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避弾傾始という考え方はどのようにして生まれ、どのようにして廃れていったのでしょうか。 ヒロポン |
生まれたんではないでしょうか?(推測に過ぎませんので)
で廃れたということはないとおもいます。少なくともM1とか近代戦車の大半の
装甲は避弾傾始を考慮してるはずです。
おっしゃってるのは74式とかの丸みのある砲塔が廃れたことだと思います。
あの形状は避弾傾始は優れているのですが、複合装甲であの形状を作るのは
難しいため(セラミックはプレス加工できないですからね)現在は角張った
形にならざるを得ないんです。
taka
きょうびの弾は10度以下で当たらないと滅多に跳弾しないのよ。
これは過去散々実験してるし、その結果は半経験式の形でまとまってる。
残念ながらこれは現代の常識。
sorya
あの〜、レオパルド2の砲塔の大部分は、あの形状で避弾傾始を考慮しているんでしょうか? 最新型では全面に楔形の増加装甲が着いているけど、避弾傾始のためかなあ?参考までに下の234番を見てほしい。なお、チャレンジャーの砲塔もも前面は傾斜しているものの側面や後部は垂直。砲塔の側面や後部は前面に比べ、そんなに攻撃受けにくいものだろうか?側面の方が面積が広く狙いやすいだろうし。
アリエフ
アリエフ
でもM1の砲塔前面の傾斜は避弾傾始を考えてのものと思ったんですが
傾斜装甲にして水平面に対する厚みを増加させてるだけなのですか?
taka
M1、チャレンジャー、メルカバみたいな(一部でも)楔状的な形してる砲塔ってのは、全て設計思想が古いんだよ。
そのほとんどが起源に対HEAT用として装甲を最適設計されてる過去があるんだな
そんな訳であの手の形状は空間装甲含んだ構造だからと思って良いよ
パス長を増やす効果もあるはあるけどそれは装甲重量減らす効果でしかない
sorya
同じ装甲板で造るなら垂直にするよりも斜めにしたほうが、力を分散でき徹甲弾とかheat弾とか関係なく有効だと思うんですが、なぜ90式とかの新しい思想のものは装甲板を垂直にするんでしょう?
taka
傾斜装甲っちゅーのは普通空間装甲とセットなんだよ。ってのは傾斜させてるインピーダ
ンス境界で起こる屈折みたいな現象を利用する事で弾芯先端を曲げるモーメントを発生さ
せ、その後弾丸をまた弾性状態に戻して次の傾斜層にぶつけないと弾芯重量が減らんのだ。
ただし、あんだけ弾の重さがあると30cmくらいの隙間じゃ意味ないわけよ。弾芯のn倍は
ほしいとこ。ただしHEATの金属ジェットにゃ良く効くけど。ありゃ重量が少ないからさ。
これでほぼ分かると思うけど、傾斜装甲単体じゃ運動エネルギ弾に対してそんなに効かな
いんだな。んで対HEAT弾構造を主体として運動エネルギ弾にも対処させようとすると、装
甲重量がやたら高くなる傾向がある。傾斜装甲部を抜いた運動エネルギの弾芯重量が多す
ぎだからなおさら。
この逆の発想がドイツが最初に採用した方法。この方法のミソは運動エネルギ弾に対処す
る特殊装甲は結局両弾種に対応可能であるという事をその旨とした奴。運動エネルギ弾に
対処するから高強度材料を使わざるを得ず、その高強度を維持するためには表面積を出き
るだけ減らす事で表面欠陥から発生するクラックや伝播クラックといった装甲強度を減ら
す要因を落とした結果、あのような結果になっただけ。面研磨だったら幾らでも綺麗に研
磨できるしね。構造はどこも似たようなもんじゃないかね。アノ手の奴は。高強度金属を
用いた圧力容器中にセラミックス封じ込むって奴(これは最近になってアメリカでトレン
ドになってる構造)
ほいでついでだけど、レクレルクの砲塔がなんであんな形状になったのかってーと、フラ
ンスがデカイ高強度装甲材料が作れないからという笑えない事情がある。小さいピースし
かつくれないから、モザイクみたいに色々な形状に合わせられるっちゅーことね。
推敲してないんでアレだけどこれである程度の説明になったと思う。っていうかこれ以上
はどこにも公式見解を出してないんで(学術報告もしてない)つついてもあんまり細かい
情報が出てこないかもね。
sorya
taka
実際のところウチの装甲理論(侵徹阻止機構)っちゅーのは禄を食む上で重要なもんで(少なくとも前述の圧力容
器構造なんか20年前に通過してる)なかなか詳細が言えないんだなこれが。
秘の報告書とか秘密特許(こっちは古い理論しか登録してない。政府機関は読めるんで)はそれなりに書かれてるけどさ。
基本はSRIがBRL(現ARL)の委託で研究した当該構造の装甲性能の分析報告書のアブストでもJICST使って検索するだけでもちょっとは触れられるって事で。
でだ、件の話はわし等の世界で言うと侵徹重量(=装甲に穿たれた穴の容積を重量で評価する事の意)の話やと思うんだけど、
これが面白い事に角度に関して言えば厚み効果以上のものが出てこないんだな(それでも依存率は1以下)。
パス長に対する容積だけしか効かないんだな。容積で考えれば角度をちょっと付けたくらいじゃあんま大きなな差が出ない事が分かるぞ。
この辺GoldsmithやGuptaの論文なんか有名で、もう20年以上前から知られてたりするんだね。
sorya
ティーガー鎧を着ているやつが、T34鎧と闘ってびっくり。なんてこともあったかも。
バトゥ
AP弾のような古いタイプの弾の場合おもに二種類の跳弾モードがござんす。
一つは表面すべりによるもの、も一つは形状偏向によるものと。
後者の奴は、例えば船から撃っちゃった弾が海面に入ったと思ったら出てき
ちゃったって奴。こりは衝撃インピーダンスによる偏向と先端形状のマジッ
クで、一回は入り込むんだけど先端形状で発生する流れによって弾自体の方
向が媒体中で偏向して離脱してしまうと。これは円弧を用いた先端形状の弾
丸だと特に顕著。
前者の奴はAP弾ゆえの悲劇。以下AP弾の侵徹現象を単純モデルで解釈すると
弾丸が装甲に押し込み、押し込まれることではみ出る装甲板は「弾丸側壁」
によって流れを成形されていくというモデルになる。ってことは同じ速度、
同じ弾丸重量で侵徹長を伸ばすためには、流れを成形する弾丸側壁の部分と
の相互作用を最低限にしなければ成らないと。そんな訳で硬度を上げてみた
り、衝撃インピーダンスの高い(これも一般的には硬度が高い)材料を弾丸
として使わざるを得ないってことだな。流れ抵抗を減らすためにもさ。しか
も、先端を尖らせることで威力倍増。
そんな訳で、ある角度以下で装甲板にAP弾が当たった場合、どんななるのかっ
てーと、弾丸最先端じゃなく、弾丸先端の円弧部分が装甲と当たっちゃっう
訳で、その特定の角度以下で当たっちゃった場合、押し込んだことで発生す
る接触面積に対応する動摩擦が弾自体の慣性に負けてしまってウリャ☆とす
べってしまうわけなのだな。と、まあこんな現象を起こさせる特定の形状を
装甲に取り入れることで装甲重量をへらしましょってのが避弾傾始の事始め。
図示できないんでとりあえず言葉のみではこれ。
で、最近の弾の恐ろしいところは、弾丸が当たると先端がマッシュルーム状
に変形しながら圧力を装甲板に伝えると、弾丸径の約2倍くらいの孔をあけ
る(えろーじょん)。ってことは今までの弾に必要だった押し込んだ材料の
成形や流れは崩壊した弾芯材料の運動エネルギによって作られるため弾芯と
装甲材料の相互作用は絶無になる。で、それぶんながーい弾を用いることが
可能だよんってことなんだな。で、材料特性もAP弾とは全然違ってしまうと。
ほいで、APFSDS弾の場合は衝突時に発生する圧力で弾芯と装甲材料が爆着(
違うけど本質的には同じだ)するような感じになってしまって、弾が逃げた
くとも逃げられんのだな。で、避弾傾始なんて考え方は廃れていったと。
sorya
ヒロポン
装甲に傾斜面を取り入れるよう指示を出したそうです。
おそらくここで初めて戦車における避弾傾始という考え方が生まれたのでしょう。
OR
既に試製九七式中戦車を扱った戦車学校「中戦車教程」にはチハについて
「被弾径始を導入した低姿勢の戦車」と宣言しているのである。
ソ連が1937年に被弾径始を導入したとしたら、それは
かの国が戦車後進国である証拠です。
BUN
たしかに九四式軽装甲車とかは明らかな傾斜装甲ですね。
日本ではこの考え方はどこから来たんでしょうか。
OR
日本では避弾傾始と言う考え方は何から思いついたのでしょうか?
OR
76ページにある「装甲車両局は傾斜装甲が兆弾性能を向上させることを発見した」とあるのは、当局発表の受け売りのようであり、傾斜装甲の砲塔に比べ砲塔内の容積が大きく構造も簡単、かつ共通化によるコスト削減を図った馬蹄形砲塔を放棄し、各設計局で戦車の目的、特性にあった最適の型の砲塔を開発するよう指導方針の変更が行われたのではないか。実際、T26・1933年型(53ページ)の砲塔はかなり傾斜面が取り入れられている。指導方針変更の口実として、スペイン戦争等の戦訓が持ち出されたのではないかと推測するのですが。
アリエフ
19世紀の防護巡洋艦で既に避弾経始って取り入れられてますから
ある意味良く知られていたことなのではないかと思います
日本陸軍の徹甲弾ではAPCBCを採用していなかった事から
車体屋さんが、どっかからヒントを得て傾斜装甲を採用して
武器屋さんはそんなこと思いもしなかったのではないか・・・
なんて想像しちゃったりします
SUDO
このT-26は1933年型の車体にT-26TU・1937年型の砲塔を載せた改修型ではないでしょうか?
となると、この車輌も装甲車輌局の指示より後に造られたものでしょう。
この他にも、この指示より前にソ連に積極的に傾斜装甲を取り入れた車輌は存在しないはずです。
ですから、あの指示は指導方針変更の口実ではなく、
ソ連において初めて戦車における避弾傾始と言う考え方に到達した結果だと考えます。
OR
同じような避弾傾始の考え方があるのでしょうか?違うとしたらどう違うのでしょうか?
OR
ちなみに、ソ連最初の軽戦車T18はイタリアのフィアット3000を元にしたものですが、傾斜装甲を取り入れたデザインはそのままにしている。
参照 http://history.vif2.ru/t18_1.html
スペイン内戦以前のソ連の戦車開発・生産当局が避弾傾始について、あまり重視していなかった、あるいは、その効果を重要と考えていなかったのでは。そしてスペイン内戦の戦訓で、これが決して無視できないことを実感し、特に砲塔部を積極的に避弾傾始に配慮した形状にするよう指導方針を変えたということではなかろうか。口実というのは取り下げますが。もちろん、邪推だけど。
アリエフ
以下は推測ですが、ソ連の戦車は既に当時から、可能な限り車内容積を切り詰めて
小型・軽量化に努める傾向があるように感じます。
このことはBT-1やT-18が、それぞれ他のクリスティー戦車を元にした戦車や
ルノーFTを元にした戦車たちに対して、比較的小型であることなどからもうかがえます。
その小型・軽量化のために最も効率的な装甲版の構成を選択した結果、
BT-1やT-18は傾斜装甲を用いているのではないでしょうか?
とにかく私が言いたいのは、はっきりと「避弾傾始を目的としたもの」と明記されていない限り、
傾斜した装甲板が避弾傾始を目指したものであるか判断すべきではないということです。
なぜならそれが装甲板の効率的な構成のためによる場合と区別がつきにくいためです。
あと20.の質問は、本来の質問の回答から脱線しすぎているように感じてきましたので、、
新規に艦船のAns.Qで質問することにします。
OR
OR
確かに私も傾斜装甲=避弾傾始と言えるのか、書きながら疑問に思っていました。この辺、傾斜装甲の角度や形状、それに装甲同士の接合方法等の構造まで見ないと早急に結論付けられないのかもしれません。
アリエフ
taka氏には悪いけど、ほとぼり冷めた頃に時間差解説攻撃(笑)
そんな訳でカプセルコンセプトの本質はセラミックスに依存する部分がとても大きいのよ。
セラミックスの特性とは何か?
簡単に言えば衝撃インピーダンスの高さと文字通り桁違いの圧縮強度。
で、なんでセラミックスが効くの?っていう解説はもしかしたら本邦初公開かもしれんのだが、
まあこんなテキトーで文であっちゃうのは勘弁して〜(笑)
さてと。そんな訳で机上の空論。無限大の大きさをもつ透明なセラミックスバルクを想像して、
それにHEATジェット(高速液体金属流)をブチ込んで、μ秒の分解能で内部をみてみましょ。
するとどうなるのかってーと、インピーダンス比と衝突速度で計算される理論的侵徹速度に見
合った速度で穴が成長するのと同時に弾性波速度で走っていく無数のクラックがみえるのよ。
ホントはクラックできるとセラミックスの見かけ強度は一気に下がるんで一気に抜けちゃう。はず。
でも、実際はそうでもない。どしてだろ?
それを可能にするのがセラミックスのもひとつの特性である圧縮強度。
ビッチリとクラックが発生し、圧力が掛かっているそのセラミックスクラスタをまだ破壊され
ていないセラミックスのケタ違いの圧縮強度で支えるというモデルになるんだな。(時間とともに支える表面積は増えるけんどさ)
圧縮強度だけだったらセラミックスは鉄系材料の10倍以上は軽くでちゃう。
だから、その超強度の材料でセラミックスクラスタをがっちりサポートすることで見かけの嵩耐弾性が高くなっちゃうと。
なんとなくバルク風味ってことね(笑)
そのほかにはセラミックスクラスタをもっとちっちゃく砕かさることで運動エネルギを減らすわ(おっきなクラスタ→ちゅうくらいのクラスタ→ちっちゃなクラスタ)
エロージョン流れにセラミックスクラスタがまじることで、エロージョン阻害を起こさせるなんてことが同時に起こっちゃう。
ま、こんな感じのメカニズム。今の説明でいくと、セラミックスを使った装甲は弾の速度がはやけりゃはやいほど、必要とする
セラミックスバルクの大きさが小さくなる→安く上がるとなるんだな。M1A1なんかHEAT専用の装甲なんで、ただひたすら大きなセラミックスぶち込んでるだけ。
じゃ、KE弾にゃどうするかってーと、KE弾の速度用にバルクを大きくしてみました〜的なかん
じ、余りにも速度比が違うんで、実用的じゃないから高強度金属カプセルでなんとかしませう
っちゅー話し。
ちなみに強度低下を引き起こさせるクラックは、セラミックスのとある強度(秘密)を高くす
るのと同時に、クラックを引き起こさせる要因のある材料特性を重視した材料設計をすれば、
クラック自体の発生が見事に減っちゃうのだ。
とまあ、こんな話。しかも基本の一歩編。
相変わらずのてきとーなせつめいですまんね(笑)
そんな訳で、このタイプの装甲を実用化したい国はでっけー高強度セラミックスを焼く技術は
必要だわ、セラミックス材料設計技術は必要だわ、それを支えるカプセルに使う高強度材料の
開発は必須だわ。
それだけじゃあかんので、+α、βの技術は必要だわで、基礎工業力ないところはぜってー無理
なかんじ。レクレルクの装甲はヘボと言いきるのもその辺。そこそこの装甲能力に形状効果で逃
げてるだけ。その形状効果だって今のKE弾とか将来のHEAT弾を考えれば疑問。
ってなわけで。
sorya