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マズルブレーキというのは、何故あんな穴開きの筒みたいなのを砲口につけただけで、砲弾発射のエネルギーを減退できるのでしょうか? メリットとデメリットも一緒にご教授願いたいのですが。 Yakisaba |
- 砲口のガス圧(爆風)は馬鹿にならないパワーを持ち、砲口にアダプターを何も付けない状態ですとガスは前方へと放出されその反作用が反動となって返って来ます。マズルブレーキは発射ガスを横向きに偏向させる事でガスの反動を減らす作用があります。更に効果的なのはガス圧を受け止めるプレート(板)とガスポートを組み合わせることで、ガスがプレートにぶつかる力で砲の後退を阻止し反動を削減する効果があります。
マズルブレーキとは正反対の原理で、砲口にラッパ型のアダプターを付け意図的にガスを前方に誘導することで反動を増強する「リコイル・ブースター」あるいは「マズル・ブースター」というものもあります。反動利用式の機関銃で発射速度を向上する為に使われます。
マズルブレーキのメリットは反動削減のほか、発射ガスを散らすことで硝煙による視界阻害を減少させる効果があります。デメリットは砲口の圧力分布が不均衡となって命中精度を低下させる可能性があること、マズルブレーキのデザイン次第によっては伏せ撃ち時に土煙を巻き上げる可能性がることでしょうか。
なおマズルブレーキは小口径の拳銃(「コンペンセイター」と呼ばれることが多い)やライフル銃にも使用される事があります。GUN誌のレポーターであるターク高野氏によれば、シューティングレンジでマズルブレーキ付きの銃を撃つとガスが真横に放出されて隣のブースに騒音を叩き付けるため嫌われるそうです。
ささき
- マズルブレーキ(砲口制退器)は弾丸が砲口を離れる時の発射ガスを偏向板に当た
ることにより、砲口制退器に前進力を生じさせ、砲の後座力を減少させます。
一般に、発射ガスによる砂塵等の巻き上げを少なくするため偏向板はガスを左右に
逃す方向に取り付けられています。
また偏向板は、弾丸が自由に通過できるように、通常、口径より若干(約1.1倍)大
い穴があけられています。
APSFDSなどの装弾筒付の弾丸を発射する砲では、砲口制退器の偏向板に装弾筒が当
り、破損するのを防ぐため多孔式の砲口制退器が用いられます。
メリット
・後座力の減少
61式戦車の砲口制退器は、付けない場合に比べ後座力を20パーセント減少させるこ
とが出来たそうです。
戦車の中は狭いですから、後座力が小さくなることによる駐退復座装置の小型化及
び後座距離の減少は設計上も大切なこととなります。
・爆風転向
61式戦車等のT字型のものは爆風転向装置とも呼ばれ、砲口炎を左右に逃し、射撃
直後の視界が確保できる利点があります。
デメリット
現用戦車砲においては、装弾筒付きの弾薬が主弾薬となるので砲口制退器による装
弾筒の開放遅れや開放不良による命中率の低下(あるいは弾丸の破壊)
薄肉長砲身の先端に重量物を付けることによる砲身重量の増加及び砲身曲がりによ
る命中率の低下等があります。
はいどーも
- 余談。
>1.コンペンセイター Compensator(無理やり和訳:補正器、補助器)と言えば−−−−
”カッツ・コンペンセイター”
元々は、米軍人 カッツ氏考案の単銃身散弾銃口用の”可変絞り兼反動制退器” が、ことばの由来です。
散弾の拡がりを、射程や目標に合わせて任意に調整可能とし、且つ側面部に開けられた
”スリット状のガス抜き穴”による反動制御効果を狙った部品です。
そこから、小火器にて、マズルブレーキの中でも、”スリット状のガス抜き穴”タイプを
”カッツ・コンペンセイター”と言う様になりました。
又、その使用方法は、単に後退反動の制御というより、スリットを上向きに開けて、
マズルジャンプ制御に使用する場合が多いのです。
小火器におけるマズルブレーキの欠点。(>1.2.の解説に重複も有ります)
・発射音が大きくなり周囲に騒音影響をおよぼす。
・銃口直後の発射ガスの乱れによる、腔外弾道への悪影響。(弾丸、銃口離脱直後の弾道を乱す)
・茂みやジャングルにての使用時、草木の小枝などがガス抜き穴に引っかかる場合がある。
・銃口部の重量増加。 銃身震動や銃の重心バランスに影響。
・散弾銃にて小粒散弾使用時、スリット穴りより散弾が飛び出し思わぬ危険となる。
・下手に下方にガス抜き穴を開けた場合、地面の土、砂塵を巻上げてしまう。(特に伏射の場合)
・銃身後退反動利用式の自動銃に使用する場合、微妙な調整や設計の難しさが有ります。
・特に、軍用として考えた場合、消炎器と兼用した物を製作しなければなりません。(Φ22の制限も有りますね)
軌跡の発動機?誉
- 質問させていただきます。
<マズルジャンプ制御
大戦中のSMGの多くがあまり効果がないとして上に開けられたスリットを途中から廃止されてますが本当に効果があったのですか?
紅葉饅頭
- 皆さんありがとうございます。
最初、後座力の減少の効果があるのは知っていたのですが、そしたら発射時の砲弾へ伝達するエネルギーも減退してしまって初速などが低下して逆効果なんじゃないかと思って質問した次第です。
Yakisaba
- >1.2ささきさん、はいどーもさん
マズルブレーキの話しなかなか興味深いものがあります。
素人の悲しさで理解力に乏しいのですが、つまりマズルブレーキをつけることで
幾分か(ほとんど変わりはないかもしれませんが)砲口初速は低下
する(=射程距離も低下する?)ということでしょうか?
山芋太郎
- >6
マズルブレーキ自体は砲腔の一部として含まれませんから、砲口初速は特に減少す
るということはありません。
また、砲口初速といっても砲口直前ではなく、砲口前何十メートルでの速度をいい
ます。
たとえば90式戦車の120mm/L44に60cmの砲口制退器をつけると砲身の長さは見かけ上長くなりますから120mm/L49か?ってことになりますが、実際にはL44のままな
ので砲口初速も同じになります。
判りにくいかもしれませんが、マズルブレーキは砲身の付加物であり、マズルブレ
ーキ(砲口)まではちゃんと砲弾は加速されていますので、付けたからといって初
速が落ちるものではありません。
マズルブレーキ先端の開口部は「砲口」ではないということです。
はいどーも
- 拳銃やライフルでは、銃身に上向きの穴をあけて発射ガスを逃し、マズルジャンプを抑えるものもあります。このタイプはマグナポートと呼ばれます。
マグナポートの場合はあるよりはない方が銃口速度は上がるでしょう。
以下は素人の私見になってしまいすが。
砲身や銃身の先に付けるマズルブレーキ等の場合ですが、砲弾や銃弾は砲口を出た直後にも発射ガスによってわずかに加速されるらしいので、そのエネルギーを別の目的に使われるという意味では弾丸の速度は落ちるかも知れません。
一方でマズルブレーキがなければ自由に拡散してしまう発射ガスが、マズルブレーキによってある程度弾丸の方向に揃えられて、いわば砲身を少し延長してその横に穴をあけたような構造とみることもできます。そうなると速度は逆に上がりそうです。
その辺のバランスは設計次第ではないでしょうか。
速度変化も含めて、誉さんが書かれた「腔外弾道への悪影響」の範疇かも知れませんし。
どちらにしてもマズルブレーキが弾丸の速度へおよぼす影響は微々たるもので、もっと他の要素(気温とか弾の製造ばらつきとか)の方がずっと重要だと思います。
石垣
- Transient Ballistics領域の論文を検索できればわかると思いますが、砲口断面
積(より正確には弾底面積)をフォローする以外の燃焼ガスの余剰エネルギは加速に
全く寄与しません。よって、余程変な設計が成されない限り、砲口速度にほぼ影響
を及ぼさないと考えたほうが無難です。
また、チャレンジャーなモノでは水道の蛇口(泡沫蛇口じゃないよ)の様にリコイル
ブースタを燃焼ガスを上手く絞り込ませるように改造すると、過渡加速を増やせる
ことが報告されていますが、個人的にはお勧めできない(異常な反動増加)とだけ指
摘しておきます。
sorya
- >4.マズルジャンプ制御〜本当に効果があったのですか?
効果があるからこそ、現代のサブマシンガンにも採用されている例は、かの”ミニウージー”等です。
カッツ・コンペンセイター(或いは、マズル部上向きスリット)付きのサブマシンガンの形態的特徴は−−
・仮に、右片手でグリップした場合の銃の重心位置が、銃の真中又は、後方に位置する。
(要は、重心が前方にあれば、この様な補助器は不用。)
・概ね、銃重量が4kg未満の軽量サブマシンガン。
・発射速度が高発射速度(900〜1000発/分以上)のサブマシンガン。
・(折りたたみ)ストックのデザインが直銃床化出来なかったサブマシンガン。
つまり、小型短機関銃=機関拳銃が 必然的に当てはまってくるわけです。
>9.Transient Ballistics領域の論文〜燃焼ガスの余剰エネルギは加速に全く寄与しません。
浅学で、その様な論文にお眼にかかっても、太刀打ち出来ませんが、大砲屋さん達は、
”Initial Velocity”(腔外弾道学的初速)ということばを引用し、砲口後10m前後位置での
初速データー(射表等)を活用するんでは?
「弾丸は砲口離脱後も、後方よりのガス圧(ガス速は弾速の約2倍で噴出)により、1〜2%か数% 増速している。」
というのが、基本概念と思いますが!! (1〜2%の増速では 事実上、無きに等しいですね!)
>9.チャレンジャーなモノでは〜改造すると、過渡加速を増やせる〜
結果的に、その様な銃が実際に、身近(次A隊)に存在する様です。
〜?誉
- soryaさんに質問ですけど、
>砲口断面積(より正確には弾底面積)をフォローする以外の燃焼ガスの余剰エネルギは
>加速に全く寄与しません。
と言うのは平たく言うと、砲口を出てから横に広がっていく分のガスは弾を加速しない、と言う意味でしょうか。そしてマズルブレーキの効果はそのような横向きガスによるものなので、マズルブレーキがあってもなくても初速には影響しないと言う理解でよろしいでしょうか。
石垣
- >>石垣氏
そういうことです。
常識的な設計が成されたマズルブレーキは過渡加速に対し、大きな影響を及ぼしま
せん。しかし、マズルブレーキによるガス整流効果は100%ではないので、慎重に設
計しないと「弾道」自体に影響を及ぼします。(初期飛翔姿勢の問題)
sorya
- >12
了解です。お手数かけました。間違ったこと書いちゃったかと内心びくびくしてましたです。
石垣
- >>軌跡の発動機?誉氏
ごめん。忘れてた。
実を言えば、あの砲口速度の測定方法には技術的ないわくがあります。
ってのも、弾頭よりも火薬の燃焼ガスが先に出ちゃうので、マトモな計測ができん
のですよ。電気機械式の弾速の計測は。箔的とか線的みたいな奴だと特にね。
で、ガスが測定に悪さをしない領域で電気機械式の砲口速度を計測しようとすると
どうしても、あんな位置で計測しなければならんと。それが嫌ならば弾頭自体のエ
ネルギ量から推測するしかありませんでした。
そいでもって、後年になって他の計測方法(電磁式とかX線式)が併用されるように
なって、初めて過渡加速が確認されたと、そういうわけです。
sorya
- launch dynamicsの計測にもっと理解がほしいね。
弾道/姿勢の変化といっても、その変化の様子を連続して捉えるのは大変ですね。
ドーム射場はあまり信じていないので...。
地盤がしっかりしていて、計測点が二桁以上ある民の射場がほしい。(マジ)
レンジマン
- うーむ。
外乱を除去可能な天蓋式の射場の必要性に関しては、チョト言いたいことがあるんだけ
ど、それはそれとして(笑)
そのために、フライトフォロワーカメラとかドップラーレーダーがあるのでは?と。
>多点計測
ドップラーレーダーなんか、今じゃそんなすごい物でもないし、高いもんでもない
です。
sorya
- >はいどーもさん
ご丁重なご回答ありがとうございました。
また専門家の皆さんの御説明等を拝見しましたが、正直いって素人にはついていけません。(笑)
初速の測定1つとっても奥が深いんですねぇ。
勉強になります。
山芋太郎
- >10
小型短機関銃=機関拳銃が 必然的に当てはまってくるわけです。
そういや、9mm機関けん銃にも、反動を減らすとともに右上方向へのマズルジャンプを抑制する「制退器」なるものがついていますね。
はいどーも
- >18.「制退器」
消炎器も兼ねているみたい。 過度加速も?!
〜?誉
- >19
制式名が、小銃(64式、89式)のものは「消炎制退器」ですが、9mm機関拳銃のものは「制退器」なので、どうなんでしょうか?
過度加速は構造的にみてなさそうですけど。
はいどーも