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第二次大戦中の航空機用エンジンでは、主にシリンダ内の発熱量を下げる目的から「水噴射」と称して、水とメタノール(またはエタノール)の混合液を噴射するということが行われましたが、当然ながら水は燃えません。そんなものをシリンダ内に送り込んで燃焼効率は低下しなかったのでしょうか?メタノールやエタノールはどうでしょう? よろしくお願いします。 ちなみに、これは「罠」ではありません(笑)。 胃袋3分の1 |
同じ容積の混合気を吸った場合、圧力が低いほど混合気中の気体分子数は多くなります。
これは、過給器と同じような効果があるはずです。
で、アルコールは、「気化熱が水より大」だったか、
「速やかに熱を奪う」だったかの性質がある上、それ自体が燃焼しますので、
水よりも効果は大です。
>ちなみに、これは「罠」ではありません(笑)。
私、最近、遊ばれるのにも慣れちゃいましたし。
なんか、参加すると面白そうなので、無理に回答してみました。四式戦闘機は最高!
どんべ
訳では無いのである程度は許容出来るのではないでしょうか?
かのガンストン氏によれば「とある」米国製エンジンでは燃料1ポンドに
メタノールと水を0.5ポンドずつ加えれば、同条件でブースト圧を倍に
出来たそうですから、「益」が多いということなのでしょう。
ただ、MW50パワーブーストの場合(他の奴もそうかも知れませんが)腐
食防止剤が入っている位ですから、エンジンに悪影響を与えるのは事実な
のでしょう。逆に、我が国での「水メタ噴射剤」の成分をお聞きしたいです。
>1
で、アルコールの冷却効果は水の半分程度であり、どちらかというと不凍液
として混ぜていると思いましたが・・勿論、燃焼するのは水に比した場合利
点ですけれども。
takukou
>圧力が低いほど混合気中の気体分子数は多くなります
どうしてですか?文科系人間の私でも分かるよう、基礎的な「物理」
(それとも「化学」?)法則で教えてください。
また、同じ器なのに無理矢理パワーアップさせて、エンジンがいかれないんでしょうか?
自動車エンジンの話ですが、15年前、トヨタの6M(3リッター・V6)にターボ
を装着したは良いが、もともとシングルカム・エンジンを無理にDOHCにした
エンジンなので、一見パワーアップしたようで、バルブに過大な負担がかかるので
壊れるのが心配だ、という噂を耳にしたことがあります。
もっとも、設計当初から、ターボなりMW50なり、パワーアップのために余裕を
持たせていたのでしょうか?
いやあ、市販の本を読みあさっても、「あ、そうなの」と変に納得してましたが、
こうして科学的な応答をハタで見てると、「やっぱり軍事技術って難しいし、めんどいな」
と思います。
主計大尉
げ、そうでした?これについては調べなおしてみます。
>3
すみません。読みなおしたら、これ、確かに変です。
「温度が低いほど混合気中の気体分子数は多くなります」と、書くべきでした。
気体の温度が下がる=分子の運動量が減ると、
分子数は変わらずに、気体の容積が減る、もしくは圧力が下がります。
逆に、容積と圧力が一定ならば、温度が低いほど分子数が増える、という事です。
で、私が書いた1番の前半部が正しい
(「零戦燃ゆ」で調べたら、大体あってます。)とすると、
水メタ噴射は吸気、あるいは排気行程で行われなければならないはずなのですが、
全く違う記述を見つけてしまいました。
「出力行程でシリンダー内に水を噴き込んでやると蒸気を発生し、
燃焼ガスとともに膨張してより強い圧力がピストンを押し下げる。」
というものです。
液体は気体よりはるかに分子密度が大きいですから、
圧縮比を高めたのと同じ効果がある、という事でしょうか?
一体どっちが正しいんでしょう?
どんべ
「吸入圧 +125mm(約 35Hg)からメタノールが噴射が始まる。ミリタリー馬力(+250mm - +400mm)でのメタノール消費率は通常 150 リットル毎時である。吸入圧 +125mm 以上でメタノール噴射が行われなかった場合、シリンダーがオーバーヒートする。メタノールを使い切った後にも運転を続けるとメタノール・ポンプが焼きつくので注意が必要である。」
四式戦のメタノールタンク容量は 42.2 ガロン(160.5 リットル)。ミリタリーパワー(250mm/39Hg)の連続運転は制限30分。通常手順での上昇はメタノール噴射が始まる直前くらいのブースト 34〜36Hg、巡航は 24〜26Hg が推奨されています。
ささき
総合すると「良くないけどそれを補ってあまりあるメリットがある」ということでしょうか。
ところで、メチルアルコールとエチルアルコールってガソリンと着火温度は同じなんでしょうか?これが大きく違うようだと、いくら燃えるからと言ってあまりありがたいことにはならないと思うのですが・・・。
ちなみに水にメタノールを混ぜたりするのは、単純に不凍液とするためだという説明が取扱説明書ではなされています。
胃袋3分の1
えーと、水噴射の効果は基本的にはインタークーラーと同じです。
すなわち
・冷却による体積減少による吸気流速の低下(=流路損失の減少)
・点火前温度の低下によるノッキング抑止(=許容ブーストの増大)
です。
堀越技師の回想録などでは後者が強調されるあまり
「全開高度から上では出力に貢献しない」と書かれており、
「水噴射と同時に過給圧を上げないとパワーアップしない」と
言われてしまうこともありますが、吸気効率が限界に近いような
エンジンの場合は水噴射するだけで出力が増します。
吸気マニホールドでなくシリンダーにダイレクト・インジェクションする
場合にはこれは顕著です。
(近年の高出力エンジンの場合、水どころかガソリンの気化熱で
シリンダー内部を冷やすだけでもこの効果はあります)
また、「水が気化することによってピストンを押し下げる効果が増す」は
ほとんど誤差の範囲です。
と言うのは比熱が増えてしまい、一方で燃焼によって発生する熱量は
変わらないからです。
悪影響、つまり胃袋さんの心配される燃焼速度の低下は
ありますが、それよりも問題なのは水が燃焼ガスに含まれる
微量の硫黄や、炭酸ガスを吸収して酸を造ることです。
つまり、エンジンの内部腐食を早めます。
もちろん噴射量の調節が不適切な場合は気化しきらない水が
シリンダー内壁やピストンに付着してそこから腐食が始まります。
そんなわけで、今日ではほとんど用いられません。
(インタークーラーを強化する方が健全です)
たかつかさ
その答えを待っておりました。非常に納得できましたです。
胃袋3分の1