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つかぬ事をお聞きしますが「原爆」と「水爆」は何が違うのでしょうか? 0918 |
- 大雑把に解説しますと、原爆はウランやプルトニウムの核分裂を爆発力に利用するのに対し、水爆は核分裂時に発生する高温を利用して熱核融合反応(軽い原子核がぶつかってひとつの重い原子核になる反応)を起こし、そのエネルギーを爆発力として使用します。
人見 忍
- 原爆も水爆も両者とも核反応を利用した爆弾で、核反応中に原子の質量の一部をエネルギーに変換している、という原理は一緒です。
ただし、原爆は「核分裂」という核反応を、水爆は「核融合」という核反応をそれぞれ利用しており、そのため、使用する爆薬(?)が異なります。
原爆に利用されている核分裂反応はウラン235、プルトニウムといった「重い」原子が崩壊&分裂する際放つエネルギーを利用し、
水爆に利用されている核融合反応は水素、重水素、トリチウムといった「軽い」水素原子とその同素体などを融合させて、ヘリウムに合体変化する際、生じるエネルギーを利用します。
両反応とも、原子の一部がエネルギーになって消えてしまうため、反応後の分裂体、融合体(ヘリウム)はそれぞれ元となった元素より、少し軽くなっています。
ここらへん、アインシュタインの相対性理論によって、静止質量は運動エネルギーに変換できる、ということが証明されたのが大きく絡んでるんですが、
文系バリバリの私の脳みそでは理解できませんので、説明できません(笑)。
とりあえず、原子レベルのほんの少しの質量でも、エネルギーに変換すると驚くほど膨大なものになる、といった感じだと思われます。
なお、水爆の方がはるかに破壊力は大きく、高温を必要とするため原爆を起爆剤とする必要があるなど、製造も難しいという特徴があります。
アナーキャ
- ではバリバリ受験生の私から・・・。
プルトニウムはある量を超えると自然に臨界に達する性質を持っています。そこで原爆は、このプルトニウムを粗く詰めてその周りを高性能爆薬で包んでおき、この爆薬を爆発させると一気にプルトニウムは中心方向に圧縮され、臨界に達して核爆発を起こす仕組みとなっています。
次に水爆ですが、これには重水素(水素の同位体で、中性子が1つある)と3重水素(同じく水素の同位体で中性子が2つ)が用いられます。この二つの原子核を結合させると新たにヘリウムと中性子一個ができ、この際に莫大なエネルギーが発生します。
ただし、これら二つの原子核は互いに+に帯電しており、反発力がはたらくので結合させるのは容易ではありません。しかもこの力は距離の二乗に反比例するため、距離が近づく程極めて大きくなります。そのせいで、この核融合反応を開始させるには数千万℃〜数億℃の超高温が必要となります。そのため、起爆には小型の原爆が用いられます。
またこの際に、約0.7%の質量が減少し(質量欠損)、この分がエネルギーとなります。このエネルギーはアインシュタインの有名なE=mc・cの式で表され、合計1kgの核融合反応からは630000000000000Jのエネルギーが発生します。
長くなりましたが、高校物理の知識を総動員したレスです・・・
YF−23A
- 動作原理や仕組みの話にまで踏み込んで来たようなので、若干のフォローを。
原爆はプルトニウムに限らず、ウラン235でも製作可能です。
実際、広島に落とされたのはウラン235原爆でした。
これは上のYF23-Aさんが解説している爆縮形のものではなく、ウランを2つの塊に分けて爆弾内に配置、
火薬で一方をもう一方に打ち込んで臨界量に達しさせて爆発させる、というタイプでした。
ウラン235の場合は約23kg、プルトニウムはその約4分の1の約6kgで臨界量に達し核分裂を始めると言われています。
このため、プルトニウムを使ったほうがシンプルで高性能な原爆となるためプルトニウム原爆が一般的です。
長崎に落とされたのは、このプルトニウム型原爆でした。
ただ、自然界には存在しない元素ですので、その製造には原子炉が必要となり、このためパキスタンなどはいまだにウラン235型原爆のようです。
水爆は水素でも重水素でも三重水素(トリチウム)でも、どれでも原理的には作れます。
普通はトリチウムを利用しますが、これは核融合反応をさせやすく、爆弾の小型化が図れるからのようです。
トリチウムはほんの微量、自然界に存在しますが水爆に利用できるほどの量を確保するには、やはり原子炉で作り出す必要があります。
また、わずか12年強で半減期を迎えてヘリウムに変化してしまうため、定期的に核弾頭のトリチウムを交換してやる必要があり、
このため、その維持には原爆よりはるかに手間とコストがかかります。
アナーキャ
- アナーキャさんの更に補足です。
プルトニウム原爆は、連鎖反応の反応速度の都合で
爆縮型でしか使えません。
(砲弾型だと、本チャンの爆発が起きる前に小爆発が発生し、爆弾が飛散して大規模爆発に至らない)
ところが、爆縮型は衝撃波を一点に集中させるため、
プルトニウム(猛毒!)の加工精度、各プルトニウム片の形状、爆縮に使用する爆薬の反応速度などに
非常に難しい技術が必要だとされています。
広島型原爆がテスト無しの一発勝負、長崎型原爆が、ニューメキシコで予備実験を行ったのには
そこらへんの事情が大(つまり計算で予測できない製作上の要因が多々あった)、との通説です。
また、今日の実用レベルで発電にも使える原子炉(まあ、今日では大規模な原子炉を建設する名目として絶対必要ですよね)
の場合、低濃度とは言え、ウラン濃縮施設が必要なので、
それなら、濃縮施設を活用して、高濃度ウランを作って一発だけ原爆を拵えたれ!という考えもできます。
(ただ、高濃縮のウラン235は手間ひま掛かるので、プルトニウムの様に大量生産は無理)
単にプルトニウムを濃縮するだけの原子炉なら簡単に建設できます。
http://www.energia.co.jp/energiaj/company/atom/tanken/lib/lib_1b.html
ただし、今日、こんなもんを建設してるのがバレたら、只ですみませんし、
プルトニウムが得られた所で、爆縮型原爆を製造するのは至難の技というのは、すでに述べました。
まとめると
ウランとプルトニウム、両者で原爆を作る場合、
(1)政治的事情は無視して、単純に技術的には、プルトニウムを得る方が楽。
(2)しかし、国際的コンセンサスを得るなら、「発電用」とかの名目で濃縮ウランを得るのも、
プルトニウム製造と同じような難易度かも。
(3)単に原爆を製造するなら、ウラン-砲弾型の方が簡単。
かと思います。
なお、ここには原子力技術者の方も見ておられますので、以上はプロの目から見ると、ハンカ臭い説明かもしれません。
エロチカ番長