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過去ログ1506,1512あたりを探ってみたのですが、プロペラピッチについて質問です。 なんとなく「空気の流れに対して刃があたる面積を大きくする抵抗が増し推力が出て速度が出る。ある角度にすれば燃費の良い巡航ができる」位の認識なのですが、2次大戦時のテクノロジーの機材が戦闘に突入した瞬間、パイロットはプロペラについてまず、何を考えるでしょうか? 自分はある位置にコクピットからの操作で固定して最大性能ポジションにし、終わって落ち着いたら適宜位置を直す、位の考えでいるのですが、真相をお教えください。 まるき |
- 故坂井三郎氏はその著書で、会敵時の戦闘諸元として「燃料コックの切り替えと増槽投下」の次に「プロペラピッチ把柄の低ピッチ切り替え」を挙げられています。
因みにその次が「カウルフラップ開」「ACMを常時(燃料が濃くなる)に」「電映式照準器の点灯」「機銃の安全装置解除」「脚及びフラップ収納の確認」だそうです。
そして空戦中はプロペラピッチは固定したままでほとんど操作せず、空戦が終了すると元に戻して燃料の消費を抑えられたそうです。
T216
- 「可変ピッチプロペラ」には「ピッチ操作型」と「恒速式」の2種類があり、第二次大戦時の機体に付けられているのは殆どが後者の恒速式です。
ピッチ操作式はパイロットがプロペラピッチを直接操作して変化させるものです。ふつうは高/低の二段切り替えとなっており離陸時に低ピッチ(進行方向に対して浅い角度)、巡航時に高ピッチ(深い角度)を選択し、回転数はスロットルで調整します。この変形として対気速度を検出する自動ピッチ変化式というものもあります。
これに対し、恒速式はプロペラ内に調速器(ガバナー)が内蔵されており、指定された回転数を保つよう自動的にピッチが調整されます。パイロットはプロペラ回転数をピッチレバーで指定し、スロットルはエンジンのブースト圧を変化させます。
空戦時、ピッチレバーは原則として最高回転にセットする事になっています。スロットルを開いてブーストを上げるとエンジンは回転を上げようとしますが、それを検出したガバナーによってプロペラは回転抵抗を増す方向…すなわち高ピッチに設定され、より多くの空気を掻いて高い推力を生み出し速度が上がります。
スロットルを引いてブーストを下げるとエンジンは回転を下げようとしますが、ガバナーはプロペラ回転抵抗を下げる方向…低ピッチに設定されます。プロペラ推力は減る一方で、正面面積の増えたプロペラはエアブレーキの役割も果たし速度が下がります。
機体のマニュアルには離陸/緊急、上昇、巡航、戦闘など各々のシチュエーションにおける推奨回転数とブースト制限が記載されています。空戦に入るとき、パイロットはまず回転計を見ながらピッチレバーを操作し所定の回転数に合わせ(普通は前方一杯に押し出せば戦闘出力=最高回転に入るようになっている)、あとの速度の増減はブースト計を見ながらスロットルレバーで行います。
ささき
- 戦記物などで「ピッチレバーを最高回転に倒し…」などと書いてあることが多いのですが、これは回転数制限を取っ払って「最高の速度で」プロペラを回すことではありません。その機体の常用範囲における最高回転数(たとえば四式戦なら 2900rpm)をガバナーにセットする、ということです。「常用範囲」と書いたのは、例えば急降下時にはスロットルを引いた状態でプロペラを空転させエアブレーキ代わりに使う用途などもあり、この時のために「許容最高回転数は別に設定されている事があるためです(四式戦では ブースト -200mm で 3200rpm / 30 秒間)。
プロペラの性能が悪かったり、ガバナーの調子が悪かったりするとエンジン回転数のアップにピッチ変更が追従せず、指定以上の速度で回ってしまう「過回転」という現象が起きることがあります。過回転はエンジンに著しい負荷を与えて寿命を縮めるため好ましくありません。
ささき
- >離陸時に低ピッチ(進行方向に対して浅い角度)、巡航時に高ピッチ(深い角度)を選択し
あぁ、誤解しそう…。「回転面に対して」と書くべきでした。プロペラがより少ない空気を掻くほうが「低ピッチ(fine pitch)」、多い空気を掻くほうが「高ピッチ(coarse pitch)」です。
プロペラ効率は流入する対気速度によっても変化するので、一概のどちらの方が良いとは言えません。一般的に低速時には低ピッチが、高速時には高ピッチの方が有効です。しかし「高ピッチ=高速飛行」と決まっているわけでもなく、巡航時には「低速・高ピッチ・低回転」という組み合わせも使います。
恒速プロペラではそういった事をいちいち判断する必要がなく、回転数とブースト圧という2つのパラメータさえ把握しておけば、あとは勝手に最適なピッチ角を選んでくれるわけです。また恒速プロペラはスロットル操作に伴うプロペラ回転数の変化が少ないため加速性に優れ(固定ピッチでは一度スロットルを絞って低回転にしてしまうと再び回転数を上げるときに遅れを生じるが、恒速ペラでは回転数を保ったままピッチだけ変えて減速できる)、また回転数増減に伴うロールモーメントの発生を抑える効果もあります。
ささき