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帝国陸軍の新式小銃弾”7.7mm”はその前の”6.5mm”と比較して発射時点での威力が数%しか向上していないため、あらゆる点で劣る上重くなっている気がするのですが、何か良い点があるのでしょうか? (例えば、Xm以上なら貫通力が上とか、射程が長いとか) 雪男 |
三八式が小口径の割に高初速で健闘しており、重く反動が強い割にMEの低い九九式はむしろ退化しているように思えますが、弾頭重量が50%増量しているので遠距離射撃(恐らく500m以上)における弾速低下が少なく、貫通力も相対的に高かったと思われます。しかし南方のジャングル戦ではその威力を活かす機会は少なく、むしろ発射音が低く発見され難いうえ近距離では致命的命中精度を誇る三八式が狙撃銃として恐れられたのは皮肉でした。
そもそも三八式は名銃ですが職人が一挺一挺手作りしているような銃なので部品の互換性が怪しく、九九式は工業規格にして部品の共通性を上げようとした銃でした。この時同時に軽機・重機・小銃の弾薬共通化も計られ、7.7mm口径の採用はウェポン・システム整備の観点からは必然の選択だったのです。
しかし結果的には薬莢形状にリムド(重・軽機用)・セミリムド(重機用)・リムレス(重機・歩兵銃用)の三者が混在し、同じリムレス弾薬でも重機用と歩兵銃用では弾頭重量や装薬量が異なり互換性がなく(92重機の高威力弾を小銃で撃つと銃が破損し、小銃の低威力弾で重機は作動せず、92重機を改良した1式重機は小銃弾で動くようになったが今度は92式の弾が使えなくなった、etc)これらに従来の6.5mm系弾やら輸入品の7.92mm弾(航空機銃に採用)やら海軍規格の7.7x56Rが混在した結果、日本のライフル弾薬系統は手が付けられないほど混乱してしまいました(;_;)
ささき
参考URL
http://web4.integraonline.com/~bbroadside/
http://www.epsnet.co.jp/~f4u/crazy/jp/gun/index.htm
ささき
が、6mm弾の実用化には、国産無煙火薬の性能に対する不安の他、”馬に対する打倒力”が充分かという懸念(当時の陸軍はロシア軍騎兵を警戒していた)もあったそうです。陸軍は6mm、6.5mm、7mmの3種の口径をテストし、6.5mmと決定したそうです。これには、海外で6mmを採用している国がないことと、日本人と体格の近いイタリアが6.5mmを採用していたことも考慮に入っていたようです。
陸軍が6.5mmを7.7mmに替えたのが得策だったかどうかは専門家の間でも意見が分かれているようです。6.5mmの威力不足を訴えたのは、歩兵中隊より、重機関銃の作動の信頼性の低さ故に減装弾を使わされていた重機関銃中隊だったと聞きます。満州事変以降の中国戦線では、歩兵部隊6.5mm弾は中国軍の7.92mm弾と充分に渡り合えましたが、機関銃弾薬としては7.92mmと減装6.5mmの威力差は大きかったようです。実際、陸軍は昭和7年に92式重機関銃(7.7mm)を制定しましたが、ライフルと軽機関銃が7.7mmに切り替えられたのは7年後でした。
ちなみに、7.7mmX58は当初セミ・リムドとして設計されましたが、これは同じセミ・リムドの7.7mmX56R(.303ブリティッシュ)を原型としたためだそうです。が、その後ライフルにはセミ・リムド弾は向かないとわかってリムレス化され、混乱を起こす原因となったようです。
余談。ささきさんが書かれた7.92mmX57弾は、陸軍が独ラインメタル社の航空用機関銃を採用したときにライセンスを得て国産していたそうです。中国戦線の陸軍は、信頼性の低い11年式軽機関銃の代わりに、中国軍から鹵獲したチェコ軽機関銃(Vz26)を活用したそうですが、国内で生産していた7.92mm弾をこれに転用するという着眼は出なかったようです。
ブラック・タロン