2067 |
大変に漠とした質問となることを先に謝罪申し上げます。 軍用拳銃と民間用・護身用拳銃との、使用方法&構造上の相違は有りますか?口径の大小(威力差)が違う事、負紐を取り付ける事は、言うまでもないですが、他に相違点てあるでしょうか。 今回はオートマチックに絞って、回答をお願いしま す。 また、特筆すべき差異が認められるならば、銃砲店で民間用拳銃を自弁購入した将校は軍用・民間の性能についての差(=軍用としての欠点)をクリアーしていたのでしょうか。どの時代でもいいですができれば大戦終結以前の話を中心にお聞かせください。 紅葉饅頭 |
- 薄学ながら回答させて頂きます。
質問以外の差異は装弾数(民間販売用は最大10発まで)であると思われます。
MK23 SOCOM Pistolの場合軍用12発→民間用10発。
ただ、それがマガジンの構造で10発しか入らないのか、銃本体に細工がされているのかは不明です。
犯罪防止の理由からサウンドサプレッサーの取り付けも不可になっています。
YAS
- >軍用拳銃と民間用・護身用拳銃との、使用方法&構造上の相違は有りますか?
使用法はそれぞれの軍の規定に従うものですし、構造上はほとんどかわらないとおもいます。
少なくとも、わたしの知る限り(コレクターさんに撃たせてもらった経験からいくと)前大戦終結までの拳銃で、軍制式、民生用の両方が造られたものを比べてみると、民生用のものよりも表面の仕上げなどが「荒く」感じます。
中華観音
- 軍用拳銃と民間向け拳銃の差異なんてある意味あってないようなもんだと思います。
基本的に軍用拳銃はその国の軍が出した性能要求を基に造兵廠や銃器メーカーが試作品を開発し、軍の要求を満たしているかどうかの評価をした上で採用されるものです。その軍制式となった拳銃と同一仕様の製品を民間向けにも販売するかどうかはそのメーカーや造兵廠の商業戦略などによります。
米軍の現制式拳銃であるM9ピストルとベレッタM92FS、自衛隊の9mm拳銃とSIG/ザウェルP220にしても、基本的にはほぼ同一のものであり、違いといえば刻印、付属部品・機能、表面および微細な部分の加工・仕上げ等、あとは使用する弾薬(民間向け拳銃はそれこそ多種多様な弾薬を使う可能性があるが、軍用拳銃は基本的に軍制式弾薬しか使わない)くらいです。これらもその軍の性能要求等によって決まってくるものです。
ちなみに、軍用版と民間版で機能に明確な違いがある例を探してみると、ドイツ軍制式拳銃のP8とH&K USPは手動セフティのオン/オフ位置が逆になっています(P8は押し下げてオン、USPは押し上げてオン)。
ただし、民間版は市場のニーズに応じて口径や全長等のバリエーションを各種用意する場合が多いので、それらは当然ながら軍用版とは一部似て異なるものになります。
また、法的な規制などによって軍仕様とまったく同一の拳銃を民間向けに販売できない場合もあります。例えばイタリアでは9mmX19は軍用弾薬とされ民間での所持が禁止されているため、ベレッタ社はイタリア国内向けにM92FS系の口径バリエーションであるM98(口径9mmX21)を販売しています。
>将校が拳銃を自弁する話:旧日本陸軍の場合
旧日本陸軍では騎兵・憲兵・重機関銃班長など一部の兵科・部署以外には制式拳銃の官給が進まず、騎兵・憲兵以外の兵科の将校に拳銃の自弁を認めていたのは有名な話ですが、この時口径や全長、重量等についての規定は特になかったようで、将校たちが買い求めた海外製拳銃の銃種は多岐に渡ったようです。中でも特に多かったのがブローニングM1910とコルト・ポケットM1903でした。これらは共に口径.32ACPで、軍用拳銃弾としてはいささか低威力な8mm南部弾よりさらにローパワーでしたが、軽量で構造的完成度が国産自動拳銃に比べて遙かに高かった点が人気を呼んだようです。
>1
自動拳銃のマガジン装弾数の10発規制はアメリカ民間市場での話です。マガジン側面に溝を入れたり底上げして10発しか入らないようにされたアメリカ市場向けのマガジンが付属しています。
ただし、軍や法執行機関向けにはこの装弾数規制は適用されません。また、規制発効日より前に民間市場に出回った多装弾マガジンに関しても回収等の措置は取られていません(販売・所持が規制される)。
ブラック・タロン
- 質問について少々説明不足のところがあったようです、申し訳ありません。
今回答いただいた皆さんは軍用拳銃とその銃の民間版の差異について主に解答いただきましたが、そうではなくてそもそも軍用に作られた銃(つまり軍用拳銃の民間版もこちらに入ります)と民間の護身専用、もしくははじめからそちらを意識して設計された銃についての対比をお聞きしたかったのです(つまり銃の種類はまったく別の物の比較となります)。それらの銃についての傾向的差異などありましたらご教授ください。
紅葉饅頭
- つまり「官公庁に納入する製品」と「民間市場に販売する製品」の違いではないでしょうか。
前者の場合はユーザー(軍組織)自身が使用環境を想定し、必要な機能・性能をまとめて仕様書を作成し、それをメーカーに提示して製品を作らせ(それが複数であれば競作となる)、最終的に製品が仕様・規格を満たしているかどうかを検査し、合格すれば採用・量産となります。
後者の場合はメーカーが市場調査を行ってユーザーニーズを推測し、それを満たすであろう…即ち売れるであろう製品企画(規格ではない)を立て、その企画に基づいた製品を開発・製造・販売します。
官用品は「まず最初に仕様書ありき」であり、細かい部品1つ1つにもいちいち識別番号が割り当てられ、その仕様が書類で定められています。そして一度決まった仕様書というのはそう簡単には変わりません。ですから官用品には銃身長の違う複数のモデルだとか、アルミフレームとステンレスフレームの2種類があるとか、高級士官用にアジャスタブル・サイトを備えたモデルがあるとか、そういった多様性は(元々の仕様がそうなっていない限り)普通はありません。
一方民間向け製品はまずモノを作って販売した後でユーザーの声(多くの場合はエンドユーザー直接の意見ではなく、販社の声)を取り入れて改良・モデルチェンジ・ラインナップ充実などを行う必要があり、ある程度の仕様変更を前提にして設計されている場合が多いです。
(もっとも軍用モデルでも輸出にあたって仕様変更を求められることが多く、自国軍の要求仕様だけを見てガチガチに固めてしまような事は現在は少なくなっていますが)。
また民間モデルの性能仕様は「それが売れるか、売れないか」が最重要項目であり、実射撃性能なんかはハッキリ言って二の次です。しかしあまりにも性能が悪ければ「欠陥商品」の烙印を押されて市場で総スカンを食うので、そこは各メーカーごとのポリシーに従い原価/性能比を見据えて性能を決定しています。
例えばコルト社の近年の銃は品質低下が嘆かれて久しいですが、会社にしてみれば「COLT」のブランドネームだけで十分な競争力を持っているのに、わざわざ加工/検査精度(=原価)を上げた製品を出して自ら利益率を落とすべき理由は無いわけです。それに消費者の大部分は下手糞な日曜シューターであり、銃本来の精度が出せるほどの腕のユーザーはごく一部しか居ない訳ですし。
では軍用銃が質実剛健・性能一点張りかと言うと必ずしもそうではありません。軍用銃の評価を決めるのはその軍隊における評価担当組織であり、その組織が持っているポリシーを露骨に反映した性能となります。その軍隊が性能より量産性を重視するならトカレフ TT.33 のような銃が出来ますし、量産性より性能を重視すれば SIG.P210 のような銃が出来ます。
また、軍用銃は戦時においては大量消費製品、平時においては耐久消費製品とその性格を変えます。平時における軍用銃の寿命は民間銃よりも長期間に設定される場合が多く、しかも税金で納入される品ですから必要以上に贅沢な素材を使うことも許されず、必然的に「安く、強く、長持ち」する鋼鉄を使う場合が多いようです。
ささき
- 米軍の例しか知りませんが、M1911やM9はコマーシャルモデルより明らかに(新品
の状態で)可動部のクリアランスが大きいそうです。
軍用ではいわゆる「馴らし」をすることがない(納入即実動)なので工場出荷の状
態で即、確実に作動するようスライドとフレームの噛み合わせなど民間用と比べて
緩めに組んであるとのことです。
ボルカニック
- 銃があってそれに適した用途に振り向けるのではなく、用途があってそれに適したように銃を作るものでしょう?
で、軍用だか民間用だかっていうのはナンセンスな分け方であって、答えようがない。
軍用拳銃というのは軍がそれに使いたいという用途に対して求める性能を満たしている銃というだけのことであって、日本軍だけをとってみても九四式と十四年式は違う用途に対して要求されているものだから性能も仕様もまるで違いますね。
民間用の銃だって、大型獣狩猟のサイドアーム用44リボルバーからプリンキング用のちゃちな22オートまで、まず目的があって、そのニーズに合わせて作るもの。
拳銃に限らず鉄砲ってのは引鉄を引けば弾が出る、その弾は狙ったところに行くというのが最低限必要な要素であって、それ以外はまさにケース・バイ・ケースであって、傾向もへったくれもないというのが答になるでしょうか。
さて、戦前日本軍将校の場合、市場にある拳銃から選ばなければなりません。
しかし、陸軍はとくに規定は定めなかったわけですから、陸軍は歩・砲・特科・輜重その他の将校の拳銃に対して特にこれという期待も要望もしていない、つまり護身用以上のものでないことがわかります。
となれば民間用の拳銃で要求を満たせないものは基本的に存在しないわけで「引鉄を引けば弾が出る、その弾は狙ったところに行く」さえ満たしていれば、貧乏尉官が買うのですからあとは安い方に行きます。
この場合、主たる要求仕様は価格となるわけです。
FNやコルトの小口径はまずたくさん作っているので安かったことが第一で、小口径ゆえに軽くて持ち歩きに便利で、経験の深い会社の製品なので信頼度が高い、というのは付随要素でしょうね。
まなかじ
- >.軍用拳銃と民間用・護身用拳銃との、相違
紅葉饅頭さんの本件質問は先日のAnsQ.2032 一式拳銃(浜田式)の件、それが二式拳銃へと変化する事に
関連した疑問なかもしれませんね。
よってその時代の自働拳銃を引き合いにしましょう。一式拳銃(浜田式)の参考となった
偉大なブローニング1910(基本はコマーシャル護身用)と、その発展型 軍・公用ブローニング1922を較べてみます。
http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Browning_1910_Auto.png
http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Browning_1922.gif
この両者の関係は1910を弾数増加させ、銃身を約1in伸ばし、ランヤードリングを追加した物が1922である
と考えられています。確かにその通りですが、その真意はあまり知られていません。
軍・公用 として、弾数を増加させ、戦場での紛失防止としてランヤードリングを追加させた事は理解出来ますね。
では、銃身長を伸ばした理由は初速UPの為でしょうか? いえNOです。
これは、照準基線長を長くしたい為です。 そしてリアサイトも注目です。
1910はスライドと一体削り出しの小さい物です。オマケみたいな物です。対し1922は、別部品として組み付け、
蟻溝勘合させて左右調整可能な物です。 つまり1922は命中精度の向上を考えています。
(軍用のこの手のサイトは、個人レベルでは調整不可。専用工具を使用し、工場出荷時又は、後方支援部署にて調整済み)
軍・公用拳銃は、ある距離(少なくとも20m前後)での命中精度要求(グルーピング10cm以下)があり、
狙って撃ち当てるという要素を考えなければならないのです。
この辺の要求有無や、条件厳しさが、民間用・護身用拳銃とは大きく異なりその形体差となります。
まとめ。
軍用として自動拳銃が大型化するのは、口径大・弾数多・反動大・耐久性 等の理由の他に、
照準基線長を長くとりたいという要素も有るのです。
各種軍用自動拳銃と各種護身用中・小型自動拳銃のサイト廻りを色々と見比べる事も面白いものです。
蛇足、
>3.基本的にはほぼ同一のものであり〜民間向け拳銃はそれこそ多種多様な弾薬を使う可能性があるが、
軍用拳銃は基本的に軍制式弾薬しか使わない
>6.米軍の例〜コマーシャルモデルより明らかに(新品の状態で)可動部のクリアランスが大きいそうです。
さすが、皆さん色々と考察していますね。 軍用拳銃を一般市販化するにあたっては、使用弾の多種を考えて、
スライド重量、リコイルスプリングの変更調整、薬室やライフリング、弾の送り道であるフィーディングランプ 等の
細部寸法・形状を意図的に相違させている可能性はありますね。
又、ボルカニックさんのお話の様に、同一銃で部品製造公差に軍用と民用とで差を付けて製作している事も十分考えられます。
軍用の方が部品製造公差大。・・・・少なくとも米軍はこれをやります。
>7.民間用の拳銃で要求を満たせないものは基本的に存在しないわけで「引鉄を引けば弾が出る、その弾は狙ったところに行く」
これが中々難しいもので、私の前説のサイト廻りの話が重要になってきます。
さて、帝国陸軍は拳銃に対しても、公算躱避(こうさんだひ)を要求していませんか。
公算躱避: 例えば、50mに於ける命中精度要求。 上下左右何十センチ以内とか。
民護身用中・小型拳銃では、厳しいものです。
軌跡の発動機?誉
- 今回の質問に関しては、いつもと一寸違う観点から調べてみようと思い結果論的になりますが質問させていただきました。
ん〜、ささきさんのおっしゃった「売れるか売れないか」のお話は大変参考になりました。コルトもあと十数年持つのでしょうか・・・。
しかし細かい点でいろいろと差異が出てくるものだということが分かり勉強になりました。ありがとうございました。
紅葉饅頭