ヒトラーは、第一次大戦後連合国によって創られた人工国家チェコスロバキアが地政学的にドイツの中に突出した敵性国家であり、この国の軍事力を解体することを望んでいましたが、３５０万人のズデーデン・ドイツ人がオーストリアと同様、ドイツへの併合を望んでおり、チェコスロバキア政府が少数民族であるドイツ人を弾圧していることを口実として工作を行いました。ズデーデン・ナチ党を支援する一方、チェコとスロバキアの分離工作を展開し、チェコスロバキア政府を脅迫してボヘミア・モラビアを併合する一方、スロバキアをドイツの勢力下で「独立」させたわけです。
要するにチェコスロバキアという国が解体され、工業の盛んなボヘミア・モラビアを併合すると共に、残存部分のスロバキアからの脅威がなくなればドイツにとってはしめたものです。また、チェコスロバキアやその友好国との戦争を回避し、政治工作と威嚇だけでこの目的を達成するには、十分な大義名分がつけられない行動は止めた方が良い。スロバキアまで併合すると、かえって周辺諸国を無用に刺激しすぎるという考えがあったからだと思いますが。
アリエフ