2030 |
ドイツ軍のゲルリヒ砲についての疑問です。 本などで見ると「弾芯に希少金属のタングステンを使用していたため使用が終了」みたいに書かれてますが、弾芯をちがう金属に替えてつかう、ということはできないのでしょうか? 自分の限られた知識の中での想像では弾芯の問題もあるがテーパー状になった砲身の製造が困難だから、というのもあるかと思いますがどうでしょうか? ぽち |
- >弾芯をちがう金属に替えてつかう、ということはできないのでしょうか?
基本的には出来ますね。安価な鋼弾芯と言う手もあるでしょう。
しかし、タングステンのときのような高い貫徹能力は望めないでしょうね。
>「弾芯に希少金属のタングステンを使用していたため使用が終了」
>みたいに書かれてますが、
みかけますね(苦笑)。タングステンの不足は、原因の一つではあるで
しょうけど・・・。
ゲルリッヒ砲の出現当時は、通常砲と比較すると、高コストで汎用性が
低いものの、軽量で貫徹能力が高かったのです。その後、通常の砲身で、
APCR、APDS、HEATが運用されるようになると、貫徹能力の利点が低くなり、
無反動砲やロケットランチャーが開発されると、軽量という利点も無くな
りました。これらの要因により、ゲルリッヒ砲は、開発国のドイツで少数
が運用された他は、採用されることが無かったのでしょう。
手前味噌で恐縮ですが、下記にゲルリヒ砲についてまとめた文章があります。
ご興味があれば、お読みください。
・ゲルリッヒ砲(漸減口径砲[taper-bore gun])
http://sus304l.hp.infoseek.co.jp/gun_type/gerlich.htm
いちのへ
- 鋼鉄弾はある程度以上に着速を上げても着弾の衝撃で自壊してしまうので(詳しいことは知りませんが衝撃インピーダンスによる限界だそうです)、貫徹力増大にはつながらないそうです。
ささき
- ティーガー1の主砲にも7.5cm漸減口径砲0725型が考えられましたが、700トンの在庫のうち弾丸にまわせる量が260トン(0725型砲弾1発につき1kgのタングステンが必要)。得策ではない、として撤回されたそうです。
その後、占領地収奪の甲斐があってか1944年初頭のシュペーアのヒトラーへの報告書によると、在庫1330トン・消費160トン・充足限界(節約していける期間?)10.6ヶ月という数字が出ています。装備を強行していれば、撃つ弾が無くなっていたかもしれません。
アルベルトに花束を。
バツ
- 弾薬生産はただでさえ、やばい事になっているので更に深刻になっただろう、ということで。
http://members.tripod.com/~Sturmvogel/GermWeapProd.html
バツ
- 2>
近年のAPFSDSのような高速弾の侵徹では、着弾の衝撃によって生じる
圧力により、固体が塑性変形を開始し流体のように振舞う領域に入ります。
この限界圧力は、ウゴニオ弾性限(HEL:Hugoniot Elasti Limit)と呼ば
れています。APFSDSのような高速衝突の領域では、装甲および侵徹体が
鋼であろうが、タングステンであろうが、ウゴニオ弾性限を越えることに
なり、侵徹体は消耗[erode](ささきさんは、これを「自壊」と表現して
いる?)しながら侵徹を進めて行きます。
一方、侵徹体の存速が大きいほど、侵徹体の消耗[erode]が大きくなるため
侵徹体の速度が大きければ良いというものでもありません。これらのこと
から、侵徹体の存速は、砲弾の長さを考慮して、出来る限り侵徹体の消耗
[erode]を軽減させ、流体的挙動を継続させる速度である必要があります。
ここからが本題なのですが、LD比が5〜6の鋼弾芯(レガシー砲弾の形状、
材質)ですと、着弾角度にも関係しますが、着弾速度がおよそ4500ft/sec=
1371m/secあたりが限界(破壊速度)だと手持ちの終末弾道学の本には書い
てあります。
そして、ドイツの2.8cm sPZb41の初速は1430m/sec、4.2cm Pak41が1265m/sec
7.5cm Pak41が1125m/secです。距離によりますが、着速は空気抵抗で低下しま
すので、鋼弾芯でも普通の対戦車砲よりは貫徹能力は高くできます。もちろん
タングステンカーバイトほどの性能は出せませんけど。
ということで、当時のゲルリヒ砲の初速ならば、鋼弾芯でも、それなり
の性能が出せたと思います(現代のAPFSDSの速度で、レガシー砲弾の形状
だと問題外ですけど)。
いちのへ
- >5. フォローありがとうございます。
ささき
- 非常に詳しい説明ありがとうございます。
ぽち