QQCCMMVVGGTT
111 |
基本的な質問ですが、同じ口径で弾頭部が同じ重量なら、薬莢式の戦車・対戦車砲と、対戦車誘導ミサイルは戦車に対してはどっちが効果的なんですか?近距離なら薬莢式が強そうですけど。(ジュンコウ)
|
- 基本的でよい質問なのですが、対戦車砲とミサイルの比較以前に、対戦車(対装甲)火器について基本的な所から説明する必要があるのかな、と感じているのですが…(N)
- まず、知っていることを挙げます。・誘導式なら装甲の薄い上部から攻撃できる・誘導方法には:有線式:無線目視式:無線カメラ式がある・薬莢式には、ライフル式(旧式):太い滑空式:羽付き滑空式がある・粘着弾は4号戦車などの分割装甲にはほとんど利かない・ジェット流弾は反応装甲で無効化される・・・・以上一部ですが覚えてることです。(ジュンコウ)
- ううむ、まぁいいや。戦車の厚い装甲板を打ち破るには、砲弾を高速でぶつける方法があります。こういう弾を「運動エネルギー弾(KE弾)」といいます。この場合砲弾は、より速度が大きい方が、より重量が大きい方が(その方が砲弾の運動エネルギーが大きくなります)、より直径が細い方が(狭い範囲にエネルギーが集中する)、より厚い装甲を貫く事が出来ます。(N)
- 砲弾に与えられるエネルギーは「P(砲身内の圧力)xS(砲弾の底面積)xL(砲身の長さ)」(実際はPを砲弾の位置の関数として、それを砲身の長さで積分したものになるけど)から摩擦や抵抗を引いたものになるので、砲弾のエネルギーを大きくするには、ガス圧をあげる(装薬の量をふやす)砲身を長くする、砲弾を太くする(大口径化する)等の方法があります。(N)
- (ただ、砲弾を太くするというのは先に書いた、細い方が有利という事と反しますので、細い砲弾に装弾筒(sabo)を付けて太くして発射し、砲身から出たらその装弾筒が分離し、細い砲弾(弾芯)だけが飛んでいくという形式の砲弾が現在では使われています)―その方が空気抵抗も少ないし―こう言う砲弾を「装弾筒付徹甲弾(APDS)といいます(N))
- (ただ、砲弾を太くするというのは先に書いた、細い方が有利という事と反しますので、細い砲弾に装弾筒(sabo)を付けて太くして発射し、砲身から出たらその装弾筒が分離し、細い砲弾(弾芯)だけが飛んでいくという形式の砲弾が現在では使われています)―その方が空気抵抗も少ないし―こう言う砲弾を「装弾筒付徹甲弾(APDS)といいます(N))
- 「装弾筒付徹甲弾(APDS)が前に書いた羽付き滑腔弾(滑空は間違いでした)に当たるわけですよね。
- あと、「砲弾を長くする」も効果が有りますね。(下ともジュンコウ)
- 砲弾は普通、コマのように回転しながら飛んでいきます。これは砲弾がまっすぐな姿勢で飛んでいくようにするためです。もしこの回転がないと(鉛筆のようなものを投げてみればわかりますが)ぐるぐると変な回転をしながら飛んでいってしまい、空気抵抗が増えるし、装甲にもうまく突き刺さりません。(N)
- 一方、砲弾を「細く」「重く」するとその形はやたら細長くなります。こういう細長いもの姿勢を安定させるためには、その(コマのような)回転をどんどん速くしなければなりません。しかし現実には発射の際に与えられる回転数には限度があるので、別の方法を使って砲弾を安定させる事になります。その方法が砲弾に翼をつける事です。弓矢の矢のように羽をつけると、回転させなくてもまっすぐな姿勢のまま飛ぶようになります。(N)
- こういう形式の砲弾(徹甲弾)を「翼安定式徹甲弾」といいます。実際には先述の「装弾筒」と組み合わされて使われるので「翼安定式装弾筒付徹甲弾(APDS―FSあるいはAPFS―DS)」といいます。(N)
- また、砲弾を出来るだけ重くするために密度の高い材料―タングステンの合金とか、なにかと話題の劣化(減損)ウラン―が使われたりもします。(N)
- (質問者)ということは、今はほとんど羽無しの滑腔弾は使われてないのですね。
- やっと「KE弾」が終わったよ(笑)。次は「化学エネルギー弾(CE弾)」か…。これはノイマン効果とかモンロー効果とかいわれているものを使って、高速の金属ジェットを吹き付ける事によって装甲を貫こうとするものです。「成形炸薬弾」とも言われていますが、その通り爆薬を特別な形に成形する事によって効果を発揮します。どんな形かっていうと、円筒形から円錐をくりぬいたような形ですね。このくり貫かれた円錐部分の表面に銅製のライナー(内張り)を施します。(N)
- そういう状態で爆薬を爆発させると、中心に高速(6000〜8000m/sぐらい)の金属ジェット(もとは銅製のライナー)が生じます。このジェットが装甲を貫いて戦車の内部に侵入するのです。
- また、普通の砲弾に与えられている(コマのような)回転があると、その遠心力によりジェットが拡散してしまい威力が減少してしまいます。その点からもこの砲弾も、翼安定式にする事が望ましいです。(N)
- (質問者)パンツァーファウストもノイマン効果利用の成形炸薬弾ですね。
- まぁ、説明はこんなものかな(だいぶ端折ったけど)。で、次は両方の損得勘定か…
- 「徹甲弾」(運動エネルギー弾)を使う場合、その装置はかなり大掛かりになります。現在のMBTを撃破しようとするなら、内径105〜125mm、長さ5mぐらいの頑丈な(だから相当重い)パイプを自由に旋回、仰俯角できるような架台に取り付け、さらに発射の際の強力な反動にも耐えられるようにしなければなりません。これは人間が持ち運ぶどころか、ジープのような軽車両に積む事もままなりません。(N)
- 「成形炸薬弾」(化学エネルギー弾)の場合、砲弾の速度は遅くても威力に違いはないので、無反動砲で発射したり、ロケット弾にすれば歩兵に携行させたり、軽車両に積むのも容易です。ただし速度が遅ければ射程も短くなるし、命中率も低くなってしまいますが。ただ、その欠点は誘導式の兵器(ミサイル)にすれば改善する事が出来ます。(N)
- 徹甲弾はほとんど爆発しないのですね。
- 命中後の威力は「KE弾」の方が「CE弾」より効果的と見られているようです。「KE弾」は複合装甲などの効果が「CE弾」より小さく、装甲を貫通し車内に飛びこんだあとも、運動エネルギーがなくなるまで内部を
- 「CE弾」の効果を減ずる方法と有効なのが「スタンド・オフ」を狂わせる方法です。「CE弾」は貫通力が最大になる位置のがだいたい決まっていて、それより遠くで爆発すると貫通力が相当減少します。そのため、車体の側面に金属板を置き(サイドスカート)、弾頭を装甲から離れたところで爆発させるという防御方法が使われています。また、金属とセラミック等を組み合わせた複合装甲の効果も、「CE弾」の方がより威力を減じるようです。(N)
- 「CE弾」の効果を減ずる方法と有効なのが「スタンド・オフ」を狂わせる方法です。「CE弾」は貫通力が最大になる位置のがだいたい決まっていて、それより遠くで爆発すると貫通力が相当減少します。そのため、車体の側面に金属板を置き(サイドスカート)、弾頭を装甲から離れたところで爆発させるという防御方法が使われています。また、金属とセラミック等を組み合わせた複合装甲の効果も、「CE弾」の方がより威力を減じるようです。(N)
- また、装甲を貫通したジェットが車内に吹き込む事によって、内部を破壊するわけですが、そのジェットが吹き込んだ場所に人がいればそれを殺傷するし、弾薬があれば誘縛を引き起こす可能性がありますが、そうでない場合の車内に及ぼす効果は「KE弾」よりもだいぶ低いようです。(もっとも「マーヴェリック」みたいに50〜60kgもあるような弾頭だと流石に大概の戦車は破壊できるようですが)(N)
- 火炎放射器なら戦車の隙間から入って中に行き渡りますが、ジェット弾頭のジェット流は広がりにくいのですか?
- 損得勘定というか、性質的なものを書いてみましたが、じゃあ実際にどちらがどのくらい効果的かって言うのは、ちょっと難しい。定性的な事は色々書けるけど、定量的な評価となるとなかなか素人には具体的なデータがわからないから。まぁ、分厚い装甲を持ち、敵砲火に見をさらしながら突撃し敵陣を制圧する戦車は、ミサイルよりは戦車砲を搭載するだろうし、歩兵や軽車両、航空機は物理的にミサイルを選ばざるを得ないだろうけど。長々と書いといて、これが落ちとはごめんなさい。(N)
- 長々と有り難うございました。私の新鋭兵器の情報ソースが88年に出た出射忠明氏の本のみなので、大変参考になりました。比べれば、10年前とほとんど兵器が変わってませんでした。やはり大戦争がないからでしょうね。
- (続き) 「丸」などで見てもこういう比較はほとんどないので、やはりこれらの場での情報交換が大事ですね。あと、私なりに結論が出ました。すなわち、「ソフトスキンは敵優勢なところでは弱く、味方の陣地では同じ攻撃力のハードスキン並みの力である」です。ということは、防衛のみなら徹甲弾式の砲よりも誘導ミサイル式の兵器が向いているのでしょう。生産効率が非常に高いので。
- ジェットが広がっちゃうから威力が減ずるのでしょう。空間装甲(スペースド・アーマー)もその原理で「CE弾」を防いでいるものと思う。(N)
- なんか、半日で巨大スレッドが(笑)、↑ジェットの拡散は、密度に反比例するとか聞きました、だから空間が有るといきなり広がるんではないでしょうか/SUDO
- ジェットが広がったら乗員は焼け死んでしまうので(間隙装甲でない場合)、なかに及ぼす力はただの徹甲弾より強いのでは?よく物語でハッチの隙間や偵察窓から火炎放射器の炎が入り込むと言われていますが、それとも成形炸薬弾のジェットは性質が違う?(ジュンコウ)
- まあ、間隙装甲の戦車が多いから成形炸薬弾は乗員に効果が少ないだろうけど。(同)
- 成形炸薬弾の方も進歩していますよ。歩兵携帯式の軽対戦車火器で自衛隊も装備しているドイツ製パンツァーファウスト3の最新型の改善ダンデム弾頭は、爆発反応装甲で防御された900mm以上の鋼板を貫通するそうです(ただしメーカー公表値)、次世代の軽対戦車兵器だとこの貫徹力900mmが目安になるようですが。(歩兵の手持ちロケットで「大和」の主砲の防盾が楽に撃ち抜ける時代)
- コンクリートは鋼鉄より成形炸薬弾に弱いのですか?それとも強い?(ジュンコウ)
- ただ歩兵携行式の小型の成型弾頭は「貫通出来る」だけで内部への殺傷能力は弱いように思います(なんか穴開けるだけで全精力を使い果たしそうで、下の「900mm以上」のメーカー公表値はそんな気がして・・)M1やレオパルド2クラスの戦車を一発ノックアウト出来るかは難しいように思います。(内部にケブラー製の防弾カーテンで乗員のコンパーメントを仕切れば(乗員間の意思の疎通の問題が生じるけど)、小型成型弾の貫通にはかなり防御力が向上する様な気がします)
- 確かに成形炸薬弾の穿孔能力の数字は「余裕」も含めた数字だと思います。中東戦争でシリア軍だかがサガーを大量にイスラエル戦車に使用していますが、その時は穿孔はしたものの内部にはそれほど損害が出なかったのがほとんどだったといいます(EOS)
- KE弾との比較というのは非常に難しいです。KE弾は弾速によってどうにでもなりますし、弾頭形式の問題もあります。HEATにしても同じ口径66mmのM2とM66では穿孔能力は倍違います。現在の技術で66mmを作ればまた違うでしょう。従って一概には言えないと思いますが、ただHEATの方が防御対策はとりやすいとは思います(EOS)
- もう一つ忘れてならないのは、見た目は同じような大きさと重量のCE弾とKE弾でも、対戦車ロケット弾と砲弾では発射装置の大きさや重量に雲泥の差があります。CE弾は下のように歩兵一人で携行出来て900mmの貫徹力を持つものがありますが、これを75mm砲弾でやろうとすると1t級の対戦車火器になります。その変わり成型炸薬弾は貫徹しても効果に物足りない面があります。
- 成形炸薬弾の破壊力を増大するため、弾頭部に成形炸薬、後部に榴弾を配置し、成形炸薬弾でぶち抜いた穴に榴弾が突っ込んで炸裂する'follow-through'という複合形式が開発されています。従来の成形炸薬弾では効果の少なかった対コンクリート・バンカー用として注目されているそうです(ささき)
- ↑(コンクリートvs鋼鉄について)フランス製89mmLARCのカタログ値によると400mm鋼鉄または1000mm強化コンクリートを貫通とありますから、鋼鉄のほうが強そうです。下の「対バンカー云々…」は広い内部空間によるジェット拡散のことだと考えてください(ささき)
- ということは、コンクリートは鉄より熱に弱いのですね。
- ↑誤解してますよ。成形炸薬弾の穿孔効果は「超高温の熱で溶かす」のでは無く、8〜10キロ/秒にも達する爆発生成ガスが一点に集中する事によりキリの様に穴を開けるのです(ただ、結果的にジェット噴流が穿孔する時の摩擦で超高温になりましけど)、それで鉄とコンクリートは熱より密度の問題かと思うのですけど。
- すいません訂正です。M66→M72。(我ながらいい加減/EOS)
- ↑↑金属装甲は高温により硬度低下・融解を起こすことも穿孔に重要な役割を果たすと思います。だからこそ複合装甲では高熱に耐えるセラミックを積極的に利用するのだと思います。一枚板のセラミックに比べるとコンクリは脆いので高速ガスと金属粒子(ライナーが融解・蒸発した成分)によって切削されてしまうのでしょう(ささき)
- でも反動で弾体が後ろに飛ばないのですか。
- ↑私もそういう弾種があると書物で読んだだけで、具体的な構造については知りません(ささき)
Back