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ニュースを見ていた際に気象観測用ドップラーレーダーが出ていたのですが このレーダーをもし戦時使用したとして敵航空機を また大戦中の航空機もこのレーダーで補足することはできるのでしょうか? 仮想戦記っぽい質問ですがよろしくお願いします。 タ弾のひとりごと |
- そもそも航空機の航法用に使っていたドップラーレーダーが雲や雨の検知に使えるということで応用されたのが、気象観測用ドップラーレーダーです。
現在の水滴の大きさも検出できる気象観測用ドップラーレーダーであれば、調整の必要があると思いますが、飛行機等の金属製の物体を探知できるはずです。
アリエフ
- 経験者の方によると画面が焼き切れるのではないかと思うぐらい鮮明に写るそうです。
なぞ
- 本職の方に聞いてきました。
#レーダーの性能
気象庁で使っている空港気象ドップラーレーダーと一般的なターミナル管制用レーダーであるASR-9を比べると、
(空港ドップラー) (ASR-9)
使用周波数 約5.3GHz 約2.9GHz
出力 200kw 1100kw
パルス幅 1μs 1μs (距離分解能の目安)
パルス周波数 840/1120Hz 最大1200Hz
距離分解能 150m 150m
水平ビーム幅 0.6° 1.4° (水平分解能の目安)
垂直ビーム幅 0.6° 5° (高度分解能の目安)
アンテナ回転速度 2/4rpm 5rpm
で、出力以外は対空レーダーと同レベルにあることが分かります。その出力(と受信部のゲイン)についても、降水や雲に対して半径120km以上の覆域を持つ空港ドップラーならば、航空機に対してはもっと広い覆域を持ちうるでしょう(アメリカのWSR-88D型ドップラー気象レーダーは、出力1000kw、覆域半径460km)。
#調整
実際の空港気象ドップラーレーダーは、航空機からのエコーを表示しないように、目標物から帰ってきたパルス(ビーム幅中に含まれる25〜32回のパルスのうちいくつ帰ってきたか)を数え、少ないもの(=ビームを素早く横切っていなくなってしまったかもの)を偶発的なノイズとして除去するという処理を行っています。
対航空機用ならば、この逆を行って気象現象をノイズとする(もともと気象レーダー自体がこのノイズ処理の副産物)ということになります。
Schump
- 補足。
対空レーダーのノイズ除去ですが、上記の方法は数あるフィルタリング方法のひとつで、これだけでは「まっすぐ向かってくる航空機」が写らなくなりますので注意。
Schump
- また補足。
目標からのエコーがパルス間隔以内の時間で帰ってこないと距離の計測が不能(次のパルスのエコーとの識別ができない)なので、気象庁のドップラーレーダーの最大測距可能距離は、出力やゲインに関わりなく300000km/s÷1/840秒=357kmになります。これ以上はパルス周波数を落とすしかなくなりますが、この場合、エコーが返ってくる前にアンテナがよそを向かないようにビーム幅を太く=水平分解能を低くする必要があります。
Schump
- 誤)300000km/s÷1/840秒=357km
正)300000km/s×1/840sec÷2=179km
- アリエフ様、なぞ様、Schump様回答ありがとうございます。
細やかな調整がいりそうですが使用可能なのですね・・・。
タ弾のひとりごと