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第二次大戦中に連合軍はドイツ本土の工場地帯や鉄道網を爆撃して,軍需物資の供給に一定の打撃を与えました.ならば、ドイツはソ連におけるかかる設備に対して爆撃を行ったのでしょうか.また、北極海航路を利用した援ソ輸送船団に対してのドイツ空・海軍による攻撃は有名ですが、同船団の目的地であるムルマンスクやアルハンゲリスクなどの港湾施設や鉄道網を攻撃したことはあるのでしょうか。 なんでや? |
kazu
陸軍直協になってしまうのはドイツが大陸国家であり、しかも国土が狭く戦略縦深が浅いという絶対条件から仕方なしにそうなってしまっているのであって、実際にはドイツ空軍は独立兵力としての地位を確保しようとあらゆる努力を払っていますし、そのドクトリンたる「機動的航空戦」(オペラティフェール・ルフトクリーク)も「陸軍との共同」を第一義としたものではありません。
また、そもそもゲーリングは自分の息のかかった「自分の領分」として空軍の独立と空軍省の創設をごり押ししたのですから、わざわざ陸軍の下僕になるような性格の空軍の存在を許すはずがありません。
だいたい、そうであれば、ドイツ空軍の爆撃機の主力はシュツーカであって然るべきですが、ポーランド戦からフランス戦にかけて、急降下爆撃機は爆撃機兵力のごく一部を構成していたに過ぎず、主力は西ヨーロッパでの戦略航空作戦(英国は考慮されていない)を念頭に置いた双発爆撃機です。
質問の本題から外れてます。
ソ連に対する戦略的航空作戦については朝日ソノラマ新戦史文庫「東部戦線のドイツ空軍」に詳しいのですが、戦勢がドイツに決定的に不利になった1943年後期
から本格的に開始されました。
というのも、それまでは空軍は陸軍の地上戦での勝利に望みをかけ、それへの直接的・間接的な協力に忙殺されて、独自の作戦をやろうにも、それを行うだけの「余裕」がなかったからです。しかし、地上戦での勝利がおぼつかなくなったため、空軍は独立兵力として東部戦線の勝利に貢献する道として戦略爆撃作戦を選択しましたが、あまりにドイツそのものの戦略的条件が悪化していたせいで、全くのジリ貧状態のまま、かえってドイツ空軍爆撃機部隊にとどめをさす結果となってしまいました。
鉄道攻撃作戦は、戦術的には大成功でしたが、大戦後期のドイツ空軍最大の敵、燃料不足の為に徹底さを欠きました。
工業地帯に対する戦略爆撃は、ドイツ爆撃機の性能不足、機数不足、これまた燃料不足、そして陸軍の相次ぐ敗退の為、ほとんど不発に近い成果しかあげることができませんでした。
そして、結局燃料不足が大食らいの爆撃機隊を自壊に導くことになります。
そのほかに戦略爆撃と言えそうなのは1941年〜1942年のモスクワ空襲ですが、やはり爆撃機の性能不足と機数不足にたたられ、また、防御不足から高射砲に手ひどくやられ、挫折しています。ロンドンブリッツとほぼ同じ展開と思っていただければ良いかと思います。
ムルマンスクをめぐる航空戦は、あまり真剣なものとは言えませんでした。
ただでさえ兵力不足の第5航空軍ですから、防御の堅い港湾を強襲すればたちまち兵力が尽きてしまいます。PQ/QPの船団を襲うのは、この点でも理に叶った選択と言えます。PQ18まで護衛空母はついていませんでしたし、CAMシップでさえPQ14からです。初期の援ソ船団の対空防御力は低いのです。
ムルマンスク鉄道の攻撃は、フィンランド空軍の担当でした。これも、第5航空軍の兵力不足の故です。
フィンランド空軍は戦闘機こそ少数精鋭、一騎当千でしたが、爆撃機兵力は全くなってないとしか言いようがない状態でしたので、戦闘機による機銃掃射で機関車を撃破して貨物を遅滞させる程度のことしかできませんでした。
まなかじ
BUN
アメリカは重爆撃機+ノルデン照準器でやろうとしましたけど、ドイツはより直接的にアプローチをしたと。
He177に急降下爆撃をやらせようというのも、そのせいでしょう。
まあ、ウーデットさんが、我が海軍の小園さんのような単なるマニアだったから…という定説の説得力も無視できませんが。
まなかじ
「独の小園司令」はやっぱりビルデ・ザウ戦法とエルベ部隊の発案者であるハヨー・ヘルマン少佐ではないでしょうか。
BUN
「戦略爆撃が出来たら良いな」ってのは何処の国でも思うことで
あの日本陸軍だって海軍の陸攻と共同で都市爆撃してます
これを戦略爆撃と呼ぶのかどうかはともかくとして
「遠い敵地の都市目標を大型爆撃機を多数投入して爆撃する」という
技術的な課題は同等ですよね
重要なのは、そういった能力を独が獲得しなかったって事で
国家としての戦略爆撃能力が無かった事が
独空軍=戦術空軍って評に繋がったのでは無いかと思います
この場合の能力とは
空軍当局が為政者に実施方針の説明をし、承諾を得ることや
十分な性能の戦略爆撃機を開発する能力を含めます
開発は技術だけでなく、妥当なコンセプトを打ち立てる能力も含むとします
つまり急降下重爆撃機なんてコンセプトが通るようでは駄目だって事ね(笑)
SUDO
BUN
戦略空軍妄想を諦めて、方向転換をする以上、苦労は仕方がないのでは?
私としては、独空軍が戦略爆撃を夢想して
それに努力していたことを否定するわけではありません
ただ、単に、それを成し遂げる能力がなかった事が
結果として、方向転換>現実の直視、をせざるを得なかったのでは無いかと・・・
そうそう、思ったのですが
重要施設の爆撃って戦略?戦術?
戦線後方の橋梁は戦術目標?また、船団を襲撃するのは、戦略爆撃?
実際、英国やソ連相手なら、こういった船団を狙った方が
工場や港湾を一生懸命爆撃するより効率的で
潜水艦によるのも含めて、通商破壊は戦略攻撃だと思うんですけど
どうでしょうか?>識者のミナサマ
SUDO
アリエフ
地上直協空軍については、敵味方拮抗する前線の目標を適切に攻撃する様々な手法、組織が発達していなければ不可能なため、「戦略爆撃」より後の時代に登場する、ということです。
BUN
事前に空軍に要請して砲撃代わりに爆撃機を使うのは「戦術空軍」では?
それにどれほど難しいシステムが居るのでしょう
第一次大戦の頃からその手の使い方は有ったと思います
飛行場と前線司令部に電話が一本通ってれば、なんとかなりますよね
上海事変では空母に無線で翌日の要請をしてたみたいです
何も「前方に敵!スツーカ呼べっ!」ってのが戦術空軍の全てではないし
現代でも敵味方誤認の危険性が高いのではないかと(^^;;
SUDO
BUN
早速週末に神田神保町を襲撃してきますです(^^;;
SUDO