3633 |
連続ですいません(汗) グライダーの滑空比は速度が上がるにつれ悪くなっていきますが、これがなんでかちょっと解らなくて困ってます。 抗力も揚力も速度の2乗に比例するので、速度を上げても滑空比は変わらないような気がしてならないのですが……。 一体どういうファクターが働いて滑空比が悪くなって行くのか、教えていただけないでしょうか。 魚人間 |
- 翼端の影響を考えない、いわゆる二次元翼なら
ρ=流体密度、V=流体速度、S=翼面積、CL=揚力係数、CD=抵抗係数
揚力 L = 1/2ρV^2 x S x CL
抗力 D = 1/2ρV^2 x S x CD
だけの関係になりますが、実際の飛行機では翼端から主翼上面に流れる渦流によって揚力が後ろに傾き抵抗を発生します。これを誘導抵抗と呼び係数 CDi で表わされます。
CD=CD0 + CDi
CD0 = 有害抵抗係数
CDi = 誘導抵抗係数
CDi = CL^2 / (πeAR)
π = 円周率
e = 飛行機効率
AR = アスペクト比
π, e, AR は飛行中に変化しないので、つまり「誘導抵抗係数は揚力係数の二乗に比例する」と見ることができます。
さて、飛行機が水平等速飛行しているとき重力によって引かれる力(F=mg)と揚力 L が拮抗しています(グライダーの場合必ずしも水平飛行ではありませんが)。自重 m や重力加速度 g が変化しない限り、
1/2ρV^2 x S x CL = 一定
が成立しています。そして主翼面積 S は一定ですし、空気密度ρも一定とみなせば
V^2 x CL = 一定
という事になります。更に、揚力係数 CL は主に翼型と迎角αによって決まりますが、飛行中に翼型は変化せず、また CL が迎角にほぼ比例する事を考えれば
V^2 x α = 一定
と近似することができます。「飛行機が飛ぶ」という現象は、推力/強度/迎角限界のなかでこの式を満たしている、ということです。これを飛行可能領域(フライト・エンベロープ)と呼びます。
速度 V が減れば抵抗 D の係数は確かに減りますが、揚力 L の係数も同じように減少するので揚力係数 CL…つまり迎角αを上げなければ水平飛行を維持できません。そして CL を上げれば、その二乗に比例して誘導抵抗係数 CDi が増加します。
速度を上げれば L の係数が増加してより小さな迎角で飛ぶことができますが、D の係数も増加するのでやはり抵抗が増えます。
最適揚抗比は両者の拮抗点であり、速度ではなく迎角によって規定されます。実際の飛行機では極端な重量差がない限り迎角と速度は一定の比例関係にあると解釈できますので、ここから最適滑空速度が算出されます。
ささき
- 只今学習中ですがイマイチピンと来ません(汗)
仰角によって最適滑空速度が算出される、との事ですが、強度や失速速度による離陸・着陸時の制約を度外視できる飛行機があるとすると、中に思いっきり重い物をのっけてやると、揚抗比を変えずに速度を速める事ができるよーな気がするんですが、これって変ですよね?
魚人間
- >2
競技用グライダーには「水タンク」が装備されており、速度を上げる(=タイム短縮)ために満載状態で離陸するのが定石になっています(グライダーの速度範囲と大アスペクト比=誘導抵抗小なら、さほど滑空比に差は生じない)。
しかし、重いままでは上昇気流による高度確保には不利ですので、いい上昇気流を捕まえられずに高度を落としてしまった場合などは水を捨てて身軽になるわけです。
腕のいい=上昇気流をうまく捕まえて高度を落とさないパイロットならばゴールまで水を持って行けることになりますので、着陸直前に水を一気に投下してみせることで腕自慢をする習慣があるそうです。
ただし、グライダーの場合、滑空中は「重力エンジン」で飛んでいるともいえるので、重量増にはエンジン出力増強の意味もあるのですが。
Schump
- 書き忘れたT_T
「機体重量が増すと、対気速度を上げなくては浮いていられなくなる」と解したほうがいいのでは?
Schump
- なるほど。ありがとうございます。水バラストの事は知っていたのですが、揚抗比にどの位影響が出るのか判らなかった物で(汗)
あ、細部の疑問かもしれませんが、グライダーの速度範囲云々というのは、例えばジェット機にとっての「音の壁」みたいな物を考慮しなくていい、という風に解釈していいのでしょうか。
魚人間
- >5. あんな細長くて軽い翼を付けているのだから、速度を上げすぎると強度破壊…を起こす以前に捩じれ変形を起こして操縦不能になっちゃいます。
ささき