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日本海軍駆逐艦の主砲塔。航空兵力の脅威が増した中期以降は12.7cmのA〜D型砲塔を使い続けるより、八九式連装高角砲に簡易シールドを付けたタイプに換装/搭載した方がより“使えた”のではないでしょうか?高射装置も各艦1基程度なら都合がつけられるようにも思えます。 改装工事の規模:効果の折り合い、あるいは高角砲の手配等で無理なのでしょうか? リリー・マルレーン |
- 高射装置も高角砲も、無理すれば、それなりに手配可能でしょうが、それよりも載せるべき駆逐艦の手配が問題です。
それと駆逐艦の射撃精度は元から大して期待されてないのですが、主砲換装をした場合は更に精度が低下します(船体の捩れや歪みが出るし、それは最終的には各艦固有の問題)これを修正吸収するにはまたかなり時間がかかります。
以上の観点から、手間とコストを考えたら、やらない方がマシで、既存駆逐艦に高角砲を回すぐらいなら、高角砲を最初から載せるツモリで設計した松型駆逐艦を量産する方が、ずっと効果的でしょう。
SUDO
- 換装が考えられていたのは事実なんですが。対水上射撃の場合、八九式は三年式よりも有効射程が短いのではないか。という危惧がありました。それに付随して、高角射撃装置では対水上射撃を実施した場合精度が落ちるという指摘もあったようですね。
基本的に甲型駆逐艦に求められたのは「自衛用」の対空兵装で、機銃で賄う方針であったようです。
tackow
- 便乗質問ですが日本海軍駆逐艦の主砲はなぜ薬きょう式を採用しなかった
のでしょうか個艦優勢主義としては少しでも発射速度が速いほうが有利と
思うのですがまた15.5cm/60もです。
最中
- >3
薬莢を用いると、薬莢の分資源を使います。
次に射撃速度重視で薬莢を用いる場合は、一般に分離式ではなく一体になった弾薬包を用いますが、これが非常に大きなサイズになり、また重量もかさみます。
例えば89式12.7サンチ高角砲の装薬重量は約4kgですが、薬莢が約7kgあるのです(これはより多くの装薬を用いる3年式12.7サンチ砲ではもっと大きな重量になるでしょう)
また、この装薬がどれほど嵩張るかは
http://www.warships1.com/Weapons/WNUS_5-51_mk15.htm
の写真をご覧になってください。3年式よりも装薬の多い砲ではありますが、凡そのところがイメージできるでしょう。
また、弾着を確認して修正してという一般的な水上射撃では、砲弾の飛翔速度等にもよりますが、毎分10発以上は現実的な数字ではないと考えられます。つまり3年式12.7サンチ砲は、薬莢式にしても射撃速度の向上は大して期待できず、資源や重量の無駄が多くなり、また薬莢式の利点を最大活用するために機力装填装置を用いたら、更なる重量増大につながり、砲システム全体で見た場合、重量あたりの投射量は決してプラスとは言えません。更にその増大した射撃速度は、実行性能としての利益が大して大きくない訳です。
なお、15.5サンチにおいても同様の問題があります。
この15.5サンチ砲に関しては、機力装填装置を用いていますので重量増加は大して大きくは無いのですが、一体型の弾薬包にした場合、弾薬砲重量は恐らく100kg近くに達します。これには極めて強力な揚弾装置と、長い弾薬砲を取りまわせるだけの大きな砲塔容積を要求します。つまり砲以外に相当な重量と容積が必要になるのです。
機力装填ですので、射撃速度に最も大きな影響を齎すのは、揚弾装置等の機能や性能になり、下手な薬莢化は決してプラスではないのです。
これは分離薬莢式の15cm砲である独逸のSK C/25のカタログ射撃速度が日本の15.5サンチとほぼ同等である事からも理解可能でしょう。勿論対抗馬である米国の6インチ砲は高い射撃速度を発揮していますが、それを可能にするために実に多くの工夫が為されていた事にも注意が必要です。
そして15.5サンチ砲は毎分7発というカタログ射撃速度を誇ります。これは実用上充分に高い速度であり、多少の工夫では大して性能は上がりません。
それこそ、15.5サンチ砲とは根本的に方向性が異なる米国の6インチ砲のようなスタイルが要求され、それは射程や貫徹力で致命的に足りない事を意味しますので、つまりは成立する余地は殆ど無かったのです。
SUDO
- 回答ありがとうございます、しかし12.7/50も機力装填式だったような
きがしますが、また15.5/60ですがついつい陸軍の高射砲とくらべてし
まうので。それと分離薬きょう式でも一挙動装填式の小口径砲を見たこ
とがあるのですが砲尾の後ろに溝状のものがありそこに薬きょう、弾の
じゅんでおきランマーで装填されるというかたちでしたこのような形式
ならばわりと重量増大もすくなのでわ。
最中
- >5
残念ながら3年式12.7サンチは人力装填です。
また分離式の場合でも、薬筒の分重量が増える事と、一挙動で装填するには、砲弾+薬莢分の長さの空間が尾栓の後ろに必要であるという点は変わりません。
これは当然ですが、砲塔サイズの増大に繋がり、砲塔重量の増加に繋がります。
また60kgを押し込むのと、100kgを押し込むのでは、装填機に必要な力量も増大します。
それと忘れがちですが、撃ち殻放出にかかる手間や空間も無視できません。
薬莢式の利点は一回の挙動で装填作業が行える点に尽きますが、その為には分離式であろうと無かろうと、長大なスペースを要求するのです。
SUDO
- 三年式12.7cmは人力そうてんでしたかありがとうございます
15.5cm/60については揚弾、揚薬装置が簡略化できるのでわ、
と考えたので。
最中
- >主砲換装をした場合は更に精度が低下します(船体の捩れや歪みが出るし、それは最終的には各艦固有の問題)
>これを修正吸収するにはまたかなり時間がかかります。
なるほど! 艦体というものはその本来の搭載砲を撃つ為に最良の設計をされている訳ですネ(影響の少ないと思われる機銃や小口径砲は別とします)。ただ単に砲を載せ変え、射撃装置を更新しただけではダメな訳なんですね。こと、駆逐艦等の小艦艇はより多くの影響があろう事が予測できます。ありがとうございました。
リリー・マルレーン