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以前にお世話になったことのあるマファエロです。 旧日本軍の擲弾筒について、過去ログでも取り上げられていましたが、構造の部分が知りたいのです。 一応、八九式の写真や射撃姿勢の図(小さい)ようなものはネットで見れたのですが、その使い方がどうもよくわかりません。図入りの書籍などは行った範囲の書店にはすでに見当たらないようなので・・・。 とりあえず八九式の方で・・・ ・全長ってどのくらいあったのでしょうか? ・トリガーはどこにあるのでしょうか?またそれはどういう方式なのでしょうか?(押し込むとか、引くとか) ・基本的には迫撃砲ライクに射角をつけて撃つようですが、M203やM79のように、水平に近い撃ち方をすることはできるのでしょうか? ・後端に、おそらくは地面に着けるためのアーチ系の部品がありますが、なぜこういう形状なのでしょう? ・使い捨てでは無いようなのですが、どのように装填するのでしょう?後部が開くとか、前から装填とか・・・。 以上、複数で申し訳ありませんが、わかることだけでもお教え下さればうれしいです。 よろしくお願いいたします。 マファエロ |
- 89式重擲弾筒のスペックですが、手元の資料では、全長610mm、重量4.7kg、口径50mmとなっています。旧モデルの10年式擲弾筒はスムースボア(ライフリングなし砲身)でしたが、89式は砲身にライフリングを備えています。
使用方法は、砲口から砲弾(専用の89式榴弾か擲弾筒対応の手榴弾)を装填、左手で発射角度を45°(目見当)に維持し、右手で発射筒後部の引き金を引いて発射します。水平撃ちも可能だと思いますが、実戦で水平撃ちで使用したかどうかは資料不足でわかりません。射程距離は専用榴弾を使用して最大650〜670mで、砲身底部と弾頭後端とのスペースを調整することで射程を設定します。
専用砲弾たる89式榴弾は弾底に発射装薬を内蔵しており、弾底に巻かれている薄い銅板が撃発によって広がりライフリングに食い込んで回転を与える構造になっています(砲弾のドライビング・バンドと同じようなもの)。
底板は竹を割ったような曲面に設計されていますが、これは平板よりは曲がりにくいという構造力学上の理由によるものです。泥濘地では底板に材木等を縛って沈下を防いだそうです。
なお、この擲弾筒の底板にはちょっとした笑い話があります。擲弾筒を鹵獲した米軍では、擲弾筒のことを『ニー・モーター(Knee Mortar:膝撃ち式迫撃砲)』と呼んでいました。底板の形状がちょうど人間の膝から大腿の部分にピッタリフィットするため、米兵は膝に乗せて撃つものと勘違いしたそうです。で、実際にそれをやって大腿を骨折し病院送りになった間抜けな米兵がいたらしい・・・
ブラック・タロン
- 最近読んだ資料に、ガダルカナルで戦った米陸軍将校のこんな証言が出てきました。
ーーー”我々の六十ミリ迫撃砲は直接射撃(水平射撃)ができなかった。(中略)だから、我々は日本軍の迫撃砲を本国に送っておなじようなものを作らせたんだ。”改良された迫撃砲は、引き金がついており、直射が可能になった。ジャングル戦で川を隔てて退治する敵陣に直接迫撃砲を撃ち込むのに役立ったという−−−
この「日本軍の迫撃砲」というのはその擲弾筒のことじゃないでしょうか?
たちばな
- 装填は砲口からの前装式です
擲弾筒手は専用弾の八九式榴弾を6発弾薬嚢に入れて携行することになっています
また、九五式発煙弾というこれまた重擲専用発煙弾もあります
装備は小隊ごとに1門
米英軍はこのグレネードランチャーをたいへん高く評価し、且つ対戦相手として怖れていました。戦後M79や3インチ軽迫など運用面でパクったともいえる兵器を開発装備しています。
が、当の日本軍、とくに前線の兵士の間での評判は散々なものです。
曰く、部品強度が不十分でよく壊れる、花火に毛が生えたくらいの威力しかない(受け手はかなり効いていると思っているのですが、送り手の方は不足だと思ってるんですね)、筒内破裂事故が多くて(訓練・実戦含めて年に数回の割で起こしている)安心して使えない、射撃に職人芸が必要で優秀な擲弾筒手でなければ満足に扱えないがそれを得るのは難しい、ヘタクソが撃つならまるであたらず無用の長物である…等々。
敵味方双方に恐れられる兵器だったんですね
まなかじ
- アメリカでは日本の擲弾筒の有利な点として最小有効射程の小さいことが言われます(最小射程はゼロだったと言う説もある)。そのため水平に近い角度での射撃も行われたと考えます。また、熟練兵の操作によって高精度の射撃が可能です。ジャングル等での近接戦闘時にはすぐに擲弾筒で火力支援ができるため、非常に有効な兵器です。米兵からは大戦中最も恐れられた歩兵小火器で、英軍も似たような兵器を今も使っています。
Vinegar-Joe
- マファエロ 樣
八九式重擲彈筒ですが、歩兵小隊の第四分隊である擲彈筒分隊に二〜三筒が配備されており、彈藥はズック製で彈藥四發を納める擲彈筒彈藥嚢を各兵員が腰の左右に一個ずつ裝備します。
>水平に近い撃ち方をすることはできるのでしょうか?
水平射撃は可能で、かなり廣域の戰場で使用しております。
ひめみやきりん
- 89式重擲弾筒の配備数は、手元の資料では、各歩兵小隊に軽機関銃と同数(初期は1門、後に2門)が配備されたとあります。1個連隊の定数は63門であるが、大戦末期になると重擲くらいしか頼れる『大砲』がなく、その二倍の門数を追加装備されることもあったとか(硫黄島等)。とはいっても、あくまで分隊の補助火器であり、専用の弾薬駄載馬を利用することはできなかったので、運べる弾薬は限られていたようです。
重擲の専用榴弾(89式榴弾)は、全重800g、炸薬としてTNT150gを充填、威力半径は10mとのことです。『防御型手榴弾』の代表格とされるドイツ軍の柄付き手榴弾M24がTNT170g、M39がTNT210gほどということなので、それなりに威力があったようですね。
重擲の輸送は三人一組で、各々榴弾を18発(総重量14kg余りとか)ずつ携行したそうです。擲弾筒担当になった歩兵は、長い歩兵銃を担ぎながら擲弾筒と弾薬まで運んだわけです。
ブラック・タロン
- >4.英軍も似たような兵器
実は、この手のアイディアは日本だけが考えたのでは有りません。
WWI後に列強各国も、それなりに開発していますが、中途半端な射程と弾頭威力では期待出来ないと判断し、
不採用或いは、補助兵器扱いでした。 (独軍の5-cm Granatwerfer Model 1936は、有名ですね)
参考HP
http://www.riv.co.nz/rnza/hist/mortar/mort15.htm
軌跡の発動機?誉
- 擲弾筒射手は、大部分の歩兵隊では、輕機射手なみに小銃携行ではなかったみたいです。
例えば映画の例で恐縮ですが、「獨立愚連隊」に出てくる左文字小隊の射手は、擲弾筒だけ担いでいます。けれど、これは指揮官の裁量範囲で、小銃携行の射手も勿論いたことでしょう。
あるめ
- 質問者のマファエロです。
なるほどなるほど、とうなずいて読ませて頂きました。わかりやすいご説明を感謝いたします。
この89式というのは、こうして聞いてみると意外な点が多かったです。前装式装填に、水平撃ち可能。イギリスも同じようなモノを使っていたというのも意外でした。敵味方で評価が違うというのも面白いです。
歩兵小隊での配備数まで書いて頂き、興味深く読ませて頂きました。
それにしてもニーモーターの件を聞くと骨が折れるほどに反動があった、ということですね。
大変勉強になりました。皆さん、本当にどうもありがとうございました。
マファエロ