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823 はじめまして。サイレンサーの効果というのは実際どんなもんなんでしょう?
映画等では「ボスッ!」という感じで見事に消音されていますが・・・
@オートマチックとリボルバーでは効果は違うのですか?
A枕に銃口を押し付けて発射する場面をたまに見ますが消音出来るものですか?
NON

  1.  結論だけ先に言うと、『映画のサイレンサーの発射音は大袈裟』です。

     距離にもよりますが、実際に生で銃声を聴くと、ほとんどの人はその凄まじい大音響に驚くでしょう。人間の耳の可聴領域は、音圧1dB(無音室で聴く時計の秒針の音)〜130dB(間近で聴くお寺の鐘の音)程度とされています。銃の発射音の音圧は140〜160dBで、これを遙かに越え、下手に間近で聴いたら鼓膜が破れかねない凄まじさです。特に、銃身が短く、リボルバーのように薬室の閉鎖が完璧でない銃ほど、その発射音は大きくなります。
     さて、第二次大戦中にイギリスで開発された消音ハンドガン、ウェルロッドMkII(口径.32ACP)の発射音は100dBです(口径9mmのウェルロッドMkIは120dB)。また、同時期にアメリカで作られたサイレンサー付きコルト・ウッズマン(口径.22LR)の減音効果は110dB→75dB、同じくアメリカで作られたサイレンサー内蔵M1カービンの発射音は約85dB。で、映画等のサウンド・トラックの上限は90dB程度。つまり、実際のサイレンサーの発射音は、映画の中の”普通の銃声”と大差ないorそれより大きいのです。映画のサイレンサーの発射音が静かすぎるのは、実際のサイレンサーの発射音をそのまま再現したのでは面白くないという演出上の理由によるものです。

     では、その程度の効果しかないサイレンサーがなぜ軍や警察等で重要視されるのか? 現在開発されているサイレンサーの大部分は、スナイパーや特殊部隊が使用するライフル、サブマシンガン用に開発されたものが多いですが、これらのサイレンサーは、その用途上、減音効果そのものよりも、高い音域を削ることに重点を置いています。
     音は大きければ大きいほど指向性が高くなる、つまり、聞こえてきた方向がわかりやすくなります。ならば、音を低くすればその分指向性は低下し、音の出所を隠すことができるというわけです。例えば特殊部隊が建物内に突入する場合、サブマシンガンをサイレンサーで減音することによって、敵にこちら側の突入のタイミングや突入方向を見誤らせることができます。また、スナイパーはライフルを減音することで、発射音で位置を標定されて反撃を食らうリスクを軽減することが可能になるのです。

     さて、オートとリボルバーにおけるサイレンサーの話。『ゴルゴ13』とかでよく出てくるリボルバー+サイレンサーですが、リボルバーはその構造上、銃口だけでなくシリンダー・ギャップ(シリンダーと銃身の間にあるわずかな隙間)からも発射ガスが噴出する、つまり、銃口以外の場所からも音が出ます。だから、リボルバーの銃口にサイレンサーを取り付けて減音しても、シリンダー・ギャップからガスが噴出する分効果は減ってしまうのです。
     もしリボルバーにサイレンサーの減音効果を求めるなら、旧ソ連のナガン等のように、発射時のシリンダー・ギャップを減らすハードウェア的な工夫が必要になるでしょう。が、そんな工夫をしても、リボルバーの構造が複雑になるだけで、それほどのメリットはないと思います。
     構造的にクローズド・ボルトであるオートの方がサイレンサーには向いていると言えますが、そのまま装着して使えるわけではありません。ショートリコイル/ブローバック式を問わず、オートマチック・ピストルでサイレンサーの効果を効率的に発揮させようとする場合は、薬室の閉鎖性を高める意味合いから、発射時にスライドが後退しないようにするのが望ましいといえます。具体的には、何らかのスライド・ロック機構を追加する等の方法が考えられます。
     軍・警察等で広く使われているショート・リコイル式のオートは、サイレンサーを装着すると銃身にウェイトをかける形になるため、ショート・リコイルが阻害されてしまい、作動不良を起こす恐れがあります。このため、スライドのリコイル・スプリングを交換するなどして少しでも作動しやすいよう工夫する等の対策を講じる必要があります。が、これを逆に利用すれば、発射時にスライドが後退しないサイレンサー・ピストルが作れることになります。例を挙げると、米海軍SEALSが採用した特殊ピストルMk22Mod.0は、サイレンサー装着用にスライド・ロックを備えていました。
     一方、銃身がフレームに固定されているタイプのオート(ストレート・ブローバックorディレード・ブローバックの作動機構を持つもの)は、作動不良を考慮しないですむ分サイレンサー装着には向いているといえますが、それでも確実な減音効果を得るには、やはりスライド固定等の工夫が必要になるでしょう。

     ただし、サイレンサーだけでは減音効果を出すには不完全です。どんなに発射音を削っても、弾丸の飛行音が響いたのでは意味がないからです。そのため、音速を超える弾薬でサイレンサーを使用する場合は、弾薬をサブ・ソニック弾(初速が音速を超えないよう、弾頭重量を重くしたり装薬量を減らす等の工夫を施した弾)に変える必要があります。
     ハンドガン用弾薬の.45ACPや.22LRは、初速が低い等の特徴があり、サイレンサーを作りやすい弾薬として軍の特殊部隊やテロリスト等に好まれています。サイレンサー付きライフルやハンドガンの成功作には.22LR口径が多く、コルト・ウッズマンやハイ・スタンダード、スターム・ルガー10/22等のサイレンサー・モデルが有名です。

     映画等でよく見る、枕や袋等を使った減音ですが、実際にはそれほどの効果はないと聞いています。それより、ペットボトルに水か砂でも詰めて即席サイレンサーにした方が、1発くらいなら効果があるかもしれません。
    ブラック・タロン

  2. なんかもうブラック・タロンさんがほとんど答えてしまってますが、一つだけ。
    オートの銃が発する音は火薬の発射音や弾丸の飛行音だけではありません。銃そのものの機関音も結構うるさいです。
    私は中国で「85式無声機槍」という消音サブマシンガンを撃ったことがあります。これは銃身そのものがサイレンサーの一部をなしていて、銃声に対する消音効果はなかなかのものでした。(それにしても映画の「ぽす」は大げさですが)その分、銃の発射機構の作動音ががちゃがちゃと、かなり耳に付きました。
    ちなみにその銃は下のサイトの一番下の写真の一番手前の銃です。次にあるのがオリジナルの消音ではないサブマシンガンです。
    http://www.asahi-net.or.jp/~VD4H-OOTK/humi/kousa.html

    石垣一期

  3. >減音効果そのものよりも、高い音域を削ることに重点を置いています。
    > 音は大きければ大きいほど指向性が高くなる、つまり、聞こえてきた戟Eェわか>りやすくなります。ならば、音を低くすればその分指向性は低下し、音の出所を>隠すことができるというわけです。

    全体としてはブラック・タロンさんに意義あるわけではないのですが、
    周波数が高い(引用文中「大きければ大きいほど」は前後からして「高ければ高いほど」とここでは仮定します。誤読でしたらごめんなさい)ほど音の直進性は高まりますが、かならずしも指向性も高まるとは限りません。反射も増えるので。邪魔物が多い環境下では、そこそこ低い音のが定位しやすかったりします。
    聞く側の頭の直径、耳の位置、も効きます。
    単なる物理特性のみならず、脳ミソの回路にもよります。
    さらにより重要なのが、「純音は定位しにくい傾向がある」ということです。
    ヒトでは、高周波音については音圧差と位相差を、低周波では、音圧差と左右の耳への到達時間差を利用して定位しています。

    結局、音の強弱、高低、純粋さ加減、想定される環境、受け手の身体と脳ミソの特徴、なんかを総合して、さらにそれを、技術的に実現可能な手練手管とすり合わせて決まってくるのでしょう。
    はたの

  4. 丁寧な回答ありがとうございましたm(_ _)m
    NON

  5. じゃ。裏技。
    たっぷりのシャボン玉を使用してみませう。意外に消音効果があり。昔地元対策で (オラの牛が砲の発射音でひきつけおこしてまっただー的奴)20mmの消音装置の研究
    をしたことがあるんだけど、何ぼがんばっても10dB以上落ちなかったといふ。ブチ切れてシャボン壁をこさえたら、それから+10dB。おっかねー(笑)

    でも、結局戦車砲or艦載砲対策までには至っていない。なでかっていうと最終的に導き出された結論(探求的研究手法とも言う(笑))では余りにも高くてちょっとなあ
    だから。

    やっぱ一番良く効くのは砲口に真空チャンバーおいてブラストの初期波頭をなだらかにすることですわ。ほんと。圧力差はあっても良いけど、圧力勾配を減らす努力するのもお勧めでし。勾配が低かったら干渉で打ち消すことも可能だし。
    sorya

  6. ドイツでレオ1かレオ2戦車砲用の消音機があったような、なかったような・・・? 訓練時の騒音対策とかで研究されてたような記憶があるのですが、写真には砲口の先に馬鹿でかい消音機がくっついていたように思います。
    ガンヘッド

  7. 第二次大戦中イギリスでは特殊部隊用(暗殺用^^;)の装備としてエンフィールド・ライフルの機関部を 45ACP に改造し、銃身全長を覆う巨大なサイレンサーを付けた無音銃を作っていたようです。ブラックタロン氏のおっしゃる「ウェルロッド」と同じものかどうかはわかりません。単発ボルトアクションで密閉性が高く、発射ガスの殆どを大容積のサイレンサーで吸収拡散するので消音性が高く「ドアをバタンと閉める程度の音」しかしなかったそうです。
    また戦後ロシアでは消音シリンダ内にピストンを持ち、発射ガスを能動的に吸収して消音する消音銃も作られていたようです。どちらにせよ「大きさの割に低威力の弾を使いしかも単発」という特徴があり、暗殺用以外には使えない特殊な兵器です。007のようにポケットから出したサプレッサーをオート拳銃の銃口にネジ込むだけでは気休め程度の効果しかないでしょう。
    ささき

  8. >7
     それは『デ・リーズル・カービン』ですね。
     南アフリカ出身の銃器設計者ウィリアム・ゴットフライ・デ・リーズルが、イギリス軍の要請を受けて1943年に開発した、口径.45ACP、ボルト・アクション7連発のサイレンサー・カービンです。ささきさんが書かれている通り、SMLE MkIII(リー・エンフィールド・ライフルの短縮モデル)の不良品の機関部とストックを、マガジンはM1911A1(コルト・ガバメント)のものを流用して製作されました。
     デ・リーズル・カービンの特徴は、何と言ってもその巨大なサイレンサーです。マキシム型サイレンサー(内部を多数のディスクで区切った構造)にガス抜き穴付き銃身を組み合わせており、太い直径と長さ(サイレンサー込みの銃身長500mm)も相まって、高い減音効果を発揮したそうです。
     デ・リーズル・カービンは、1944年春に軍によってテストされ、ステンMkIIS(ステンMkIIのサイレンサー・モデル)との比較の結果、減音効果、命中精度、耐久性、メンテナンス性ともに良好と評価され、同年8月からスターリング・エンジニアリング社に量産が発注されました。空挺向けの折り畳み式金属ストック付きモデル50挺を含む500挺が発注されたものの、同年11月に発注がキャンセルされたため、スターリング社での製造は106挺にとどまり、試作を含めた総製造数は130挺ほどでした。
     製造されたデ・リーズル・カービンは、第2次大戦末に対ドイツ戦に投入されました。戦後も使用は続行され、1950年代のイギリス領マレーシアでの内乱や、1960年代のアフリカ等で特殊作戦に使用されました。
     少数製造で終わったにもかかわらず、デ・リーズル・カービンはその高い減音効果で注目され、戦後1980年代に、イギリスの他のメーカーで改良コピー品が製造されています。また、ベトナム戦争中のアメリカでは、スペイン製の9mm口径のライフルにデ・リーズル風の試作サイレンサーを組み込んでテストしています。

     ちなみに、ウェルロッド消音ピストルは、第2次大戦中にイギリスSOE傘下の兵器研究所が開発した、手動6連発のサイレンサー・ピストルです。口径9mmX19のMkI、.32ACPのMkII、袖の中に隠せるよう小型化した『スリーブ・ガン』の3バリエーションがあります。
     このピストルの特徴は、サイレンサーがレシーバーと一体化した円筒形になっている点で、グリップはマガジン(MkIはM1911A1の9mmモデルのものを、MkIIはコルト・ポケットM1903のものを流用)にゴムパッドを張り付けて兼用させています。このため、グリップを外すと隠し持つのに便利という利点がありました。トリガーもワイヤーを曲げただけの単純な構造ですが、グリップ後部にはグリップ・セフティを備えています。作動形式はボルト・アクションの変形で、レシーバー後部のノブを指で回してボルトを引き出し、押し込んで薬室に弾を装填、逆に回してロックするというものです。サイレンサーの構造は、例によってマキシム構造+穴開き銃身で、.32ACPを使用するMkIIの場合、発射音を100dB程度に押さえることができました。
     ウェルロッドMkIIは、SOEの他、1943年からは米OSSにも供給され、対ドイツ戦やレジスタンス活動に使用されました。第2次大戦中、どの制式ピストルよりも多くのゲシュタポ隊員およびコラボレーターを倒したと言われています。
     戦後もSASによって使用が続けられ、旧イギリス領での内乱や特殊作戦に使用されました。1980年代に入っても北アイルランドで使われたと言われています。また、アメリカではベトナム戦争中にウェルロッドのコピーを試作テストしたそうです。
     なお、9mmのウェルロッドMkIは、MkIIとはサイレンサーの構造が若干異なっており、穴開き銃身にシンプルなガス拡散方式を組み合わせたものです。9mm弾を使うこともあって発射音は120dB以上あり、銃自体も大型で持ち運びに少々不便なことから、少数製造で終わっています。
     スリーブ・ガンは、ウェルロッドMkIIをベースにした単発ピストルで、銃口部分にボタン式のトリガーを備え、服の袖の中に隠して使用できるようにしたものです。
    ブラック・タロン

  9.  続き。
     旧ソ連が開発したサイレンサー・ピストルとしては、ドイツの上下2連発ピストルEM・GEをベースにした2連発のサイレンサー・ピストル(口径不明)があります。これは弾薬自体にピストン構造を組み込み、ピストンによって弾頭を送り出す構造になっています。このため、発射ガス自体が外部に噴出せず、発射音がまったくと言っていいほどなくなるそうです。この特殊弾は、その後口径7.62mm6連発のセミ・オートマチック・サイレンサー・ピストルに応用されています。これの発射音はエアライフル程度だそうで、射程は50m、25mから厚さ2mmの鉄板を撃ち抜けるとか。
     一方、既存のピストルをベースにしたサイレンサー・ピストルとしては、マカロフ(PM)を改造したマカロフPbと、スチェッキン(APS)を改造したスチェッキンAPbが知られています。
     スチェッキンAPbは、軍から回収されたAPSの一部を改造したもので、銃身にスリーブを被せ、そのスリーブの先端にサイレンサーを装着する構造になっています。発射ガスは銃身からスリーブを介してサイレンサーのガス拡散室に入る仕組みです。なお、フル・オート機能は残されています。
     これに対し、マカロフPbは新規に製造されたもので、一般のPMとはほとんど別物同然の構造になっています。スライドの前半分を切り取り、穴開き銃身を覆うように円筒形のガス拡散室を組み込んでいます。そして、その先端にマキシム構造のサイレンサーを装着します。銃身の周囲にガス拡散室を組み込んだため、リコイル・スプリングはグリップ内に移され、特殊なL型部品を介してスプリングの力をスライドに伝える構造になっています。

     これらのサイレンサー・ピストルは、いずれもスペツナズ等の特殊部隊に支給されました。
    ブラック・タロン


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