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「全翼機やリフティングボディーの方が、大型化に向いている」 みたいな話を小耳に挟んだのですが、これって何故でしょうか。よろしければ教えて下さい。 魚人間 |
- 飛行機が空中にあるとき、主翼には揚力による上向きの力が働く一方、胴体には重力による下向きの力が働いています。よって主翼の付根部分ではこれら逆方向の力を支えることになり、大きな負担がかかります。ひいては構造重量の増加につながり、当然ながら、この傾向は機体が大型化するにつれて顕著になります。
これを解消するには、胴体も揚力を発生するようにすればいいということになります。大型リフティングボディ/全翼機の発想はここをよりどころにしています。
ただし、リフティングボディ/全翼機には
・内部空間の形状が必ずしも客室や貨物の収納に適さない。
(少なくとも現行のコンテナシステムは見直しを迫られる)
・機体全体のアスペクト比が下がることがあり、必ずしも空力効率が良くない。
・全翼機は主翼の一部に尾翼の役割をさせるため、必ずしも空力効率が良くない。
・特に全翼機では操縦に対する反応や自立安定性が低下する傾向がある。
(FBWの高度化による機体の高コスト化や故障時の危険性の懸念)
・旅客機の場合、窓が設けにくい(笑
といった問題点があるため、具体化するものは少ないのです。
(オマケ)
大型機に限らず、高G機動をする戦闘機でも主翼が胴体を機体重量の数倍の力で引っ張るときの翼付根の負担を緩和するため、胴体が揚力を発生する形態のものがあります(F-5、F-14、Su-24、Su-27等)。
Schump
- 逆に「大型機でない限り全翼化のメリットが出にくい」とも言えます。胴体がない以上「主翼の厚み=貨物や乗客を積むスペース」ですから、主翼がある程度の厚みを持っていなければ実用に耐えません。人が立って歩ける程度の厚みをもつ主翼を想定すると、それはどうしても大型機になります。また全翼機(に限らず無尾翼形式一般)は重心変化に弱くペイロードを前後方向に積むことは望ましくないため、客室や貨物室の容積確保は横方向に伸ばすのが望ましく、そうするとますます大型機のほうが有利となります。
ささき
- なるほど。考えてみれば当たり前の事を聞いてしまってすいませんでした(^^;
ところで、全翼機は当然ながら翼厚比が大きくなってしまいそうですが、どの位の厚さまでなら許容できるんでしょうか。厚くしすぎると抵抗が増えてかなりきつくなると思うのですが……。
魚人間
- >3.
>全翼機は当然ながら翼厚比が大きくなってしまいそうですが・・・
広く用いられているNACA翼型の場合、その翼型により、最大翼厚比が決まっています。例えば、NACA65,3−218であれば、最大翼厚比は、18%ということです。
このことから、NACA翼型採用機の場合、翼厚比は一定ということになります。(同一の翼型であれば、翼厚比が大きくなったり小さくなったりはしない。)
2.で、ささきさんが言われている「人が立て歩ける・・・大型機になります。」というのは、このためです。
なお、データが手元に無いため断言できませんが、他の翼型も同様のルールをもているのではないでしょうか。(あくまで推測)
また、細かい検討をしていませんが、抗力(抵抗)以上の推力が確保できれば、飛行可能と考えます。(水平で一定速度の飛行は、推力と抗力が釣り合った状態。)
PRCA
- ふむふむ。てーことは、翼の厚みを人が歩ける厚さ+壁の厚みで3メートル位と仮定すると、アスペクト比8の飛行機で130メートル位の大きさになるわけですね(^^; ジャンボジェットの倍位?
>抗力(抵抗)以上の推力が確保できれば、飛行可能と考えます。(水平で一定速度の飛行は、推力と抗力が釣り合った状態。)
そうですけど、無理に推力を増やしたりしたら後続距離と燃費が凄く悪くなりそうですね(笑)
魚人間
- 因に、全翼機って高速機ほど不利になりそーな感じですけど、そうですか?
魚人間
- >全翼機
提案だけならこんなのも
http://www.fas.org/man/dod-101/sys/ac/gra.htm
ガンヘッド507
- >7
英語読めないのですが(汗)
見た感じ「胴体でも幾らか揚力を作って、主翼にかかる負荷を減らしてやろう」的な設計思想のような感じがしますが、そういう物なんでしょうか?
魚人間
- >7. BWB
胴体を無くすことで揚抗比率を向上し、また機体容積の利用度を上げることで既存の旅客/輸送機よりも大量の荷物を安く運ぶことを狙いとしているようです。
ここで議論された事がほぼ全て出ていますね。翼厚比についても、「この速度(600mph, 965Km/h)ではよほど注意深い設計がなされない限り、BWB の厚い翼は大きな抵抗増加を招くであろう」と記されています。また現在の旅客機は円筒形胴体なので与圧対策が比較的簡単なのに対し、BWB では主翼を縦に 10 分割、上下に 2 分割した長方体の空間を与圧せねばならず「与圧に耐える構造強度をなるべく軽い重量で実現するため、先進の複合素材を使う必要があるであろう」と記されています。
ささき
- >5.
>翼の厚みを人が歩ける厚さ+壁の厚みで3メートル位と仮定すると、アスペクト比8の飛行機で130メートル位の大きさになるわけですね
翼厚比は、最大翼厚寸法を翼弦長寸法で割り、これを%表示したものです。したがって、翼厚比18%の翼で、最大翼厚寸法が3mあれば、翼弦長は、約16.7(16.66666・・・)となります。
なお、4.の推力に関しては、まったく細かい検討をしておりません。ただ、エンジンの技術も日進月歩ですので、今ある問題も、将来クリアされる可能性もあり、あの記述をしております。
PRCA
- 10.の追記
翼弦長16.7の単位は、メートルです。
そして、この場合の翼をアスペクト比8とすると、たしかにスパンは、約130(133.6)メートルとなります。(寸法を記述する時は、どこの寸法か記述があるとわかりやすくて良いと思います。)
また、翼の翼型は、必ずしも1種類のみであるとは限りません。つまり、一つの翼に、複数の翼型が採用されているケースもあります。
例えば、YS-11は、内翼はNACA 64A218で外翼はNACA 64A412が採用されています。
ですから、スパンローダーでも、カーゴスペースのくる部分に翼厚比の大きな翼型を使用し、翼端部付近に翼厚比の小さな翼型、その間に中間の翼型を使用し、これらを滑らかになる様につなげるとすることも、可能と思います。(B2なんかは、そうしているのではないでしょうか。)
という訳で、前述にある「130m」になるとは、実機おいては、単純には言い切れなかったりします。
PRCA
- 技術的に可能であるなら機体の胴体だけでもAGM-129やAGM-86、JASSMやJSOWのような巡航ミサイルや誘導爆弾等々のリフティングボディ形状にするだけでも、幾らか効果はあるのではと思いますが・・・。
問題は費用対効果か(笑)。
ガンヘッド507
- >12 こと旅客機に関していえば製造コストの安さ、胴体ストレッチによる製品バリエーション展開などを考えると円筒形胴体のメリットは大きいですね。
そういえばボーイングが 1970 年代、エリアルールを適用したコークボトル胴体の亜音速旅客機を計画していたようです。燃費や巡航速度はいくらか向上するのでしょうが、座席数減少や製品単価向上を上回るほどのメリットではなかったようで廃案になっています。
ささき