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銃身のツイスト(ライフリングピッチ)について質問があります。 ・ツイストの緩急は発射する弾丸の特性に合わせて、 設計するとの話を聞きましたが弾丸のどんな性質が、緩急を左右するのですか? ・また、ツイストを緩くする事によって得られる弾丸の特性、 対してきつくした時に得られる特性とは何なんでしょうか。 ・ツイストをきつくすると抜弾抵抗が上がり、初速が上がるでしょうか? またシリンダーギャップが生じるリボルバーではこの効果は表れるのでしょうか? 長くなりましたが、質問のご解答をお待ちしています。お願いします! 赤ちゃん! |
- この分野は結構難しくてわしもまだうろ覚えの域を出ておりませんので、詳細は博学の方々からのフォローを願います(;^_^A
一応基本的と思われることを書くと、弾頭は銃身内を通過する際にライフリングによって回転力を与えられ、銃口から飛び出します。このときの弾頭はいわば過回転の状態で、コマのように弾頭後部を振るような状態(味噌擂り運動)で飛行していきます。しかし、ある程度飛行して回転が落ちると弾頭の飛行は安定します。
弾頭を安定して飛行させるためには、その弾頭の重量や形状に合った回転を与えられるライフリングの転度(ライフリング・ツイスト)が不可欠というわけです。
ちなみに5.56mmX45弾の場合、M193は1-12インチ(305mm1回転)、SS109は1-7インチ(178mm1回転)が適合ツイストとされており、現NATO標準弾であるSS109はM193(米軍が初期のM16で使用していた制式弾)よりも重弾頭(55gr→62gr)のため、ツイストをきつめに設定してあるのです(わしの知り合い曰くSS109に1-7インチのツイストはキツすぎだそうですが)。海外の軍用5.56mmライフルの輸出仕様等では、M193とSS109双方に対応するツイストとして1-9インチ(228mm1回転)近辺も用いられています。
武器Ans.Qの過去ログに関連話題スレ(No.1306)がありますのでご参考に。
ブラック・タロン
- Ans1.
ブラック・タロンさんの解説のおさらいですが、その銃・砲の目的に合った弾頭重量や形状、初速を相互に決め、
最も適切な弾道を得られる回転を与えられる様に、ライフリング転度を最後に決めます。
一般に、弾頭重量が重い程、弾頭が長い程(弾長/弾径 比:大)、初速が速い程、弾丸の高回転数を必要とします。
適切な弾道を得られる回転数を決めるには、色々な組み合わせの試射(トライ&エラー)や、近年ではコンピューターで
事前計算(空気効力や弾丸慣性モーメント、etc を基に)します。
弾丸回転数が決まったら、大まかに次式(の応用)で銃・砲のライフリング転度計算をして決定します。
等せい転度(後述)の場合
1.飛翔弾丸の旋転速度(Spead Of Rotation:回転速度)、単位 (rps)=毎秒回転数。
SOR (rps)=V0/L
V0:砲口初速 (m/s) L:ライフリング・ツイスト長(ピッチとも言う)(m)
2.又はライフリング傾角 (deg)で、計算する場合。
SOR (rps)={V0 X Tan α}/{πXd}
α: ライフリング傾角(度deg) π:3.14159−− d:口径(砲内径)(m)
又、ライフリングの転度の仕方は、二種類が存在します。
・等せい転度:ライフリングの転度(ライフリング・ツイスト)が、初めから終わりまで一定の物。
ライフリング製作容易。 通常の銃砲は、こちら。
・漸増転度:ライフリングの転度が、始めは緩やかで、終わり(砲口近く)において、所要の転度となっている物。
ライフリング製作厄介。
弾丸に所要の回転を急激に負荷させる事は、当然弾丸側面にも、銃・砲身にも、無理な力や抵抗が掛かりますので、
次第に回転を上げる漸増転度は理想方法と言えます。
急加速+急回転付加をさせる、小火器に適する物ですが、製作厄介な為、ほとんど見られません。
一部の高初速・中口径砲で見られる様です。(20mmバルカン砲 他)
Ans2.
二番目の質問に対する答えも、Ans1.にほとんど含められていると思いますが、別の視点で答えるとしたら、
偏流(ドリフト)影響の大小が考えられます。
同一弾、同初速で、ツイストを緩くすると(弾丸回転少)偏流値は小さくなり、ツイストをきつくすると(弾丸回転多)、
偏流値は大となり弾丸は、さらに外側に飛んで行くでしょう。その代わり遠射が効く。
もっとも、その差異は極僅かだと思いますし、両者極端な少・多回転では、弾道保持力のバランスそのものが狂って、
その結果は着弾不明となるでしょう。
Ans3.
一般に、「抜弾抵抗」という言葉を使用する方達は、一部のガンマニアや銃砲専門家に限られるているでしょう。
「抜弾抵抗」という言葉には、銃・砲身を通過して砲口から離脱する迄の抵抗値の事なのか、
薬莢から弾頭が抜け出す時の抵抗値の事なのか、色々な意味を含み奥が深いものです。
赤ちゃん! さんが、この言葉を知りえたソース元に、本件を相談してみてはいかがでしょう。
これでは、寂しいので、面白い話題を提供します。
リボルバーのシリンダー穴(弾倉の各穴)は、ストレート・スカスカではありません。
各穴先端部は円錐形で、通常は弾丸径より細くなっています。 つまり、リボルバーは銃身勘合前、
シリンダーから弾丸が飛び出す時点で、抜弾抵抗は発生しており、むしろこの抵抗が有るおかげで、弾丸初速がUPする。
と考えます。 色々な意味を含み奥が深いのです。
以上、薄学な回答をフォロー、訂正する、博学な方を待ちましょう。
軌跡の発動機?誉
- ブラックタロンさん
軌跡の発動機?誉さん
<お返事有り難うございました。とても勉強になりました。
ツイストの設計はとても微妙な物なのですね。
ツイストの緩急と銃身命数等は関わりが無いのでしょうか?
きつく>命数下がる 緩く>命数下がりにくい という風に。
「抜弾抵抗」は、薬室から銃身までの抵抗の意味としてつかいました。
ゲルリヒ砲(減口径砲)の初速増加の原理を知って、思いついた次第です。
リボルバーのシリンダー穴のお話は始めてお聞きし、驚いています。
・ツイストをきつくすると抜弾抵抗が上がり、初速が上がるでしょうか?
また、一説には戦車砲等で用いられた滑空砲の様に、ライフリングを
設けない方が初速が上がるとの話も聞いた事があります。
以前から疑問に思っていたのですが、銃身そのものが
何らかの機構によって回転し、
弾丸に回転運動を与えるようなシステムとは無いのでしょうか?
自分なりに上記のシステムを考えてみます。(殆ど妄想ですが・・・。)
銃身には薬室から銃口まで並行な溝が彫ってあるだけで、溝そのものには
弾丸に回転運動を与えられません。しかし発射のエネルギー等を利用して
銃身そのものを回転させるような機構があれば、発射された弾丸は
回転して飛んで行くことでしょう。利点は、ライフリングの切削をしなくて
済むことと、もし仮にライフリングを設けない方が初速が上がるのなら、
このシステムを用いることで、初速上昇が望めるのではないでしょうか。
赤ちゃん!
- 誉さんフォローありがとうございます。
ついでに余談もろもろ。
>ゲルリッヒ砲=スクイーズド・ボア(減口径銃砲身)
現在の銃砲でも減口径銃身になっているものはあります。というか、コールド・ハンマーリング(冷間鍛造)で作られた銃身の場合、製造工程上(ライフリングの型を引っこ抜く都合上?)銃口側が若干絞られたデザインとなっているようです。
競技用スモールボア・ライフル等では、銃口から4cmぐらいまでの銃腔内径を若干絞ると命中精度が向上するテスト結果があるそうで、ヨーロッパのメーカーでは競技用スモールボア・ライフルの銃身にこのような減口径設計を取り入れて成功しているとか。
>ライフリングに頼らずに弾頭に回転を与える方法
銃身自体を回転させて弾頭に回転が与えられるかどうかは浅学のためわかりませんが、仮にできたとしても銃本体の構造が複雑になってものにならない可能性が高いと思います(;^_^A
ちなみに、弾頭自体に工夫をしてライフリングによらない回転を与えようとした例ならあります。1960年代にアメリカで作られたジャイロ・ジェットというピストルは、弾頭に発射薬を内蔵したロケット式弾薬を使用するユニークな代物でした。アルミ製の銃本体はライフリングのない銃身を備えており、ロケット弾頭自体が発射ガスを噴射させて回転し飛んでいく(弾頭底部に斜めに切られた複数のガス噴射孔がある)というアイデアでした。ただ、ロケット弾薬の悲しさで銃口から飛び出した直後は低初速&低威力、ある程度飛行して初速が増すと今度は弾道が安定せず命中精度が落ち、ついでに射程距離も短いという二重三重の欠点があり、結局商品としては成功しませんでした。
ブラック・タロン
- 赤ちゃん!さん>
ゲルリヒ砲(減口径砲)は、砲身を抜ける際の弾丸と砲身間の抵抗が
大きいから、初速を高くできるわけでは無いと思います。
砲身と弾丸の抵抗は、弾丸加速にとっては、抵抗そのものであるからです。
もちろん、燃焼ガス漏れを防ぐという点では、この抵抗が、良い方に作用
することは、否めませんが。リボルバーのような、シリンダーと銃身の間
に隙間があり、ガス漏れが大きいものならば、いざ知らず、通常の大砲や
ゲルリヒ砲の場合は、抜弾抵抗は、初速を低下させる要因と考えた方が
良いと思います。ただし、弾丸に旋動を与えるためには、必須の因子では
ありますけど。
あと、減口径砲の初速上昇について有利な点は・・・
1)減口径砲は、砲身先端に行くほど、砲身内径が小さくなります。
ということは、弾丸が腔内を進んで行く上で、腔内容積の増大が、
通常の砲身と比較して小さいということなります。発射薬の燃焼ガス
の燃焼速度にも関係しますが、腔内容積の増大が少ないということは
ガス圧の低下が少なく、効率の良い加速が行なえるということです。
2)燃焼ガスの漏出が少なくなります。
一方、不利な点は・・・
1)先端ほど内径が小さいということは、弾丸に対する圧力の作用面積も
先端に行くにつれて小さくなるということです。
2)弾丸の変形抵抗は、そのまま、弾丸の加速の抵抗となります。
以上から、減口径砲身というのは、加速効率も、それほど高いものではない
ということが推測されます。
#ゲルリヒ砲が初速が高いのは、軽合金傘の中に、重金属の弾芯が入って
#おり、結果として、APCRのように、弾丸全体の質量が小さいためです。
いちのへ
- >>ブラックタロン氏
ほとんど趣旨違いだけど、銃身じゃなくて「砲身」だったらライフリングによらない回転でもって充分な空力安定を得ることに成功した例はあるよ(笑)
sorya
- 6>
APFSDSですね(苦笑)。
そういえば、スモールガン用のAPFSDSってありませんでしたっけ?
あれ、APDSだっけ?
いちのへ
- >7
12.7mmでありましたねAPFSDS
はいどーも
- >6
あ、そーいえばAPFSDSという例を忘れてましたな(苦笑)←自分で銃ネタに限定してしまった
>7&8
APDSのアイデアを応用したサボット式ライフル弾薬は12.7mmの他に7.62mmクラスでも存在します。レミントン社の.30-06アクセロレーター(.22口径の弾頭をプラ製サボットで包んだもの)辺りが有名ですね。速燃性発射薬と組み合わせての高初速化&既存の7.62mmライフルからバーミント用小口径弾を撃てることを狙って開発された製品ですが、通常の.22口径ライフル弾に比べて命中精度がかなり劣るため販売は伸び悩んでいるとか。
この手のサボット式ライフル弾の場合、戦車砲のAPFSDSよりはるかに小型であるため、上手く空気抵抗が働かなかったりサボットが摩擦熱等で溶着したりしてちゃんと脱落しないことがあるようです。
ブラック・タロン
- >3.銃身そのものが何らかの機構によって回転〜システム
従来の弾丸回転と同等に(代わりに)、数千回転以上/分で銃身を廻すのって、バルカン砲やチェーンガンみたいに
結構大変なシステムになるでしょう。 小火器じゃ無理ですね。
それに、銃身の回転バランス取る必要も有るし、それをしても、方持ち式銃身だと仮定すれば、先端部(銃口部)は、
相当ブレるでしようね。⇒撃っても当たらない。
*そろそろ、博学な方より、「ソガイコーリョク」とか「ガクリロンチョウ」 の言葉が出て来ないですかね・・・・・
〜?誉
- ↑スミマセン訂正です。 誤:方持ち式銃身 正:片持ち式銃身(フリーフローティング的)
お詫びに、余談その2
.38スペシャル弾と.357マグナム弾は、弾頭は全く同一なのに、ライフリングツイストは違います。
この.38系の銃は、各メーカーのノウハウで、色々なライフリング仕様が存在します。それを調べる事も面白いです。
ヒント 1−15〜18in
〜?誉
- 銃(口径20mm以下)のAPFSDSを探したら、カッコ良い銃を見つけました。
・Steyr AMR / IWS 2000 (Austria)
http://world.guns.ru/sniper/sn46-e.htm
口径:15.2mm
弾丸質量:20グラム(タングステンダート)
銃口初速:1450m/sec
貫徹能力:1000mの距離で40mmRHA
いちのへ
- >12
うにゃあ、このサイトのアサルト・ライフルのページに載ってる89式小銃の画像、うちのだ・・・(;^_^A(爆)
(ゴミです)
ブラック・タロン
- しばらく見ない間にたくさんのコメントを頂けて、驚いています。
ブラック・タロンさん<
ジャイロ・ジェットというピストルはこち亀に出ていた奴ですよね。
いちのへさん<
どうやら自分は抜弾抵抗と初速増加の関係を誤解していたようです。
詳しいお話有り難うございました。
〜?誉さん<
わざわざ自分の妄想にコメントをつけて頂いてありがとうございます。
何となく、機関銃開発の黎明期にそんなシステムの銃があるかもとも
思ったんですが・・・。さすがに無理みたいですね。
赤ちゃん