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923 919関連ですが、
核兵器の威力の下限はどの辺でしょうか?
核反応を引き起こすには臨界量の核物質が最低限必要なはずですから、
上限はなくとも下限はあると思うのですが。
勝井

  1. 臨界量は急激な連鎖反応を引き起こすために必要な量であって、
    核反応そのものは放射性原子が一つあれば十分です。
    また臨界量はターゲットとする原子の純度、密度、配置等で調節できます。
    故に919でノースバーグさんが

    >理論的には、大きさの大小に制限はありません。

    と書いているのではないのでしょうか?
    どの程度の威力であれば同等の通常兵器より低コストにできるか?
    が実用面での下限になると思います。
    PT

  2. 勝井さんのご質問が単純に「核物質の最小臨界質量はいくらか?」ということでしたら答えは、ウラン(U-235)で760g、プルトニウム(Pu-239)で510gです。これを下回れば臨界になりません。また、この数字も中性子減速材や中性子反射体の配置などを最適状態に置いたときの数字です。
    実際核兵器としての下限はわかりません。
    TETSU29

  3. TETSUさん、便乗質問。
    それって、アクティブ材のが純度100パーセントでってことですよね。

    どんべ

  4. どんべさんへ
    もうちょっと補足すると、実は核物質は純粋な塊よりは、水溶液の状態のほうが臨界し易いんです。というのは、高速中性子(核分裂で飛び出す中性子)より減速された中性子(熱中性子といいます)の方が核分裂を引き起こしやすいんです。そして水は中性子を減速します。
    ちょっといま自宅で教科書程度の資料しか手元にないので、定量的な出来ませんが、2.での私の回答も水溶液の状態での各物質量です。
    TETSU29

  5. うん?どんべさんの質問を勘違いしたかな?
    そう、U-235が100%で760g、Pu-239が100%で510gです。
    TETSU29

  6.  核分裂反応には臨界量があるのですが、たしか核融合反応には臨界量がなかったと思います(正確なところはTETSU29さんにおまかせっ)。ただし、現在の水爆は起爆に原爆を使っているので、核分裂反応の臨界量で制限がかけられてしまいますが。
     原爆はТNТ換算1トン程度の威力のものが実験で作られています。爆発効率を落とし、反応量を少なくしています。水爆では数十トン程度のものが実用化されたようです。
     水爆の起爆にプルトニウムより原子番号の多いカリフォルニウムのような元素を使ったり、あるいは起爆に原爆以外の方法を使えば、さらなる水爆の小型化も可能ではあるそうです(例えば拳銃弾くらいの大きさとか)。


    ノースバーグ

  7.  TETSUさん、どうもありがとう。本当に勉強になります。

     さて、私の調べた文献によれば、原爆は高速中性子による
    連鎖核分裂であることが必要だそうです。
    TETSUさんの言われる「最小臨界質量」は、
    やはり兵器には不向きであると思われます。

     ここから先は完全に余談なのですが、
    日本の原爆開発研究と呼ばれる「二号研究」は
    ウラン濃縮と、軽水減速による連鎖核分裂の研究をしており、
    「爆弾トスルコトハ不得策」という結論を出していたそうです。
    どうも仁科博士は、原爆ではなく、軽水炉を造ろうとしていたようなのです。
     ここから私は、
    「もし、二号研究が軍事的成果をあげていたとしたら、
    それは原爆ではなく、原子力潜水艦だったのではないか。」
    という想像をしているのですが、
     対米戦争が「石油がない」ことから始まったことを考えると、
    もしかしたら仁科氏は、原子力発電を夢見ていたのではないか?
    そんなことを思ったりもします。
     
    どんべ

  8. そう、原爆の場合はあまり早く臨界になっちゃうと威力が小さくなっちゃうんで、核爆発直前までは臨界未満の塊を離しておいて、一挙に臨界質量を大きく超えた量を集中させるという発想で設計されます。要は瞬間的にエネルギーを取り出すということですね。
    「最小臨界量」という考え方は、核燃料工場などでの臨界事故を防止するための基準に使われます。
    ああ、あとそれから私は不勉強なので核融合のことはよくわからないです(ああ恥ずかしい)。

    TETSU29

  9. >8 急に話をふって申し訳ありませんでした(^_^;)。

     補足。現在の水爆を起爆させるための原爆は、威力をできるだけ抑えてて、これがТNТ換算0.5トン程度だそうです。
    ノースバーグ

  10. 東海村の臨界事故、あれはどのくらいの量のU235が反応したのでしょうか。
    NX

  11. >10
    臨界時の状態が確か濃縮度18.8%の中濃縮ウランをU量で16.6kgですから、U-235が3.1kgで臨界になったはず?
    でも実際に核分裂したのはこのうち、1mg程度です。
    TETSU29

  12. 7>私の調べた文献によれば、原爆は高速中性子による連鎖核分裂であることが必要だそうです。

    ウラン235による核分裂反応には、熱中性子による捕獲反応によってウラン236に変化すると同時に核分裂を起こします。
    高速中性子の場合は核分裂を行わないウラン238に捕獲されるのみです。
    JCO事故の際、初期のバースト時以降臨界が持続したのは、ウラン溶液を入れた容器を冷却するための水が循環していたため、
    それが減速材及び反射材となって熱中性子が生成されたことになります。
    その後の水ポンプ破壊とボロン注入で臨界は収まりました
    高速中性子で核分裂が起こるならば更に持続し、また自己核分裂時に発生する中性子でも核分裂が起こってしまい、既にこの世にはウランがなくなってしまったかもしれません。
    核反応に限定すればα線(荷電粒子)でも原子番号の小さい場合核反応を生ずることがあります
    ビクトロラ

  13.  ↑高速中性子でも核分裂は起きるんですよ。
    ただし、ウランの場合、軽水炉用の燃料などとは比較にならないくらい
    高濃縮であることが必要ですが。

     尚、高速中性子が衝突するとウラン238も核分裂を起こすことがあります。
    3F(分裂-融合-分裂)型水爆に応用されています。

    どんべ

  14. >12&13
    うん、どんべさんが正しいですな。詳しく書けなくもないですが、いま酔っ払ってるんで、ちょっとまともな回答は勘弁してください。酔いが醒めたらちょっと解説しましょう。
    TETSU29

  15. 核分裂反応では中性子が反応に介在するため臨界量があります。
    しかしながら、核融合反応では、核同士の反応(たしか重水素と三重水素の)なため臨界量はありません。
    核融合反応は高温高圧条件をかけてやり、核融合反応を起こす軽元素さえあれば核融合反応は進むからです。
    アメリカのスーパーノヴァなんか核融合反応に臨界量のないということを証明する1例ですよね。
    ちなみに、水爆は一瞬なので原爆ですむんですが、核融合発電ではこの高温高圧を継続的にかけるのと高温高圧に耐える炉の材料探しが大変だそうです。

    >ピクトロラさん
    U-235は速中性子でも核分裂反応は生じます。
    熱中性子(1/40eV程度)でのU-235の核分裂反応断面積は約580barn。(1barn=10^-28m^2)
    核分裂で生じる速中性子(2000MeV程度)でのU-235の核分裂反応断面積は1barn程度。
    現在の天然ウランでは大量に存在するU-238が中性子を共鳴捕獲してしまうのでU-235にはほとんど中性子は当たらないんです。JCOの件も同様です。
    ただ地球創生時といったころにはU-235の比率は今よりも高く連鎖反応が起きていた可能性があるそうです。
    (実際天然原子炉の跡が見つかっているという話を聞いたことがあるのですが、かなり記憶モード・・・)
    Takky

  16. Takkyさん見事な解説です。(先越された・・・)
    ちなみに天然原子炉はガボン共和国(アフリカ)のオクロに存在が確認されてます。

    TETSU29

  17. 出張明けて見てみたらどえらいことになり申し訳ありません。
    速中性子に関しては、確率が低いところで切り捨てた表現で書いてしまいました。
    皆様方が正解です。
    速中性子の核分裂は田淵のランニングホームランよりも確率は低いので・・・。
    しかし核反応断面積まで出てくるとは・・。
    今一度「放射線概論」を出して勉強します。
    ビクトロラ


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