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Bf109って操縦が難しいって言われてますけど、具体的にどう難しかったんでしょう?離着陸以外で。 鳥避け |
- Me109の垂直尾翼は、低速・高出力(≒離着陸)時に左から叩きつける=右向きの力を生じるプロペラ後流の影響を打ち消すために左側が膨らんだ翼型断面(左向き揚力を生じる)を持っていました。
しかし、プロペラ後方の旋回流よりも前進速度によるまっすぐな気流が優越する速度(おおむね480km/h以上)になると、垂直尾翼の発する左向き揚力のせいで右旋回しようとしはじめるので、方向舵を常に左に切っておく必要があります。当然、旋回時の反応にも左右の差が生じるので、機動時には常にこれに注意しておく必要があります。
また、Me109は機体が極端に小さいせいで、燃料を消費していくと重心が(相対的に)大きく前進する(コクピット後方にタンクがあるので)ため、これを水平尾翼取付角調整装置で補正していく必要があります。
このことも燃料残量によって操縦反応性が変化するということ(飛行機は重心を支点、舵面を作用点とするテコとして操縦される)であり、やはり操縦には気を遣うことになります。
あとは機体に対してプロペラが大きいことによるプロペラ反力の影響の大きさや主翼前縁失速防止スラットの左右非対称作動による不意自転なども問題点に挙げられるでしょう。
Schump
- 回答ありがとう御座います。
でも、燃料消費の末の重心移動や各スピードでの舵面のタブの微調整等は、どの飛行機にもあることですよね?なのに何故Bf109だけが取り分け難しいと言われるんでしょうか?
重心の問題ならP-51Dのほうが逆特性等の理由でかなり神経を使うと以前ここで紹介された別サイトの【P-51D操縦マニュアル】なるものに書いてあったんですが・・・。
鳥避け
- Me109は1935年初飛行の、元来は700馬力級の戦闘機です。第二次大戦初期世代の機体に比べて1〜3割は翼面積(∝機体寸法)が小さため、すでにE型(1100馬力級)までにはエンジン出力と安定性や重量とのバランスが崩れていた面があるのです。
また、1.で述べた480km/hという速度は、700馬力級だったD型までの水平最大速度よりも高い数値であり、初期設計の空力バランス自体が1000馬力超のエンジンを想定しきれていなかったとも考えられます。重心移動についても、B〜D型より2〜4割も重いエンジンを積んだことでE型以降はより燃料消費の影響を受けやすくなったと考えられます(このあたり、P-51の胴体タンク満タン状態との乗り比べをした人の経験談があればいいのですが)。
とはいえ、最終的には「九七戦に誉を積む」くらいの無茶をやったはずなのに、操縦性を実戦でそれなりに使えるレベルの難しさにとどめえたことは正当に評価すべきでしょう。
Schump
- 胸の痞えが取れました。ありがとう御座います。
鳥避け
- 蛇足な補足。
>方向舵を常に左に切っておく必要があります
Bf109 にはラダー・トリムがありません。従って、パイロットは飛行中全速度域においてラダーを踏み続けることを強いられます。これは長時間巡航において負担が大きいと思われますが、そんな事は最初から考慮していない機体なのでしょう。
また Bf109 の自動前縁スラットは横滑りした状態だと左右同時に開かず、ロール方向に動揺が出ることがあります。英軍による捕獲機テストでは、この傾向は特に右旋回において顕著と報告されています。しかもラダーの効きが速度域によって変化するので横滑りのない旋回が難しく、正確な射撃を与えるには高度な技量が必要であろうと記されています。急降下の突っ込みは非常に優れているものの、速度 700Km/h(!) を超えるとエレベーターが非常に重くなることが指摘されています。
利点としては中低速におけるロールが非常に速く、大きな馬力重量比のためズーム上昇に優れ、噴射式エンジンのためどんな飛行姿勢でもエンジンが安定作動することは高く評価されています。
ささき
- ラダートリム、あります。
ギグ
- 英軍による Bf109E の評価報告(ただし雑誌に転載されたもの)と、Bf109G 復元機の操縦レポートに「ラダートリムがない」と記されていたのでそう書いたのですが…。
ささき
- G型の後期以降の大型木製尾翼なら機内から操作できるラダートリムが
あります。
しかしそれ以前の機体には機内から操作できるラダートリムはなく
離陸前に設定するトリムしかありません。
wittmann
- >8. ありがとうございます。後期型では改良されていたのですね。
ささき