章
    海軍病院長」「第四章 各廳ノ軍醫長及軍醫科士官」等があるのですが、本件
    で関係するのは、恐らく、

    第三章の第十九條 院長ハ入院患者死亡シタルトキハ死亡診斷書(第二十様式)
    ヲ調製シ二通(公務ニ原因シタル者ニ在リテハ三通)ヲ死亡者ノ所轄長ニ、一通
    ヲ所屬鎭守府ノ軍醫長ニ送付スルモノトス

    とか、第四章の、

    第三十五條 軍醫長ハ患者死亡シタルトキハ死亡診斷書(第二十様式)ヲ調製シ
    二通(公務ニ原因シタル者ニ在リテハ三通)ヲ死亡者ノ所轄長ニ、一通ヲ所屬鎭
    守府ノ軍醫長ニ送付スルモノトス 部外委託患者ノ死亡診斷書ハ前項ノ規定ニ
    順ジ處理スルモノトス

    などだと思われます。

    また、「第四章 第六節 其ノ他ノ醫務」の

    第七十三條 軍醫科士官ハ死體ヲ檢査シ檢視ニ立會ヒタルトキハ死體檢案記{・br>(第二十四様式)及死體檢案書(第二十様式)ヲ調製シ死體檢案書二通(公務ニ原
    因シタル者ニ在リテハ三通)ヲ死亡者ノ所轄長ニ、一通ヲ死體檢案記{鴻g共ニ
    所屬鎭守府ノ軍醫長ニ送付スルモノトス (以下今泉略)

    とか

    第七十四條 軍醫科士官ハ死體ノ剖檢ヲ爲シタルトキハ剖檢記録(第二十五様式)
    二通ヲ調製シ一通ヲ所屬鎭守府ノ軍醫長ニ送付シ一通ヲ死亡者ノ患者日誌ニ添
    附スルモノトス但シ變死ノ疑イアル場合ニハ更ニ一通ヲ死亡者ノ所轄長ニ送付
    スルモノトス

    などとあります。

    少なくとも、小生の読み落しが無い限り、「海軍軍醫科士官醫務取扱規程」に
    おいて死亡関連の規定は上記だと考えますので(外部の病院に委託する場合な
    どはここでは引用していません。また「第四章 第四節 戰時醫務 における戦
    死者関連の規程は、本文脈とは一応無関係と考えます)、死因が不明で云々と
    いうことは規程には現れて来ていないと考えるのが妥当です。

    では、死因が疑いがある場合に対してどうするかを規定していないかというと、
    第二十類の「第五款 剖檢」の「軍人軍屬死状疑義アルトキ局部剖檢ニ關スル件」
    (大正四年六月二十二日 達第八十三號)があり、内容は以下の如きです。

    一 海軍軍人軍屬死亡シ其ノ死状疑義ニ渉リ局部剖檢ヲ必要ト認ムルトキハ所
    轄長ハ所屬長官ノ認許ヲ受ケ軍醫官ヲシテ之ヲ行ワシメ又ハ最寄海軍病院院長
    若ハ其ノ他ノ軍醫官ニ之ヲ委囑スルコトヲ得

    (本文中「軍醫官」の傍には点が打ってある)

    二以下、今泉略

    この「軍人軍屬死状疑義アルトキ局部剖檢ニ關スル件」は「死状疑義」がどの
    ようなことを想定しているか記すところがないのそれ以上のことは言えません
    が、常識的に考えれば死因が明らかでは無い場合のことを想定していることは
    間違いないように思われますが推測に過ぎませんし、元々の質問にからむ件が
    この規程にのみ限られるのかも分かりません。

    また、「海軍軍醫科士官醫務取扱規程」や「軍人軍屬死状疑義アルトキ局部剖
    檢ニ關スル件」以外の周囲の規程に関して小生として知るところが無く、医学
    や関連法令に明るくない故をもって、「あるところまでの小生の推測」に留め、
    これをして結論あるいは断定とするつもりはありません。その意味で、もう一
    段深い法令・規程を調査する必要が在るように思います。

    取り敢えず、本情報をもってこの方面に詳しい方の解釈等に資するところがあ
    ることを期待し、同時に本件に関して自分なりの疑問点を見出すに至りました
    ので、以後本件に関して留意する所存であります。

    なお、葬儀に関しては、「海軍諸例則 第二十五類 第三款 葬喪 服忌」の「海
    軍葬喪令」(大正九年六月二十五日勅令第百九十五號 改正昭和一三年第五一四
    號)に定めるところがありますが、上記の醫務の関連との条文は認められない
    考えます。ちなみに、水葬は「第九條 水葬ハ陸葬スルコト能ハサル事由アル
    場合ニ限リ之ヲ行フ」などとあります。

    今泉 淳


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