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2114  いつもお世話になっております。
 よく「大和型戦艦は、アイオワ級戦艦と砲戦した場合、速力が低いので
不利」のように言われますが、水上砲戦において、艦艇の速力差は戦闘に
どのような影響を及ぼすのでしょうか。

・英国は「速力は最大の防御」との設計思想で巡洋戦艦を建造し、第一次世界
 大戦の経過から、事実に反していることが判明した、というエピソード
・第二次世界大戦で、英戦艦がイタリア重巡を葬り去っている事実
・大和の射撃システムは40ノットの敵艦まで砲撃できた、という話
・重巡利根の黛艦長による、「日本戦艦の命中率は3倍なのだから、戦術機動
 の2〜3ノットの優勢など必要としなかった」という話

 以上のような話から、「速力の差は、有利な射撃位置を占める上では役に
立つが、命中率にはさほど影響しない」と考えております。
 しかし、駆逐艦などの説明で「速力を最大の防御として」のように書かれて
おり、速度差が大きければ、影響するのかもしれない、とも考えております。
 以下のような仮説を立ててみたのですが、その内のどれ(もしくはそれ以外)
が正しいのでしょうか。

(1)速力は戦術機動の上では有利になるが、射撃の命中率にはほとんど
影響しない。駆逐艦の説明は「高速だと、魚雷発射までに撃たれる回数を
減らせる」という意味で、回避力が向上しているという意味ではない
(2)高速の艦艇に対して射撃した場合は、狙いを定めにくいので、砲撃は
命中しにくい。しかし、相対速力の問題であり、例えば30ノットの艦艇
から30ノットの艦艇を砲撃するなら、ほとんど影響はないが、20ノットの
艦艇から、30ノットの艦艇を射撃すると命中困難となる(もしそうなら、
一般的に、どれくらいの速力差があれば射撃困難になるのでしょうか)
(3)高速の艦艇に対して射撃した場合は、狙いを定めにくいので、砲撃は
命中しにくい。それは射撃システムの性能の問題なので、高速であること
が問題なのであって、彼我の速度差はあまり関係がない

 砲撃の命中までには、速度以外にも影響する要素が多いので、明確に
答えることは難しいかもしれませんが、よろしくお願いします。
 また、同様の趣旨で、「第二次世界大戦の時点で、水上艦艇に航空攻撃
を行う場合、艦艇の速力・操舵性能は攻撃の命中率に大きく影響するのか」
といった点についても、お教え頂ければと思います。
 やはり12ノットの商船より、34ノットの空母のほうが、攻撃を当てにく
かったのでしょうか。それとも、航空機から見れば、どちらも止まっている
ようなものであり、艦艇側の対空砲力が同じなら、命中率も大差なかったの
でしょうか。もしよろしければ、お手数ですがお教えください。
 よろしくお願い致します。
高村 駿明

  1.  長文なので一番下だけ。

     まあ、航空機自体から見れば艦艇の速力は自らの10分の1以下といえるでしょう。
     しかし、この時代の対艦兵器って…爆弾と魚雷ですね。
     爆弾は場合によっては飛行機に近い速度で落下しますが、あまりにも遠くから落としては艦艇側がそれを予測してかわせますし、至近距離では互いの相対速度差が遠距離に比べて一層増幅されます。
    そしてそのいずれにおいても高速艦艇が有利ですね。相対速度のベクトルが停止時に比べて遥かに大きく、また予測しがたいですから。
     対艦誘導爆弾はその補正を自動的に行なうために開発されたようなものです。これだと一定以内のベクトル変化はカバーできますね。
     魚雷となるとなおさらで、魚雷自体の速力は水上艦と大差はない…航空魚雷というのは単に運搬手段の違いでしかありません。ですから水上艦からの魚雷と回避する側としては同じになりますから、速度が速いほうがかわしやすいのは言うまでもなくなるでしょう。

     現代だと速度が速いまま相手に命中する巡航ミサイルという便利なものがありますし、これには誘導装置がついていますから、少々の速度差は止まっているのに等しいことになるでしょう。
     最近の艦艇の最大速力が30ノット強で頭打ちになっているのも、速力が早ければ巡航ミサイルを回避しやすく…ならない、というところに原因があるのだと思います。

     まあレーザー砲や超高速運動エネルギー兵器が実用化されてしまったら、相対速度も糞もなくなりますが…あまりに速すぎて回避できませんから。
    zono

  2.  ついでながら、相手が砲弾でも同様です。
     砲弾の速度は飛行機より速いですが、通常の場合は到達時間が…。
    その時間の間の移動量が大きいこと、また何らかの回避運動を取れることを考えると、この時代は速力有利は戦力有利に繋がると考えていいかと思います。

     ジュットランドの戦訓ですが…あくまで個人的な意見ですが、速力が最大の防御という考え方自体は極端に誤ってはいないと考えます。
     ただし、この場合は独巡洋戦艦隊が想定外の距離から多数の命中弾を英巡洋戦艦側に与えたこと、英側はその一撃に耐えられるだけの防御力に欠けていたことで、このような事態に繋がったと考えます。

     あと両方の艦艇が巡洋戦艦同士であったことも重要でしょう。戦艦相手なら巡洋戦艦は(数さえ揃えば)有利な位置を取りつづけつつ、一方的に振り回せますから。それは間接的には攻撃力・防御力の向上に繋がるので。それが互いに巡洋戦艦同士のため速度差が少なく、結果まともな撃ちあい=艦の攻防性能のみの勝負になってしまったことも一因かと。

     英艦が適切な装甲を(独艦並みとはいいませんが)を施し、ある程度の抗甚性を示していたら…この勝負はまだ分からなかったかも知れません。あるいは一撃の威力に勝る英側が有利かも。

     時間がないので続きはあとから…書くかも。
    zono

  3. >英戦艦がイタリア重巡を
     もし、これがマタパン岬沖海戦の事をおっしゃっておられるのなら、
     1.重巡洋艦ポーラは昼間の航空攻撃により大破、行動不能であった
     2.イタリア艦隊のイアチーノ司令長官はイギリス艦隊ははるか後方にい
    ると信じていた
     3.このため、イアチーノ司令長官は姉妹艦ザラ、フィウメの2隻を救援
    に向かわした
     4.ウォースパイトをはじめとするイギリス地中海艦隊は救助のため、ほ
    とんど停止していた3隻のイタリア重巡洋艦を奇襲することができた
     5.イタリア重巡洋艦は、砲撃の初期段階で行動不能となった
     6.夜間であったため、イタリア側はイギリス側の接近に気付かなかった
    が、イギリス側はレーダーの助けによりイタリア巡洋艦の位置を正確に探知
    していた
     以上のように、イタリア巡洋艦はその優速を利する状況下にはありません
    でした。
     これがマタパン以外の事をおっしゃっておられるなら御免なさいですが、
    他にイギリス戦艦がイタリア重巡洋艦を撃沈したケースを思いつきません。
    そして、イギリス海軍は相手の速度に翻弄され続けており、タラントとマタ
    パンでようやく制海権を確実なものにしたと思います。
     よって、ここで例にお出しになられるのはいかがかと思います。
     もちろん、速力差と命中率が質問の御趣旨ですので、このようなことを申
    すのは無粋と言うものではありますが。
    hush

  4. えと。 高山さんがおっしゃる通り、撃ち合いだけなら速力差は大した問題では無い様に思えます。
     しかし艦隊を戦略レベルで考えるなら、捕まったが最後絶対に逃げられない上にこちらの意図で補足出来ない相手って言うのはたまったもんじゃありません。戦略的優位はそのまま戦術的優位に持って行きやすいものです。
     ちなみにWWIでは、巡洋戦艦隊に対し戦艦隊はあまりにも使えなかったのも忘れちゃいけません。
    tomo

  5.  みなさま、どうもありがとうございます。

    (1)航空攻撃の命中率〜
     エンガノ岬沖海戦で、34ノットの瑞鶴が撃沈され、25ノットの伊勢・日向に
    命中弾がなかったという記述から、重要なのは操艦の腕であり、速度はそれ
    ほど関係しないのかな、とも思ったのですが、腕が同じなら、速度はそれなり
    に影響するということですね。ありがとうございます。
    (2)艦船に対する〜
     つまり、速度差は命中率にさほど影響しないので、例えば戦艦と巡洋戦艦
    がまともに砲戦したなら、攻防の性能が上回る戦艦が勝利する。
     しかし、高速艦艇には、「戦力差を察知して、自在に退却できる」「戦闘の
    結果不利になったら、高速を利して退却する選択肢がある」といった、戦略
    的メリットがある、ということですね。よくわかりました。
    (3)イタリア重巡〜
     これについては、hush様のおっしゃる通りです。リサーチ不足で例として
    加え、申し訳ありませんでした。「英海軍が速度に翻弄された」というのは、
    tomo様の言われる戦略的優位の部分について言われたものと理解致しました。

     しかし、速度差が命中率の大勢に影響しないなら、例えば戦艦の主砲で
    突撃してくる駆逐艦を撃退する、といったことも、弾を惜しまないなら
    できるということですね。大変勉強になりました。
    高村 駿明

  6.  きちんと艦隊戦術運動を頭に入れましょう。どこの誰が戦艦だけとか巡戦だけで戦闘に出かけるんでしょうか?
     システマチックでもあり野蛮でもある、艦隊戦術運動というものを見れば速度が持つ意味が理解できます。
     逃げるとか追いかける為ではない使い方というのがそこにはありますよ。

     また速度と砲撃は、観測精度の誤差を拡大し、また誤差が夾叉範囲から敵が出てしまう可能性に繋がります。よってまったく無関係ではありません。

    >5
     幾つもの海戦で駆逐艦に対して主砲を投入した事例があります。大抵役に立ってないですが。
     駆逐艦の速度が高いために、有効弾を出す前に近距離に入られて、主砲の旋回が追いつかない。
     戦艦側は近距離に入った駆逐艦に対して雷撃回避運動をする。
     駆逐艦は自砲力を当てにしてないので、旺盛な砲撃回避運動を行う。
     駆逐艦が小さいので発見距離が比較的近くなり対処時間が少ない。
     駆逐艦は他に大物と一緒に行動してるので、主砲はその大物を狙う事を優先する。
     駆逐艦は小さく細いので命中率が悪い。

     といった理由から、積極的には撃ちません。

    自粛中のSUDO

  7.  少し、私のマタパン岬沖海戦に関する書き込みが詰問調でありました。失
    礼の段、お許しいただければ幸いです。なお、英海軍が速度に翻弄されたと
    言う部分については、その通りです。説明不足の点がありました。あわせて、
    お詫び申し上げます。
    hush

  8. >4 え〜、このハンドルネーム、既に私が使っちゃってるんで、別の名前にしていただけないでしょうか。すいませんが、お願いします。
    tomo

  9. tomoさん まことに申し訳ない〜。
    以後フルネ−ムでハンドルネーム記入させていただきます デス。
    tomone

  10. ↑ 無理言ってすいませんね。何はともあれ、今後ともよろしくです。
    tomo

  11.  SUDOさま、hushさま、返答ありがとうございます。

    >きちんと艦隊戦術運動を頭に入れましょう。どこの誰が戦艦だけとか巡戦だけで戦闘に出かけるんでしょうか? システマチックでもあり野蛮でもある、艦隊戦術運動というものを見れば速度が持つ意味が理解できます。

     そうですね。速度と命中率の関係の例として「戦艦と巡洋戦艦の場合」
    のように単純化をしたほうが、考えやすいと思い、あのようなカキコと
    なりました。単艦戦闘が艦隊に当てはまると考えているわけではありません。
     戦艦と駆逐艦の話のお答えは、大変よくわかりました。浅はかなことを
    書いてしまいましたね。艦隊戦術運動については大変興味があるのですが、
    もう少し勉強しないと、適切な質問ができないように思いますし、長くなる
    ので、またの機会に教えて頂ければ幸いです。ありがとうございました。
    高村 駿明


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