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油脂焼夷弾とエレクトロン焼夷弾って何が違うんですか?形状や威力?それとも作り方? らび |
- 油脂焼夷弾の中身はナパーム、つまりゲル化したガソリンで、これが広範囲に飛散して激しく燃え広がります。
いわゆるエレクトロン焼夷弾と呼ばれているものは、金属の還元反応(テルミット反応)を直接利用したもので、数千度に達する高熱の火柱を吹き上げ、鉄をも溶かします。
米軍が対日爆撃に用いた焼夷弾は各種ありますが、代表的なのは六角形の筒状の焼夷弾を束ねて投下し空中で散開させて撒き散らす集束焼夷弾で、このために多用された油脂焼夷弾M69は六角形の短径7.4センチで6ポンド、同じくテルミット・マグネシウム(エレクトロン)焼夷弾M50のそれは4.2センチで4ポンドと、たしかに大きさも異なります。
片
- 余談。両者は構造が異なるため、消火時の対応方法も異なっています。戦時中に発行された「現時局下の防空」(S16)によれば、
油脂焼夷弾:水を直接弾にかけず、濡れ筵、砂、土等を被せて消す。
エレクトロン焼夷弾:焼夷剤が燃えつくす迄は消えないので、濡筵類や、砂、土等を被せて火勢を抑え、長棒やシャベル等で戸外に持ち出す。
と解説されております。
さらなる余談。焼夷弾には、油脂・エレクトロンの他に黄燐をまき散らして発火させる「黄燐焼夷弾」もありました。炸薬で黄燐を散らすため、爆発力はありますが、火力は他の二種より弱いとされています。が、黄燐は自然発火するのと、人体に有害なため、消火時に素手でふれない、安全なところに運び出すよう指導されておりました。
印度総督
- もひとつ余談。エレクトロンとはマグネシウム合金の商品名で、ドイツのグリーシャイム・エレクトロン社が開発したことに由来するそうです。(p.138『東京を爆撃せよ -作戦任務報告書は語る-』奥住喜重・早乙女勝元著、三省堂、1990)
M69の開発に関しては、『東京大空襲』(E.バートレット・カー著、大谷勲訳、光人社、2001)の冒頭に詳しく書かれていますが、日本の木造家屋を最も効果的に焼き払うように設計され、某石油会社の副社長が深く関わっています。
OPD