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今日NHKの番組でベルリンの大島大使からの情報が、日本の国家戦略が ドイツの欧州戦争勝利、特に対ソ勝利前提に依存させてしまう過程を 興味深く見ました…が、 当時はソ連にも日本の外交官はもとより武官もいたはずです。その人たちも やはり「ソ連敗北」と見ていたのでしょうか? それとも別の見方をして 東京に伝えていたのでしょうか? ご教授ください。 まるき |
- そんな放送をしていたのですか、見なかった。
陸軍はドイツの勝利を信じて疑わなかったそうです。しかしながら、戦争には不介入の立場を取っていたのはいただけませんね。
海軍は日独同盟に反対していたようです。これもそれぞれの仮想敵国の違いかも知れません。
ベンゼン中尉
- 私もその番組見てないのですが、大体、何年ごろまでを扱っているのでしょうか?
41年夏の時点であれば、モスクワにいてもソ連軍が決定的に不利と言うことは誰でもわかるはずです。
アリエフ
- 41年11月の段階でも大島大使はソ連がもう崩壊すると、東京に報告
しています。東京は御前会議をこの報告に基づくソ連崩壊を前提に
対米開戦・南方作戦を決意するのですが、もう一度ベルリンの大島大使に
ヒトラーと面会し、対米開戦の場合、ドイツがアメリカに宣戦してくれるか
確認せよと命じます…が、この時点ではヒトラーは大島に会うどころか、
「狼のねぐら(でよかったんですよね)」にこもって、泥将軍・冬将軍に
ハマったドイツ軍に陣地死守を命じて将軍ともめたりしていました。
この時点でモスクワの日本軍・外務省関係者が東京に「ちょっとまった」
といった可能性はどうだったかが、猛烈に気になってご質問したのです。
番組ではアメリカが大島ベルリン電報を全て解読した文書が公開され、
ヒトラーに信頼されていた大島の東京向け電報が、ドイツの内実をしる
格好の資料にされている事実を明らかにしてました。44年、大島は東京に
フランス沿岸部の陣地構築状況やドイツは上陸軍水際撃滅方針だと報告し、
すっかり解読されたベルリン電が連合軍ノルマンディー上陸成功の一因で
あったとも述べていました。
大島大使は戦後禁固刑となり、55年釈放後は公の場に出ることをせず、
参議院選挙に出てくれといってきた団体に「自分は国をミスリードした人間
だから」と一言に断った、という大島婦人の談話で番組は幕でした。
まるき
- 「その時、歴史が動いた!」ですね。
特別番組などが無ければ日曜日のAM7:45から再放送しています。
(念のため、新聞のTV欄等で御確認ください)
タマちゃん
- 在独大使館にせよ、在ソ連大使館にせよ、各国の政策担当者がこう言っていたという情報、それに自分たちなりの観測を加えて本国に打電するものです。両大使館担当者からの情報が食い違っても当然であり、大島大使ほどドイツ圧倒的有利とは見ていなかったと思いますが。
それに、どこの国でも外交・国防上必要な情報を収集するに当たっては、相手国政府・軍関係機関同士での交信解読や各種偵察活動だけでなく、新聞等による公開情報の分析を行なっています。むしろ、大本営発表などの政府公式発表を主な資料として、その内容、主張のトーンなどを前のものと比較対比したりしながら、その国がどれだけ強気でいるのか、政策変更の兆しはないか、他の情報とも対比しながら検討するわけです。
大島大使から本国当ての電報が解読され、公開発表には載ってない情報が含まれていたとしても、それは連合国の情報機関が他の手法、ルートで入手した情報の一つの裏付け程度かもしれません。大体、ドイツ政府も国内の内情についてそんな多くのことを日本大使館に伝えていませんから。私もかつて外務省の飯倉公館で大戦末期のドイツからの公電の実物を見たことがありますが、彼我の情勢分析、ドイツ国内の軍需生産状況概要等、政府の首脳会議に出された資料から入手できたものを流しているような程度です。
ただ、大島大使が外交官として、本来もっと客観的な見方をしなくてはならないのに、かなり親ナチス的な見方をしていて、現地大使館の情報に偏りがあったことは事実だろうと思います。
ちなみに、在ソ連大使館の関係者は、45年のソ連対日参戦の数ヶ月前、モスクワからシベリア鉄道で日本に戻る途中、大量の列車が東に移動し物資集積が行なわれていることを本国に伝えています。それでも、本国の政府・軍中枢ではソ連が米英と仲が悪くなる、同国を通じての対米講和交渉が可能だという一縷の望みを固守していたわけですが。
ちょっと、その番組の再放送見られそうにも無いし内容を批判するつもりはないのですが、重要な情報分析というのは一つだけでなく多種、多様な情報の分析によって行なわれるものであることを理解しておいてもらいたいので。
アリエフ
- ありがとうございます。
知りたかったのは狭義の意味で「41年11月ごろ、在ソ連の日本外交筋と
駐在武官は東京に独ソ戦の見込みについてなんと言ったのか」だったのです。
が、アリエフさまのおっしゃることには全く同感、異議ありません。
今後もひとつの事に固執せず、広い視野で物事を見るべく努力(は)して
いきたいと思います。
まるき