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砲撃による砲身の損耗には、 「磨耗」の他、「腐食」もあるそうですが、 火薬ガスに含まれている腐食性成分って何ですか? 勝井 |
- 逆に問いますが、装薬の主成分は?
その成分が燃焼したら、どのようなガスが発生すると考えられますか?
sorya
- >1.
・・・すいません。
書いてしばらく後・・・「硫酸性ガス出るじゃん」←アホ
それで少し調べてみたら、他に「ガルバニック腐食」なんてのもあるみたいですね。
勝井
- >銃砲身の『腐食』
発射ガスの熱によるエロージョン(焼損。熱腐食とも)も含められますかね?
ダブルベース装薬、高初速、高発射速度等はエロージョンを早く進行させる要因の一つになっています。
ブラック・タロン
- 発射ガスによる砲身の損傷については、下記をご覧ください。
●砲身の損傷
http://sus304l.hp.infoseek.co.jp/ballistics/ballistics_interior.htm#ss7
いちのへ
- Q.火薬ガスに含まれている腐食性成分って何ですか?
A.私は、以下の様に考えます。 専門外なので付け焼刃ですが・・・・
1.近代の無煙火薬が密閉容器内で燃焼して生成するガスの成分は、CO,CO2,H2,N2,CH4,等で、
それほどの金属を腐食するほどのガスは、生成しないと考えます。
密閉容器内ではなく、比較的大気開放状態で燃焼した場合は、元々の製造原料・硝酸に係わる
酸化窒素(NO,NO2)が大量に生成し、これは非常に金属腐食を起こします。
2.黒色火薬の場合は、原料に硝石と硫黄を含みますので、燃焼すれば、炭酸カリK2CO3、硫酸カリK2SO4、
硝酸カリKNO3、 などのガスが生成され強い金属腐食を起こします。
3.そして、発射薬よりも、戦前迄使用されていた雷管(雷汞=硝酸水銀が主体)の水銀燃焼ガス(化学式Hgハテ?)
による金属腐食の方が、重要問題でした。
但し、砲身・銃身の損耗に最も影響を与える主因は、>3.4.の解説の通り、高温・高圧ガスによるものと考えます。
最も高温・高圧を受ける部分、すなわち、薬室の最先端・ライフリング起線部〜圧入斜面部分が、真っ先にやられます。
軌跡の発動機?誉
- 5>
砲腔内の発射ガスによる化学反応は、ガスの成分も関係しますが、どちらかと
いうと、その環境の悪さ、すなわち高温、高圧であることが大きく関係して
います。
例えば、鉄に窒素や炭素と結びつける反応である、窒化や炭化は、高温、高圧
の条件でないと、ほとんど発生しないのです。
なお、鋼の表面窒化や表面浸炭は、工業技術として、普及しています。
例えば、下記URLをご覧ください。
●窒化
http://www.kyokutou-tikka.com/nitride.html
●浸炭焼入
http://www.yoshinodenka.com/yh/shintan.html
砲身の場合は、制御できない窒化や炭化なので、過度の浸食が進んで、使いもの
にならなくなってしまうわけです。
いちのへ
- >6.発射ガスによる窒化&浸炭焼入
失礼ながら、これはどの様な文献、資料、に基ずく話でしょうか?
ガス分子量、温度、処理時間、金属材質、etc 諸条件があまりにも違いすぎると思います。
〜?誉
- 7>
それほど難しく考える必要は無いです。
窒化、炭化など金属腐食の化学反応は、高温・高圧の環境下で、著しく
促進されるということと、近代の火砲では、無煙火薬を使うのが一般的
ですので、WW2以降では、ほとんど気にしないで良いということ、
言いたいだけなのです。
あと、砲腔内の腐食(専門用語で、ガス焼触[erodion]と呼びます)につ
いてもう少し詳しく説明します。発射薬(無煙火薬)の燃焼によって発生
するガスの主なものは、貴殿の言う通り、CO,CO2,H2,N2など、常温、
常圧の条件下では、金属を腐食させるほど活性のあるガスではありません。
一方、発射時の腔内の温度、圧力は、温度のデータが見つからないのです
が、1000度以上、61式戦車砲の規定最大腔圧を例にすると、圧力は、
3300kgf/cm^2にも達します。この環境ですと、前述の活性の低いガスで
すら、耐食性の高い、砲身材料を浸食するのです。救いは、その環境の
持続時間の短さです。61式戦車のM318AP-Tの1発の射撃で、0.008secです。
ただ、砲は砲身交換までに、数百〜数千発は射撃しますので、累積された
ガス焼触は、他の要因による砲身の損傷=溶触、摩滅との相乗効果で、
腔内に損傷を与え、決して無視できない要因となるわけです。
文献については、
金属腐食の腐食環境による影響については、一般的な書物、例えば
金属便覧、腐食便覧などに詳しく載っています。
無煙火薬の実用化時期については、貴殿もご存知の通りです。
あと、これらの説明が、すべて既存の文献のコピーではありません。
一般的な資料や、特殊な資料からの情報を、自分の頭の中で、組み合わせ
て、「この現象は、どういった理由で発生するのか?」を、類推している
ところもあります。それが、研究というものだと、私は思います。
これで、回答になっているでしょうか?
いちのへ
- >8.近代の火砲では、無煙火薬を使うのが一般的ですので、WW2以降では、ほとんど気にしないで良いということ、言いたいだけなのです。
私のレス>5.A.1 近代の無煙火薬〜 それほどの金属を腐食するほどのガスは、生成しないと考えます。
と 同様な結末ですね。 私、今まで、窒化や浸炭に侵された銃腔面は、見た事がないです。
〜?誉
- 9>
申し訳ありません。ちょっと抜けていました(汗)。
訂正させてください。
「窒化、炭化など金属腐食の化学反応は、高温・高圧の環境下で、
著しく促進されるということと、近代の火砲では、無煙火薬を
使うのが一般的ですので、WW2以降では、ほとんど気にしない
で良いということ、言いたいだけなのです。」
↓
「窒化、炭化など金属腐食の化学反応は、高温・高圧の環境下で、
著しく促進されるということと、近代の火砲では、無煙火薬を
使うのが一般的ですので、WW2以降では、ガスの種類は、
ほとんど気にしないで良いということ、言いたいだけなのです。」
文意が完全に変わってしまいますね・・・。
あと、「累積されたガス焼触は、他の要因による砲身の損傷=溶触、
摩滅との相乗効果で、腔内に損傷を与え、決して無視できない要因
となるわけです。」です。
だから、常温では、というただし書きを付ける限り、
「それほどの金属を腐食するほどのガスは、生成しないと考えます。」
ってのは同意しますが、腔内の環境(高温、高圧)では、活性の低い
ガスでも、腐食は起こるってことが言いたいのです。
>窒化や浸炭に侵された銃腔面は、見た事がないです。
私はやったことありませんが、
腔内表層と母材のCとNの濃度比較とか、やったことありますか?
それか、断面の濃度マッピングとか?
あるいは、腔内表面硬度と母材の硬度比較でも良いです。
その辺りのデータをお持ちならば、見せてほしいです。
外観だけでは、けっして判断できません。
ああ、でも、銃だと腔内に特殊処理が施されていたりするんだよなあ・・・。
そういうときは、どうすれば良いだろう・・・。
いちのへ
- 火砲の発射直後(0.15ms程度)の高温・高圧下に於ける腔内表面の窒化(窒化層の厚みは0.05〜0.1mm程)については、幾つかの論文で具体的な報告があります。詳しくはJICSTのデーターベースあたりで検索してみてください。また、「無煙火薬の時代以降、ガスの種類は殆ど気にしないで良い」とのこと、文脈上の御趣旨を了承した上で付け加えるならばErosion、Chemical reactionを抑制する為の推進薬の検討(燃焼温度、発生ガスの組成の適正化)は現在でも活発になされている様です。
みなと
- 11>
みなとさん、ご教示ありがとうございます。
JICSTのデータべースに、そういった内容の論文もあるんですね(驚)。仕事関係では、使うことがあるのですが、こういったことについて、調べたことはありませんでした。考えてみれば、金属学や火薬学にも大いに参考になる話ですものね。今度、やってみようと思います。
>Erosion、Chemical reactionを抑制する為の推進薬の検討(燃焼温度、発生ガスの組成の適正化)は現在でも活発になされている様です。
なるほど。発射薬開発の要求事項には、「腔内を著しく腐食するような、ガス成分や温度が発生しない」というものも含まれるわけですね。勉強になります。
いちのへ
- >11.窒化層の厚みは0.05〜0.1mm程〜
機械屋さんが一般に考える工業的な窒化合金層の深さ(0.3〜0.5mm)とは、かけ離れていますね。
むしろ軟窒化処理(C+N)に近い物でしょうか。
どの様な条件下における値か知りたいですが、恐らく数千発発射後の結果なのでしよう。
自動車用ガソリンエンジン内部(N酸化物多量排出)でも、何万キロか走行後には、同様な事象となると思います。
銃・砲も自動車も通常使用においては、その発生ガスの金属腐食成分を気にする事は無いと言えるでしょう。
〜?誉