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227 自衛隊では、例えば敵前逃亡したとき軍法会議で裁くことができない(それ関係の法律がない)とどこかで聞きましたが、実際のところはどうなのでしょうか?
SD

  1. 我が国に軍法会議は存在しませんから、敵前逃亡を軍法会議で裁くことはできません。

    しかし、敵前逃亡についての処罰規定は存在します。
    防衛出動命令を受けた自衛官が三日以上職務の場所を離れた場合は7年以下の懲役または禁固となります(自衛隊法122条1項2号)。このほか、治安出動命令下・防衛出動待機命令下・治安出動待機命令下の同様の行為、防衛招集命令を受けた予備自衛官の不出頭についても、それぞれ刑の重さに違いはありますが処罰されます。そのほか抗命や勿論歩哨の居眠りなども処罰されます。
    これらの裁判は軍法会議ではなく、通常の刑事事件として一般の裁判所で裁かれます。

    なお、70年代頃、いわゆる「反戦自衛官」の行為が自衛隊法違反に問える事件について、検察側があえて自衛隊法を適用せず、より刑の軽い通常法規違反で訴えた例があります。
    これは自衛隊法違反で処罰しようとすると、被告側の「自衛隊法は憲法違反で無効」という主張をすれば、裁判所が自衛隊法(つまり自衛隊)の合憲・違憲の判断をせざるを得なくなるので、そのような事態を避けるために自衛隊法の適用を見送ったものとされています。
    その意味では自衛隊法の処罰規定は「つかえない法律」かもしれません。
    カンタニャック

  2.  日本国憲法では、第76条(司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立)で特別裁判所(軍法会議等)を置くことを禁止しています。
     よって、自衛隊は軍法会議に相当する独自の司法裁判権を行使することはできません。
     万一自衛隊が他国と交戦状態に陥り、敵前逃亡等をやらかした自衛官がいたとき、司法的にどう扱われるかは、はっきり言ってわかりません(^^;;;
     現行法制をそのまま適用すれば、一般司法で裁かれることになるでしょうが、自衛隊法くらいしか適用法律がないと思うので、重い刑になるかどうかはわかりません。
     過去何度か旧ソ連やロシアのスパイに対する情報漏洩で逮捕された自衛官がいましたが、スパイ行為等を取り締まる法律がないため、自衛隊法に基づいて処罰されています。

     ちなみに、自衛隊内部で自衛隊員が犯罪等を犯した場合、警務隊(旧軍の憲兵に相当)によって逮捕されます。警務隊は特別司法警察員としての権限を持ち、犯罪を犯した自衛隊員および自衛隊に対して犯罪行為を働いた民間人に対して捜査権と逮捕権を行使することができます。ただし、独自に訴追する権限はないため、起訴等は警察に委託しています。
    ブラック・タロン

  3. >1 訂正 6行目
    「抗命や勿論」→「抗命はもちろん」
    カンタニャック

  4.  あ、やっぱり自衛隊法に規定があるんですね>敵前逃亡等
    ブラック・タロン

  5. ここの質問165番をも参照してください。結論から言うと、日本には特別裁判所としての「軍法会議」はありません。しかし、上官の命令に従わずに敵前逃亡する場合、国家公務員法上の職務専念義務違反等に該当する可能性があります(勤務中に持ち場を離れることと同じ)。そして、自衛隊も一つの行政機関ですから、所定の手続を経て懲戒処分等の処分を行うことができます。ただし、これは裁判ではなく行政処分なので、処分される側はそれを不服として裁判に訴えることができます。しかし、反戦自衛官事件など、自衛隊の憲法違反などをも理由として上官の命令に反した行為への処分を違憲・違法だと訴えた訴訟は、原告側の敗訴に終わっていますので(このような自衛隊の違憲性をめぐる訴訟で、地裁レベルで訴えを認めた例もあるが、高裁、最高裁で逆転敗訴している)、勝訴する可能性は低いでしょう。
    アリエフ

  6. 自衛隊法を適用しないのであれば、やはり国家公務員法で行政処分するのが普通かな。事件発生の状況にもよるのだろうが。他には、同僚の殺害、物資の強奪など起こしたら、刑法による刑事罰の対象となるだろうけど。
    アリエフ

  7. 念のため
    アリエフさんやブラック・タロンさんのおっしゃる通りですが、法律にあまり詳しくない方のための補足を。

    国家公務員の職務専念義務違反は、「懲戒」(クビや減給など)の対象ですが、「犯罪」(懲役や罰金などの対象)ではありません。(ただし公務員のストなど、国家公務員法違反で犯罪となる行為もあります。)。
    敵前逃亡(防衛出動中の職務放棄)は、国家公務員法82条1項1号の命令違反または2号の職務上の義務違反として懲戒処分(最高で免職)の対象となり、同時に自衛隊法122条1項2号により犯罪(最高で懲役7年)として処罰されます。

    最高裁は自衛隊を違憲とする判断は下していません。おそらく今後も自衛隊を違憲とする判決が出る可能性は極めて低いだろうという点については、アリエフさんに全く同感です。
    ただし、最高裁は自衛隊を合憲とする判断も下していません。いまのところ、自衛隊と憲法をめぐるいずれの事件でも「訴えの利益がない:長沼訴訟」とか、「防衛関係の法規を適用すべき事例にあたらない:百里基地事件」などとして、巧妙に憲法判断を避けています。反戦自衛官に対する処分で、自衛隊法の適用を避け国家公務員法のみを適用して憲法問題を避けたのも、このような最高裁判所の方針(消極的な現状肯定)への側面支援でしょう。

    >2 犯罪を起訴するのは警察ではなく検察官です。(重箱のスミつついてすみません。(^^ゞ

    >6
    自衛隊に関わりそうな国家公務員法違反で刑事罰のある行為というと、秘密漏示罪(国家公務員法100条1項)ぐらいですが、敵前逃亡には関係なさそうですね。
    制服や装備を持ったまま逃亡すれば窃盗罪でいけそうです。銃を持ったままなら、任務外の所持ですから銃刀法でいけるかも知れません。
    カンタニャック


  8.  直接関係ない話かも知れませんが、夢野遙『自衛隊ウラ話・喋り出したら止まらない』という元自衛官の一種の暴露本があります。
     本の中で、自衛隊は治外法権だだから20歳未満でもたばこをすってもいいんだ、と言って上官が未成年の隊員に皆の前でどうとうとたばこを吸わせる話がのっています。これは、武器庫の裏とかで隠れて吸われて、射殺されたり、引火したりする危険がないためが本音らしいですが、また別の話として窃盗癖のある自衛官の話がでてきます。
     この人は、机とかに財布などの他人の持ち物が放置されていると、盗まずにはいられないという一種の病気めいた人物です。何度も他人のものを盗む現場を押さえられているらしいのですが、別につかまらずにごく普通に自衛隊員としての生活を送っています。そして、自衛隊での勤めが満了して、除隊するときに、駐屯所の外にパトカーがまっていてそのまま逮捕されて連れて行かれたそうです。
     もちろん、この話が自衛隊全体において、どの程度普遍性があるのかはいまいちわかりませんけど、現実としてはどうも、駐屯地内で自衛官をやっている以上は、窃盗くらいではすぐにつかまらないみたいですね。
     法的な規定はともかくとして実際として、だいたい、どれくらいの犯罪なら自衛隊内でみすごされるのか、とかというのには興味があります。どなたか詳しい方がいればお教えください。
    celetaro

  9. 別に自衛隊の内部事情について詳しいわけではないですが、相互に顔がわかっている組織は、見ず知らずの人間ばかりの一般社会に比べ、誰が窃盗を行ったかわかりやすいのではないでしょうか。もちろん、みんなが窃盗を行っていて、どっちもどっちという関係なのかもしれませんが。
    生徒同士による窃盗が絶えず発生している学校があったりするし、セクハラや公私混同的な行為が生じている会社も結構あるのではないでしょうか。見つからなければいい、あいつもやっているから自分も、といった感覚で。この本に書かれていることがどの程度、自衛隊全般に当てはまるのかよくわからないし、他の組織に比べて自衛隊を無法社会とみなす根拠が不足していると思いますけど。
    アリエフ

  10. 余談だが、多くの職場で常態化している残業について完全に残業手当出ているのかな?労働基準監督庁が厳正に取り締まり始めたら、相当多くの職場で法律ないし服務規程違反となり、経営者や監督責任者が違法を見過ごしていたということになるのではなかろうか。
    アリエフ

  11. 皆さん、貴重な意見どうもありがとうございました。
    SD

  12. 治外法権と無法地帯ではちがうでしょう。
    自衛隊には独立自治体のような様相があるというだけです。
    わたしもこの話がどれくらい普遍性があるのかは知らないとは先にも書きましたし。
    本のなかでも盗癖のある人物は特別な変わった人間として書かれていますから、こんな人はむしろ珍しいと思われます。
    celeatro

  13. >12
    自衛隊の中にも日本国の法律が及ぶのであって治外法権ではありませんよ(当然、警察権も及ぶ)。在日米軍基地やアメリカ国内の日本大使館のように、国外にある政府関係機関の場合、その内部に自国の法律や警察権、司法権が優先適用されるのが、治外法権ではないかな?言葉は正確に用いましょう。
    組織、団体の内部で法律違反のような行為が公然と生じているという疑惑がある場合、国家が警察権を行使できるか?、踏みこまれた団体は、その内部自治や慣行の範囲内として対抗できるか?というのは、かなりケース・バイ・ケースで判断すべき微妙な問題ではあるけど。
    アリエフ

  14. >自衛隊の中にも日本国の法律が及ぶのであって治外法権ではありませんよ(当然、警察権も及ぶ)
     規則ではそうかもしれませんが、実際この事例を見れば、比較的軽い犯罪に対しては警察権も法律も及んでないじゃないですか。
     そういうのを治外法権というんでしょ。
    celetaro

  15.  国外にある政府機関機関だけに治外法権という言葉が使われるというのはどうでしょう。
     たとえば日本が結んだ不平等条約が原因の
    ・ウェブスター事件
     なんかは政府機関とは関係ないけど、治外法権の一例でしょう。  
      言葉は正確に使いましょう。

    celetaro

  16. >比較的軽い犯罪に対しては警察権も法律も及んでないじゃないですか。
    比較的軽い犯罪の範囲をどう考えるかにもよりますが、学校や会社にしても、始終警察官が中に入っているわけではないでしょ。問題は組織としての自浄作用が働いているか、明かに刑事罰の対象とすべき犯罪と見られる行為について、その組織あるいは組織構成員が検察に告発し警察に通報したりして、警察権力を介入させるかどうかということなんですが。
    確かに、その組織が内部の問題を自主解決すると言っておきながら、自浄作用が不足し、本来、公権力が犯罪として取り締まるべき事件をうやむやにしてしまうという問題は、企業の汚職にせよ大学内のセクハラにせよ、困ったことなんですけどね。
    要するに、このような状況を「治外法権」的状況と言いたいわけかな。治外法権は本来、国際慣習法上の用語であって、国外にある政府関係機関や条約によって設けられた居留地等、及びその関係者である自国民について、自国の法規や司法警察権が優先適用されることを、当該国及び相手国双方がルールとして認めている状況ですね。
    これの類推で、組織内の慣行が優先され、市民社会の法的秩序に違反する実態が生じている、組織の権力者の命令が絶対で内部で平然と法律違反が行われている、というような状況を「治外法権」的というならば、「無法社会」的というのと、あまり変わらないと思いますが。組織が、司法警察権を内部に行使させないよう、警察に見つからないよう、事件を水面下で処理してしまうということではないんですか? ま、正確な使い方でないにせよ、「治外法権」的という言い方に目くじらを立てる気はありませんが。


    アリエフ

  17.  言葉の意味の解釈はここの本題でもないので話をもどします。
     自分なりに調べてみました。
     自衛隊の暴露本の類はいくつかありますが、こんどはまた別の自衛官の人の本からです。
     この本の内容では、自衛隊では冬の期末手当(ボーナス)の時期には盗難が頻発すると書いてあります。しかし、ボーナスをとられたくらいでは、「とられた奴が悪い」となるそうです。
     まず、隊長の経歴に傷がつくため、隊長が警務隊にいいたがらない。次に、警務隊に報告すると取り調べが一週間も続き、隊員たちのせっかくの正月休みがなくなってしまう。
     上司と、同僚たちが反対するため、実際にはなかなか警務隊には報告されないようです。しかし、金額が大きくなってくると警務隊に報告されますが、それも自衛隊内部だけで処理されるそうです。さらに窃盗どころか、もっと大きな犯罪である、重傷者がでる傷害事件や放火などでも、内部だけで処理されるらしいです。
     犯罪を犯したものは、自衛隊に営倉がないため、せいぜい行政処分、重い場合はクビとなるそうです。

     またわたしが見た別の資料(その資料が書かれた時点)では、自衛隊ではもともと残業手当はないようです。
     特別な手当てとしては、空挺隊員にたいする落下傘手当、訓練で降下した場合の降下作業手当、ほかに、爆発物取扱手当、災害派遣手当(警察官にもでるが自衛隊員のはその十分の一以下)などがあるようです。
    celetaro

  18. 追記 「治外法権」という言葉の厳密な使用法としては不適切な部分があったようです。失礼をお詫びいたします。
    celetaro


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