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いつもお世話になっております。 日本戦艦についての質問です。 (1)日本戦艦は、大改装によって、攻防守の性能を大幅に強化したわけです が、これは、何か目標があっての改装だったのでしょうか。 目標というのは、例えば「伊勢型でコロラド級と戦えるようにする」とか、 「扶桑・伊勢型でも、米戦艦の一部が持つ14インチ50口径への対応防御を 考える」などのように、仮想敵国の戦艦に対する配慮があったのか、という 意味です。ちまたで目にするのは、「14インチ九一式徹甲弾に対する何万 メートルからの〜」といった、自国基準の改装記述が多いわけですが、日本 戦艦と米戦艦では、防御の方向性が異なるので、内乱でも起こらない限り、 実戦的ではないように思ったもので。 仮想敵国の兵器の性能は具体的にわからないので、自国兵器を基準にする というのはわかるのですが、米戦艦の当時判明していたであろうスペック だけでも、14インチ長砲身砲の存在や、日本戦艦より厚いとされる舷側装甲 など、自国と方向性が異なる兵器なのは明らかであり、そうした敵の特徴に 対する配慮はあったのだろうか、という意味です。 (2)また、開戦前の図上演習で、「何度戦っても日本が敗北し」といった記述 を目にしますが、この演習は、例えば戦艦の改装や、空母艦載機の更新、 酸素魚雷装備艦の増加といった、戦力の向上を反映していたのでしょうか (もし、そうなら、緒戦で圧勝する演習結果もあるように思うのですが)。 そうではなくて、「敵国の性能はわからないから、自国と同じものを持って いると仮定して」演習を行っていたのでしょうか。 (3)日本戦艦は改装後の速力25ノット、金剛型は30ノットで統一ということ ですが、大和型の27ノットはどちらにも当てはまりません。 25ノットにして防御力を増すか(もしくは主砲を長砲身にする)、30ノット にして運用の柔軟性を増すか(過去ログで燃料を食う、という回答があり ましたが、高出力機関にした場合、巡航時でも、燃料消費量が大きくなる のでしょうか。そうでないなら、27が30になっても、戦闘時にならなければ そんな高速は出さないでしょうから、大差ない気がしますが)、どちらかを 選択したほうが効率的ではないかと思ったのですが。 「大和型の建造と日本戦艦の改装が連動していなかった」なんてことはない でしょうから、「長門と金剛の中間にした」もしくは、「米新型戦艦の速力 への優越を考えた」とも思いましたが、日本海軍は、米新型戦艦の速力を 25ノット程度と見込んでいたそうですから、大和型だけ2ノット程度速く ても、あまり意味を持たないように思います。 機動部隊との連携という意味では、大和や長門と速力に大差ない空母は 結構あり(鳳翔、加賀、祥鳳型、隼鷹型、龍鳳、及び21ノット級改装空母)、 作戦次第という気もするので。どなたかご存じありませんか。 もしよろしければ教えてください。よろしくお願いします。 高村 駿明 |
- (1)勿論諜報情報等により他国の技術動向は常に注意されています。また日本戦艦の防御要綱は断言できませんが91式徹甲弾では無いと思います(恐らく存速差のある88式徹甲弾が対象)
また各戦艦は米国主力戦艦の火力に対しても20km圏程度の安全距離をもつものと見積もられていました。
このあたりは、今の我々が持つ以上に詳細なスペックも持っていたりします。
(2)改装等も当然加味しています。仮想的側は「想像される敵装備」で向かってきます。
(3)戦艦の速度は統一してません。可能な限りの高速化を図った結果です。大和型の検討当初から速度は前後しています(26ノット以下の案もあり)
最終的に46糎砲を備え、それに対する防御をして、その上で少しでも高速であることという方向で纏まったのです。
であるから目標は30ノット超でしたし、その為に6軸推進までもが考えられていました。実際には必要な高出力機関の開発や、港湾設備の問題から大型化が出来ず、つまり46糎砲と防御は削れないので速度にしわ寄せが来ただけで、最初から高速狙いでした。
また大和の計画当時、駆逐艦や巡洋艦がそうであるように、空母も戦艦の隊列に従うものだったので、そういう観点では空母との速度差なんて関係無いでしょ?
SUDO
- 回答ありがとうございます。大和の6軸推進案とか、知らないことばかりで、
大変勉強になりました。
高村 駿明
- 長門型の場合には「対九一式弾」ということ改装がなされていたようです。
tackow
- >3
ああ、そいや以前見た、各戦艦の安全距離見積もりと貫徹公算の見積もりってば改装時期と重なってたような・・・。
というわけで、高村さん、申し訳ありませんでした。対91式やもしれませぬ。
SUDO
- なんかもうとんでもなく遅レスですが参考までに。
大改装後の戦艦安全戦闘距離
金剛型・弾火薬庫部 2万m〜2万5千m(対三年式14in徹甲弾)
扶桑型・弾火薬庫部 2万m〜2万5千m(対三年式14in徹甲弾)
伊勢型・弾火薬庫部 2万m〜2万5千m(対九一式14in徹甲弾)
長門型・弾火薬庫部 2万m〜2万8千m(対九一式41cm徹甲弾)
長門型・機関部 2万m〜2万8千m(対九一式14in徹甲弾)
三年式徹甲弾・大正三年(1914)採用
九一式徹甲弾・皇紀2591年(1931)採用
三年式と九一式の間には五号、六号(八八式)徹甲弾がありますから、金剛&扶桑と伊勢&長門では似たような数字でも実質的な差が大きいです。
例を挙げますと(改装前→改装後)
扶桑弾火薬庫水平装甲合計値63.5→130.175o
伊勢弾火薬庫水平装甲合計値66.675→201.295o
扶桑弾火薬庫垂直装甲304.8+傾斜甲板25.4→304.8+25.4o(変化無し)
伊勢弾火薬庫垂直装甲299+傾斜甲板31.75→299+(120〜68)or31.75mm
と大差がついてます。
戦艦乞食
- 扶桑型と伊勢型の弾火薬庫水平装甲厚ですけど、想定している弾丸の差というよりは、改装方針の違いの方が大きいと思うのですが?防御に割いている重量は殆ど同じですし(勿論、三年式と八八あるいは九一式の差もあるでしょうが)。
tackow
- tackowさまの仰る通りです。扶桑型では全体防御志向で弾火薬庫も機関部
ともに66.675oNVNCを中甲板に増厚しています。
それに対し伊勢型は弾火薬庫中甲板に134.62oNVNCを、機関部中甲板には
25.4oDS二枚(50.8o)と集中防御式に差をつけて増厚しました。
とはいえ新造時に元々大差が付いていたので
扶桑機関部水平装甲合計値85.725→152.4o
伊勢機関部水平装甲合計値122.555→173.355o
と改装後も機関部にせよ伊勢型の方が合計数値は優位でした。
が、装甲材質を考慮すると機関部は同等と見るべきかもしれません。
大改装後の戦艦安全戦闘距離の機関部に関する数値を持っていないので
なんとも言えませんが、恐らく機関部に対する想定砲弾と安全距離は
同じではないかと。
戦艦乞食
- >6&7
三年式は、正撃では恐ろしくMV値の高い、貫徹力の強烈な砲弾です(あくまでも正撃で、被帽が抜けない状況での話)
5号徹甲弾は、どちらかと言うと斜撃に強い砲弾で、6号はそれに水中弾効果をもつ被帽を与えたもの、そして91式も基本的な構造は5号6号と大差無く、斜撃に強い割に正撃での威力は三年式程の数字は出しません(ただし同じ条件で比較した数字を私は持ってないので注意)
次に、91式では空力改善で射程延伸を行ってますが、これは同一距離での存速で91式は他砲弾よりも大きいという事です(概ね5〜10%大)
これらから出ることは?
20km程度の舷側装甲への打撃威力は、三年式と91式では、そう大した違いは無いであろうという事(エネルギーでは91式が優位だが三年式の穿孔力も侮れない>もっとも91式はそっちの改善も5号等より進んでますが)
そして、斜撃に強い91式は、甲板への打撃力は、明らかに三年式よりも優位でしょう(角度的には91式の方が少し浅くなるけど、三年式の斜撃性能の低さと91式のふざけた斜撃性能を思うと・・・)
それが、伊勢と扶桑の水平防御性能差ではなかろうかとか思うのですが、どうでしょう?
SUDO
- >8
今気が付いた。
>三年式は、正撃では恐ろしくMV値の高い、貫徹力の強烈な砲弾です
「MVの小さい」です。
申し訳ありません。
SUDO
- 造船官の回想では、もとより、扶桑型あるいは金剛型の場合は14インチ砲弾に対しては不充分であったとも言われますから、それ以降に改装された艦の重要な箇所を強固にするのは流れ的にしかるべきとも思えます。
#ただ「対○○式」がなんらかの形で明確に示されていない以上、全ては推定にしか過ぎないとも思えますが。
tackow