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ネルソン、クイーン・エリザベス、レナウン級などのイギリス戦艦・巡洋戦艦には水中魚雷発射管なるものが装備されていますが、(1)配置(各級別により2〜4門装備されている)、(2)実戦における運用の戦術的思想背景(実戦で役に立つとは思えないのですが、そもそもこのような兵器を装備した理由が知りたいのです)の2点につきご教授下さい。 TAKU |
資料が手元に無いのですが>掘り出さないと・・・
大抵、左右に二門ずつか艦首・艦尾、左右に一つずつです
(2)
まず戦艦の魚雷発射管はWW1時までなら、ほぼ標準装備で
何処の国でも大抵は装備しています
WW1前までは、どんな軍艦でも戦闘距離はあまり変わらなかったのです
大砲の大きさは破壊力の大きさであって射程距離の長さではなかったのです
こういった時代では、どんな艦艇でも接近戦闘をする可能性が有り
魚雷の恐るべき破壊力は有効な武器になると思われていました
いや、防御力の大きい戦艦は接近戦闘にこそ向いていたのかもしれません
公算射方の登場で、艦艇の「有効」射程距離が増大し
戦艦は「火力と防御力を持った強い軍艦」ではなく
最も長い射程を持った「圧倒的に強い軍艦」となりました
こうなると、戦艦を最強にしてる「射程の長さ」が重要になってきます
魚雷は射程が短いので、それを生かすには接近せざるを得ない
そう、旧時代の「単に強いフネ」になってしまうのです
結果的に、戦艦が戦艦であるためには魚雷は要らないとなるのです
戦艦の射程の長さを、決定的に印象付けたのは
第一次大戦のフォークランド沖海戦でしょうか
この海戦でHMSインビンシブルがドイツ装甲巡洋艦を
アウトレンジして一方的にタコ殴りにして圧勝
戦艦(と巡戦)が圧倒的に強いことを示したのです
しかし、この長い戦闘距離がもたらす影響を理解できるようになるには
少し時間が必要だったので
戦艦にも盲腸のように魚雷装備があるのです
第一次大戦後に建造されたネルソン級にも装備されてるし
これは第二次大戦で実際に発射されてるんですよね(笑)
日本の場合は、大改装のついでに外したりしてますが
大和の計画時に大型酸素魚雷装備の案も有ったぐらいで
魚雷の破壊力は、中々に魅力的な存在なのでしょう
SUDO
とにかく、海軍でいちばんでかいフネで、いちばんでかい砲を積み、いちばんたくさんの武器を持ち、いちばん装甲の厚いフネ、それが戦艦だったのです。(私見ですが、これぞ『主力艦』ですよね(笑))
ここでのポイントは「いちばんたくさんの武器を持ち」です。
これまたSUDOさんご指摘のように、その主砲の大威力は近距離での貫徹力を追求した結果であって、長射程を狙ったものではない、つまり、至近距離での殴り合いこそが戦艦の本領であるとされていた時代、近くで敵艦に致命傷を与え得る兵器として、魚雷の装備は非常に魅力的なものだったはずです。
このへん、日本海海戦を代表とする日露戦争での戦例を思い起こしてください。世界の海軍は、これを基準に戦艦を計画していたともいえるでしょう。
日露戦争では、接近しての砲撃が有効である(日本海海戦、反例としての黄海海戦)、戦艦は水雷にモロい(八洲、初瀬、ペトロバヴロフスク、日本海海戦での各ロシア戦艦)、ということが実例として示されました。
水雷艇や駆逐艦は、昼間は戦艦には近寄れない(というか、白昼堂々と戦艦に近寄れるのは戦艦だけです)ので、やはり、戦艦自体が魚雷を持つ必要があることになります。
また、リッサ海戦以来重要視されてきた衝角は零距離でしか使えないし、味方と衝突したときに相手を沈めてしまうことが敵を沈めてしまうことよりも多いため(笑)、あまりスマートな武器として認知されないようになり、それと似た効果をやや離れた位置から(味方に危険を及ぼさずに!)得られる魚雷の装備が流行になったのです。
なぜ水中発射管になるのか、水上装備が難しいからです。
戦艦は一般に乾舷が高いので、上甲板に発射管を置いては、当時の魚雷の強度では着水時の衝撃で魚雷本体が折れたり曲がったりしますし、第一、上甲板に魚雷が転がってたら被弾時に危なくてしょうがありません。
舷側装備では、舷側装甲が邪魔(?)になります。当時の直接照準射撃では、敵戦艦の主砲弾は舷側を狙ってくる可能性が高いですから、最も厚い装甲で守ってあります。それに穴をあけるのは(そのうえ、そこに爆発物を置くのは)自殺行為に近いものがあります。(前ド級艦ではいくつか例はありますが…)
艦首尾の発射管には水上装備の例もありますが、自分の艦首波(または艦尾波)に邪魔されるので、ベタ凪で、しかものろのろ運転のときしか発射できないことになり、多数派にはなれません。(「天気晴朗ナレドモ波高シ」で発射できないのでは、鼎の軽重を問われます)
逆に、水中発射管での舷側装備は進行方向に直角ですから水の抵抗をモロに受けますので、のろのろ運転でしか発射できませんが(イギリスではドレッドノートが最後の舷側水中発射管装備の艦ですね)こちらはかなり例がありまして、アメリカ戦艦ではこちらが普通、日本戦艦でも発射管の半数以上は舷側水中発射管です。
これはつまり、当時の魚雷の射程はかなり短いものでしたので、魚雷の射程にまで近寄れるということ=敵艦にトドメを刺せる状態であること、という想定だったのではないかと思われます。
舷側装甲を砲撃で貫徹するのは難しそうなので、砲戦で敵艦の戦闘力を奪い、魚雷で撃沈しちゃろう…というモクロミだったのではないでしょうか?
で、QE級、R級、レナウン級、フッド、ネルソン級がいずれも水中発射管を持っていたというのは…別にヘンじゃないです。
日本も長門級までちゃんと(というか、金剛級・長門級で8門、扶桑級・伊勢級で6門とものすごい重雷装)発射管をつけてますし、アメリカもコロラド級まで維持してます。
海軍休日に入るまでは、戦艦に魚雷発射管を載せるのは当然のこと、だったみたいですね。
まなかじ
足りなかったところを全て的確に補正してくれてる(;_;)
一応、日本海海戦とリッサ海戦は上げようと思ったんだけど
うまく文章に繋がらなかったんですよぉ、素晴らしいです(;_;)
SUDO
ことで中止になったそうです。福砲だってあったんだし、ここはひとつ究極の時代錯誤をして欲しかった、、、。(Navy)
大和の設計段階で
水中発射管と水上発射管の関係が全く逆ではありませんか?
水中発射管は、艦の高速化による発射困難と装備自体が水中防御を損なうという観点から、長門型での一部水上発射管への機切り替えに始まり、加賀型での全廃につながっています。
水中発射管には日露戦争の戦訓から日本海軍の方が先に見切りを付けています。その後、英国製の金剛型が水中発射管を多数装備したことで再び注目を受けますが、結局の所、主力艦の雷装という問題は、
強調しておきますが、「戦闘距離とは一切関係が無く」全廃されています。
BUN
酸素魚雷登場以前に廃止された、他日本戦艦の、その理由は?
大和と長門の時代の違いは
酸素魚雷の有無だと思うし
酸素魚雷と通常魚雷の違いは、最終的に射程です
この長射程魚雷の開発ヒントは、駐英武官が掴んだ
「英国はネルソン級戦艦用に酸素魚雷を開発中」との報告だったと聞きます
英軍が酸素魚雷を「戦艦用」に開発しようとしたのは何故か?
戦艦の戦闘距離に相応しい魚雷の存在が望まれたからではないでしょうか?
勿論、魚雷を戦艦が装備しても無意味に近いのですが
廃止するには多くの人が納得できる理由が必要で
それが「射程距離」だったのではないかと思うのです
SUDO
こうした経緯であれば戦闘距離は関係無いのは明白でしょう。
大和の件は事情がちょっと違うんじゃないかな?
BUN
それが有効兵器なら、多少の努力はするものです
つまり、そゆことする価値が無かったのです
その価値とは射程では?
SUDO
雷装も、そうした背景で重視され、更にその後の夜戦(水雷戦)への傾斜の中で雷装が残されて行くのですから、戦艦の雷装の存廃とは事情が異なると見るべきではありませんか。
BUN
そいやティルピッツも魚雷装備してますね(^^;;
夜戦傾斜が強まり
結果、強化されたけど当初はそーだったと、φ(.. )ふむ納得
SUDO
ロンドン条約にまつわる統帥権干犯問題も敵一等巡洋艦の日本近海への遊弋という事態を懸念していたのであれば理解しやすいことですし。
しかし話が楽しくもそれてしまいましたね。
BUN
うにゅ、日本戦艦の場合の状況の推移はその通りかと思います。
とはいえ、米英戦艦の場合はちょっと順序や理由付けに違うものがあるんじゃないか、と思いまして。
でも、やっぱ、総花式に短い文(いや、でもかなり長いですね・汗)を書くのはよくないですね。
まなかじ
結局、日露戦争での浦塩艦隊の行動と
独太平洋艦隊の(特にエムデン)の行動が実体験として色濃かったのと
潜水艦戦への多大な制限が策定されたことが
巡洋艦による通商破壊とその対策へと繋がったのではないかと見てます
もしかすると、各種護衛艦艇の砲力重視設計も
同根のものが有ったのかもしれないですね
でもって、他列強の戦艦の水雷装備ですが
やはり基本は射程不足だったのが大きかったと思います
重要なのは、射程増伸の動きは第一次大戦中盤以降だったことです
米戦艦の魚雷廃止は改装に伴ってなのですが
この改装で、主砲仰角引き上げも行っているのです
戦闘距離の大幅な変更が、魚雷装備の必要性を急速に薄れさせたのでしょう
もちろん、第一次大戦で戦艦が雷撃する可能性が殆ど無かった事もあります
興味深いのは、米軍の場合、巡洋艦も魚雷を廃止する方向に向かった事です
1万トン級の中盤から廃止されてますね
防御強化の代償としての意味合いも有るのでしょうけど
彼らの巡洋艦運用方針に何らかの変化があった事を想像させます
また、イタリア重巡の場合
高速軽防御のトレント級は雷装有りで、重防御のザラ級は雷装無し
前者は当初は軽巡に分類され、後者は装甲巡洋艦でした>イタリアでの呼称
後者は準戦艦的な運用を予定していた部分が有ると思われます
では、戦艦的な運用とは?
それは、おそらく、砲撃プラットフォームではないかと思います
米軍の条約型巡洋艦も重防御でしたが
これらの重防御巡洋艦は砲力を最大限に生かす事を狙ったのでしょう
巡洋艦の射程も延びていますから
砲前提で運用すると、雷装は必要性がなくなるのだと思います
これは、十分な砲力を持ちえない軽巡や駆逐艦とは違った方向性の模索で
装甲巡洋艦や巡洋戦艦化への道だったのではないかと思います
SUDO
もともと、戦艦の装備した魚雷の射程は主砲に比べて長かったことなどありません。発射管は「突撃」や「肉迫」といった言葉に縁のある装備なのです。結局実戦での有効な使用例が無く、企画倒れの装備なのですが、米英海軍はそれを使用することを考えるほどに勇敢な組織だったとしておきましょう。
ですから主砲の射撃距離の延伸とは微妙なタイムラグがある事から見ても無縁だと思えるのです。
BUN
質問そのものの答えでもあると思うので、一応記しておきます。ちなみに、ここにも射程距離の件は一切触れられていません。誤訳意訳平に御容赦。
BUN
SUDO
SUDO氏の説くところの「主砲の砲戦距離が延伸した為に戦闘距離が増大して魚雷の出番が無くなった」のではなく、長射程の砲を搭載した艦であっても肉迫接近戦を受けて立つつもりがあった、ということです。
また、この本のライオン級の所にはその魚雷兵装について述べた後、「魚雷を葬ったのはレーダーの発達だった」と纏められています。主力艦の接近戦、不意の遭遇戦を消滅させたのは射程距離の増大ではなくレーダーの発達だったとの説です。
BUN
でも、レーダーの完成は第二次大戦直前で
海軍休日中の各国の雷装廃止と比べると時期がずれていませんか?
不意遭遇が無いから魚雷が要らないなら
何故、英国海軍は駆逐艦の魚雷装備を
第二次大戦中に、削減ではなく増強したのでしょうか?
対空砲や対戦装備の代償として降ろし、また復活させているのです
レーダーの登場は「不意」接近戦を回避することに繋がります
駆逐艦は不意だろうが何だろうが接近戦するので増強もする
戦艦は、可能な限り「接近戦をしないので」魚雷は装備しない
つまり、射程距離が理由なんですよ
おおむね、海軍休日中に戦艦に魚雷は不要との結論が出ていても
水雷派閥は何か理由をつけては、復活を図ろうとしていたはずで
それに対する、一つの回答が「不意接近戦」への対応だったのでしょう
「視界不良からの接近戦だって無いとはいえない、そゆときに役立つぞ」
「レーダーがあるので、そういった問題は避けられます」
そんな感じの論争があったのではないでしょうか?
SUDO
1.主力艦に於ける水中発射管は水上発射管より早期に廃れた。(これはOKですよね。)
2.主力艦の雷装は主砲射程距離の延伸とは一切関係なく廃止されている。
以上の点に於いて間違えている事を指摘しているのです。日本の事情は先に挙げた通り、遅くまで残そうとした英国の事情もまた先の如く、少なくとも主力艦(主力艦ですよ)の雷装に関して「主砲射程の延伸によって」何かが変わったことは一切無い、ということです。
ジュットランド海戦後、主砲の砲戦距離が増大しても、英国は雷装を残したのは、射程距離の延伸が雷装の存廃と無関係であることの証明であって、他の国は他のデメリット(防御上、トン数増大)の為に雷装をそれ以前に捨てていると言うことです。
BUN
ジュトランドの戦例の一つに
視界不良による不意の接近戦ってのが有りました
インビンシブルの喪失原因の一つと言われてますね
靄が晴れたら目の前にデアフリンガー(合掌)
ジュトランド海戦での英独巡戦の交戦距離は1万前後で
必ずしも遠距離だけでは無かったのです>視界不良もあって
これは、この時期の英軍21インチ魚雷で届く距離です>最低速度でですが
つまり、射程は許容範囲なのです
視界不良で1万前後で交戦する可能性が有るのならば
魚雷はその破壊力から、一定の存在意義を持ってくるのです
実際、フッドは射距離13000mで撃沈されてます
ビスマルクの射撃がもうちょっと下手だったら
雷撃戦に持ち込む可能性も無いとは言えません
またシャルンホルストは視界不良の中、電探射撃でなぶり殺し
電探の登場は、戦艦をいかなる環境でも
遠距離砲撃プラットフォームとして機能させることを可能としたのです
北海の気象環境が射程距離問題に大きな影響を与えていたのです
敢えて言いましょう
射程距離を保持できる保証がないから魚雷を備え
保証できるようになったら魚雷を廃止したのです
SUDO
戦闘距離とは当然関係あるんです。魚雷も兵装のひとつですから。
射程距離の延伸が戦闘距離を必ずしも遠距離のみに限定できた訳ではない、と言うことを自ら仰っているのでしたら、その通り、洋の東西に様々な理由はあったものの、水中発射管の廃止には主砲射程距離の延伸は関係ないのです。
BUN
射程で言うなら、日露の時に既に2万超が居ますからね(^^;;
SUDO