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漠然とした質問なんですが、爆弾等に使われている火薬の破壊力は大戦後どれくらい向上したのでしょうか?例えば大戦中の250キロ爆弾と現在の250キロ爆弾は使用されている火薬の量が同じならどれくらい破壊力が上がっているのでしょうか?それとライフル弾等に使われている推進薬も性能が向上しているはずなのでもっとカートリッジをコンパクトに出来そうですがやはり燃焼時にカートリッジ内部にある程度の空間が必要なんでしょうか?そこを何とは技術でと思うのですが。 ビジネスフライト |
- 後者のライフル弾の質問にのみ回答します。 回答し易い様、質問を2つに別けさせてもらいました。
Q1.>ライフル弾等に使われている推進薬も性能が向上しているはずなでもっと
カートリッジをコンパクトに出来そうですが
Q2.>やはり燃焼時にカートリッジ内部にある程度の空間が必要なんでしょうか?
そこを何とは技術でと思うのですが。
A1.その通りです。 その実例が、かの有名な 7.62mmX51 NATO小銃弾薬です。
WWI〜II間の米軍用小銃弾薬 30−06弾薬(7.62mmX63)を、
火薬(発射薬)の進歩でコンパクト化した物が、このNATO弾です。
ほとんど同威力で、薬莢長を2割短く出来ました。弾薬全長では1割の短縮です。
*発射薬の進歩・改良:シングルベース火薬→ダブルベース火薬への変更、火薬粒形状の変更 等。
銅被甲普通弾どおしでの比較
呼称 薬莢長 弾薬長 初速 発射薬量 ライフリング転度
7.62mmX51 51mm 70mm 825m/s 3.0g 1-10
7.62mmX63 63mm 77mm 822m/s 3.2g 1-12
*薬莢長が2割短く出来たのに、全長で見ると1割短縮になってしまった理由は、
飛翔弾丸(Bullet)が両者ほとんど共通だからで、短縮効果が少なくなってしまいました。
飛翔弾丸及び初速が、ほぼ共通なのに、ライフリング転度が相違する事が面白いですね。
A2.今も昔も、ライフル弾薬の一般論としては、薬莢内の空間は少ない方が、弾道には良好だといわれています。
(火薬は酸化剤を含んでいるから、空気・空間が必要では無いと思いますが)
薬莢内の容積と発射薬重量との関係を「装填比重」とか、「エアスペース」の大小とか言いますが、
早い話、薬莢内はスカスカより、火薬がめいっぱい充填されている方が、初速や弾道のバラツキが
少ないとされています。
よって、今昔、ライフル用小銃弾は、個々の薬莢が大きくなろうと小さくなろうと、
火薬がめいっぱい(スペース比90%以上)充填されているものです。
*黒色火薬時代は、元々火薬威力が少なかったので、そんな理論がどうのこうの関係なく、
めいっぱい詰めていました。
余談。
米国狩猟界では、上記7.62mmX51 NATO弾より、30−06弾の方が好まれています。
米国のハンターは、使用する弾を自分の好みに合わせて、色々と発射薬の種類・薬量を調整、自作します。
薬莢が大きい30−06弾の方が、このエアスペースとのも関係も含めて調整自由度が有るから好まれているのでしょう。
以上。 爆弾についての回答は、他の方にお願いします。
軌跡の発動機?誉
- 鉄砲の世界ではダブルベースって戦後からなんですね・・・。
艦砲では19世紀からダブルベースでして、威力を落としてエロージョン防止したり、火薬形状を工夫して燃焼時間を弄ったりと色々やってます(つまりエアスペースを積極的に作る)
まあ、ダブルベースを小銃に適用するのは凄い進歩なんでしょう。
爆弾用ですと、所謂スリックだと大して変わらないと思います。
というか、戦後の進歩の何割かはドイツの技術を連合軍側が入手したことによるもので、つまりドイツの同盟国はそれを既に入手していたのです(勿論すべてを実用化できたわけではない)よって総合性能で見た場合、大戦時の枢軸側最新火薬と戦後世代NATO装備ではさほど違いは無いと考えられます(勿論、以降の進歩は凄いでしょうが)
SUDO
- 初期ポテンシャルとか色々計算方法があるけど、誰にでも比較的判り易い非常に単純な物差しとして「爆速」があります。爆薬なんてぇ代物は密度にそれどほ大きな変化がないため、爆速のほうが実現象感度が高いせいもあるんですけど。その前提で答えれば、同一材料及び構造の用いた弾殻であれば爆速分だけ運動エネルギが上がるという解釈で大きくは間違っていないと思うよ。実際はというと、同一材料・構造とは限らないんですが(当然、高強度材料になれば自然破片生成時の圧力が変わったりするので、初期破片速度も微妙に異なったりする)。
sorya
- >>SUDO氏
装薬形状と線燃焼速度には確かにある相関がありますけど、それは露出断面積の効果が主であり、軌跡の発動機?誉氏の言うものとは違う現象になります。軌跡の発動機?誉氏の言うエアスペースと砲口初速の関係は、空気「層」と燃焼ガス「層」との相互作用に相当するものであり、小さなエアスペースだと空気と燃焼ガスが混合することで砲口速度の低下量にそれほど大きな感度を生じませんが、ある程度離すと空気層<==>空気−燃焼ガス混合層<==>燃焼ガス層という主に三層からなる相互作用状態となるため加速効率が一気に下がり、その結果砲口速度の低下量(=傾き)が大きくなる現象です。
sorya
- 年代と爆薬の爆速の関係については、下記が判り易いです。
TRDIの海外技術動向の「さく薬の爆速」
http://www.jda-trdi.go.jp/doukou/03a/03a-15.gif
簡単に説明しますと、TNTからこっち、爆薬の爆速は、それほど大きな
向上は見られないということになります。
それから、航空爆弾ではないですが、榴弾の威力の向上については、
下記が判り易いです。
TRDIの海外技術動向の「りゅう弾弾頭の威力範囲」
http://www.jda-trdi.go.jp/doukou/03a/03a-16.gif
簡単に説明すると、一発弾の威力範囲の向上は、ほとんど無く、
ICM化による威力範囲の向上が顕著であるということです。
ICMとは、「Improved Conventional Munitions」のことで
日本語では、改善型通常弾薬と訳されているようです。
弾殻内に、複数の子爆弾を内蔵し、目標上空で散布すること
により威力範囲を拡大した弾薬です。
また、別の呼称としては、対人/対装甲両用子弾を内蔵した
ものをDPICM、散布地雷・発煙弾・照明弾・ジャマー弾などを
子弾とするものを「カーゴ弾(cargo munitions)」と称します。
航空爆弾の場合は、上記と同様の方法のクラスター爆弾が
あります。
また、爆弾に内蔵する爆薬を酸化剤を含まない燃料に置き換え、
空気中に散布・爆発させる燃料気化爆弾は、通常爆弾より
同じ質量で、放出するエネルギーは大きいです。
ただし、通常爆弾と燃料気化爆弾で、どちらが威力があるかは
単純には比較できないと思います。
余談ですが、Fuel/Air Explosiveを「燃料気化爆弾」って訳す
のって誤訳じゃありませんか?
私は、「燃料」と酸化剤である「空気」による「爆発物」という
意味だと思います。だから、燃料空気爆弾の方が正確ではないかと。
いちのへ
- >4
おおなるほど、なるほど。
判りやすい説明有難うございます。言われるまで気がつきませんでした。
となると、やはり基本的にはびっちり詰めたほうが良いという事なんですね。
SUDO
- 何の本で読んだのかは覚えていませんが、昨今の炸薬の威力向上は、実は暴発防止の着火温度上昇がもたらした副産物だそうです。と言うのも、音速の数倍ですっ飛ぶ砲弾は、大気との摩擦で表面温度がかなり高くなり、低温でも爆発するような火薬を積めるとその熱で暴発する危険があるからだそうです。
WC-Co
- 諸氏の回答を見てちょっと・・・・爆弾炸薬と発射薬は、進歩・研究方向が相違すると思います。
爆弾は、その充填火薬の急速膨張ガスエネルギーそのものや、飛び散る弾殻破片の運動エネルギーで破壊効果をだすので、
出来るだけ速い爆速向上を研究するのでしょう。(9000m/s以上が狙いですか!!)
しかしながら、今昔(無煙火薬として)ライフル弾用発射薬の燃焼速度は、桁違い低い音速以下の速度です。
ライフル弾の発射薬は意外にも初速が高い程、暖燃焼火薬の物を選択します。
マグナムけん銃弾は短銃身の為、比較的早い火薬を選択しますが、「一瞬のガス高膨張→一瞬の高腔圧」を狙うより、
薬室内から銃身前半にかけて、ジワジワと燃やし、燃焼ガスが多量に且つ、長い時間発生させて弾丸に速度を与えます。
(腔圧はある程度高い方が良いですが、平均腔圧と燃焼時間とのバランスが必要。)
然るに、銃砲の発射薬の進歩・改善は、むやみに爆速・燃焼速度を上げる方向では、ないと思います。
つまり、ある燃焼速度を狙った火薬に於いて、その燃焼速度の均一な安定性・再現性、
逆にひとつの火薬で意図的に可変燃焼速度を狙った物(着火初期は急燃焼であり、段々と暖燃焼に変化する物、又はその逆)、
エロージョン対策(低燃焼温度)、長期保存・耐環境劣化性、伝火・着火性、耐誘爆性、製造コスト、
それらを発射薬粒形状や大きさと関連させ、コンパクト化したい、低コスト化したい、安全にしたいというのが、
銃砲発射薬の研究方向ではないかと考えますが、この辺はsorryさんが詳しいかと思います。 どんなもんでしょうか。
〜?誉
- ↑最後の方で誤字しました。 誤: sorryさん → 正: soryaさん
スミマセンです。
〜?誉
- バル博士の16インチ砲を2本繋げたHARRPの開発時に弾速のバラツキが、砲尾からの火管による着火では前方へ進む発射薬の爆発の進行が
斉一に起きず、前方に装填された発射薬の爆発時期に微妙な違いが生じてしまうという原因を発見したと聞きます。
解決策として薬嚢を2個ごとに電気雷管を設置して、発射薬の発火を揃える方法により、弾速のバラツキが減り、弾速も向上したとか読みました。
戦車砲や野砲、機関砲ではそうした薬室内の異なる場所の発射薬の着火時期の違いを縮小するような操作は行ってるのでしょうか?
HARRPの例は薬室が数十センチx2−3mという大きなもののための例外なのかもしれませんが。
Navy