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298 機関銃、自動小銃などの発射速度はどの構成要素(バネや排莢機構という意味で)によって決定されるのでしょうか? 日本は発射速度が遅いことが多いのはわざとなんでしょうか? 

  1.  フル・オート機能を持つ自動銃の発射速度は、作動機構やボルトの構造・重量、リコイル・スプリングの長さ、ボルト後退遅延機構の有無等によって変わってきます。
     僕もこの辺は詳しくないですが、まず大きいのはリコイル・スプリングでしょう。スプリングが短ければ短いほど、ボルトの後退量は少なくなります。それにより、ボルトの往復スピードが速くなり、高い発射速度の要因となります。例えば、イスラエルのUZIサブマシンガンのスタンダード・モデルの発射速度は600発/分ですが、これをハンドガン・サイズにまで小型化したマイクロUZIは1250発/分という2倍以上の発射速度になっています。

     高い発射速度には銃のコントロールを悪くするという弊害もあるので、アサルト・ライフルやサブマシンガンでは、コントロール性を高めて命中精度を上げる目的で、発射速度をわざと低めに設定する場合があります。自衛隊の64式小銃(500発/分)や、アメリカのM3サブマシンガン(450発/分)はこの典型といえます。
     旧日本軍の重機関銃や軽機関銃も発射速度の低い(450〜550発/分近辺)ものが多いですが(重機関銃の発射音は米軍から『キツツキ』と呼ばれた)、これには命中精度の向上の他に、あまり弾を消費したくないという思惑や(旧陸軍は弾薬貧乏だった)、重機関銃では銃身過熱対策、さらには精密工作技術の未熟に起因する作動不良の防止といった理由もあったようです。

     一方、逆に発射速度を上げる場合もあります。サブマシンガンでは、弾薬の威力不足を発射速度のアップで補おうとしたものがよく見られます。また、反動利用式の作動機構を持つドイツのMG42汎用機関銃(1200発/分。現在のMG3の原型)は、銃口にリコイル・ブースター(反動増幅器)を備えて発射速度を上げています。
    ブラック・タロン

  2.  外力作動(チェーンガンだのバルカン砲だの)の場合、発射速度は基本的に(前のタマが出ないうちに次弾装填はできない…)外部動力の回転数に依存します。
     内力作動(反動や発射ガス圧力)の場合、発射速度は遊底の往復速度に依存するわけですが、以下のような要素があります。

    ・使用弾薬の初速大→発射速度大(タマがでるまでは薬室を開放できない)
    ・銃身長い→発射速度小、ただし初速大(同上)
    ・遊底軽い→発射速度大、ただし強い復座バネが必要(作動の加速度大)
    ・復座バネのバネ定数大→発射速度大(遊底前進の加速度大・ストローク短縮)
    ・(ガス作動式の場合)シリンダへの導入ガス量大→発射速度大、ただし初速小(遊底後退の加速度大)

     また、作動方式をオープンボルト方式(発射準備状態で遊底が後退位置にあり、引鉄を引くと遊底が弾倉から弾薬を薬室に送り込み、閉鎖と同じに遊底に固定された撃針により激発)にすると、独立した撃鉄を持つクローズドボルト方式ものに比べて機構内部のタイムラグが少ないので発射速度は速くなります。

    Schump

  3. 追記。小型即発射速度大、というのも若干の語弊があり、下記のような工夫で発射速度を落しているものもあります。

    ・遊底を斜めに作動させてブローバックの腔圧を逃がすとともにストロークをかせぐ(ヤティマティック等)
    ・グリップ内等にバネと重りを仕掛け、これを遊底とリンクさせることで機構の負荷を増やす(スコーピオン等)
    ・遊底に横合いからバネでブレーキを押しつけて機構の負荷を増やす

    後二者は、バネのテンションを調節式にして発射速度を可変にすることができます。

    Schump

  4. 日本海軍の 99 式 20mm は遊底ストロークが長いため発射速度が遅く、復座バネの強化やバッファーユニット組み込み(後退する遊底をバネで強引に押し返す)で高速化を計っていました。最終型では 700rpm 以上を達成しましたが、もともとエリコン系 20mm はオープンボルトでロック機構を持たず、装填完了直前に弾薬を発火させ、遊底の慣性で反動を打ち消す「アドバンスド・プライマー・インパクト(API)」という際どい発火方式を採用しているため弾薬強度・バネ強度の変化に敏感で、開発には惨澹たる苦労を強いられたようです。しかも折角実用化してもバネ鋼の材質や焼き入れ不良などで突っ込みや筒内爆発を起こすこともあったようです(343空菅野大尉機の逸話は有名ですね…)。
    ささき


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