QQCCMMVVGGTT
305 日華事変の際に何故中華民国は日本に宣戦布告しなかったのでしょうか?宣戦布告すれば日本は石油をはじめ戦略物資を輸入できなくなり戦争継続が困難になったと思うのですが。
Alphabeta

  1. それは中国にとっても同じです。
    逆に宣戦布告がなかったからこそ、中国はあれだけの援助を受けられたのです。
    勝井

  2. 宣戦布告をすると、中華民国の戦争継続が日本以上に困難になるからです。

    戦争が始まれば、中立国は交戦国に対する軍事援助や武器売却が出来なくなります。ということは、アメリカやイギリスが中立(日本に宣戦布告をしていない)状態で中国が日本に宣戦布告すれば、中国は英米その他の国から近代的兵器を買えないのに、日本は自国で生産出来るわけですから、中国が圧倒的に不利です。

    それから中国はアメリカからの援助も受けにくくなります。
    軍事援助は当然なくなります。
    経済的援助も、交戦国の一方への経済援助は中立違反ではないかという議論がアメリカ議会で持ち上がるでしょう。

    石油には軍需品も民生品もあります。アメリカの石油会社が「民生用の石油」を日本に売る分には中立違反にはなりません。
    汎用品の軍需民需の区別は曖昧な点が多いですから、中国艦艇が日本近海でアメリカのタンカーを臨検し「軍用石油」を積載しているといって片っ端から拿捕することは理論的には可能です。ただし、現実には日本の軍艦が中国に向かうタンカーを拿捕するチャンスの方がずっと多いでしょう。

    カンタニャック

  3. 逆に日本が宣戦布告しなかった理由は、石油に尽きるといっていいでしょうか?
    勝井

  4.  今学校なんで、手元に資料がないのですが、戦前の日本における対米輸入依存度は非常に高いんで、油も大きな要因でしょうが、それだけではないと思います。例えば、戦車用ディーゼルのクランク軸なんかはアメリカからの輸入品であったはずです。他にも屑鉄とかありますね。
    tomo

  5. 勝井さんのおっしゃる通り石油輸入に対する不安がもっとも重要でしょうが、tomoさんのおっしゃる屑鉄、機械部品、それから工作機械などの輸入も考慮されているでしょう。
    また、陸軍には宣戦布告すると交戦法規が適用され戦争がやりにくくなるという考えもあったようです(日本も中国も交戦法規を遵守するという声明をだしていますが、国際法規と政府の一方的声明ではその重みに大差があります)。

    ところで、>2ですが、家で国際法の本を見たら大分いい加減なことを書いているのに気づきましたので、補足・訂正いたします。

    以下の説明は、陸戦に於ける中立国の権利義務に関する条約、海戦に於ける中立国の権利義務に関する条約(いずれも日本も批准)、海戦法規に関するロンドン宣言(未発効ながら第一次大戦時には事実上の基準として適用される。日本も署名したが批准せず)を根拠にしております。

    これらの中立法規に従うと、中立国と交戦国の貿易の扱いは次の通りです。

    1)中立国政府は絶対的戦時禁制品(武器・弾薬・馬匹・戦闘用の艦艇・甲鉄版など)を、交戦国に供給してはならない。
    ただし、私人(私企業)の行為については規制しない。
    2)交戦国は、燃料、すべての船舶、鉄道・通信機材など、戦争に使用可能な資材を、相対的戦時禁制品であると宣言できる。
     交戦国は、絶対および相対の戦時禁制品を積載した敵国向け中立国船舶を臨検し、禁制品を捕獲できる。戦時禁制品の捕獲を中立国は受け入れなければならない。
     
     この規定に従うと、宣戦布告があった場合、アメリカ政府は、中国に武器・弾薬を供給することは出来なくなります。
     しかし、アメリカの私企業が中国に兵器を売却することは可能です。また、日本あるいは中国が、石油・兵器製造に使われる工作機械などを戦時禁制品に指定しても、アメリカの私企業が、両国に石油を売ったり、工作機械を売ったりすることは可能です。
     ただし、日中両交戦国は、敵国に向かうアメリカ船舶を臨検し、すべての戦時禁制品、すなわち私企業が敵国に売却した兵器・弾薬などの絶対的禁制品、および石油などなどの相対的禁制品を捕獲できます。

     これだけですと、海上封鎖能力の点で日本が圧倒的に有利です。
     しかし、中立国は中立維持のための国内政策として、自国民の交戦国への禁制品輸出を禁止したり、自国船への禁制品積載を禁止することが可能です。
     日本が恐れたのは、絶対的禁制品の輸入ができなくなることではなく、アメリカが中立維持のためという理由で石油その他の相対的禁制品の対日輸出禁止処置を取ることだったと思います。



    カンタニャック


Back