QQCCMMVVGGTT
102 第二次大戦中に連合軍はドイツ本土の工場地帯や鉄道網を爆撃して,軍需物資の供給に一定の打撃を与えました.ならば、ドイツはソ連におけるかかる設備に対して爆撃を行ったのでしょうか.また、北極海航路を利用した援ソ輸送船団に対してのドイツ空・海軍による攻撃は有名ですが、同船団の目的地であるムルマンスクやアルハンゲリスクなどの港湾施設や鉄道網を攻撃したことはあるのでしょうか。



なんでや?

  1. 港湾施設、鉄道網などの爆撃はそれを行い“続け”ないと効果は出ません。なぜならそんな大事な所を破壊されたら、真っ先に修理するでしょうから。ドイツ空軍はゲーリングにより主として陸軍直協型の空軍として再建されました。ゆえに連合軍より劣った戦力で華麗な電撃戦を決められました。しかし英本土航空戦で見られるように“長期に渡り爆撃を続ける”という行動は向いてませんでした。なにより強大なソ連陸軍と対決するドイツ陸軍地上部隊の防空、支援のために余裕がなかったんじゃあないでしょうか。
    kazu

  2. ドイツ空軍が陸軍直協型として建設されたという主張は、根も葉もないものです。
    陸軍直協になってしまうのはドイツが大陸国家であり、しかも国土が狭く戦略縦深が浅いという絶対条件から仕方なしにそうなってしまっているのであって、実際にはドイツ空軍は独立兵力としての地位を確保しようとあらゆる努力を払っていますし、そのドクトリンたる「機動的航空戦」(オペラティフェール・ルフトクリーク)も「陸軍との共同」を第一義としたものではありません。
    また、そもそもゲーリングは自分の息のかかった「自分の領分」として空軍の独立と空軍省の創設をごり押ししたのですから、わざわざ陸軍の下僕になるような性格の空軍の存在を許すはずがありません。
    だいたい、そうであれば、ドイツ空軍の爆撃機の主力はシュツーカであって然るべきですが、ポーランド戦からフランス戦にかけて、急降下爆撃機は爆撃機兵力のごく一部を構成していたに過ぎず、主力は西ヨーロッパでの戦略航空作戦(英国は考慮されていない)を念頭に置いた双発爆撃機です。
    質問の本題から外れてます。
    ソ連に対する戦略的航空作戦については朝日ソノラマ新戦史文庫「東部戦線のドイツ空軍」に詳しいのですが、戦勢がドイツに決定的に不利になった1943年後期
    から本格的に開始されました。
    というのも、それまでは空軍は陸軍の地上戦での勝利に望みをかけ、それへの直接的・間接的な協力に忙殺されて、独自の作戦をやろうにも、それを行うだけの「余裕」がなかったからです。しかし、地上戦での勝利がおぼつかなくなったため、空軍は独立兵力として東部戦線の勝利に貢献する道として戦略爆撃作戦を選択しましたが、あまりにドイツそのものの戦略的条件が悪化していたせいで、全くのジリ貧状態のまま、かえってドイツ空軍爆撃機部隊にとどめをさす結果となってしまいました。
    鉄道攻撃作戦は、戦術的には大成功でしたが、大戦後期のドイツ空軍最大の敵、燃料不足の為に徹底さを欠きました。
    工業地帯に対する戦略爆撃は、ドイツ爆撃機の性能不足、機数不足、これまた燃料不足、そして陸軍の相次ぐ敗退の為、ほとんど不発に近い成果しかあげることができませんでした。
    そして、結局燃料不足が大食らいの爆撃機隊を自壊に導くことになります。
    そのほかに戦略爆撃と言えそうなのは1941年〜1942年のモスクワ空襲ですが、やはり爆撃機の性能不足と機数不足にたたられ、また、防御不足から高射砲に手ひどくやられ、挫折しています。ロンドンブリッツとほぼ同じ展開と思っていただければ良いかと思います。
    ムルマンスクをめぐる航空戦は、あまり真剣なものとは言えませんでした。
    ただでさえ兵力不足の第5航空軍ですから、防御の堅い港湾を強襲すればたちまち兵力が尽きてしまいます。PQ/QPの船団を襲うのは、この点でも理に叶った選択と言えます。PQ18まで護衛空母はついていませんでしたし、CAMシップでさえPQ14からです。初期の援ソ船団の対空防御力は低いのです。
    ムルマンスク鉄道の攻撃は、フィンランド空軍の担当でした。これも、第5航空軍の兵力不足の故です。
    フィンランド空軍は戦闘機こそ少数精鋭、一騎当千でしたが、爆撃機兵力は全くなってないとしか言いようがない状態でしたので、戦闘機による機銃掃射で機関車を撃破して貨物を遅滞させる程度のことしかできませんでした。
    まなかじ

  3. おお、友よ。同志よ。そうなんだ。「前方に対戦車砲陣地、スツーカの来援を乞う!」なんてシーンはあり得なかったんだ。「東部戦線の・・・」はあの文庫には似合わないほどの硬い内容ですが、名著ですよね。あれを見ると直協機の代表みたいなスツーカでさえも、前線の戦術目標より戦略的重要目標を正確に攻撃するためのものらしいということが判ります。
    BUN

  4. そりゃもう、シュツーカは昼間精密爆撃用の機体ですよ。
    アメリカは重爆撃機+ノルデン照準器でやろうとしましたけど、ドイツはより直接的にアプローチをしたと。
    He177に急降下爆撃をやらせようというのも、そのせいでしょう。
    まあ、ウーデットさんが、我が海軍の小園さんのような単なるマニアだったから…という定説の説得力も無視できませんが。
    まなかじ

  5. でも、普通、あまり受け入れてもらえませんよ。あの機体を戦車の友として広めたタミヤが悪いんでしょうか・・・。
    「独の小園司令」はやっぱりビルデ・ザウ戦法とエルベ部隊の発案者であるハヨー・ヘルマン少佐ではないでしょうか。
    BUN

  6. いや、受け入れるも何も
    「戦略爆撃が出来たら良いな」ってのは何処の国でも思うことで
    あの日本陸軍だって海軍の陸攻と共同で都市爆撃してます
    これを戦略爆撃と呼ぶのかどうかはともかくとして
    「遠い敵地の都市目標を大型爆撃機を多数投入して爆撃する」という
    技術的な課題は同等ですよね

    重要なのは、そういった能力を独が獲得しなかったって事で
    国家としての戦略爆撃能力が無かった事が
    独空軍=戦術空軍って評に繋がったのでは無いかと思います

     この場合の能力とは
     空軍当局が為政者に実施方針の説明をし、承諾を得ることや
     十分な性能の戦略爆撃機を開発する能力を含めます
     開発は技術だけでなく、妥当なコンセプトを打ち立てる能力も含むとします

     つまり急降下重爆撃機なんてコンセプトが通るようでは駄目だって事ね(笑)

    SUDO

  7. そうなんですけど、微妙にニュアンスが異なるんです。と、いうのも、「戦略空軍」より地上直協を目的とした「戦術空軍」の方がシステムとして後から産みの苦しみを伴って登場した傾向にあって、例えばスツーカは通説と異なり戦争「後半」においてこうした任務に適した機体として活躍したということを言いたいんです。
    BUN

  8. システム的に産みの苦しみは理解できますが
    戦略空軍妄想を諦めて、方向転換をする以上、苦労は仕方がないのでは?

    私としては、独空軍が戦略爆撃を夢想して
    それに努力していたことを否定するわけではありません
    ただ、単に、それを成し遂げる能力がなかった事が
    結果として、方向転換>現実の直視、をせざるを得なかったのでは無いかと・・・


    そうそう、思ったのですが
    重要施設の爆撃って戦略?戦術?

    戦線後方の橋梁は戦術目標?また、船団を襲撃するのは、戦略爆撃?

    実際、英国やソ連相手なら、こういった船団を狙った方が
    工場や港湾を一生懸命爆撃するより効率的で
    潜水艦によるのも含めて、通商破壊は戦略攻撃だと思うんですけど
    どうでしょうか?>識者のミナサマ

    SUDO

  9. 「戦略」作戦と「戦術」作戦の区別は明確でないと思います。戦略核ミサイルが敵のミサイル・サイロを破壊するのは、むしろ戦術作戦ではないか。また、戦術核だって司令部が位置する都市の攻撃(戦略作戦)に使われるかもしれないわけだし。F111も米戦術空軍が持つ「戦略爆撃機」と言えるかもしれない。
    アリエフ

  10. 「戦略」「戦術」という語句そのものの意味から考えると曖昧になりますが、歴史的背景に注目すれば、戦略爆撃と戦術爆撃の差はかなり明快になります。1920年代初期に唱えられた、敵国主要都市への毒ガス攻撃により地上戦によらず、戦争を早期決着するという正しいのか狂っているのか判らない思想が、「戦略爆撃」です。通常爆弾による大規模攻撃や、精密爆撃による産業の基幹部分に対しての攻撃はこうした思想の亜種であるわけです。不完全な亜種ですから、こうした攻撃は最終的に核攻撃に行き着き本来のジェノサイド爆撃に戻るのです。
    地上直協空軍については、敵味方拮抗する前線の目標を適切に攻撃する様々な手法、組織が発達していなければ不可能なため、「戦略爆撃」より後の時代に登場する、ということです。
    BUN

  11. 有る程度の戦術行動>例えばどっかの丘を取るとか、において
    事前に空軍に要請して砲撃代わりに爆撃機を使うのは「戦術空軍」では?
    それにどれほど難しいシステムが居るのでしょう
    第一次大戦の頃からその手の使い方は有ったと思います

    飛行場と前線司令部に電話が一本通ってれば、なんとかなりますよね
    上海事変では空母に無線で翌日の要請をしてたみたいです

    何も「前方に敵!スツーカ呼べっ!」ってのが戦術空軍の全てではないし
    現代でも敵味方誤認の危険性が高いのではないかと(^^;;

    SUDO

  12. 「どれほど」かはとにかく「東部戦線・・・」の一読をお勧めします。貴兄にはきっと面白いですよ。
    BUN

  13. うい、東部戦線のドイツ空軍ですねφ(.. )

    早速週末に神田神保町を襲撃してきますです(^^;;


    SUDO


Back