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有名な話ですが、金剛級を大改装した際日本製の艦にはドリルで装甲板に穴が簡単に開いたけれども、英国製の金剛にはなかなか穴が開かずびっくりした、といわれています。それだけ冶金技術に差があったのなら当然思う疑問なのですが、日本帝国の軍艦の装甲板と砲関係のカタログデータって、額面通りに受け取っていいものなのでしょうか。それとも実戦に際してはあまり気にしなくてもいいんでしょうか。子供の頃から気になっていますが、自分が漁れる資料にはまず掲載されていません、誰か教えて。 のほほん大佐 |
- あまり関係ないですが、米海軍研究所の書物によれば戦後に米海軍は信濃用の660mm表面硬化装甲板を接収してダールグレン試験場で40cm砲の射撃にさらして性能を試験しました。40cm砲弾二発のうち一発は貫通し、その結果を集計して上で、日本製の装甲板はアメリカ製のタイプA装甲よりも約10%弱いと結論しています。
Vinegar-Joe
- 日本の冶金技術と軍艦について知りたいのであれば、下記の本をお勧めします。金属学が多少判ると、とても面白いです。
「海軍製鋼技術物語」 堀川一男著 アグネ技術センター
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米軍の戦艦の最大の装甲厚さが、どの程度だったのか知りませんが、大和級の装甲鋼板が米軍のものより10%程度、対弾性が低い理由は、下記のためではないでしょうか?
日本では、明治43年(1910年)ごろ、表面硬化装甲鋼板として、KC装甲鋼板を国産化し、戦艦「安芸」の9インチ装甲鋼板でその性能を確立しました。その後、英国ビッカース社に戦艦「金剛」を発注した際にVC装甲鋼板を技術導入し、その後の戦艦「陸奥」までのすべての戦艦の装甲にVC装甲鋼板を採用しています。その後、戦艦「大和」の製作に当たりこれまでにない厚さの装甲鋼板の製造が求められました。これほどの厚さでは従来方法では装甲の単位厚さに対する耐弾性の低下は避けられませんでした。また、装甲の表面硬化は戦艦の砲弾のような高運動エネルギー弾には表面からの亀裂の発生を促進しノッチ効果で装甲を割れやすくするとい弊害もあることから、苦肉の策として、工程の省略を兼ねた表面浸炭処理を省いたVH装甲鋼板が開発されました。
ある
- こういう話はドリルの刃先ひとつで変わりますから、定量的なデータを目にしない限り、話半分だと思って置いたほうが気が楽なように思います。浸炭処理を施した表面の硬度が高い装甲板が果たして耐弾性が高いと何を根拠に言えるのか?そもそも浸炭装甲の表面にそんなに硬度に差があるものか?さらにその話の元は本当にそういう話なのか?「10%」っていったい何がどうした時に「10%」なのか?等と考え始めるのも一つの道だとは思いますが・・・。
BUN
- その「10%」の出どころは United States Naval Institute の ”Battleships: Axis and neutral battleships in World War II” の大和級戦艦の装甲防御についての記事にあったのですが、実験の詳細(射撃距離、着弾角度等)は一切無く少々説得力にかけます。40cm砲弾が貫徹してしまった、砲弾へのダメージが殆どなかったことを根拠にしているんですがどこがどう10%違うかについては記述がありませんでした。
Vinegar-Joe
- >1
記憶モードで申し訳ないのですが、何年か前のTV番組(「その時歴史は動いた」だったか?)で、戦後米軍が信濃の砲塔前循を持ち帰り、実験で自国の16インチ砲でそれを打ち抜いたものをどこかの建物(確か米海軍関係)の前に展示していると伝えていました。
恐らくVinegar-Joeさんが紹介された実験と同じだと思いますが、この時のTVの解説によると、この実験は「18インチ砲を搭載した日本戦艦の最も分厚い装甲といえどもアメリカの16インチ砲で打ち抜くことができる」ということを示したいがために行われたそうで、ほとんどゼロ距離射撃で打ち抜いたということでした。
なお、展示されている装甲板の前には「アメリカの16インチ砲で打ち抜いた18インチ砲を搭載した日本戦艦の最も厚い装甲板」という主旨プレートが立っているそうですが、射距離については触れられていないとのことです。
記憶のみで客観性も何もありませんが、参考までに…。
T216
- 実は、浸炭焼入れした鋼板に、ドリルで穴が開けられること自体がすごいことです。ハイス鋼製のドリルじゃ、まず刃が立たないです。ドリルは、超硬合金製なのでしょうか?
ある
- >信濃の装甲への試射
http://www.warships1.com/W-Tech/tech-040.htm
こちらのページに貫通した際の着速が載っていますが607.2 m/secで直角に当てたようです。
大体10000〜11000m辺りに相当しますね。
ルージュ
- 回答してくださった皆様、ありがとうございました。
うろ覚えなのですが、元ネタは故福井静夫氏の「日本戦艦物語」だったような、でもこの本を読む遙か以前から知っていたような気もするので昭和40〜50年代初期によくあった子供向け戦記本等かもしれません。
信濃主砲塔前循に対する試射実験ですが、学研の「大和級戦艦」巻頭に
写真と記事が載っていたと記憶しています。
のほほん大佐
- 日本海軍の甲板の対弾性が米海軍のものに比べ10%程度劣るというのは戦後の米側の資料からいわれてきたと思われますが、実際のところはよくわかりません。
信濃の前楯の貫通試験は非常に有名で、Washington DC付近のDahlgren海軍試験場に貫通された前楯が展示されています。このテストの詳細は下記のサイトに記述されています。
http://www.warships1.com/W-Tech/tech-040.htm
このテストからこの楯の対弾力は第二次世界大戦後期の米軍のClass A armorに比べ94%との記述がありました(今はこの記述は見つかりません)。
但し、この前楯は信濃の為の正規のものでない(規格外であったために不採用となって破棄されたとか)との議論が米国の研究家の間でも昔からあり、その根拠を長年探してきましたが、見つかりません。(理由のひとつは展示してある甲板は厚さ25.99インチ(66センチ)あり、信濃のものは大和、武蔵のものより2センチ薄く、64センチのはずであるなど。)
戦後の米海軍と平行して、英海軍でも日本海軍の甲板(15インチ厚)の対弾性を試験しています。このテストの総合結果では、米海軍、英国海軍の同厚保の甲板に比べより優れていると結論されているとの報告があります。これは英国海軍のアーカイブに残っているはずですので現在調査中です。
さらに、Robert SumrallのIowa Class Battleship の125ページに1942年初期にそれまでに同クラスのために製造されたアーマー(甲板)のいくつかはわ若干規格を下回るものがあったが、戦時のために採用されたとの記述があります。
また、同クラスの砲塔周りのbarbetteに発生したcrack(割れ目)やdelammination (厚い甲板の層と層の間の剥離)などは対弾性をかなり弱めたであろうともいわれています。
てなことで、私もこれらについてさらに調査中ですが、米海軍の戦後の単純な自己優位性の主張に基づく通説を日本のかなりの専門家と言われる方々までが採用されていますが、どうもそんな単純ではなさそうです。
Tomas
- 無意味に近い独り言です。
実験結果から導きだされる 必要撃速は560.5m/sだそうです。私のもの凄く単純な計算だと約 15300mあたりの撃速に相当します。でもこれ、大和主砲前楯ってご承知の通り傾斜してるから落角込みでも正撃は不可能。傾斜角込みで計算すると実戦では殆ど不可能事では無いのでしょうか?
戦艦乞食
- 各国の装甲板についてはここが詳しい。
http://warships1.com/W-Nathan/Metalprp.htm
均質装甲の場合、日NVNC・MNC・CNCは米ClassB・STSに少し劣ります。
これは日がニッケル資源節約に目を向けたため。
表面硬化装甲の場合、米ClassAは表面硬化層が厚すぎて割れやすく、
最良と評される独KC n/A、英CAに劣ります。
日VHに対する評価は2種類。
1.17〜26in厚の装甲板は熱処理に問題があり割れやすい。
日本は後にこの問題を解決はしたが、もはや建造される戦艦は無かった。
2.焼入れ深さを増したVH甲板は、米射撃実験場で試験した装甲板の中では最良。
独KC n/Aをも超える耐弾性を持つ。
硬化処理前の鋼材の品質は独KC n/A、米ClassA、英CAに劣るのにこの成績。
表面浸炭を省き生産性も上がってますから、VHは熱処理を誤らなければ優れものです。
AI