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液冷エンジンについてです。DB601(系列)は直噴という方式(吸気通路への間接噴射ではなく)をとっているようですが、なぜ燃料と空気の混合が難しいとされるこんな方式を採用していたのでしょうか。雑誌”丸メカニック”のアツタの資料を見てもボア×ストロークが載っていなかったのであくまで推測ですが、もしかしたら排気量確保のために”広げすぎたボア”への対処(ノッキング対策)ということなのでしょうか・・・?27リッターのマーリンでもボアは137.16mmとかなり大きい値だったので理由付けとして無理やりに解釈してますが、有識者の方、お教えください。 とりあえず「インジェクターが燃焼室に近いのでレスポンスが良い」という点を除いては間接噴射に比べて不利な点が多いとしか思えないのですが。 あと、圧縮比を下げるのとS/V比を稼ぐためかピストン頂部がディーゼルみたいに凹んでますよね?これは4バルブにしたための苦肉の策でしょうか・・・。 見れば見るほどミステリアスな構造で夜も寝れません・・・。 (長々とすみませんでした) Ninja |
- 手元の資料では直噴方式の利点は 「いかなる飛行姿勢でも影響を受けない」「各シリンダーに均一に最適量の燃料を供給でき、燃費が良い」「寒冷地での始動性が良好」と有ります。
ピストン頂部(倒立エンジンなので底部かな?)がえぐれているのは、燃焼室形状を理想的な半球形に近づけたかったからでは?と思います。ホンダのエンジンにも凹型ピストン有りましたし。
因みにボアストロークは150mmX160mmで圧縮比は7.2:1です。DB605になるとさらにボアアップして圧縮比もちょびっと高めたそうです。
品場
- 品場さん、お返事ありがとうございます。実は私の疑問もそこでして、どの飛行機本を読んでも「いかなる飛行姿勢でも・・・」〜「寒冷地での・・・」というのが直噴の利点であると書かれているんです。でもこれって”インジェクションの利点”であって、直噴固有の利点ではないですよね・・・?利点どころか高圧噴射装置は必要になるわ適正空燃比をつくりづらいわ(点火時の)でデメリットのほうがはるかに大きく感じられてしまうんです。
>燃焼室形状を理想的な半球形に・・・
4バルブを採用した時点でOHCでの半球形燃焼室を実現するならこの凹型ピストンが近道だったということですかね。現代ならホンダのRFVCみたいにOHCでの半球形燃焼室+4バルブという組み合わせもポピュラーですが・・・。
>因みにボアストロークは150mmX・・・
この大きな数値に驚きました。元(現?)ヤマハのエンジニアである桧垣和夫氏の著書では「航空機用の理論オクタン価の高い燃料(オクタン価100を超える燃料)でも火炎伝播速度の関係からプレイグニッションをおこさずに燃焼させることができるボアの上限は160mm程度だ(オクタン価100程度では110mm程度)・・・」と書かれていたので当時のドイツ(または日本)でそんなエンジンを採用しようとした事実に驚きです。
もしかしたら直噴で拡散燃焼させれば通常のガソリンエンジンよりもアンチノック性があがるんですかね・・・?(燃焼室いっぱいの理想的な燃焼は望めないでしょうが)
Ninja
- > 広げすぎたボアへの対処(ノッキング対策)ということなのでしょうか・・・?
なぜ、筒内燃料噴射だと、ノッキング対策に有効なのですか?
> 27リッターのマーリンでもボアは137.16mmとかなり大きい値だったので
飛行機のエンジンでは、マーリンのボア137mm(5.4")は小さい方かもしれません
少なくとも大きい方ではありません
例えば、R-7755のボア162mm(6-3/8")×ストローク171mm(6-3/4")や、H-9350のボア203mm(8")×ストローク197mm(7-3/4")とかが、ボアの大きいエンジンになるでしょう
> S/V比を稼ぐためか
S/V比とはどのようなものですか?
> 見れば見るほどミステリアスな構造
このエンジンの、一番ミステリアスな構造はどこでしょうか?
コネクティングロッドとクランクシャフトとの接触面がローラーベアリングな事でしょうか?
セミララ
- 元々ドイツでは150mm級のボアで苦労してたんです>例えばBMWのとか・・・。
その一つの対処が直噴だったのであろうと考えられます。
また、この頃ユンカース等で直噴ディーゼルエンジンが出てきてまして、その噴射装置等の経験や技術を流用できたという要素もあると思います(噴射装置はボッシュだったかな)
>3
気筒内に直接噴射する事でガソリンの気化熱をより有効に活用できるといわれています。
また、DBでやってるかどうかは判りませんが、着火性の改善にも有利といわれてますね(プラグ近辺の混合気濃度を高められる)
他に圧縮行程でのプレイグニッションを回避するにも有効な手立てだと思われます。
DB601は、基本的にDB600エンジンの過給器を流体接手式にして筒内直接噴射としたエンジンですので、より高いブーストを付与するに当たり、直噴という手立てで改善を図ったのではないかと思われます。
SUDO
- >3. ライカミング XR-7755 は液冷星型 9x4=36 気筒、排気量 127 リッター、直径 3m、乾燥重量 2.7t のバケモノで、搭載する飛行機のアテもついていなかった代物ですので、DB601 やマーリンなどと同じ「航空エンジン」として比較するのは不適切ではないかと思います。H-9350 というのは聞いたことがありませんが、型番からして排気量 153 リッターのH型らしく、やはりマトモな航空エンジンには思えません・・・
ささき
- ゴミレス。ライカミング XR-7755 の写真とスペックと開発経緯。
http://www.aviation-history.com/engines/xr-7755.html
ささき
- 推測ですが、気筒内インジェクターの方が、低温時のアイシングに対して強かったのではないでしょうか?
又DB601系は、バンク内側のモーターカノンのスペース確保のためか、吸気ラインとかが、かなり追い込まれて設計されているようです。実際インマニは無く、吸気ラインはシリンダー側面に食い込むように張り付いています。吸気ポートの外にインジェクターを設置すると、スペースも喰うし、燃料ラインが銃身の周りに露出してしまいそうな気が…つまり気筒内以外にインジェクターを設置する場所が無かったのではないか?とか考えてるんですけど、どうですかね?
品場
- ドイツの燃料のオクタン価が87辺りだと云うことがヒントになるかも知れません。
早房一平
- >2 適正空燃比をつくりづらい… は何かの誤解ではないかと思います。
筒内噴射の方が均一な混合気を燃焼室内につくれるので、より理想的です。もっというと、燃焼室内の混合気濃度分布をコントロールしやすくなるのです。(わざと燃料濃度を不均一にし、点火プラグ近傍だけを着火しやすいリッチ混合気にし、燃焼室全体ではリーンにする、希薄燃焼エンジンもつくりやすいです。)
にもかかわらず、吸気管内噴射が自動車などで一般的なのはコストの問題です。(メルセデス300SLや近頃の国産車など筒内噴射エンジンもありますが)
筒内噴射では燃料噴射弁(インジェクタ)が非常に高価になります。これはディーゼルエンジンでも同じです。
なぜかと言えば、筒内噴射の場合、燃焼時の圧力がそのままインジェクタに加わるからで、それに耐えるようにインジェクタを造らねばならないからです。(燃焼ガスがインジェクタ内に逆流しないように、燃焼時圧力以上の圧力が加わらないと燃料通路がオープンにならないようにしなければならない;噴射圧力が高くなる;ディーゼルエンジンでは数百気圧以上に達するものもあります)
アツタ(か、ハ−40、ハ−140)エンジンの場合、インジェクタはボッシュに無断で島津製作所がコピー生産していたという話を聞いたことがあります。
吸気管内噴射では大気圧以下の空気に噴射すればよいので、ずっと簡単で、安くできます。だから現在の自動車エンジンの主流です。
また、これは推測ですが、凹型ピストンが採用されたのはノッキング対策ではないかと思います。過給エンジンなど、ノッキングが問題になった場合に一番簡単なのが凹型ピストンで有効圧縮比を下げることだからです。レース用自動車のエンジンなどでよく観察されます。半球形燃焼室はシリンダヘッドの形状としてつくるもので、ピストンをくぼませるわけではありません。
また、ボアの大きいエンジンで問題になるのは火炎伝播距離の増大によるノッキングの発生で、急速燃焼させるために混合気に旋回を与えることや(スワーリング)、点火プラグを複数にすることなどで対策されます。
また、揚げ足とりですが、拡散燃焼はディーゼルエンジンに使われる燃焼形態で、ガソリンエンジンの場合は基本的に予混合燃焼です。
また、コンロッドとクランクシャフトの間にニードルベアリングを入れるのは2輪のエンジンではよく見られることで、(少なくとも現在では)それほど珍しいことではありません。
ぽぷら
- >4
>また、DBでやってるかどうかは判りませんが、着火性の改善にも有利といわれてますね(プラグ近辺の混合気濃度を高められる)
やってます。
流入した空気が燃料噴霧を抱きかかえるように点火プラグに到達するように配慮された設計がなされています。
>9の捕捉
>また、コンロッドとクランクシャフトの間にニードルベアリングを入れるのは2輪のエンジンではよく見られることで、(少なくとも現在では)それほど珍しいことではありません。
戦前のイタリア競技機などでの実績もあり、クランクシャフトのニードルベアリングは当時のDB技術陣にとって「冒険」ではなかったようです。
初期に不具合が起こっていますが、硬度管理の方法を改めてからは不具合はなく、開発に携わった技術者の言によれば、むしろ出力向上後のシリンダーライナーの強度不足(変形してピストンの焼き付きを起こしたが、ハッキリした原因は最後まで究明きなかったそうです)が最大のウィークポイントになっていたそうです。
おうる
- >9 半球形燃焼室はシリンダヘッドの形状としてつくるもので…
私も基本的にはノッキング対策だと思います。
ですが上記のホンダのエンジンってのがコレ↓
http://www.honda.co.jp/factbook/motor/SPACY/19820500/004.html
こういったやり方で燃焼室(半球じゃなくって球形ってなってますが…)の形状を追求する発想も有りますので、あえて燃焼室形状の説を唱えてみました。
カム、バルブの配置やスペース制約などの点から似ていると考えたので、凝り性のドイツ人なら考えるかな?って思って。
ただまあ所詮原付バイクだし、全然違うかもしれませんので、ネタ程度に思ってもらってかまいません(苦笑
品場
- 皆様の興味深いお答えにただただ驚嘆するばかりです。ぜひこの機会に勉強させていただきます。
「ガソリンエンジンのボア上限が110mm程度・・・(100オクタン相当で)」というくだりは先の書籍よりの情報で、私自身が研究したのではないですから自信はありません。が、とりあえず理想的な空燃比(実際にそんなことが可能かは別として)かつ自然吸気(負圧による吸気で)での状態と解釈していたので100オクタン燃料での継続的運用が疑問視される日本陸海軍機のエンジンに採用するにはボア130mmのエンジンでもなかなかの冒険だったのではないかと思った訳です。(ましてや圧縮比が低いとはいえ加給ですし)
S/V比については諸先輩方に詳しい説明はお譲りしますが、簡潔に言えば「上死点時の燃焼室の表面積(Surface)を容積(Volume)で割った値」でして、燃焼室の容積が小さい割には無駄に表面積が大きいと(燃焼室形状に突起物が多い”など”いびつだったりすると)壁面からの冷却損失が多くなり具合が悪くなるといわれています。S/V比を一番稼げる形状は”真球形”ですが、1次振動の元になるピストンを掘り下げて大きくする事は非効率であることや(摩擦抵抗も増えます)、一定の圧縮比を稼ぐために一般的には”半球形状”に近づける傾向があります。
と、いったところでしょうか・・・。
>コネクティングロッドと・・・ローラーベアリングな事でしょうか?
コンロッドに滑り軸受けを使っていないということはクランクは1本ものではないという事なのでしょうか・・・?(もしかしたら航空機用エンジンでは常識なんでしょうか・・・船舶用の大型ディーゼルなんかでは聞いたことがありますが。←クランクが組み立て式)
>気筒内に直接噴射する事でガソリンの気化熱をより有効に・・・
なるほど、確かにまだ完全に気化する前にピストンに到達すれば冷却効率は上がるんでしょうね。
>低温時のアイシングに対して強かったのでは・・・
ふむふむ、そういう事なんですね。私はどちらも(間接噴射も)一緒かと思ってました。インジェクター設置場所の件、確かに狭そうですね。う〜む奥が深いですね。
>筒内噴射の方が均一な混合気を燃焼室内につくれるので・・・
ふむふむ、私は間接噴射の方が燃焼室への新気導入時に(例のタンブル、スワールで)霧化が促進されるのではないかと常々思っていたのですが、どうなんですかねぇ、実のところ。
とりあえず2輪車に限れば過去にもコンペマシンですら直噴はなかった(と思う)のでコストの問題かと言われると疑問が残ります。”メルセデス300SLや近頃の国産車”というのは希薄燃焼によるリーン・バンエンジンの事ではないでしょうか。以前にも富士重工あたりが直噴エンジンを開発していたようですが層状の混合気をつくるのが難しいという理由から断念したと聞いております。
Ninja
- >11 品場さま 御説了解しました。
確かにDB601系って(に限らず)信じられないくらい先進的な設計ですね。
1930年代のドイツ人は平成のホンダと同じくらい元気だったってオチ!
ぽぷら
- >12 直噴エンジン搭載車はメルセデスの他、三菱自工と日産自動車から市販されましたねぇ。ただ、苦労して直噴のインジェクタつくらなくても、おっしゃるとおりのタンブルやスワールで十分目的は達せられるようになってしまったので、メインストリームにはならないってことかと思います。CFD技術の発達はさすがに70年の差を感じさせます。
ぽぷら
- ゴミレスです
>12 バイクは直噴どころか、普通のインジェクション技術自体が80年代後半まで確立されませんでした。ワークスのドカティにマレリ社(フェラーリF−1にマネジメントシステムを提供してた会社)が付きっきりで何とかしたようです。
普通に手に入る市販車に搭載されるのは、更に10年かかりましたね…
最近でこそ大型車には普通に搭載されるようになりましたが、本家ドカはインジェクターの数を増やしたり減らしたりしてますし、ヤマハとかは通常の負圧キャブとインジェクションを組み合わせてみたりと、未だに基礎技術の確立に至っていないような気がします。直噴は…高圧ポンプを稼働する出力ロスとか考えると、2輪では不可能かもしれませんね。
品場
- >15 なるほど、機械損失ですか(2輪車で直噴が無い件)。ちょっと考えればわかることでしたね。バイクに限って言えばドンツキの症状が実用上問題ないレベルまで改善される(制御を持つ)まで採用が見送られたのでしょうね。もちろん飛行機とは要求されるレスポンスが違うと思いますが。
話もとに戻しまして、
鮮明な写真が手元に無いのでよくわからないのですが、DB601系がツインプラグを採用しているのは大きなボアに対して少しでもプレイグニッションを防ぐための精一杯の工夫ということなのでしょうか。つまり4バルブでありながらセンターにプラグを置くことを断念し、2本使えたほうが良い、たとえそれが燃焼室側壁であっても、シンメトリー配置でなくても、という。
バルブ開口面積を犠牲にすればツインプラグは2バルブのほうが配置として理想的でしょうが、ボア×ストロークが割とスクェアなこのエンジンは同クラスのエンジンよりも高回転型とみてとれますのでなんとなくわかる気もします。
ただ、プラグ位置がエキゾースト側というのはビッグボアエンジンの必然とも言えるしインジェクターの向きをインレット側に置く必要と偶然にもマッチしたとも思えます。
しかしこれほど大きなボアでかつ87オクタン燃料で、しかもピストンスピードの遅い(他のロングストロークのエンジンに比べて)、エンジンでは中低速(回転)域ではスロットルを開ければノッキングがひどかったのではないかと察します。
まぁキャブと違って高回転域から一気にスロットルを絞ってもアフターファイアが「バリバリバリッ!!」ということにはならなかったんでしょうが。
Ninja
- 蛇足レス
直噴は小排気量には向きません。現在実用化してるメーカーも小排気量化は考えてないと思われます。
ガソリン直噴はディーゼルとは違い、燃料系の潤滑が問題になります。ディーゼルは燃料ポンプやインジェクタの潤滑を燃料がしてますが、ガソリンは潤滑油としての性能が期待できないので、ディーゼルより難しいものがあります。
>>16
>まぁキャブと違って高回転域から一気にスロットルを絞ってもアフターファイアが「バリバリバリッ!!」ということにはならなかったんでしょうが。
その辺は、DB601系の前身であるDB600を調べれて比較すればわかるかもしれません。基本構造が同じのキャブレターエンジンですから。
おうる
- 皆さん 御回答ありがとうございます
>#4 SUDOさん
> ドイツでは150mm級のボアで苦労してたんです>例えばBMWのとか・・・
大ボアで苦労したBMWエンジンは、BMW6、BMW8、BMW9とかだと思いますが、これらのボアは160mmですね
>#5 ささきさん
>H-9350 というのは聞いたことがありませんが、型番からして排気量 153 リッターのH型らしく、やはりマトモな航空エンジンには思えません・・・
H-9350はStudebaker製、液冷水平H型(Hを横に90度倒した形?)24気筒の、R-7755よりもっとバケモノなエンジンです
H-9350-1は全長208"×全高40"×全幅100"、乾燥重量6870#です
>DB601 やマーリンなどと同じ「航空エンジン」として比較するのは不適切ではないかと思います
大ボアということで出しました
でも、ディーゼルではない普通のガソリンエンジンなのに、ボア203mmって大丈夫なのか?
>#12 Ninjaさん
>S/V比については諸先輩方に詳しい説明はお譲りしますが(以下略)
S/V比の解説どうも
中島の栄や誉のシリンダヘッドは、殆ど半球でした
>コンロッドに滑り軸受けを使っていないということはクランクは1本ものではないという事なのでしょうか
クランクシャフトは1本ものです
コンロッドが分割式です
>#16 系がツインプラグを採用しているのは大きなボアに対して少しでもプレイグニッションを防ぐための精一杯の工夫ということなのでしょうか。
飛行機のエンジンは、殆どがツインプラグです
>たとえそれが燃焼室側壁であっても、シンメトリー配置でなくても
こんな配置をするのはドイツだけ?
普通は、2本のプラグをシリンダの反対側(前側と後ろ側、または左側と右側)に配置しますが、ドイツの場合は、2本のプラグが一箇所にまとまっている事による整備性の向上を目指したのでしょうか
因みに空冷星型のBMW801も、プラグはシリンダの前側に2本の配置です
セミララ
- >おうるさん
>ディーゼルは燃料ポンプやインジェクタの潤滑を燃料がしてますが・・・
燃料で潤滑ですか、ディーゼル機関の知識に乏しいのでこれを機会に勉強してみますね。
>DB600を調べれて比較すればわかるかもしれません・・・
まあ基本的にキャブによる負圧吸入のエンジンでは、高回転域での「スロットル全閉」では激しいチョーク状態となってアフターファイアは避けられないでしょうね。
>セミララさん
>ボア203mmって大丈夫なのか?・・・
そんなエンジンが存在していたんですね。自然着火を避けようとして圧縮比を下げても火炎伝播距離が伸びるだけですし、点火タイミングを進角するだけでは対処できないような気がします。はて、どうなっているのやら・・・。
>中島の栄や誉のシリンダヘッドは、殆ど半球でした・・・
高回転、高出力型のエンジンのように、ショートストローク(ピストンスピードを上げない工夫)でかつバルブ有効面積を大きくとる(ただし低回転時では吸気の勢いが少なすぎて空気分子より重いガソリンの粒はキャブより吸い出されなくなる)4バルブの必要性があるのであれば別の燃焼室形状(たとえばペントルーフ型のような)も考えられるでしょうが、全回転域でそこそこにトルクを要求するようなエンジンでは(フラットトルク特性)ストロークも伸びますし(低回転時の充填効率を上げるためある程度のピストンスピードが必要)、火炎伝播距離の関係からボアも大きくとれません。←もちろん圧縮比は同一条件というもとでの比較です
結局バルブは2バルブ(もしくは3バルブ!?)で上下にやや潰した形の半球がこの場合”理想形”ではないかと考えられます。
>クランクシャフトは1本ものです・・・コンロッドが分割式です・・・
私の知っている範囲では一般的にクランクは強度を必要とするので極端に短いクランクを除いて(並列2気筒エンジンかそれと同等のクランクの長さを持つもの)できれば1本で削りだしたいはずです。
多くの4サイクルエンジンのベアリングがローラーではなくメタルの圧入分割構造なのはそのへんの理由からの採用と思います。
ただし2サイクルエンジンのようにエンジンオイルでコンロッド大端部が潤滑できない場合はローラーベアリングの必要があります。この場合はメタルの隙間に入り込んだオイルによる振動の吸収があまり期待できず、ピストン(及びコンロッド小端部)から発生した1次振動をまともにクランクが受け止めるので大きなトルクを発生するエンジンの構造には向いていないのではないかと思います。(もちろんメンテナンスの周期を短くすればある程度の対処は可能かもしれませんが)
そんな訳でV12のクランクにローラーベアリングを採用していたことが謎だったわけです。
ただあえて考えてみるなら、メタルはその潤滑方法から”潤滑油内の不純物混入”に極めて敏感で(物理的にローラーが回っているわけではなく、メタルとクランクピンとの隙間にあるオイルに依存しているため)、かつ潤滑油の安定供給などの管理が出来ない場合は(もしくは出来なくなるような状況を想定するならば)クランクを組み立て式にしてでも、ローラーベアリングの採用というのもアリかもしれませんね。
>飛行機のエンジンは、殆どがツインプラグです・・・
私が言いたかったことは、「4バルブエンジンにおけるツインプラグ」のことです。2バルブでのツインプラグはプラグの配置も容易ですし燃焼室形状も半球形に近いものが作れ、割とポピュラーなのではないかと思います。もっともなかには”2重半球燃焼室”とかもありますが。
DB601系の場合は4バルブで(かつ半球形燃焼室を盛り込んで)ツインプラグを採用したので「なぜなんだろう・・・?」と思った訳です。
>こんな配置をするのはドイツだけ?
そもそもOHCのエンジンが一般的だった時代にシリンダー側壁からプラグを出すこと自体が新鮮でした。どうやらまだまだ知らないことが沢山あるようです。もう少し勉強しておかないとなぁ・・・
Ninja
- >16&19
DBは大して高回転ではないです。排気量制限が無いのでスクエアとかロングとかはあんまし関係無いです。殆どストローク量で回転数は規定されてしまうと思って結構です(DB601は2400回転ぐらいで、実は低回転な部類になる)
プラグ配置は整備性の都合が大きいと思います。
SOHC4バルブですからシリンダヘッド上部に複雑なロッカーアームが多重に張り巡らされる事、飛行機に搭載した状態でアクセスしやすいこと等を考慮した場合、選択の余地はあまり無く、殆ど必然的にシリンダ側部にプラグを配置する事になり、その場合はツインにでもしないと点火性能は確保できません。これは他のV型エンジンでも同様の傾向になるでしょう。
かといってDOHCでセンターシングルプラグというのも、エンジン外形が大きくなる上にラグ一個ではたぶん足りないと思われます。
いきなり理想的な性能・機能面から考えてはドイツの発動機は理解できないと思います。
そういう方面に走るのは英国のエンジンでして、ドイツのエンジンはもっとずっと現実面の影響が大きいと思います。
>18
フォローサンクスです、160でしたか(^^;;
SUDO
- >SUDOさん
>DBは大して高回転ではないです・・・
確かにそのとおりですね。いろいろと自分なりに資料を見てはいたのですが、なかなかことエンジンに関してはボア×ストローク、最大トルク等の詳細についての記述が見つからず苦労してます。回転数についてはSUDOさんのおっしゃる通りストロークによってほぼ上限が決まってしまうのではないかと私も思います。
ただし、ボア×ストロークについてはエンジンの目標性能によって様々な要因が絡んでくるのでショートかロングかはたまたスクエアか「あんまり関係ない」と言い切れる問題でもないような気がします。(”気がする”というのは私個人の主観です、あくまで)
当時、「栄21型」の開発に携わった水谷総太郎氏によれば設計にあたって過去の経験を頼りに(実験で得たデータではないが)、ボアを130mmとしたそうです。これは「寿」(146mm)、光(160mm)の経験を生かしたとの事ですが、この数値に落ち着かせた一番の動機は「燃焼の困難なエンジンにはしない」ということだったそうです。一般的に目標馬力を稼ごうとした場合1気筒のボアを狭めることはそのままストロークを伸ばすことと直結しますが星型エンジンの場合はV型ほど気筒数の制限が厳しくないようなので(ここでいう制限とは機械的な運転可能気筒数のことであり、熱的問題等は考慮しない)ストロークも150mmというコンパクトな数値に納まったようです。
ただV型エンジンは効率を考えると6の倍数の気筒数に収めるのが理想なので、星形より簡単に排気量アップは望めないのかもしれませんね・・・。
>ドイツの発動機は理解できないと思います・・・
まさにおっしゃる通りでして、理解に長年苦しんだ結果こちらで有識者の皆様にご指導願おうと思い立ったのでした。
皆様のドイツ製エンジンに対する熱い思いはとてもよく伝わり、英国製エンジンよりもドイツ製の方が戦場での使い勝手を優先させた質実剛健なつくりであるというのは大変勉強になりました。
余談でございますが、
ちなみになぜ並列エンジンで”6の倍数”が理想かというと・・・
基本的に並列エンジンは1,2,4,6とどの数を使ってもかまわないのですが単気筒は主にピストンによる往復慣性力と慣性偶力(コンロッドが傾いているときに慣性力の反力としてピストンがシリンダー壁面に押し付けられる”側圧”という力が発生するが、これが原因でクランク軸に対して直角に働く回転モーメント)が振動の原因となり、2気筒は180度位相の場合慣性力のみ相殺し(360度の場合は慣性力を相殺することが出来ない)、その両方をクランクの位相差で理論上”ゼロ”にできるのは4気筒と6気筒となる。ただし4気筒の場合はたとえ往復慣性力を位相差で100%バランスさせたとしても2次慣性力(カウンターウエイトを一般的な50%としたとき)による2次振動(エンジンの回転数の2倍の周期で発生する振動)は
残ってしまうので、6気筒が”一応”理想的な気筒数となる。(6気筒での120度位相では理論上この2次振動を相殺することができる)
V12エンジンの場合はまさにこの典型で、これらの兼ね合いからボアが広がりすぎたからといって簡単に14気筒、16気筒などと増やせないのはここに原因がある。
なお「なぜカウンターウエイトを50%バランスにするか」とか、2次振動の詳細についてはここの掲示板の趣旨からはずれるので割愛いたします。
Ninja
- >21
主要発動機のボアXストロークはこのサイトに揃ってますよ。
トップから「参考資料」>「航空エンジン一覧」と進んでみてください。
またこの時代の航空機の発動機はスロットルで回転数を変化させません(変化するんだけど、それは目的ではない)プロペラピッチと調速装置で回転数を一定に保つようになっています(一種の無段変速です)
よって定格等の運転条件時の馬力と回転数が判れば、トルクは逆算できますし、重要なスペックではなくなります。
またドイツの発動機は別に整備性がどうのという次元の話ではありません。
すでに早房さんが述べられているように、ドイツは燃料関係が英米に比して劣りますので(開発力ではなく、製造して供給する能力の面で)低オクタン燃料で、高出力発動機を作らないといけなかったのです。
低オクタンですから高過給圧が厳しく、つまり排気量に走らざるを得なかったのです。排気量と回転数の兼ね合いからストローク量は概ね定まりますし、燃焼性からボアサイズにも厳しい制限がかかり、シリンダー数もV12で変えるのが難しいという多重の制限があったのです。
DBのローラーベアリングは僅かでも回転数を稼ぎ、また機械損失を局限するための手法であり、また流体接手過給器は全開高度以下での無駄を極力減らすための手段であり、直接噴射や半球形燃焼室は巨大化を余儀なくされたボアでなんとか燃焼させるための努力だったのです。
最初にビッグボアにせざるを得なかった周辺環境という所から進めて考えるものだったのです。英米とくに英国はそういった制限を一つ抜き出たところにあったので、はるかに理想に近いエンジンを作れたのだといえるかもしれません(もっとも、それらの多くは先進的過ぎて実用性に疑念が有りますが)
SUDO
- >SUDOさん
なるほど。とても判り易く、いままでの疑問がスカっと晴れたような気がします。
有難うございました。
Ninja